アメリカの安倍参拝への反応は「失望」だけではない。

 

以下の記事を書きました。

 

 

【朝刊 国際】
【緯度経度】古森義久 米側にも靖国参拝への理解

 

 安倍晋三首相の靖国神社参拝は米国側で日本にかかわる関係者たちの間でなお熱い議論の課題となっている。その反応の多くは「曲解が真意を圧する」と総括できるようだ。

 

 ワシントンでも表面に出る意見の多数は、首相の参拝を「軍国主義の復活」や「過去の戦争の美化」「A級戦犯の礼賛」だと断じる非難である。

 

 だが、日本国内の反靖国派も、この非難が日本の現実にそぐわないことは認めるだろう。問題は参拝が他国の目にどう映るか、他国がどう非難するか、なの だ。となると、中国が最も熱心に押しつけてくるその種の曲解のために日本側は真意の否定を迫られるというグロテスクな倒錯の構図が浮かびあがる。

 

 オバマ政権による「失望」声明のためにそんな中国寄りの構図ばかりが出ているようにみえる米国側でも、このあたりの虚構を鋭く指摘する識者が存在するこ とは日本側であまり報じられていない。この点で注視されるのはオバマ政権で2011年3月まで国務省日本部長を務めたケビン・メア氏の意見である。

 

 メア氏は米側の参拝非難者に、「首相が参拝の意図について述べた非日本人をも含む戦死者への心からの追悼、平和や不戦の誓い、過去の戦争への反省、戦犯 への敬意の否定などをすべて無視するのは、首相を極右の軍国主義者だとする自分たちの勝手な断定にとって都合が悪いからだ」と指摘する。そのうえで、米側 はオバマ政権も含めて日本の首相の靖国参拝を黙認すべきだと説くのだった。

 

 沖縄基地問題についての大胆な発言が理由で国務省を退任したメア氏は、それまで二十数年も日本を専門とするキャリア外交官だった。今回はこの意見をワシントンのアジア問題主体のニュース・評論サイト「ネルソン・リポート」に今月上旬、寄稿した。

 

 メア氏はさらに以下の骨子をも述べていた。

 

 「米側の反対論者は、自分たちの命令に首相が服従しなかったことに憤慨したようだが、そもそも傲慢な態度だ。私はこの種の人たちに、もう靖国は忘れ、ア ジアでの米国の真の利害を考えることを勧める。米側がみるべきは首相のこの1年の実績だ。防衛費を増やして米国の負担を減らし、アジアでの脅威に現実的な 対応を取り始めたのだ」

 

 「(オバマ政権の主張する)アジアでの緊張は靖国ではなく、中国の軍拡や挑発によって高まっている。尖閣での軍事的行動で日本を脅しているのは中国なの だ。だが、それを日本のせいにする中国のヒステリーにワシントンの専門家の一部も同調している。日本の軍国主義化などという非難は日本の防衛の金額や内容 をみれば、まったく非現実的だとわかる」

 

 「首相は日本をより民主的な、過去の過ちを認め、祖先を尊敬し、きちんと戦死者を悼む国家にしようとしている。中国にはそうした方向への動きはない。中 国こそが軍国主義的で挑発的なのだ。首相の靖国参拝に、もし失敗の部分があるとすれば、中国側のこの実態を隠すためのヒステリックな主張に弾薬を与えたこ とだろう」

 

 こうした見解は、靖国問題での曲解を排除し、実態を指摘する現実的な考察といえよう。メア氏と同じように、オバマ政権の「失望」表明に反対する米側の識者たちは他にも存在することも強調しておこう。(ワシントン駐在客員特派員)

 

  平成26年 (2014) 1月25日[土] 赤口