オバマ政権が中国に対して新たに厳しい軍事姿勢を取り始めたことはすでに多角的に報じられました。

 

 では日本はどうすべきなのか。

 

 このままだと取り残される恐れもあり、のようです。

 

 西原正氏がその点について鋭い論文を発表しています。

 

 

【正論】平和安全保障研究所理事長・西原正 オバマ対中牽制策を支える時だ


 

 

 

 11月12日のハワイのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に始まり19日のバリ島の東アジア首脳会議(EAS)に終わった一連の国際会議 で、オバマ大統領は外交的主導権をとり、経済と外交・安全保障の両分野で中国を明らかに守勢に立たせた。この米外交に同盟国日本はどう応えるのか。野田政 権の責任は大きい。

 

 ≪4つの成果挙げたアジア外交≫

 野田佳彦民主党政権は、米国がこの一連の外交で、自らの主導による環太平洋諸国との経済連携推進と併せて、中国の軍事行動を牽制(けんせい)するための方策を示したことの意味するところを、十分に評価しているのだろうか。オバマ大統領は4つの大きな成果を挙げた。

 

 第一に、オーストラリア北部ダーウィンの基地に2014年に向けて2500人の米海兵隊を配備すると発表(16日)した。これは中国の中距離ミサイル攻 撃の射程外に海兵隊を配備することで、南シナ海での対中牽制の姿勢を効果的なものにできるという判断である。これにより、南シナ海諸島の領有権をめぐる中 国との紛争においてフィリピンやインドネシアの後ろ盾になることができるし、インド洋への関わりも容易になり、シンガポールに寄港する米空母などとの連携 がしやすくもなる。

 

 第二に、オーストラリア議会で演説(17日)し、イラクとアフガニスタンからの米軍撤退を踏まえて、「政権の安全保障政策チームにアジア太平洋地域にお ける米軍のプレゼンスと任務を最優先するよう指示した」と述べ、太平洋国家として、同地域に「強固な兵力配置を維持するのに必要な資源を割り当てる」など と言明した。

 

 米国が国防費の大幅削減を強いられる状況下で、これだけの公約をした意義は大きい。今後中東や欧州で米国の存在が相対的に薄くなることへの懸念が聞かれそうだが、米国が中国への対抗姿勢を示したことに、多くの東南アジア諸国は勇気づけられた筈(はず)である。

 

 ≪長官訪問で中ミャンマーに楔≫

 第三に、東アジア首脳会議(19日)で南シナ海問題を取り上げ、航行の自由、領土紛争の多国間協議による外交的解決、米国の関与の継続を明言したことで ある。この件が取り上げられることを懸念した中国の温家宝首相はその前日に急遽(きゅうきょ)要請して、首脳会議の直前に大統領と緊急会談を行った。

 

 それでも、大統領は遠慮しなかった。しかも、会議に参加した18カ国のうちラオスとカンボジアを除く16カ国が発言し、多くの国が米国の立場を支持する 発言をしたと報じられている。会議の前に行われた中国・ASEAN首脳会議で、温首相が「中国は決して覇権を追求しない。中国は永遠にASEANの良き隣 人だ」と説得していたにもかかわらず、である。

 

 第四に、クリントン国務長官が16日にフィリピンを訪問し、米比同盟の堅持をアピールした。マニラ湾に停泊中の米ミサイル巡洋艦上で、長官は「我々は、 両国の集団的防衛体制のための能力および通信基盤が国家ないし非国家組織による挑発を作戦上でも装備上でも抑止できることを確実にしつつある」と演説し た。「南シナ海」とは言わず、フィリピン人の好む「西フィリピン海」を使うサービスぶりであった。こうして、中国の高圧的な領土主張に悩むフィリピンへの 強力な支援を行った。

 

 もう一つ付け加えれば、ミャンマー新政権がこれまでの閉鎖的、強圧的な軍事政権から脱却しようとしていることにいち早く好意的反応を示した。バリでの ASEAN首脳会議が17日、ミャンマーの2014年のASEAN議長国就任に合意した翌日、大統領は、クリントン長官を12月1、2の両日ミャンマー (米政府はまだビルマと呼ぶ)に派遣すると発表した。これも、中国のミャンマーへの影響力を牽制する動きであった。

 

 ≪普天間問題解決一段と急務に≫

 こうした米国の積極的な外交・安全保障政策に関して、野田首相は東アジア首脳会議後の記者会見で「米国が関与を深めていこうとするのは歓迎すべきだ」と 述べ、「日米同盟はアジア太平洋地域における公共財だ。日米同盟を通じてこの地域における平和と安定に貢献していきたい」と述べたとのことである。だが、 そこでは具体的方策を示すことはなかった。

 

 今回、豪州北部に海兵隊が駐留することになって、将来、米軍は沖縄、グアム、ダーウィンという西太平洋上のバランスの良い3地点から、中国の動きを牽制 できるようになった。そうした変化を俊敏に捉え、日本としても、普天間飛行場移設の問題を早急に解決して米海兵隊が在日基地を使用しやすい環境をつくる と、首相は表明すべきであったのではないか。

 

 沖縄をめぐる安全保障環境は、この2年くらいで、明らかに変化した。今や、中国海軍の行動半径が広がり、沖縄自体の安全を論じるべきときであるのに、日 本政府は沖縄県民の基地負担を軽減することにとらわれている。日本が真剣になって東シナ海における中国海軍の牽制に努めることこそ、オバマ政権の新戦略に 呼応し西太平洋の安全に寄与する道である。(にしはら まさし)