平和安全法制関連法をめぐる考察です。



 古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog


安保法制関連法案の審議では日本共産党の代表たちの反対論が歯切れのよさをみせた。だがこの政党の日本の安全保障政策とはなんなのか。反対の主張ばかりが目立つなかで、共産党自身がどんな安保政策を求めるのか、という探索も必要だろう。


安保法案での審議では共産党代表たちの舌鋒は鋭かった。志位和夫党委員長や小池晃政策委員長が「戦争法案は破棄あるのみ」と与党案を徹底非難した。


この法案は日本が自国とは関係のない遠い地域にまで出かけて、侵略戦争を始める目的なのだ、というような非難だった。アメリカと安保面で連帯することはそ もそも危険だと訴えていた。


だがいざ「もし中国軍が尖閣諸島に攻めてきたら、どうするのか」というような質問には共産党代表は「外交努力をすればよい」という式の非現実的な回 答もちらつかせた。


全体としては安倍政権の安保政策をこきおろしながら、では日本の安全保障や防衛のためにどうすればよいのか、という点では明確な言辞が ほとんどなかった。


しかし日本共産党の安保政策というのは、まず日米安保条約の破棄なのである。共産党の公式サイトでは基本政策として以下のような記述がある。


「日米安保条約=日米軍事同盟をなくす」


「安保条約第10条に即した、廃棄の通告で、安保条約をなくす」


「安保条約をなくせば、米軍基地の重圧から日本国民が一挙に解放される」


ではアメリカに頼らない場合の日本の安全保障はどうするのか。そのへんの共産党の政策は曖昧である。


「対等・平等の立場にたって日米友好条約を結ぶ」


「日本は中国や東アジアの国々に対して軍縮へのイニシアチブを取る」


日本共産党の代表たちは安保関連法案での審議では私の見聞した限り、「日米安保破棄」や「日米同盟撤廃」を正面から主張しなかった。


だが同党の政策は日米安保条約堅持の立場を取る民主党の政策とは根本から異なる。


日本国民の間では日米安保条約自体に賛成する人たちはどの世論調査でも7割とか8割を占める。ほぼコンセンサスとも呼べる支持の幅広さだろう。共産党があえて日米安保破棄の政策を叫ばないのも、この現実のためかもしれない。


日米安保支持層のなかでも今回の安倍政権の安保関連法に反対した人たちもかなりいただろう。その場合、あくまでも日米安保条約とそれに基づく日米同盟を受け入れたうえでの安保関連法への留保や批判だったといえよう。


しかし民主党は安保法案反対の運動では共産党と完全に手を組んだ。国会周辺のデモ集会でも岡田克己代表が共産党代表と文字どおり腕を組みあって、与党案への反対を叫んだ。


だが日米安保条約に賛成なのか、反対なのか、日本の国家安全保障にとっては決定的な差異さえある。民主党はそんな違いをまったく無視して、共産党と連携をしてみせた。民主党というのは自国の防衛政策に関しては原則を守らない野合の政党なのか、との疑問を禁じえない。