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【朝刊 国際】


【緯度経度】ワシントン・古森義久 影薄い外交政策、現実の争点


 

 「現政権の政策が続けば、米国人の次世代はみな国内の日本の工場の床を掃除するような仕事しか得られなくなる」

 

 1984年の米国大統領選挙で、現職の共和党レーガン大統領に挑んだ民主党のモンデール候補が繰り返し口にした言葉だった。

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「米国のいまの経済トラブルはほとんどが現政権の許容した日本の不公正な貿易慣行のせいだ」

  

 92年の大統領選でも現職の共和党ブッシュ大統領(先代)に対し、挑戦者の民主党クリントン候補がこんな非難を連発した。

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 いずれの選挙でも日本が主要争点となり、時の政権の対日政策が激しい議論を呼んだ。国内経済と絡み合ったとはいえ、外交政策が選挙キャンペーンでの最大争点として燃えあがったのだった。

 

 そんな展開とは対照的にいまの選挙戦では日本は影も形も出てこない。中国がある程度、論じられるだけで、そもそも外交政策が正面舞台でのテーマになって いない。イラクや対テロ戦争という対外課題が熱っぽく議論された2004年や08年の選挙とも巨大な落差がある。現段階では共和党の候補たちの激戦だけ で、オバマ大統領への本格的チャレンジが始まっていないせいもあるが、それにしても外交は影が薄い。

 

 そうした現状を、外交、安保、政治の総合的な調査・分析を提供する「リグネット」の編集局長フレッド・フライツ氏が解説してくれた。「リグネット」とは 共和党系の元閣僚や議員、軍高官が創設したインターネット中心の新しいタイプの民間情報機関で、フライツ氏もCIA(中央情報局)や議会で長年、活動して きた。

 

 「外交政策が論じられないのは第一にいま米国民全体の関心が国内経済にあまりに集中しているからです。第二には、近年の米国はイラクとアフガニスタンに 長く深く介入し、国民の対外問題への関心が一種の限界に達したという側面だといえます。しかし共和党側はオバマ大統領の対外姿勢には基本的、哲学的な異議 を感じており、同大統領に対抗する指名候補が決まれば、外交論議が正面に出てくる見通しもあります」

 

 フライツ氏はその上で共和党側からみてのオバマ外交の問題点を指摘した。

Frederick Fleitz

 

 第一には、オバマ大統領は歴代政権が自明とした民主主義の拡散など米国独自の価値観を強く対外的に押し出さず、超大国として振る舞うことをためらっている。外国に対しすぐ謝罪することもその例証だという。

 

 第二には、その結果としてオバマ政権はイランの核兵器開発やリビアの民主派弾圧への対処でもリーダーシップを発揮せず、リビアの例ではフランスに主導権を譲り、「背後からの主導」という批判を内外から招いた。政策の整合性に欠ける実例が多いのだという。

 

 第三には、オバマ政権はテロへの戦いの姿勢も不明確で、当初は「対テロ戦争」という言葉もあえて使わず、グアンタナモ米海軍基地のテロ重要容疑者収容施 設の閉鎖や強硬な尋問の廃止を公約したが、すぐに方針を変えることとなった。だがイスラム原理主義のテロに対してなお厳しい対応に欠けるという。

 

 以上のようにフライツ氏があげる共和・民主の外交政策の対立点はみな安全保障につながるが、安保を支える国防にしても予算の大削減をめぐる両党の激突は顕著となってきた。選挙戦で外交政策はいま正面に出なくても、すでに現実の争点にはなっているということだろう。

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