日本の拉致被害者の救出に努める合同訪米団がワシントンを先日、訪れた際の出来事の報告です。
北朝鮮による日本人拉致の「家族会」「救う会」「拉致議連」の代表たちが面談して下院外交委員会の有力メンバーのスティーブ・シャボット議員が「日本は独自の核武装を真剣に論じるべきだ」と促したのです。中国と北朝鮮を動かし、北朝鮮の核武装停止や拉致被害者の解放を実行させるための有効な手段だというのです。
日本ビジネスプレスの私の連載コラム「国際激流と日本」からの転載です。
なお原文へのリンクは以下です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/16338
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さらに山谷、谷田川、竹本、向山各議員も、米側が北朝鮮に向けて強固な姿勢を保つことを要望した。
そして塚田議員が、米国は北朝鮮のミサイルの脅威 をどれほど警戒しているかを質問した。
(塚田一郎議員)
それに対してシャボット議員は、共和、民主両党で認識に差はあるが、米国全体としては北の核兵器開発の動きを強く警戒しており、核兵器開発の動きはミサイルよりもさらに深刻に受け取るべきだと強調した。
その上でシャボット議員は次のように発言したのだった。
「北朝鮮の核兵器開発は、韓国、日本、台湾、米国のすべてにとって脅威である。北朝鮮には食糧も燃料も与えるべきではない。圧力をかけることに私も賛成だ」
「私は日本に対して何をすべきだと述べる立場にはないが、北朝鮮に最大の圧力をかけられる国は中国である。その中国は日本をライバルとして見ている。・・・だから、もし日本に核兵器保有を真剣に考える動きがあれば、中国は日本に核兵器保有を断念させるために、北朝鮮に核兵器の開発を止めるよう圧力をかけるだろう」
肝心な部分はこれだけの短い発言ではあったが、その内容の核心は、まさに日本への核武装の勧めなのである。
北朝鮮の核兵器開発を停止させるために、日本も核兵器開発を真剣に考えるべきだ、というのだ。
そして、その勧めの背後には、北朝鮮が核開発を止めるほどの圧力を中国から受ければ、当然、日本人拉致に関しても大きな譲歩をしてくるだろう、という示唆が明らかに存在する。
つまりは北朝鮮に核兵器と日本人拉致と両方での譲歩を迫るために、日本も独自に核武装を考えよ、と奨励するのである。
政策オプションとして一考に値する
シャボット議員は米国議会では保守派と見なされている。
しかし下院で多数を制した共和党の有力議員なのだ。
そうした地位にある政治家が正面から日本に核武装の勧めを説いたことの意味が大きい。
米国全体ではまだ日本の核武装というシナリオへのコンセンサスはないが、下院の多数党の有力議員が堂々と「日本も核武装検討を」と説いたという新 展開はいろいろな意味でショッキングである。
だが、こんな対日提言は日本を同盟パートナーとして信頼しているからこそ、とも言えよう。
日本としても、国民レベルで核兵器開発への合意が生まれる気配は今はまったくないが、北朝鮮の核武装を停止するため、さらに日本人拉致被害者たちを救出するため、の手段だということであれば、一考以上に価する政策オプションだと言えるのではないか。(終わり)
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コメント
コメント一覧 (12)
>だから、もし日本に核兵器保有を真剣に考える動きがあれば、中国は日本に核兵器保有を断念させるために、北朝鮮に核兵器の開発を止めるよう圧力をかけるだろう
核武装せよ、ではなく核武装に関して真剣に考えよ、が真意なのではとも思える発言です。つまり、日本国内で真剣な議論が起こるだけで効果は絶大である、との見方です。
政治家含め日本国民が感情的にならず、現実を見つめた議論ができるのかどうか。マスコミに関わる方々の腕の見せ所なのでしょうか。大変なトピックだと思います。応援しています。
政治というパワーゲームの中では、確かに有効な手立てかもしれません。
筋が通っているやには見えますが、彼は米国民であって北朝鮮問題をべつにすれば日本が核を持ち独自の安全保障政策をとることは米国の世界戦略の上では決して好ましいことではないし、危険なことでもあります。
そんな事はいくらなんでもこの議員はわかっているはずではないでしょうかね。
米国が最大規模の艦隊を太平洋とインド洋に展開しているのは何故か知らない筈もないでしょう。
そのことはさておき、核武装にかんする我が国の議論もできない雰囲気、平和はタダ、今日ありて明日なき楽観性、歴史的に侵されることのなかった偶然性とその当時の偉人たちの苦心、それを顧みる暇さえない日常にこそ危機感をおぼえるのです。
ま、あまり協調しすぎるのも何ですけどね。
感情的にならずにこの国の安全保障体制を考え直す時期かも知れませんね。
やり直す機能が分からないもので、すみません。
シャボット議員の意見は「日本が独自に核兵器を持つ」といっても、あくまで日本が日米同盟の枠内に留まり、民主主義のアメリカ側陣営との安全保障の連帯を保つということが大前提です。
そうであれば、アメリカのグローバルな安全保障にも利するというわけです。彼以外にも日本に核武装を進める米側識者たちは存在します。
北朝鮮、中国、ロシア、パキスタン、インドといった諸国がみな核兵器を持つなかで、アメリカと緊密な安保関係を保つ民主主義の経済大国の日本が核兵器を持って、どうしていけないのか、という認識もあるわけです。
そのとおりだと思います。
核武装についての論議が真剣に日本で起きれば、それだけでもよい、ということです。では実際の日本の核武装には反対なのか、というと、それほどでもない、ということでしょう。
毒を以って毒を制する。
的確な表現ですね。
核を以って核を制することが東西冷戦でも平和が守られた最大要因だったといえそうですから。
ここは御国を何百里。。。これが見捨てておかりょうか しっかりせよと抱き起こし
って歌詞を思いだします。抱き起こしてくれようというのが旧敵国だというのは、兵隊さんもびっくりでしょう。
ユニークブログ
日本国土国益防衛委員会 武装蜂起歴史研究会
http://erwds7eg8hyt.blog.fc2.com/
1、北朝鮮が崩壊する際に最後っ屁のような核乱れ撃ちをする可能性が、わずかですが、あると心配しています。また、中露等の核システムの故障により核ミサイルが飛来する可能性もゼロではないと予測します。よって、報復用の核だけでは万全とは言えず、迎撃用の核も必要であると思います。
2、米露を始めとして各国が配備しているのは、報復用です。すなわち、もし敵から核攻撃を受けたら、生き残った自国の核で必ず報復する、というやつです。
かつてソ連がアメリカに先駆けて大陸間弾道ミサイルを開発した直後、アメリカではソ連からの先制核攻撃を迎撃する議論が行われたようです。その中で、四六時中アメリカ上空で核爆発を起こすことでソ連の核ミサイルを迎撃・破壊するという案もありました。しかしその案は迎撃用の膨大な数の核を必要とすることから、没になったのです。典拠を捜しましたが見当たりませんので、省略します。
しかし、現代ではレーダーや監視衛星の技術が著しく進歩し、MDが既に実戦配備されています。よって、四六時中上空で核爆発を起こさなくても、ピンポイントで迎撃すれば良いのではないでしょうか。
実は、今のMDが敵の弾道ミサイルを完全に迎撃・破壊できる保障はないのではないかと思っています。だからこそ、MDの弾頭部を核にすることで、敵のミサイルに命中しなくても近くで核爆発を起こして迎撃できる現代版のVT信管で防衛するべきではないかと思います。
3、その際には、できれば日本製の核がベストですが、米国等が反対したら米国製の核でも良いでしょう。仮に日本製ならば、日本の国際社会における発言力は飛躍的に向上するでしょう。
報復用の核を持つのは現実問題として難しいですが、迎撃用の核であれば国際社会の理解も得られるのでは、と期待したいです。
2年前にNHKの『日本のこれから 核』に一般参加した際には、「核武装するか否かは別として、全く手付かずの地下シェルターの構築を最優先にするべきである」と発言しました。
http://kawanya62.iza.ne.jp/blog/entry/1186369/
悲劇が起きた場合の犠牲を最小限にするための議論が必要だと思います。
以上です。長文失礼しました。
おもしろい意見と情報とをありがとうございます。
菅直人首相の国会答弁を、聞いていると
答弁とは言えない、はぐらかしであるが、
正に、誤魔化し、すりかえ、の名手といえる。
この様な政権では、まともな国防論議は出来まいから、
さっさと政権交代して、「新政権」で、
まともな国防論議をして、国民の意識転換を図ってほしい。
本当に、このままでは、日本は衰退し、滅亡するぞ。
これは、すでに、世界の歴史の証明するところである。
故にも、日本人に知性があるのなら、分からぬはずはあるまいに。