アメリカの財政危機が大きな影を広げています。
一方、オバマ政権はアジアでの防衛強化策を打ち出しました。
中国の大軍拡についに我慢しきれず、という対応です。
中国へのソフトな関与政策をさんざん試みて、そんな柔らかい態度をとればとるほど、中国は軍事力を強め、理不尽に進出してくるという現実の教訓をいやというほど、味わわされた結果だといえます。
このオバマ政権のアジア重視安保政策は日本にとっても歓迎すべき動きです。しかしアメリカ側では財政危機のために国防費の削減が予測されます。
日本はいまこそアメリカのアジア防衛重視に協力を増すべきです。
ではなにができるのか。
アジアでの日米同盟の抑止力を強めるためには、日本の集団的自衛権の自縄自縛を解くことでしょう。この動きは中国にとって最も効果のある防衛策です。
集団的自衛権というのは、主権国家ならどの国でも持っている固有の権利です。権利であって、義務ではありません。日本だけが自国の判断や行動を信用できず、自らタブーとしているのです。
そのへんの事情を以下の産経新聞社説も論じています。
【主張】米財政危機 防衛力強化に日本は汗を
財政赤字削減をめぐる米議会の超党派協議が決裂したことで、米国防予算が今後10年で1兆ドル以上の大幅削減を迫られる恐れが強まっている。
米財政が世界経済や欧州にもたらすリスクもさることながら、中国の軍事的台頭などで安全保障環境の悪化が著しいアジア太平洋の戦略情勢に及ぼす悪影響がとりわけ心配だ。
野田佳彦政権は、日米安保体制の実効性を損なうことがないよう、オバマ政権と議会に格別の努力を申し入れる必要がある。と同時に、同盟の空洞化を防ぐた め日本も担うべき責任を果たすべきだ。9年連続の防衛費削減により弱体化している防衛力を強化するだけでなく、集団的自衛権行使容認に踏み切るべきであ る。
協議決裂により、8月に成立した関連法の「トリガー条項」(歳出自動削減)が発動される。2013年度から10年間で1兆2千億ドル(約92兆円)の歳出が強制削減されるが、問題はその約半分が国防費削減に向かうことだ。
国防当局はすでに4500億ドルの削減を義務づけられ、トリガー条項分を含めると1兆ドルを超す。イラク、アフガニスタン戦費を除いた国防予算は年間5千億ドル規模で、単純計算でも毎年2割(1千億ドル)以上の巨額の削り込みを強いられることになる。
特に日本関係では、航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)の有力候補であるF35の生産計画縮小▽海兵隊の約2万人削減や装備縮小と相まって有事即応能力が減退する▽核戦力削減で「核の傘」(拡大抑止)が損なわれる-などの事態も憂慮される。
中国や北朝鮮の脅威に対抗するには、米国と日韓豪などとの同盟強化が絶対に欠かせない。
日本防衛の最前線となる海兵隊の抑止能力強化に向けた普天間飛行場移設の早期実現は当然だ。必要な在日米軍経費負担の確保などに加え、南西諸島などの独自防衛にも一層努力する必要がある。
「アジア太平洋シフト」を鮮明にしたオバマ氏は「アジア太平洋に展開する米軍の維持・強化は最優先課題」と強調するが、それには議会の説得が不可欠になる。
野田首相は重要閣僚の派遣や自らの訪米で、議会説得に協力することも検討すべきだ。日本の安全とアジア太平洋の安定に直結する同盟の危機といえる。日米が協力してともに汗をかきたい。
コメント
コメント一覧 (13)
集団的自衛権もそうですが、憲法の改正と防諜や情報に関する法律などの整備も必要だと思います。
今、運用出来る範囲は範囲で改めないといけませんが、やはり抜本的な部分を改めないといけない、そう考える次第です。
実際のところ“集団的自衛権”について認めていないのは『政治的詭弁』と言った方が良いのだと思えます。
インド洋で行われている海賊対策作戦は多国間の有志連合で行われており、連携した作戦である以上『集団的自衛権の実質的行使』と言っていいのでしょう。
多国間で行われる訓練演習に“構成員”として参加し、互いの制服組と交流を深める‥このことも日本の安全保障と相互理解には重要な事と思えますが、それも“集団的自衛権”の問題で行えない‥それこそが互いの不理解につながりかねない畏れについても『九条至高論者』はよく考えるべきと思いますけどね。
・集団的自衛権の開国
・武器輸出の開国 (「武器輸出三原則(等)」の緩和などと手緩いことよりも、武器輸出の自由化)
くらいは、相手国が無くても、自ら出来ることですので、民主党政権はできるはずです。(まあ、「開国」も「自由化」も本心では無いので、しないでしょうが)
オバマは財政赤字削減交渉での共和党の抵抗に懲りて、
決裂した場合の強制的な自動歳出削減項目を国防費に追わせ、
国防費を重視する共和党の妥協を引き出そうとした、
という記事を定かではないのですが読んだ記憶があります。
だとしたら、こざかしいオバマより、
それでもぶれない共和党のほうに共感を覚えますね。
それはともかく、集団的自衛権の解禁にはもちろん賛成です。
賛成とかいうより、当然だろ、という気持ちのほうが強いですが。
こんなばかばかしいことが議論になるようになったのは、
どんな経緯だったのでしょうかね。
友軍が攻撃を受けた場合に救援にかけつければ、
そこからはもう、自衛、正当防衛です。
またその友軍が戦闘状態あるのに(ましてや日本を守るために)、
我々は集団的自衛権の権利はあるが行使しない、
などと愚かなことを言えば、
その友軍は同盟を破棄すると警告するでしょう。
そうすれば、その時点から日本の自衛戦争に入ります。
つまりバカな机上の空論はともかく、
実際には運用の工夫で対処できるとは思います、
注意すべきは、9条の改憲論もそうですが、現行の不備を言うために、
現状ではあれができないこれができないと、
逆に改憲派が自縄自縛にしてしまう愚をとってしまうことに気を付けるべきでしょう。
おはようございます。
日本の大好きな国連の安全保障活動でさえ、集団防衛活動が大前提です。それを日本だけは特別だから、しない、できない、というのですからね。
一緒に行動している友軍が攻撃されて、何も反撃せず立ち去ることなど、人間としても許せないことでしょうね。
どこかで聞いたように思いますが、もし自衛隊とともに行動する友軍が襲われた時は、自衛隊の一部部隊をそこに入らせ自らが攻撃されたとして反撃するしかないという覚悟を持っているようなことです。少なくとも現場から逃げるようでは同盟も共同作戦も瞬間的に崩壊します。
政治家は現場に出るつもりがないから、まともに考えようともしないのでしょうか。現場がまともに機能するように手筈を整えるのが独占的立法者としての国会の仕事でしょう。仕事もしない人は国会から去るべきと申しておきましょう。
大体、政治家の大好きな国連は集団的自衛権があることが前提で成立しているのではありませんか。集団的自衛権がなくて国連にのうのうと入ることの矛盾は感じないんでしょうか。国連に分担金を出すことだけが日本の仕事ではありません。国会議員の役目は既得権を守り、予算を自分たちのためにむしり取ることだけなんでしょうか。
国会議員の質の低下は55年体制の既得権構造と中央集権的予算システムにも多く依存していることでしょう。新しい政治、新しい国の形が待望される所以です。
ご指摘のとおりですね。
国連は集団だから国連なんですよね。
その集団の概念をわが日本は否定するわけです。
こと安全保障となると。
というよりもっと悪いことに他の諸国の集団自衛はおおいに賛成、しかし自分だけはそこに加わらないという卑劣な例外措置なんですね。
集団的自衛権の自縛を解くことはまさに開国ですね。
集団的自衛権の問題は憲法改正と同根であることは、ご指摘のとおりですね。
ただし、これまでの改憲論議にしても、少し勢いがつくと、「そのとおりではあるが、いやそれよりさきにするべきことがある」という意見が出て、本論が骨抜きにされる場合が多かったといえます。
改革の対象を広げず、当面、目先にある課題をまず解決していくという方法が効率よいと思います。その点、集団的自衛権の解禁は単に憲法のいまの解釈を変えるだけでできるのですから、障壁は低いといえます。
早い話、今日の午後、野田首相が記者会見でも、国会答弁でも、
「わが国は集団的自衛権を行使する権利も自由も保有しています」と宣言すれば、よいわけです。
中国がびっくりするでしょうね。「日中友好の申し子」がそんな宣言をしたとなると。
確かに「詭弁」という表現で全体をくくれますね。
>ただし、これまでの改憲論議にしても、少し勢いがつくと、「そのとおりではあるが、いやそれよりさきにするべきことがある」という意見が出て、本論が骨抜きにされる場合が多かったといえます。
>改革の対象を広げず、当面、目先にある課題をまず解決していくという方法が効率よいと思います。その点、集団的自衛権の解禁は単に憲法のいまの解釈を変えるだけでできるのですから、障壁は低いといえます。
なるほど、確かにそれは言えるとは思います。
事実、何度も骨抜きになっていますし・・・。
出来る事からすべき、という事ですね。
ただ、この問題とは別に憲法改正については言い続ける必要があると思います。
広く国民に今の憲法じゃ駄目だ、と周知する事もまた必要だと考えますので。
>早い話、今日の午後、野田首相が記者会見でも、国会答弁でも、
>「わが国は集団的自衛権を行使する権利も自由も保有しています」と宣言すれば、よいわけです。
>中国がびっくりするでしょうね。「日中友好の申し子」がそんな宣言をしたとなると。
そうなると痛快ですが、まずなさそうですね。
自衛隊の息子を標榜している方ですから、それくらいはやっても良さそうなものですが。