さて台湾の総統選挙での現職・国民党・馬英九氏の勝利をアメリカはどうみるか。
オバマ大統領の報道官がさっそく声明を出しました。
その内容は当然ながら、最初に馬総統の再選への祝賀表明です。
そして台湾が民主的な選挙ときちんと実施して、その最高リーダーを選ぶことへの改めての歓迎を述べています。このへんには中国の独裁体制への婉曲な批判がにじんでいます。
そしてさらに注視すべきは以下の一文でしょう。
「（中台）両岸での恫喝のない環境での平和、安定、改善された関係はアメリカにとっては深遠な重要性を持っています」
「恫喝」という言葉は当然ながら中国に向けられています。中国が台湾を恫喝するようなことがあってはならない、その恫喝のない状態こそアメリカにとっては超重要なのだ、と強調しているわけです。
しかし中国に対する態度となると、明らかに野党の民進党が先を行っています。その民進党の候補の蔡英文氏が僅差で敗れたことはある意味では残念です。馬総統の下での中台接近が中国による台湾の取り込みへとつながらないことを願いたいところです。
この点、アメリカが中国に対し台湾を恫喝するようなことがあってはならないと、警告した点は、注目すべきでしょう。
Statement by the Press Secretary on Taiwan’s Elections
We congratulate Ma Ying-jeou on his reelection and the people of Taiwan on the successful conduct of their presidential and legislative elections.
Through the hard work of its people and its remarkable economic and political development over the past decades, Taiwan has proven to be one of the great success stories in Asia. In this year's elections, Taiwan has again demonstrated the strength and vitality of its democratic system. We are confident Taiwan will build on its many accomplishments, and we will continue to work together to advance our many common interests, including expanding trade and investment ties.
Cross-Strait peace, stability and improved relations, in an environment free from intimidation, are of profound importance to the United States. We hope the impressive efforts that both sides have undertaken in recent years to build cross-Strait ties continue. Such ties and stability in cross-Strait relations have also benefitted U.S.-Taiwan relations.
The relationship between the people of the United States and the people of Taiwan is based on common interests and a shared commitment to freedom and democracy. As we have done for more than 30 years, we will maintain our close unofficial ties with the people on Taiwan through the American Institute in Taiwan and according to our one China policy based on the three Joint Communiqués with the People’s Republic of China and the Taiwan Relations Act.
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コメント
コメント一覧 (9)
公正な選挙による結果であれば、それを尊重すべきは当然のことです。ただこれほどの僅差であることに対し、馬英九氏も自身の政策に独走せず、丁寧な政治運営に心がけるべきことは言うまでもありません。それこそが台湾の成熟した民主政治の試金石になるはずです。
国民党が相変わらず大陸を併合することを考えているなら夢想にすぎず、大陸共産党に飲み込まれる方向に行くなら暴挙ということになるでしょう。仮に一つの中国を夢見ても、それは民主的に国民総意の下でしか行えるはずもありません。つまり大陸共産党が独裁をやめる時でしか条件が整わないということです。
今回の選挙は、台湾が経済的に大陸との関係が深まる中、大陸側と波風を立てることを嫌った結果のようです。現状では台湾が独立指向を強めることにはアメリカも日本政府も賛同しませんね。今回の結果は個人的には残念ですが、民進党ももう少し現実路線を強めた方が得策だったかも知れませんね。
実際的には世界中が台湾の選挙を見て、事実上独立しているのと同じ事だということは理解しています。それ以上にすでに台湾は大陸中国よりも政治的に成熟していることは最早歴然たる事実でしょう。今後も粘り強く国際的な貿易協定などでの独立性確保やＷＨＯなどの加盟などを進めて行けばいいと思います。
大陸共産党も報道によれば台湾総統選挙の様子を詳細に記すことができないとのことです。大陸でも台湾のような民主化要求が高まることをよほど恐れているのでしょう。実は内心びくびくしているのは中国共産党であることは見え見えですね。この情報化社会で中国共産党の独裁強権政治がいつまで持つか本当に分かったものではありません。
ただ、最近は何処の国も経済優先になってしまうのでしょうか。
馬英九政権の一期目は様子見の姿勢（本性を出さず）もあったでしょうが、
二期目はとても危険なような気がします。
もう再選のない二期目の今回は中国に急接近して、飲み込まれる危険性を感じます。現在の国民党は変貌してしまっています。その辺の状況も日本人には知らしめられていません。
勿論ですが、李登輝さんは民進党の蔡英文さんを強く応援されていました。
日本にとっても大事な今回の総統選挙でしたが、メディアの関心は薄く、歯がゆいばかりでした。
半島とは全く違います。
本省人はあまり政治論に反応しないので、対岸のバカがおおせの「恫喝」をやってくれた方が、アメリカ軍の介入でを招いた以前の赤っ恥の再現となってありがたいような気もするね。
国共にとっては「いつ」「どのように」の問題かも知れないが、日本にとっては東北岸に解放軍の進駐を招く統一自体が迷惑。この日本の立場に本省人の利益も深く関わるのだ、というドライな真実を、台湾国内でうまく普及できたらいいね。
国民党が総統選、立法委員選の双方を制しましたが、これは大部分の台湾人にとって、ある意味織り込み済みの結果でした。大企業のみならず、中小企業も対中ビジネスなしでは生きていけない現実が存在し、台湾の二大最大利害国である中国とアメリカが民進党の政権獲得を望まない態度を露骨に示している状況で、台湾にとって国民党以外の選択はありませんでした。むしろ、民進党の蔡英文主席が80万票差までよく迫ったものだと思いますし、この民進党の躍進が馬英九が対中政治対話に前進することを牽制する大きな要素となるでしょう。それに比べれば、現状維持という消極的選択に終始したオバマ政権の出したこのステートメントなど、中国に対しても馬英九に対してもいかなる抑止効果もないでしょう。
わたしは、選挙の数日前から昨日まで中国に滞在していました。私が中国語のできる台湾在住の日本人というかなり特殊な立場にあることもあったのか、ビジネスの相手からホテルのクラーク、果てはタクシーの運転手にまで、毎日台湾政治の解説をさせられました。そうした交流を通じてつくづく感じたことは、民主主義体制に対する彼らの知識の乏しさと、しかしそれ故の強烈な好奇心、何より同じ中華圏の台湾で「国民」(この言い方は日中台どこでも禁句のようですが)が直接そのリーダーを選択することに対する強い羨望でした。意外だったのは、独立派と看做される蔡英文女史を口汚く罵るような相手は一人もなく、彼女の主張を純粋にもっと知りたいという人が多かったことです。この点は、香港を吸収し、台湾との関係が深まっていることが、少しずつではあるものの影響しているのかもしれません。
今回の選挙におけるアメリカの行動にはさしたる新鮮味はなく、重要な変数だったとも思えません。馬英九政権の第二期においても、武器輸出の拡大など目に見える台湾擁護の姿勢でも打ち出さない限り、アメリカが中台関係の大きな変数にはならないでしょう。むしろ、長期的な視点として、中国自身が台湾の選挙に触発され、少しずつではあっても重要な変化を遂げるのではと期待しています。
おもしろいご体験ですね。
アメリカの反応はご指摘のとおりだと思います。