アメリカ人だけでなく、多様な国や地域の出身の多様な男女たちが「ハジメ!」「レイ!」という日本語で大外刈や体落という日本発祥の技をかけあう光景に、ついまた「日本からの対外発信」とか「日本の価値観の表明」というような言葉を連想させられました。安倍首相が施政方針演説で強調したのも、そうした「対外発信」や「価値観の表明」でした。
ジョージタウン大学は1月から新学期が始まり、新しい大学生たち20人ほどがこの柔道クラブに入ってきました。大学の外からの参加者も増えました。
カナダ人で世界銀行に勤務するマイクはすでに柔道を何年も続けてきた茶帯、テコン道2段のアメリカ人青年マシューは、柔道は初めてとはいえ、基礎体力が強そうです。師範役はアメリカ人弁護士のタッド・ノルス5段、ジョージタウン大学医学部で救急医療を専門とするアメリカ人女医のキャサリンも小学生の息子と娘を連れて練習にきています。フランス人とベトナム人の両親を持つクロイは11歳の小柄な少女ですが、柔道が大好きだと言い、大きな黒帯の男性たちにもためらわずに稽古を挑みます。
もちろん柔道はとっくに日本の独占物ではなくなり、全世界180数カ国で練習や試合が行われています。世界最大の柔道人口を抱えるのは日本ではなく、フランスで、60万とも70万ともいわれています。
私自身、ジョージタウン大学・ワシントン柔道クラブで練習や指導をするたびに、完全に日本で生まれ育った事物でこれほど全世界に広まった実例は他にあるだろうか、といぶかります。日本とは無縁の諸外国の男女にこれほどアピールする柔道の魅力とはなんなのか、と考える次第です。