こんな記事を書きました。

初出はJapan In-Depth というサイトの古森義久の「内外透視」というコラムです。

今回の抗議で貴重な教訓が二つ、浮かび上がったという話です。


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 日本政府がついにアメリカの教科書の慰安婦誤記に抗議して、訂正を求めた。教科書出版社側はこの要求を拒否した。だがこのやりとりでは米側の「逃げ」の特徴が明確となったこの点から日本側にとっての少なくとも二つの貴重な教訓が浮かび上がるといえる。


 日本政府がアメリカの大手出版社の教科書部門「マグロウヒル・エデュケーション」に対し昨年12月、抗議をしたことが1月16日の報道で明らかと なった。日本の外務省が同社発行の教科書の日本の慰安婦に関する記述が間違っているとして訂正を求め、同社はこれを拒絶したというのだ。


 アメリカ大手紙ウォールストリート・ジャーナルの報道によると、この教科書には以下の記述があった。

 

 「日本軍は大戦中に14歳から20歳の女性を20万人も強制徴用し、慰安所と呼ぶ軍の売春宿で働かせた」

 

 「日本軍はその(慰安婦奴隷化の)活動を隠すために多数の慰安婦を虐殺した」


 とんでもない虚構である。だがマグロウヒル社側はこの抗議や要求をはねつけた。「慰安婦の歴史的事実について、学者の意見は一致している。わが社は執筆陣の著述、研究、表現をはっきりと支持する」と述べたというのだ。


 日本外務省はこの記述の執筆者であるハワイ大学の現代史のハーバート・ジーグラー准教授にも抗議した。だが同准教授は「出版社も私も、日本側の主張はまったく考慮しない」と反論したという。

 

 さてこの日本政府の動きは慰安婦問題での国際的な濡れ衣を晴らすための対外発信の第一歩として歓迎すべきである。この種の抗議を何度も何度も繰り返すべきだ。そのためには今回のアメリカ側の反応の特徴を銘記しておくべきである。

 

 第一の特徴は慰安婦問題での自分たちの記述の根拠には触れないという点だった。「軍による強制連行」、「20万」、「性奴隷」、「慰安婦多数の虐 殺」、などいずれも一方的なデマなことはもはや確認された。それでもなおその虚構の糾弾を日本側に浴びせるのならば、浴びせる側がその内容を実証する事実 を具体的に明示するのが自然だろう。

 

 だが最近のアメリカ側は決してそれをしない。明示したくてもできないのだ。そのかわりに「ほとんどの歴史学者が認めている」とか「国際的な意見の一致がある」「元慰安婦たちがそう証言している」という、いずれも曖昧な表現の「根拠」を示唆するだけなのだ。


 アメリカ側のそんな「逃げ」の第二の特徴は、抗議する側へのレッテル貼りでの誹謗である。慰安婦問題で真実を告げようとする日本側の識者や勢力に 「右翼の修正主義者」とか「ホロコースト否定主義者」という不当なレッテルを貼る。議論の核心に入ることを避けるため、日本側の言動がとにかく一部の過激 な右翼勢力だけなのだと力説する。日本側の動きをいかにも邪悪な言動のような虚像として描く。これまた煙幕作戦的な「逃げ」だといえる。


 今後、日本側はこの種の抗議を根気よく続けねばならないが、その際にはアメリカ側のこの逃げの手口を熟知して、その弱みを突くことが必要になるだろう。