2006年10月

小泉政権から安倍政権の当初まで、朝日新聞は「日本は首相の靖国参拝のためにアジアで孤立している」という趣旨を頻繁に主張していました。

私は「日本は孤立などしていない」と折にふれ、述べてきました。そして中国政府がそういう「印象」を人工的につくることに必死になっているだけだ、と説明してきました。

すると朝日新聞側は「日本は首相の靖国参拝のために北東アジアで孤立している」と述べるようになりました。北東アジアとは日本を除けば、中国と朝鮮半島、モンゴルなどを含む地域です。

でも私は「日本は北東アジアでも孤立などしていない」と反論しました。日本は中国と韓国の両方と経済のきずなを深めているし、文化の交流も人的交流も拡大している事実を指摘しました。そして「日本は中韓両国との首脳会談をしていないだけで、首脳会談を靖国と政治、外交面で結びつけたのは中韓両国の作戦にすぎない」とも解説しました。

さて安倍首相は中国、韓国両方との首脳会談に出席しました。でも日本とアジアの関係は一年前、半年前にくらべて、他にはなにも変わっていません。日本側では首相は靖国参拝について止めるとは一言も述べていません。靖国参拝の中止を事前に言明することを求めていた中国も、そんな要求はいまはすっかり口をぬぐって、知らんぷりです。

だから「首相の靖国参拝のために日本は孤立」という朝日新聞流の「因果関係」では原因部分の靖国参拝にかかわる状況は従来と基本的には変わっていないことになります。
となると、結果部分も変わらず、日本はなお孤立していることになります。

ところが首脳会談だけは開かれました。朝日新聞が「孤立」の現象面での最大唯一の特徴としていた「首脳会談非開催」の要因はなくなったのです。そうなると、日本の「孤立」はもう消えたのだという理屈も成り立ちます。

さあ、上記のようなわかったような、わからないような現状を踏まえての質問です。

日本はいまアジアで孤立しているのですか。
日本はいま北東アジアで孤立しているのですか。

朝日新聞さん、教えてくれますか。
(私自身の解答は「日本は最初から孤立していなかった」となりますが)

NBR JAPAN FORUMというアメリカのインターネット論壇については産経新聞10月21日の「緯度経度」というコラムでも紹介しました。この論壇は主として米欧人による英語での日本や日米関係についてのコメントが記載されます。この論壇は「管理者」による事前の検閲があることや投稿者が基本的に名前や身分を明らかにしていることが特色です。

日本や日本人についての批判的な論評が多いこのネット論壇での英語の記述をこれから定期的に日本のみなさんに紹介していくことにします。なるべくおもしろい意見を拾って、日本語訳をここに記載します。

それではすでにおなじみの国際教養大学副学長のグレゴリー・クラーク氏の拉致問題に関する新たなコメントから始めます。クラーク氏はどういうわけか自分への批判的言辞はすべて「右翼の憎悪に満ちた攻撃」というふうに描写します。ご自分が日本の国民の多くや政府を批判することは、ごく普通の言論なのでしょう。でもその言論への反論はみな「右翼の攻撃」となってしまいます。

クラーク氏は拉致問題に関して、横田めぐみさんが生存しているという主張は反北朝鮮の意図的なキャンペーンであり、まったく根拠がないというのです。
以下、クラーク氏がNBRに投稿した文章の日本語訳です。

「いま日本で横行しているのは横田めぐみが健在であり、北朝鮮があらゆる欺瞞の手段を講じて、彼女が日本へもどり、落胆しきっている両親と再会することを防いでいるという印象を作り出そうとする意図的な試みだ」

「横田めぐみがまだ生きているということを無理やりに信じ、そのための証拠を捏造までするという日本の現在の全国的な試みは、生存とは反対の状況を示す圧倒的な証拠をも否定し、めぐみの想像された存在と彼女の両親の悲しみとを北朝鮮のなお続く拉致の邪悪のシンボルとして使うという異常さだ。こんなひどいことは私の日本在住中、みたことがない」

「横田めぐみの両親はめぐみの娘と接触することを拒んでいる、あるいは拒むよう命じられている。娘かその父親と接触すれば、めぐみの運命に関するミステリーは簡単に判明するだろう」

要するにクラーク氏は横田めぐみさんが生存していないことは確実なのに、日本全体が生存説を無理やりにとって、北朝鮮非難に使っている、というのです。死亡を確かめることは横田夫妻がめぐみさんの娘のキム・ヘギョンさんや彼女の父親に会えば、簡単にできる、とも主張するのです。

しかしクラーク氏は横田めぐみさんが確実に死亡したという証拠を知っているのでしょうか。こういう場合、死亡が確認されない限りは生存とみて、その救出に全力を尽くすのが国際的な慣行です。アメリカ軍の将兵が多数、ベトナム戦争中に行方不明となりましたが、留守家族も政府も死亡が確認されるまでは生存を前提として何十年もその救出の努力をやめていません。

しかし日本の「横田めぐみ生存」の前提が異常だとか、北朝鮮たたきのキャンペーン工作だとか断ずるクラーク氏とは一体、なんなのでしょうか。
日本で公的立場にある外国人が日本や日本国民に対し、この種の断定的な批判をするのは一体なにが動機なのでしょうか。

日本からの対外発信で最重要の機能を果たす公的機関に国際交流基金というのがあります。独立行政法人とされていますが、実際には外務省の管轄下にある外郭団体で、外務省からの資金で運営されています。

国際交流基金はアメリカ、中国などの学者にも多様な形で資金を提供し、学術や文化の交流を推進しています。このサイトで再三、取り上げてきたNBR JAPAN FORUMにも資金を出しています。グレゴリー・クラーク氏のような侮日的記述が頻繁に出てくるインターネット・サイトです。

さてこの国際交流基金の理事長の小倉和夫氏が朝日新聞アジアネットワーク委員というのを務めていることは、みなさん、ご存知でしょうか。朝日新聞は安倍首相らからNHK番組に対する「事前介入」の誤報を指摘され、まだ非を認めていない反安倍の政治スタンスを鮮明にした新聞です。新聞としてのスタンスはもちろん自由です。

ですが国際交流基金という公的機関、しかも日本の政府や国民の客観的に正しい実態を海外に知らせることを最大任務とする機関の最高責任者が反政府(反安倍という意味での)の朝日新聞の「委員」とは、公正中立の原則に違反するような気がします。

小倉和夫氏はフランス、韓国などの大使を務めた元外交官です。小倉氏は10月18日付の朝日新聞に「朝日新聞アジアネットワーク委員」という肩書きを明記して、一文を寄せています。
ちなみに小倉さん、国際交流基金理事長のまま産経新聞日本ネットワーク委員なんていう兼業を試されたらどうでしょうか。たとえ一日でも。
朝日新聞がオニの首でも取ったように叩いてくるのではないでしょうか。

国際教養大学副学長のグレゴリー・クラーク氏がこんどは日本の北方領土での主張は「感情的なウソ」だとする記述をアメリカのインターネット論壇NBR JAPAN FORUM に発表しました。
10月6日の記述です。
クラーク氏は横田めぐみさんについての日本の官民の生存を願ってのキャンペーンは北朝鮮をことさら邪悪に仕立てる異様な行為だとしたうえで、こんなひどいことは自分が日本に在住する間でもみたことがない、と非難するのです。

そのうえで彼は堂々と以下のような記述を加えています。
""----emotional BS over  the Northern Territories dispute."

BS というのはbullshit(ウソ)という語の略です。本来の言葉があまりに汚い卑語のために、頭文字にすることがよくあります。
クラーク氏はこの記述の前段で日本国内の反北朝鮮キャンペーンなるものを非難しています。そしてそのひどさは自分がいままでの日本在住中にみたどんなものをも越えると述べ、「北方領土の論議での感情的なウソをも越える」ひどさ、と書いているのです。
日本の官民の動きについて論じているのですから、北方領土の論議というのも日本の官民の四島返還の要求を指すことは明白です。つまりクラーク氏は日本の北方領土に関する要求も論議もウソだと断じているのです。

クラーク氏は年来、日本が北方領土四島の返還を求める資格はないという持論を展開してきました。だから日本の返還主張もあっさりと「感情的なウソ」と片付けるのでしょう。
最近、クラーク氏は日本国内では北方領土に関して日本の立場を批判することはほとんどなくなっていました。しかし決して考えを変えたわけではなく、アメリカの論壇に英語で以上のようなこと(「感情的なウソだとの言明」)をためらわずに書いているのです。

この私の記述はグレゴリー・クラーク氏への個人攻撃などではありません。日本国内で広く知られ、公的立場にも就く公的人物のクラーク氏が日本の北方領土返還の主張に対してこうした過激な非難を日本側にあびせている事実を英語の論壇に直接、触れることのない日本国民一般にも知らせるべきだと考えただけです。

韓国の外交通商相がついに国連事務総長になることが決まりました。
私はこの人事にはこのブログで明確な反対を表明していました。この反対はなお変わりません。
ワシントンで聞くアメリカ一般の草の根の反応に「朝鮮の核武装がこれだけ世界を憤慨させているところに、こんどは国連の次期事務総長に朝鮮の人がなることになったとは?!」(ラジオのトークショー)、というのがありました。

韓国は日本の領土を不当に武力で占拠し、国内では反日を政府の主要政策とし、しかも日本の国連安保理の常任理事国入りに中国とともに、真っ先に反対した国です。
しかも韓国の人たちは日本人よりもずっと愛国心が強く、対外的に国威の発揚には躊躇しません。国連事務総長がいくら中立の立場といっても、韓国政府から送りこまれてきた人物がやがては必ず日本の首相の靖国参拝がよくないとか、竹島は日本の領土ではないとか、「慰安婦」の問題は解決していないとか、示唆するようになることを、私はいまここで予言しておきます。
日本の利益にとってなにひとつプラスはなく、想定されるマイナスがずらずらの今回の人事、麻生太郎外相が祝辞を述べねばならない、内心の苦痛を察しますね。
しかし今回の国連人事ではわが外務省は後手後手に回り、大失態でした。最も早い時期から、世界第二の国連拠出金提供国として動き、この人事を阻むべきでした。

もっとも災を転じて、福とする、という言葉もあります。
新国連事務総長は出身国のぎらぎらした利害を体言する言動をすぐに示すでしょうから、その場合には日本はドンドン抗議をして、国連の抜本的改革の材料とすることができます。竹島への韓国の強引な措置などを国連を通じて、世界に広く知らしめる機会ともなるでしょう。国連自体の偽善や虚偽の部分をボイコットする好機となるかも知れません。

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