こんな記事をワシントンから発信しました。

【朝刊 国際】
【緯度経度】一方通行の日米同盟 古森義久

 「日米同盟はまったくの一方通行だ。有事には米国が日本を助ける責務はあっても日本が米国を助けることはしない。日本に防衛負担をもっと増やしてもらうにはどうすればよいのか」

 米国議会下院のブラッド・シャーマン議員(民主党)のこんな発言は、1980年代の日本の防衛「ただ乗り」非難を思わせた。だが実際にはつい先週の15日、下院公聴会での言葉だった。


 下院外交委員会のアジア太平洋小委員会が「米国でのアジアの経済、軍事の同盟関係」という題で開いた公聴会だった。議員たちが米国の日本、韓国、フィリピン、タイとの同盟関係を、専門家4人の証言を基に討論した。


 小委員長のマット・サーモン議員(共和党)は公聴会開催の理由について、「中国の継続的な拡張に対し米国はアジアでの同盟関係をどう動かすべきか、その戦略を考える」ことだと強調した。そのうえでまず日米同盟の新たなあり方を問うたのだった。


 すると民主党側の筆頭メンバーのシャーマン議員が、前記のような日本への不満を鋭い語調で述べたのである。そしてさらに日本批判を続けた。


 「米国中枢への9・11同時テロで米国人が3千人も死んだとき、米国の対テロ戦争には北大西洋条約機構(NATO)の各国はすべて集団的自衛権を行使して米国と軍事行動をともにしたが、日本は同盟国なのにそうしなかった」


 「一般の同盟は双務的かつ相互的なのに日米同盟だけは片務的なのだ。それに日本は石油などを海上輸送路に依存するのにその防衛は米国に負担を負わせる。防衛費はいつも国内総生産(GDP)の1%以下、米国の4%に比べてあまりに少ない」


 「日本に防衛努力の拡大を求めると、いつも憲法など法律上の制約を口実にしてそれを拒む。安倍晋三首相は前向きの姿勢をみせてはいるが、こんな構造の日米同盟は前世紀の同盟であって、21世紀の米国の同盟とはいえない」


 シャーマン議員はカリフォルニア州選出、当選10回のベテランである。そんな政治家が日米同盟を不公正、不均等として非難するのだ。日本側の安保関連法 案での集団的自衛権の議論を意識しての発言でもあろう。安倍首相の訪米や日米防衛の新ガイドラインが同盟を強くしたことを認めながらも、同盟のそもそもの 構造を批判するのだ。


 証人のランディ・シュライバー元国務次官補代理やジム・ショフ元国防長官顧問も、日米同盟の片務性へのシャーマン議員の不満を認める形で、安保関連法案の可決が集団的自衛権行使容認につながることへの期待を強調した。


 しかし、日本の国会で米国側のこうした不満や期待は、ふしぎなほど論題とならない。与党側も野党の「米国の戦争への巻き込まれ」論を意識してか、米国ファクターには触れない。


 だが、日本の防衛が日米同盟による米国の軍事的抑止力に大幅依存している事実は否定のしようがない。好むと好まざるとを問わず、日本の安全保障は米国の 政策や思考を無視しては成り立たないのである。与党も野党も、シャーマン議員の発言に象徴される米国の不満や反発に、どう応えるのだろうか。(ワシントン 駐在客員特派員)