アメリカの大統領選予備選では元下院議長のニュート・ギングリッチ氏が不死鳥のように、またよみがえりました。

 

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ギングリッチ氏はサウスカロライナ州の予備選で共和党候補の本命だったミット・ロムニー氏を破り、首位に立ったのです。

 

このギングリッチ氏とはそもそもどんな政治家なのか。

 

私は実は彼には1990年代はじめから注視してきました。保守主義の旗手、そして論客なのです。そのギングリッチ氏の政治軌跡の一環を私自身が以前に書いた記事から紹介します。

 

アメリカ大統領選挙の嵐ともいえる人物なのです。

 

 

衰退する米国へ保守理論展開 ギングリッチ下院議長、新著で話題さらう
1995年07月04日 産経新聞 東京朝刊 国際面


【ワシントン3日=古森義久】米国の保守主義のヒーローとして脚光を浴びるニュート・ギングリッチ下 院議長の著書が二日、全米で発売され、話題の輪を大きく広げた。「アメリカ刷新」と題されたこの書は四百五十万ドルの前払い金が一時、決まった注目の作 品。内容は下院共和党が同議長の主導で米国政治のパラダイム(規範)を変えたとされる政策集大成「アメリカとの契約」の続編といえ、「米国の伝統の価値観 の復活」「小さな政府」「官僚政治の排除」などを打ち上げている。

「アメリカ刷新」は大手出版社のハーパーコリンズ社から刊行された。この書は共和党が四十年ぶりに多数を占めた下院でギングリッチ氏が議長となった直後のことし一月、話が出た。

歴史学の教授で、新奇なアイデアにあふれ、すでに挑戦的な著書のあった同氏が下院議長となってからの初の新著とあって、大手出版各社が版権の入手を競い、 膨大な額の執筆前払い金を提示した。なかでも最高額の四百五十万ドルを申し出たハーパーコリンズ社が結局、版権を得た。

だが、この金額のあまりの大きさに民主党などから激しい非難が起き、ギングリッチ氏も当初はゴア副大統領らも多額の前払い金をもらって本を書いたではないか、と取りあわなかった。だが、「この問題で共和党の改革に悪影響を及ぼしたくない」として、四百五十万ドルを辞退し、一ドルだけを受領し、残りは印税収入のみという契約へと変えた。

その「アメリカ刷新」は「米国にとっての六つの挑戦」として、

(1)いま衰退し、逸脱しつつある米国の文明を本来の伝統へと戻す(個人の責任や個人の自由 に基づく米国本来の価値観は一九六五年以来、一部エリートにより変えられてしまった)

 

(2)米国の国際的な技術革新の第三情報時代への参入を急ぐ

 

(3)世 界市場での新たな経済競争に備え、国内のシステムを変革する(経済競争の能力を抑える政府の規制、税制、社会福祉、教育、官僚政治などを大改革する)

(4)福祉国家を機会社会へと変える(政府の援助への依存を奨励する福祉制度を根本的に変えて、個人の努力が成果を生む機会均等の社会を築く)

(5)中央 集権の官僚機構を改革し、規制を大幅に撤廃する(米国は首都に座っている官僚の中央集権で統治するには多様性、自由の度合いがあまりに高すぎる)(6)連 邦政府予算の均衡を実現する(種々の社会福祉や救済への政府支出が多すぎるため、このままだと連邦財政は破産する)-ことを列記し、それぞれについて対策 を具体的に提唱している。

世界の中の米国については、この書は他国の領土に野心を抱かない成熟した民主主義国家の米国はいま唯一の軍事超大国であり、混迷する世界では特別なリーダーシップを保持する責務がある、と述べる。

そのためには、米国は一定以上に強い軍事力を保つ必要があるとして、民主党の唱える軍事力の大幅削減には反対し、ギングリッチ氏自身、「私は安全保障に関してはタカ派であり、タカ派的な防衛政策こそが平和を守るのだ」と強調している。

日本に関してはギングリッチ氏の新著は意外に好意的で、一九五〇年に米国人のエドワード・デミング氏が日本の生産性向上を指導したことを詳述し、日本が米国よりも生産性の向上に努力してきたことを称賛している。

しかしギングリッチ氏は「集団の権利と個人の権利」については、個人の権利や自由の絶対的重要性を力説し、日本ふうの「集団のために個人を犠牲にする」といった思考を激しく排除している。