北朝鮮内部の激変をアジア全体への影響という視点から眺めることも欠かせません。

 

 その視点からはこの激変が日本にどんな影響を及ぼすのかという設問への答えも浮かびあがってきます。

 

 この政治の激変には核兵器という軍事面で最も思い要因がからんでいることをあくまで重視すべきでしょう。

 

 以下のような記事を産経新聞に書きました。

 

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〔ワシントン=古森義久〕

 

米国は北朝鮮の最高指導者交代の激変に対し表面は静観の構えをみせながらも、北朝鮮の核弾頭の完成の切迫と中国との戦略的対立の先鋭化という二つの危険な激流に直面させられる形となった。この流れは日本をも含む東アジアの安全保障情勢全体の基本構図を崩す起爆ともなりかねない。

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北朝鮮の金正日総書記の死去から三男の金正恩氏への権力継承の不安や混迷に満ちたプロセスではオバマ政権は公式には北朝鮮情勢の「安定を求め、静観を保つ」という趣旨の言明を繰り返してきた。

 

 だが米国側では総書記の死の前から北朝鮮が高濃縮ウランの秘密利用による核兵器開発を前進させ、中距離、長距離の弾道ミサイルに装着する核弾頭を完成させる展望への懸念が深まっていた。

 

米議会調査局で朝鮮半島問題を30年も専門とし、歴代政権の政策に詳しいラリー・ニクシュ氏は米軍当局の判断として①北朝鮮がこんご1、2年で実戦用の小型核弾頭を完成させ、スカッドやノドンというミサイルへの装備を達成する見通しが強い②核弾頭のミサイルへの装着が完成すれば、北朝鮮は明白な核兵器保有国となり、後戻りはこれまでよりずっと困難となる③米国ネブラスカ州での今年の米韓陸軍の合同演習で北朝鮮が核兵器を保有し、その使用可能性を脅にするという想定を初めて立てた―ことなどを指摘した。

 

 同氏によれば、実務経験のない金正恩氏は軍部や労働党の首脳に依存し、事実上の集団指導制を許容するため、軍部の核武装を急ぐ意思への傾きを顕著にするというのが米側政権内外の見方だという。その結果、正恩新体制は核武装の推進など強硬な路線の追求を内外に誇示することで権力基盤を固めると予測される。

 

 米国にとっての第二の懸念は中国との戦略思考の衝突だとされる。中国が北朝鮮を経済や軍事で支える最大唯一の「同志国家」であることは周知の事実で、北朝鮮の公然たる核武装には難色を示すものの、金政権自体や北朝鮮国家の崩壊は絶対に防ごうとする姿勢をみせている。

 

この点について民主、共和両政権の国防、国務両省で東アジア安保政策を担当したジム・プリシュタップ国防大学国家戦略研究所(INSS)教授は「オバマ政権を含む米国歴代政権の本音は王朝的な金独裁政権の除去であり、この点で中国の基本戦略とは相反してきたが、金書記死去による情勢変化でその対立が先鋭となる」と述べた。

 

同教授によると、米中両国とも公式声明では北朝鮮の「安定」や「非核」で一致しているが、中国は非核を犠牲にしても金政権維持を望むことは明白で、あくまで非核を朝鮮政策の最上位におく米国との対立がこんごの激変でますます露骨になる見通しが強いという。

 

プリシュタップ教授はINSSで今年10月に北朝鮮の政権崩壊を想定した調査報告を作成し、中国は北の政権崩壊が切迫すれば、少なくとも、「危機が大量難民などで国外に及ぶ」「北当局が核兵器やミサイルの管理能力を失う」「米国や韓国が国連を経ずに北に軍事介入する」という場合には人民解放軍の投入に踏み切る、との予測を打ち出した。オバマ政権も中国のこれほど強い北朝鮮関与になんらかの対抗策を準備することを迫られるわけだ。

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