日本の拉致被害者の救出に努める合同訪米団がワシントンを先日、訪れた際の出来事の報告です。

 

北朝鮮による日本人拉致の「家族会」「救う会」「拉致議連」の代表たちが面談して下院外交委員会の有力メンバーのスティーブ・シャボット議員が「日本は独自の核武装を真剣に論じるべきだ」と促したのです。中国と北朝鮮を動かし、北朝鮮の核武装停止や拉致被害者の解放を実行させるための有効な手段だというのです。

 

日本ビジネスプレスの私の連載コラム「国際激流と日本」からの転載です。

 

なお原文へのリンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/16338

                          =======

 

 さらに山谷、谷田川、竹本、向山各議員も、米側が北朝鮮に向けて強固な姿勢を保つことを要望した。

 

 そして塚田議員が、米国は北朝鮮のミサイルの脅威 をどれほど警戒しているかを質問した。

http://go2senkyo.com/img/profile/0019/00019354.jpg

 (塚田一郎議員)

 それに対してシャボット議員は、共和、民主両党で認識に差はあるが、米国全体としては北の核兵器開発の動きを強く警戒しており、核兵器開発の動きはミサイルよりもさらに深刻に受け取るべきだと強調した。

 

 その上でシャボット議員は次のように発言したのだった。

http://o.aolcdn.com/photo-hub/news_gallery/6/8/684393/1283714545125.JPEG

 

 「北朝鮮の核兵器開発は、韓国、日本、台湾、米国のすべてにとって脅威である。北朝鮮には食糧も燃料も与えるべきではない。圧力をかけることに私も賛成だ」

 

 「私は日本に対して何をすべきだと述べる立場にはないが、北朝鮮に最大の圧力をかけられる国は中国である。その中国は日本をライバルとして見ている。・・・だから、もし日本に核兵器保有を真剣に考える動きがあれば、中国は日本に核兵器保有を断念させるために、北朝鮮に核兵器の開発を止めるよう圧力をかけるだろう」

 

 肝心な部分はこれだけの短い発言ではあったが、その内容の核心は、まさに日本への核武装の勧めなのである。

 

 北朝鮮の核兵器開発を停止させるために、日本も核兵器開発を真剣に考えるべきだ、というのだ。

 

 そして、その勧めの背後には、北朝鮮が核開発を止めるほどの圧力を中国から受ければ、当然、日本人拉致に関しても大きな譲歩をしてくるだろう、という示唆が明らかに存在する。

 

 つまりは北朝鮮に核兵器と日本人拉致と両方での譲歩を迫るために、日本も独自に核武装を考えよ、と奨励するのである。

政策オプションとして一考に値する

 シャボット議員は米国議会では保守派と見なされている。

 

 しかし下院で多数を制した共和党の有力議員なのだ。

 

 そうした地位にある政治家が正面から日本に核武装の勧めを説いたことの意味が大きい。

 

 米国全体ではまだ日本の核武装というシナリオへのコンセンサスはないが、下院の多数党の有力議員が堂々と「日本も核武装検討を」と説いたという新 展開はいろいろな意味でショッキングである。

 

 だが、こんな対日提言は日本を同盟パートナーとして信頼しているからこそ、とも言えよう。

 

 日本としても、国民レベルで核兵器開発への合意が生まれる気配は今はまったくないが、北朝鮮の核武装を停止するため、さらに日本人拉致被害者たちを救出するため、の手段だということであれば、一考以上に価する政策オプションだと言えるのではないか。(終わり)

                 ========