アメリカ大統領選挙で共和党候補に指名されることが確実なミット・ロムニー氏は外交政策をどうするのか。

 

 次のような記事を書きました。

 

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[ワシントン=古森義久〕

 

 米国大統領選挙で共和党の指名候補になると目されるミット・ロムニー氏の外交政策の枠組みが浮かびあがってきた。対外的に米国の価値観を強く押し出し、力の立場からの強固な姿勢をとることでオバマ大統領との差異を鮮明にする構えだが、なおその個別の具体的な政策には不透明な部分も多いままとなっている。

 

 いまの選挙キャンペーンでは外交課題での論争は少ないが、ロムニー候補はイラン、アフガニスタン、シリア、ロシア、中国、北朝鮮などに対する政策でいずれもオバマ政権のこれまでの姿勢を非難した。

 

 ただし同候補はイランの核兵器開発に対してはオバマ政権の対応が甘いとしながらも、経済制裁をどう強化するか、軍事力をどう行使するか、については具体的に述べていない。アフガニスタンについてはオバマ大統領が米軍の完全撤退を2014年中と発表したことに対し、自分は期限は絶対につけないと言明するに留めた。シリアについてはオバマ政権が民主勢力への直接の支援を欧州側に委ねたことを批判し、介入をも辞さない方針を示した。

 

 中国に対してもロムニー候補はオバマ政策が宥和的だと非難し、とくに台湾への武器輸出の拡大、日本などとの共同のミサイル防衛の強化、通貨や貿易での対中制裁の強化、人権抑圧への強い糾弾などを強調した。北朝鮮に対しては中国への圧力を増し核開発を停止させることや食糧支援は現状ではしないことを明言した。

 

 ロムニー陣営は外交や安保の政策づくりでは共和党のブッシュ前政権や同先代政権の実務の枢要ポストにあったマイケル・ヘイデン元大統領国家安全保障補佐官、エリオット・コーエン元国務省顧問、キム・ホルムズ元国務次官補、マイケル・チェートフ元国土防衛長官などを配している。これらの専門家は米国の国益や価値観をためらわずに外部に押し出す保守派で、オバマ政権の多国間協議重視や対話優先の外交には明確に反対している。

 

ロムニー陣営はキッシンジャー氏やスコウクロフト氏という共和党の伝統的な大物の穏健派の起用はいまのところ避けているようにみえる。共和党内部での激しい争いがいまやっと終わった段階だから、こんご外交スタッフも幅を広げるとみられるが、ブッシュ前政権で対日政策にもかかわったジム・シン元国防次官補やジョン・ボルトン元国務次官はすでにロムニー陣営への参加を宣言した。

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