2007年07月

参議院議員選挙戦もいよいよ大詰めです。
しかし今回の選挙キャンペーンでは争点は年金、そしてスキャンダル、その他の重要案件が驚くほど話題にならないのが特徴のようです。
メディアの責任も大きいでしょう。自民党自身、安倍晋三首相自身の姿勢のせいもあるでしょう。民主党など野党側が安倍内閣のミスばかりに焦点をしぼったせいもあるでしょう。国民の多くが年金制度への不安にまず動揺してしまったため、かもしれません。

いずれにしても結果として、この選挙戦では憲法改正、教育改革、公務員制度改革、そして中国や北朝鮮への政策、日米同盟のあり方などなど、日本の国家としての進み方の根幹を左右し、日本の国民の生き方の基軸を動かす重要政策テーマは、ほとんど争点となっていません。
こういう状況を同盟国のアメリカの日本専門家たちはどうにみているのか。とくに若い世代の日本研究者の反応はどうか。
そうした点について産経新聞本紙に記事を書きました。
以下に紹介します。
みなさんがこの選挙戦の中味をどう思うか。
ぜひ知りたいところです。



産経新聞7月25日付朝刊1面

【2007参院選】何たる選挙戦(2)「醜聞・年金だけの争点は恥だ」 

 「今回の参院選は、日本が今後国際的にどんな役割を果たすべきか、安倍晋三首相が示したビジョンへの賛否が問われるべきだと思っていたら、一連のスキャンダルと年金制度の管理ミスだけが争点のようになってしまった。これはシェーム(恥)だと思う」

 今の選挙のキャンペーンを「恥」という激しい言葉で評したのは、米国の若手日本研究学者マイケル・オースリン氏である。米国大手紙への7月上旬の寄稿だった。

 エール大学の准教授から首都の主要シンクタンクAEIの日本政治・外交専門の研究員となり、2週間前にワシントンに居を移したばかりの同氏は30代後半だが、日本側でおなじみの米国の日本専門家たちに比べれば、ずっと若い。とはいえ日本とのかかわりは大学卒業後すぐに日本政府の外国語指導助手招請の「JETプログラム」に参加して、兵庫県で2年を過ごし、数年後にはフルブライト留学で東京へ。そのまた後に神戸大学での研究と、長く、深い。

 そのオースリン氏をAEIに訪ね、改めて問うと、いかにもこの世代の日本研究者らしい知日度の高さと従来の枠からの脱却を思わせる解説がはね返ってきた。

 「宮崎県に住む日本人の妻の両親とよく話すので、年金問題の重要性もよくわかります。しかし、米国のスカートの背後から足を踏み出すという意味の『戦後レジーム(体制)からの脱却』を戦後生まれの若い安倍首相が唱えたいまの日本は、まさに歴史的な分岐点にあると思う。日米同盟をどうするか。中国の拡張にどう対応するか。憲法9条や防衛政策をどうするか。世界にどう貢献するか。今後の30年ほどの国の進路を決めるエキサイティングな時期でしょう。そんな時の国政選挙なのに醜聞と年金だけ、というのはあまりに残念という意味で『恥』と評したのです」

 ワシントンの戦略国際研究センター(CSIS)研究員でオースリン氏と同じ世代の日本の政治・安保の専門家ニック・セーチェーニ氏は「どの国の選挙でも主要な争点は国内問題になりがちですが」と前置きしながらも、「いまの日本は日米関係の在り方一つとっても、どんな政策が適切なのか、さらに国際的により大きな役割をどう果たすか、非常に重要な課題に直面しているのに、参院選では目先の問題にのみ込まれた観です」と、類似した失望をにじませた。

 ただし、今後誰が首相になっても、そうした対外的な重要課題からは逃れられないだろうという。

 米国のマスコミの参院選に対する関心もきわめて低い。大手紙誌で日本の今の選挙戦を詳しく報道や論評した記事はごく少数である。

 その理由について、日本の安保政策などを長年研究してきた60代のベテラン学者、国防大学国家安全保障研究所のジム・プリシュタップ上級研究員は「選挙戦が、米国側でも関心の深い日本の長期の外交戦略、つまり北朝鮮の核武装や中国の勢力拡大への対処法などを論じず、スキャンダルだけが大きく投射され、もっぱら安倍首相への信任投票となったからでしょう」とみる。

 プリシュタップ氏はそして、安倍首相自身も憲法や安保という論題を、公明党の反応などに懸念して正面から後退させた一方、民主党も党内の政策見解一致がないために、安保や外交を論じたくないのだろうという考察を述べた。

 この点、オースリン氏は次のように語る。

 「民主党も政権の獲得を真剣に考えるならば、世界における日本というビジョンを大きく描かねばならないが、代表の小沢一郎氏は『永遠の革命家』という感じです。いつも闘いを挑むけれども、自分自身がどんな政策を有しているのか、不明という意味です」

 一方、オースリン氏によれば、安倍氏は「より強い日本、より自信ある日本」を目標に、民主主義や市場経済を基盤とし、安保努力の増強や日米同盟の強化を目指すという点で、是非は別にしても、政策の方向は明確だという。

 そうした政策目標は、これまた是非は別にして、日本という国家の在り方、そして日本国民の生き方の根幹にかかわる選択であろう。

 だがその是非が少しも論じられない日本の参院選の現状を、オースリン氏は「恥」という言葉で率直に批判したのだった。(ワシントン 古森義久)

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アメリカでの慰安婦問題について、意外と知られていないのは、アメリカの司法当局、つまり裁判所がこの案件はアメリカで裁くことはできないとして、すでに却下していることです。
行政当局、つまり政府も、この種の案件はサンフランシスコ平和条約で解決済み、という立場をとっています。
立法府、つまり議会だけがなお、灰色の領域を残しているわけです。

このアメリカの裁判所の下した判断について、私は昨年、産経新聞で報じています。その記事を以下に紹介します。


緯度経度】ワシントン・古森義久 米国での慰安婦訴訟の教訓
2006年03月18日 産経新聞 東京朝刊 国際面

 慰安婦問題といえば、最近でもなおNHKの番組や朝日新聞の報道をめぐって、論議が絶えないが、米国内でこの問題で日本を非難する勢力にとって大きな後退となる最終判決がこのほど出された。米国の司法や行政の良識を思わせる適切な判決だったのだが、ここにいたるまでの五年以上の原告側の執拗(しつよう)な動きからは日本側にとっての多くの教訓もうかがわれる。

 米連邦最高裁判所は第二次大戦中に日本軍の「従軍慰安婦」にさせられたと主張する中国や韓国の女性計十五人が日本政府を相手どって米国内で起こしていた損害賠償請求などの集団訴訟に対し、二月二十一日、却下の判決を下した。この判決は米国内でのこの案件に関する司法の最終判断となった。もう慰安婦問題に関して日本側に賠償や謝罪を求める訴えは米国内では起こせないことを意味する点でその意義は大きい。

 この訴えは最初は二〇〇〇年九月に首都ワシントンの連邦地方裁判所で起こされた。米国では国際法違反に対する訴訟は地域や時代にかかわらず受けつけるシステムがある一方、外国の主権国家については「外国主権者免責法」により、その行動を米国司法機関が裁くことはできないとしている。ところが同法には外国の国家の行動でも商業活動は例外だとする規定がある。元慰安婦を支援する側は慰安婦を使った活動には商業的要素もあったとして、この例外規定の小さな穴をついて、日本政府への訴えを起こしたのだった。

 日本政府は当然ながらこの種の賠償問題はサンフランシスコ対日講和条約での国家間の合意で解決ずみだとして裁判所には訴えの却下を求めた。ワシントン連邦地裁は二〇〇一年十月、日本側の主張を認めた形で原告の訴えを却下した。原告側はすぐに上訴した。だがワシントン高裁でも二〇〇三年六月に却下され、原告側は最高裁に上告したところ、最高裁は二〇〇四年七月に高裁へと差し戻した。ちょうどこの時期に最高裁が第二次大戦中、ナチスに財産を奪われたと主張するオーストリア女性の訴えを認め、オーストリア政府に不利な判決を下したため、日本政府を訴えた慰安婦ケースも類似点ありとして再審扱いとしたのだった。

 だが、ワシントン高裁の再審理でも日本政府に有利な判断がまた出て、原告は二〇〇五年十一月にまた最高裁に再審を求めた。その結果、最高裁が最終的に決めた判断が却下だったのだ。

 六年近くもこの訴訟を一貫して、しかもきわめて粘り強く進めた組織の中核は「ワシントン慰安婦問題連合Inc」という団体だった。在米の韓国人や中国人から成り、中国政府関連機関とも連携する政治団体である。Incという語が示すように資金面では会社のような性格の組織でもあるという。

 この「ワシントン慰安婦問題連合Inc」は実は二〇〇〇年十二月に東京で開かれた「女性国際戦犯法廷」にも深くかかわっていた。この「法廷」は模擬裁判で慰安婦問題を主に扱い、日本の天皇らを被告にして、その模擬裁判を伝えたNHK番組が日本国内で大きな論議の原因となった。「慰安婦問題連合」はまた、その少し前には中国系米人ジャーナリスト、アイリス・チャン氏著の欠陥本、「レイプ・オブ・南京」の宣伝や販売を活発に支援した。

 この種の組織は日本の戦争での「侵略」や「残虐行為」を一貫して誇張して伝え、日本の賠償や謝罪の実績を認めずに非難を続ける点では間違いなく反日団体といえる。その種の団体が日本を攻撃するときによく使う手段が米国での訴訟やプロパガンダであり、その典型が今回の慰安婦問題訴訟だった。米国での日本糾弾は超大国の米国が国際世論の場に近いことや、日本側が同盟国の米国での判断やイメージを最も気にかけることを熟知したうえでの戦術だろう。日本の弱点を突くわけである。

 だから「慰安婦問題連合」は日ごろワシントン地域で慰安婦についてのセミナーや写真展示、講演会などを頻繁に開いている。最高裁の最終判決が出るつい四日前も下院議員会館で慰安婦だったという女性たちを記者会見させ、「日本は非を認めていない」と非難させた。

 だが米国の司法は最高裁での却下という結論を打ち出した。行政府のブッシュ政権も一貫して「日本の賠償は対日講和条約ですべて解決ずみ」という立場を裁判の過程でも示した。

 しかし立法府である米国議会は「慰安婦問題連合」などの果敢なロビー工作を受けて、慰安婦問題ではまだ日本を非難する決議案をたびたび出している。その種の工作の持続性、粘り強さは今回の訴訟での軌跡がよく示している。日本側も米国という舞台でのこの種の争いの重要性を十二分に意識して、果敢に反撃すべきだろう。反撃すればそれなりの成果も得られる。今回の最高裁の判決はそんな教訓を与えてくれるようである。 

『政府調査「従軍慰安婦」関係資料集成』という書を読みました。というより、要点に目を通したというほうが正確です。
この書は「女性のためのアジア平和国民基金編」となっています。出版元は龍渓書舎です。

日本政府が平成4年から5年にかけて発表した「いわゆる従軍慰安婦問題の調査結果について」という資料の「概要紹介」を単行本の形にしたものです。

この資料は慰安婦問題の研究者、専門家たちはとっくに読んでいるものでしょう。
しかし私にとっては初めての通読でした。そして目を通して驚き、かつ納得したことは「日本の政府や軍が女性を組織的に強制徴用して慰安婦にしたという文書上の証拠はない」という趣旨の政府の言明どおり、ここに概要が紹介された資料はみな慰安婦が募集され、軍はむしろ募集にあたる業者に対し強制徴用の類の行為はとらないよう警告していたような事例ばかりだった、という点でした。

この資料は産経新聞の読者の神奈川県海老名市在住の肥田英二さんが提供してくれました。肥田さんは伯父さんが学徒出陣されたそうで、日本軍の将兵が慰安婦問題で若い女性たちを「性的奴隷」にしていたと断じられるのはその伯父さんへの侮辱や誹謗になる、と述べていました。
もちろん一般でも自由に入手できる資料です。しかし、これを読んで、強く思ったのは「なんだ、軍の組織的徴用などなかったことは日本側の調査でも、とっくに判明していたではないか」という点でした。

その資料の一部を以下に紹介しましょう。

 〔警察庁関係(旧内務省関係)公表資料〕
 
▽昭和13年1月に山形県知事が陸軍大臣、内務大臣あてに送った文書
 「募集業者について銃後の民心、とくに応召兵士の家の婦女子の精神に悪影響を及ぼし、婦女の身売防止の精神にも反するとして、募集を断念させる説得を行ったと報告している」

▽昭和13年1月に高知県知事が内務大臣などに送った文書
 「軍の威信にかかわる言辞を弄する募集業者の活動は禁止し、渡航希望者にも証明書を出さないことにすると報告している」

▽昭和13年2月に内務省警保局長が各庁府県長官あてに送った文書
 「この通牒は募集者の言動を遺憾として、慰安婦となる者は内地ですでに『醜業婦』である者で、かつ21歳以上でなければならないこと、渡航のために本人が警察に出頭することと親権者の承諾をとることを義務づけている。婦女の募集周旋にあたって、軍の諒解または軍と連絡があるかのように言う者は取り締るべきだとしている」

〔防衛庁関係(旧軍関係)公表資料〕
 
▽昭和13年3月に陸軍省副官が北支那方面軍および中支派遣軍参謀長に送った文書
 「支那事変地における慰安所の従業婦等の募集に任ずる者の人選を適切にし、軍の威信保持上並びに社会問題上、遺漏なき様、配慮されたいとの通牒」

▽昭和17年5月に北支派遣軍の軍法会議が下した判決文
 「娼妓の廃業に要する金銭のため収賄した陸軍主計中尉に対する軍法会議判決文」

▽昭和17年5月の父島要塞司令部参謀部陣中日誌
 「東部軍参謀部は洲崎から26名、吉原から15名の女子を業者が準備し、15日ごろ輸送の予定であるが、人員数差し支えないかと問い合わせの電報」


同種の文書は他に数百点もリストアップされています。
ここで一貫しているのは慰安婦の女性は「募集」されていた、という記述や説明です。また慰安婦の「廃業」もあったこと、前線の慰安婦としては吉原などですでに職業的売春に従事していた女性たちが多数、働いていたこと、などが明記されているわけです。
これら文書からはアメリカ下院の決議案がうたうような「日本軍により性的奴隷」とか、軍や政府による組織的強制徴用という実態はどこにも浮かんでいません。

灯台、もと暗し、日本の慰安婦について調べるにはまず日本政府の調査資料を参照すべきだということでしょう。

吉見義明氏のような慰安婦問題研究者が「日本の政府や軍による女性たちの組織的な強制徴用」をめぐる日本国内での最近の論議には決して入ってこないことも、その理由の一端がわかった気がしました。
私のブログに登場してくる「ホンダ決議案擁護」の人たちも、決議案を支持しても、その決議案が前提とする「日本の政府や軍による組織的強制徴用」という部分には絶対に触れてこないという印象があります。なぜでしょうか。

なお関連の記事へのリンクは以下のとおりです。

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/53/

 ダニエル・イノウエ上院議員が7月9日に上院本会議で下院の慰安婦決議案に対する反対の声明を出しました。
その要旨は先のエントリーで紹介したとおりです。
以下にイノウエ議員のその声明の英語の原文を載せます。ほぼ全文ですが、スペースの制約により、一部を省略せざるをえませんでした。

なおこのイノウエ議員の声明についての詳しい説明は下記のリンクで読めます。

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/53/


H. RES. 121 -- (Senate - July 09, 2007)

[Page: S8789]

---

   Mr. INOUYE. Mr. President. On June 26, 2007, the Committee on Foreign Affairs of the U.S. House of Representatives met to consider and adopt H. Res. 121. This resolution was authored by Congressman Michael Honda of San JoseCA

   H. Res. 121 expresses the sense of the U.S. House of Representatives that the Government of Japan should formally acknowledge, apologize, and accept historical responsibility in a clear and unequivocal manner for its Imperial Armed Force's coercion of young women into sexual slavery, known to the world as ``comfort women,'' during its colonial and wartime occupation of Asia and the Pacific Islands from the 1930s through the duration of World War II. 

   There is no doubt in my mind that during the war period the men in the Imperial Armed Forces of the Government of Japan did abuse, assault, and forcibly impose their wills upon women for sexual purposes. This was conduct and behavior that cannot in any way be condoned or justified. 

   These events, according to H. Res. 121, occurred during the war period of the 1930s and 1940s. Records indicate that on August 31, 1994, as the 50th anniversary of the end of World War II was approaching, then Prime Minister Tomiichi Murayama issued a statement articulating Japan's remorse and apology to comfort women. 

       This statement was made in his official capacity as Prime Minister of Japan. 

   Subsequently, every successive Prime Minister since 1996--Prime Ministers Hashimoto, Obuchi, Mori, and Koizumi--have all issued letters of apologies to individual former comfort women, who have accepted an apology letter along with atonement money offered to her by the Asian Woman's Fund. It should be noted that some former comfort women refused to accept the atonement money. 

   The Asian Women's Fund was established, sanctioned, and approved by the Government of Japan. The letters addressed to former comfort women were issued by the Prime Ministers of Japan in their official capacity, and recite, ``as Prime Minister of Japan, I thus extend anew my most sincere apologies 

 

and remorse to all the women who underwent immeasurable and painful experiences and suffered incurable physical and psychological wounds as comfort women. 

    On March 11, 2007, Prime Minister Abe made the following statement: 

   I will stand by the Kono Statement. This is our consistent position. Further, we have been apologizing to those who suffered immeasurable pain and incurable psychological wounds as comfort women. Former Prime Ministers, including Prime Ministers Koizumi and Hashimoto have issued letters to the comfort women. I would like to be clear that I carry the same feeling. 

   The 1993 Kono statement made by the Chief Cabinet Secretary Yohei Kono stated in part: 

   The then Japanese military was, directly or indirectly, involved in the establishment and management of the comfort stations and the transfer of comfort women. ..... The Government of Japan would like to take this opportunity once again to extend its sincere apologies and remorse to all those, irrespective of place of origin, who suffered immeasurable pain and incurable physical and psychological wounds as comfort women. 

   The Asian Women's Fund was established in 1995 with the cooperation of the Government of Japan and the Japanese people. The fund has extended letters of apology and payments, donated by the Japanese people, to 285 former comfort women in the Philippines, the Republic of Korea, and Taiwan

   I have taken the time to cite the above because of my concern over the adoption of H. Res. 121, the Honda Resolution. 

   It should be noted that after World War II, the issue of compensation for Japan's wartime crimes was settled, country by country, by the Treaty of San Francisco with the U.S. and by the relevant peace treaties with other countries. Thus, from a purely legal standpoint, the issue of the comfort women has been settled by treaties of peace. 

   Several questions come to mind as I read the text of statements made on this matter, and the text of H. Res. 121. For example, what would be required of Japan under H. Res. 121 to ``formally acknowledge, apologize, and accept historical responsibility in a clear and unequivocal manner''? 

   The statements of apology that I quoted earlier were issued by six Prime Ministers of Japan, each acting and speaking in his official capacity. 

   I would think that in the world of diplomacy, these words would suffice as official statements. 

   Another matter that should be noted is that these events occurred in the 1930s and 1940s, and the acknowledgment and apology over the abuse of the comfort women have been made by successive Prime Ministers since 1994. 

   I can think of many events in our own historic past that deserve an acknowledgement and apology issued by the United States. Nonetheless, our Government has not acknowledged these actions and other countries have not officially reprimanded us because of it. 

   For example, soon after December 7, 1941, the United States contacted the Governments of Chile and other South American countries and requested that they round up their residents of Japanese ancestry and send them to the United States to be used by the United States in negotiations for the return of American prisoners of war held by Japan

   Many Latin Americans of Japanese descent were arrested, stripped of their passports or visas, and shipped to the United States. Once in the United States, they were treated as illegal aliens, subject to deportation and repatriation. 

   The internees' vulnerable position under the law basically left their fate in the hands of the State Department and Department of Justice. Those caught in this situation were considered repatriable and thus available for use in hostage exchanges with Japan

   I am happy to report to you that after many years of concern, the Senate Committee on Homeland Security and Governmental Affairs has considered this matter and reported favorably on a measure to study this matter. However, the bill still faces consideration by the full Senate, the House of Representatives, and the White House. 

   And yet has any country suggested we should ``formally acknowledge, apologize, and accept historical responsibility in a clear and unequivocal manner'' for this matter? 

   Nor have the legislatures of other nations criticized and accused us for Executive Order 9066, which directed the United States Army to establish 10 concentration camps in various parts of the United States to intern residents of Japanese ancestry. 

   Regardless of the historical example, the question remains the same: how would the U.S. Government have reacted if the legislature of some other nation had condemned our historical actions in World War II? 

   Diplomatic protocol among friendly nations and allies calls for consideration and sensitive handling of such matters. 

   In the case at hand, I respectfully suggest that the Government of Japan, through six of its Prime Ministers, and through two acts considered by its House of Representatives, has issued statements of acknowledgement and apology since 1994. 

   I would suggest that so many apologies should suffice. 

 

   As a final matter, it may be interesting to note that a Gallup Poll conducted in February and March 2007 sets forth the following: 74 percent of the general public, and 91 percent of opinion leaders thought of Japan as a dependable ally or friend. 48 percent of the general public, and 53 percent of opinion leaders considered Japan to be the most important U.S. partner in the Asia region, followed by China, which scored 34 percent among the general public, and 38 percent among opinion leaders. 67 percent of the general public, and 86 percent of opinion leaders described U.S. relations with Japan as ``good'' or ``excellent.'' 87 percent of the general public, and 88 percent of opinion leaders supported the maintenance of the Japan-U.S. Security Treaty. 

   Finally, when asked whether Japan shared common values with the United States, 83 percent of the general public, and 94 percent of opinion leaders agreed. The only country that received a higher score was the United Kingdom, by only 2 percent for each group. 

   These numbers and responses to the Gallup Poll should suggest our relationship with Japan is excellent. The general public believes it, and our Government has said so as well. Why should we involve ourselves in a legislative act that would jeopardize a relationship as good as we share with Japan

   Is this how we Americans should conduct ourselves with the Japanese, our friends and allies? 

END

 

慰安婦問題で日本を糾弾するアメリカ議会の決議案は下院外交委員会で可決され、日本の参院選の直後にも下院本会議で採決される見通しとなりました。このままでは採択の展望が確実です。

しかしこの決議案に一貫して、強硬に反対を表明し続けているアメリカ上院の民主党長老議員の存在には日本側としては注視しておくべきでしょう。ダニエル・イノウエ上院議員です。
イノウエ議員は周知のようにハワイ州選出の日系人の政治家です。民主党では全国委員長を務め、連邦議会でも数々の枢要ポストを歴任した長老です。第二次大戦では日系人部隊の将校として、欧州戦線で武勲をあげ、ドイツ軍の銃撃で片腕を失ったことでも有名です。

そのイノウエ議員が慰安婦決議案に対して、まず3月にトム・ラントス下院外交委員長に書簡を送り、反対を伝えました。上院議員が下院あてにこの種の意思表示をすることはきわめて異例です。イノウエ議員はそれほどこの決議案の悪影響を懸念する、というのです。
さらにイノウエ議員は7月9日に上院本会議あてに声明を出し、改めて明確な反対論を述べました。

その声明の主要部分を以下に紹介します。
また原文の英語の全文も次のエントリーで紹介します。

以下はダニエル・イノウエ上院議員の声明からの抜粋です。


「これらの出来事(慰安婦の存在など)は一九三〇年代と四〇年代に起きた。そしてそこでの悪習に対する認知と謝罪は一九九四年以来の日本の歴代首相によりなされてきた。

私は米国が認知し、謝罪すべき過去の出来事を多数、想起できる。だが米国政府はそうした行為を認知せず、他の諸国も米国を公式に叱責することはない」

 

 「もし他の諸国の立法府が米国の第二次大戦中の歴史上の行動を糾弾したとすれば、米国政府はどう反応するだろうか。友好国や同盟国同士の外交上の儀礼では、こうした案件の処理には深慮と慎重さが求められるのだ」

 

 「なぜわれわれはこれほど良好な日本との関係を特定の立法行動によって危険にさらさねばならないのか。これがわれわれ米国人が友人であり、同盟相手である日本人を遇する方法なのか」

 

 「第二次大戦後、日本の戦争犯罪への賠償の諸問題は各国個別にサンフランシスコ平和条約と、その関連の一連の平和条約によって、解決された。厳密な法的観点からすれば、慰安婦問題もこれらの条約によってすでに解決されているのだ」


 以上はイノウエ議員の声明のごく一部です。同議員が現在の日本が国際社会で信頼され、好かれいる事実も世論調査を引用して強調しています。日本の民主主義や人道主義も指摘しています。そしてなによりも日本がアメリカに安保面などでこれほど貴重な貢献をしているではないか、と力説するのです。
 私はこのイノウエ議員の主張について日経BPのインターネットのコラムでも詳述しました。以下はそのリンクです。

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/53/


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