東南アジア諸国の日本の憲法改正への態度について、です。

 

日本ビジネスプレスの「国際激流と日本」からです。

 

原文へのリンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37045

国際激流と日本

東南アジア諸国は日本の改憲に賛成している

 

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 (インドネシアの防衛大臣の言明) 

 「私は安倍政権下の日本が地域的な安全保障の役割を果たすために日本国憲法第9条を改正することに賛成したい。日本が“普通の国”になるためにも防衛庁を防衛省に格上げさせる措置もぜひ実現を望みたい」

 

 6年以上も前の第1次安倍政権に対して、こんな改憲の勧めを堂々と述べるのだから、いまのインドネシアが日本の軍事力増強や憲法改正に強い期待を抱いていることは明白だろう。インドネシアが恐れる中国の軍事的脅威はこの6年に格段と巨大になったのだ。

 

 だから今回の安倍首相のインドネシア訪問は日程が最終部分で短縮されたとはいえ、東南アジアやインドネシアの対日観の真実を期せずして鮮明にしたのである。

「アジア」は中国と朝鮮半島だけではない

 そこで想起されるのはフィリピンのデルロサリオ外相の言明である。同外相は2012年12月、イギリスのフィナンシャル・タイムズのインタビューに応じて「日本には憲法を改正してでも軍備強化を進めてほしい」と述べたのだった。

 

 この言明は米国側の識者たちの強い関心をも引きつけた。マイケル・グリーン元国家安全保障会議アジア上級部長は、「日本がアジア全体への軍事的脅 威になるという中国の主張は他のアジア諸国は信じない。東南アジア諸国はむしろ日本の軍事力増強を望んでいる。中国の軍拡へのバランスを取るという願いか らだ」と述べたのだった。グリーン氏はさらに「戦時中は日本の軍事行動で最も大きな被害を受けたフィリピンからこうした希望が述べられる点に注目すべき だ」とも強調するのだった。

 

 安倍政権の安全保障政策といえば、日本国内のメディアの多くも「そのタカ派的な防衛政策にアジア諸国が懸念を表明し、軍事力増強には強く反対して いる」という論評を流してきた。だが、アジアの主要国の1つであるインドネシアやフィリピンはまったく逆に日本の軍事力増強への希望を表明しているのだ。 しかも日本が防衛増強のために憲法を改正することにも賛成だというのである。アジアといえば、中国と朝鮮半島しか見ない日本側の年来の狭窄的な反応だと言 えよう。

 

 安倍首相の東南アジア訪問は、日本の防衛の動向に対するアジアのこうした反応を照らし出す結果となった。日本側で一口に「アジア」と言っても、中国や北朝鮮の主張とはまったく正反対の期待を抱くアジア諸国が健在であることを証明したとも言える。

 

 その結果、日本にとってもアジアにとっても、日米同盟の抑止や安定の効果がなお重要であることをも印象づけることとなった。こうした展開は安倍首相の東南アジア訪問が意外な効果を発揮したことを示したと言えよう。

(終わり)