中国のインターネット規制は人権の弾圧だけでなく、経済面でも国際的な悪影響を生んでいるようです。

 

以下の記事を産経新聞に書きました。

 

本日の朝刊です。

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〔ワシントン=古森義久〕

 米国の政府と議会が連帯し中国のインターネット規制への反対を従来の人権弾圧への抗議から米国企業の損失の防止という立場に拡大して、推進していくこととなった。オバマ政権の主導に議会の超党派議員が歩調を合わせる形となった。

 

 米国通商代表部は10月末、世界貿易機関(WTO)に対し「米国企業のインターネット・サイトが中国で不当に規制や妨害されている」として中国政府に規制の基準を明示することを求める措置をとった。米国政府はこれまで中国のネット規制を人権や言論の抑圧として抗議してきたが、今回の措置は米国企業が中国の消費者へのアクセスを阻まれているとする通商問題としても提起した。

 

米国議会でもこの動きに対応する形で「中国に関する議会・政府委員会」が今月中旬、中国のネット規制についての公聴会を開き、人権弾圧と市場参入妨害の両面の主張から提起した。

 

「中国のインターネットとソシアル・メディアの検閲の人的被害と貿易への影響」と題する同公聴会では貴州省で政権批判の論文をネットに載せただけで懲役2年となった李元龍記者の息子で米国亡命を認められたアレックス氏が父の窮状を訴えた。キリスト教の集会をネットで呼びかけて逮捕された張前進牧師もその体験やネットの政権批判で「国家転覆」罪とされた他の人たちの実例を語った。

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                  (李元龍氏と夫人)

 

 天安門事件で弾圧されて米国へ避難し、現在はカリフォルニア大学の特別教授として中国当局のネット弾圧を研究する萧强氏は「中国のネット利用者は4億5千万にも達したが、当局の監視や取締りも強力になった」と述べ、弾圧のメカニズムを説明した。とくに中国当局が米国のシスコ社に完成させた監視システム「金盾」や妨害網の「防火長城」がネット取締りに大きく寄与しているという。

 

 米国のネット関連企業の全国組織「コンピューター通信工業協会」のエド・ブラック会長は「米企業の中国向け販売はネット通信を当局に大幅に規制され、中国の競合企業を利しており、市場閉鎖に等しい」と証言し、多数の実例をあげた。

 

 「米国貿易法支援委員会」のギルバート・カプラン会長は中国でのツイッターやフェースブックというソシアル・メディアの全面禁止が米企業の中国市場への参入を阻んでいる、と証言した。中国当局は米企業の中国向けサイトをブロックして企業や商品の情報の流れを阻止し、ソシアル・メディアでの米製品の広告の機会も奪われているという。

 

 同委員会側では委員長のクリス・スミス下院議員(共和党)が「中国共産党政権のネット弾圧は個人の基本的人権の侵害であり、世界人権宣言にも中国独自の法律にも違反する」と非難した。副委員長のシェロッド・ブラウン上院議員(民主党)も「中国のネット規制は米国企業の中国消費者向けの情報提供の阻止であり、WTOを通じての強い抗議が必要だ」と主張した。

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