いま懸念の的の中国海軍の動向についての分析です。

【正論】中国軍事専門家・平松茂雄 中国海洋進出は台湾統一の布石

 

 

 

 

 

 ≪70年代から南、東シナ海進出≫

 11隻から成る中国海軍艦隊が6月8~9日、東シナ海から沖縄本島と宮古島の間の海域を抜けて西太平洋に進出した。わが国最南端の領土、沖ノ鳥島から米 軍基地のあるグアム島に至る海域で、軍事訓練・演習を実施したと推定される。中国海軍艦隊が同海域を通過して西太平洋で軍事訓練・演習を実施したのは、4 回目である。

 中国海軍の周辺海域進出は、1970年代に始まり、南シナ海から東シナ海、そして西太平洋へと着実に広がってきた。75年のベトナム戦争終結をはさみ、 米軍が東南アジアから引いてゆく後を埋めるようにして、南シナ海パラセル(西沙)諸島のサンゴ礁(永興島)に埠頭(ふとう)を造り、基地とした。同島を橋 頭堡に、74年には残る南ベトナム(当事)支配下の西沙諸島を押さえ、80年代末までに永興島に2400メートルの本格的な滑走路と通信施設などを完成さ せた。

 中国はそのころまでに、南シナ海のベトナム南部海域に位置するスプラトリー(南沙)諸島にも進出して、満潮時には水没するようなサンゴの岩礁6カ所に領 土標識と掘っ立て小屋を建て、南シナ海支配の拠点とした。各種の通信施設が設置されて、前述の永興島の施設とともに、南シナ海における監視・通信網を形成 している。

 90年代に入ると、中国はフィリピンのパラワン島海域のミスチーフ環礁に海軍基地を設ける。西沙諸島との間の海域には、西太平洋からインド洋へのシー レーン(海上交通路)が縫う。中国は南シナ海海域からベトナム、フィリピンなどの影響力を削ぐ措置をとっており、中国によるシーレーン支配の成否は、米国 の対応にかかる。因(ちな)みに、6月初頭、シンガポールでのゲーツ米国防長官との会談で中国の梁光烈国防相は、南シナ海での領有権争いへの米国の関与を 峻拒(しゅんきょ)する立場を表明している。

 東シナ海では、70年代に海洋調査、80年代に日中中間線の中国側海域でボーリングを実施し、90年代中葉から中間線のほぼ真ん中に位置する平湖ガス 田、今世紀に入り、中間線ぎりぎりの海域に春暁(日本名・白樺)ガス採掘施設を建設した。これらの施設は軍事施設を兼ねるとされる。

 ≪沖縄海域航行した11隻の陣容≫

 20世紀最後の2000年5~6月、中国海軍の情報収集艦が対馬海峡から津軽海峡を経て三陸海岸を南下、小笠原諸島・硫黄島から南西諸島海域を情報収集 しつつ航行した。中国海軍の西太平洋進出のシグナルであった。今世紀に入るや、小笠原諸島・硫黄島から南西諸島に至るわが国の排他的経済水域で数年にわた り海洋調査を徹底して行った。中国はわが国に調査実施許可を求め、わが国政府は即座に許可。調査は南のグアム島に近い海域を含め実施された。

 08年10月、中国海軍司令員が日本を友好訪問中、4隻の海軍艦隊が対馬海峡から津軽海峡を通って日本を一周した。日本近海での海洋調査が完了、日本周 辺海域での艦隊出現のシグナルと筆者は見た。案の定、翌年(一昨年)9月と翌々年(昨年)3~4月、中国艦隊が沖縄と宮古島の間の海域を通って沖ノ鳥島周 辺の西太平洋海域で軍事訓練・演習を行った。

 そして、冒頭の11隻艦隊の出現である。数の多さもさることながら、冷戦時代、米空母も恐れた旧ソ連製のソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦(7940ト ン)3隻、フリゲート艦4隻、補給艦、艦隊航洋曳船(えいせん)、情報収集艦、潜水艦救難艦(複数の潜水艦の参加をも物語る)という陣容の凄さである。こ れほどの艦隊が西太平洋に出てきたのは初めてで、「定期的な訓練・演習」(中国国防省)としているところからして、これを機に西太平洋での軍事訓練・演習 は定期化し、本格化するであろう。

 ≪共産党結党百周年記念の祝杯≫

 海洋進出攻勢の目的は何か。

 「台湾統一」の最大の障害である米海軍、特に空母を台湾に接近させないことにある。中国は建国から10年が過ぎた1960年代以降、米国に到達する大陸 間弾道ミサイル、日本など周辺の米軍基地を狙う中距離ミサイル、台湾を集中攻撃する短距離ミサイルを開発し配備、近年、米空母を標的とし「空母キラー」と いわれる射程1800~2800キロの巡航ミサイルまで開発・配備している。

 中国は、2020年めどの「台湾統一」へ向けて着実に動いている。2021年は中国共産党結党100周年だから、その記念の祝杯を、台北で挙げようというのが当面の目的である。その時、台湾は、「中華人民共和国台湾省」になっているという前提である。

 そして、そうなった暁に、日本はどうなるか。中国に海上から封じ込められかねないのだ。わが国はそれに気がつく必要がある。(ひらまつ しげお)

 




平成23年 (2011) 6月24日[金] 先負

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