2007年10月

政治における世論調査というのは、選挙の予測としては最近はかなり正確であり、それなりに意味があるでしょう。しかし政府や政治家が政策を決める際の指針としての世論調査というのは、私はあまり重きをおきません。

とはいえ、具体的な政策への国民の意見をある程度、知るうえでの世論調査の効用は、現代政治では否定できません。だから私もアメリカでも、日本でも、マスコミの世論調査の結果には自然に視線を向け、そのときの風の吹き方のひとつとして、参考にはしています。

このところ日本の国政での最大課題の一つはこのブログでも再三、取り上げたインド洋での自衛隊の活動をどうするか、です。その活動を支持する国民の意見がこのところ、高まってきたらしいことは一連の世論調査でも示されています。
そんななかで朝日新聞が10月16日付で「インド洋での海自活動」「継続賛成39% 反対44%」という世論調査結果を報じました。前回の朝日の調査では、その数字は35%と45%だとされましたから、継続賛成が増えたわけです。しかし全体としては、なお反対が賛成よりも多い、趣旨を前面に出しています。この結果は朝日新聞の社説にも合致することになります。

ところが同じ記事の基礎となる世論調査結果の詳報をみると、おもしろい数字が出ています。
インド洋自衛隊活動の問題に関して、「民主党の主張に納得できない」と答えた人が44%、「納得できる」という人が34%という数字が出たことがさらりと記されているのです。
世論調査での質問は「民主党は、インド洋での自衛隊活動は国連決議にもとづいておらず、テロの抑止にもなっていないと主張しています。民主党の主張に納得できますか」でした。納得できないという方がずっと多いわけです。小沢氏が最近、うろたえているようにみえるのも、こうした潮流の反映でしょうか。

さらにはこの問題で「民主党が反対を貫くほうがよい」と答えた人がわずか22%だったのに対し、「与党と協議して一致点を見いだす」と答えたのがなんと64%にものぼったという結果も記されています。
この数字から判断する限り、インド洋の自衛隊撤退を求める小沢一郎氏の意見に賛成する朝日読者は、ほんの22%といってもよいでしょう。

朝日新聞はこの調査結果の総括を一面の記事で報じていますが、民主党の主張へのそんな幅広い(64%)反対の部分はその記事では触れられていません。

さらに興味深いのは、「できるだけ早く衆議院を解散して、総選挙を実施すべきだと思いますか」という問いに対しては、「できるだけ早く」というのが32%、「急ぐ必要はない」がなんと60%という結果が出たことです。
社説で来年1月の衆議院解散と総選挙を求める朝日新聞主張には賛成が32%、反対が60%なのだといえましょう。この部分は総括の記事には含まれていますが、もちろん記事の見出しにはなっていません。

この世論調査結果、民主党にとっても、朝日新聞にとっても、あまり朗報ではないようです。
一般の読者としては、世論調査について、単にその総括の記事をみるだけでは、その調査の意味はわからない、ということでもありましょうか。

アメリカの大統領選挙キャンペーンではなお巨額の不正チャイナ・マネーが民主党側候補たちを揺るがせています。ヒラリー・クリントン候補が85万ドルを返したのが、いまのところ最大の動きです。この件はすでにこのブログでも伝えてきました。
不正献金の提供者は中国系米人のノーマン・シュー被告です。シュー被告は15年前に窃盗などですでに有罪判決を受けて、逃亡していたうえ、このほど新たに詐欺罪などで起訴されました。

さてこのシュー被告からかの有名なマイク・ホンダ下院議員も献金を受けていたことも、すでにこの場で記してきました。しかしここで、新しい展開を含めて、もう一度、詳しく伝えたいと思います。ホンダ氏が不正献金の受領を認め、それを返済したことはすでに産経新聞でも報じられました。日本のマスコミでは他は無視のようです。
しかしこの事実は慰安婦問題の背景の理解の上でも、非常に重要です。当初、伝えられたよりもその金額が多いことも判明しました。
そしてなによりも、この不正献金はホンダ氏が中国系といかに密接に結びついているかを示す例証なのです。

このため私はつい3日ほど前、産経新聞のコラム「緯度経度」で、この件を改めてまとめて、詳しく書きました。
以下に紹介します。


【緯度経度】ワシントン・古森義久 ホンダ議員への政治献金疑惑
2007年10月13日 産経新聞 東京朝刊 国際面

 米国で刑事事件での有罪判決を受けて逃亡中に大統領候補や議員候補の大物政治家たちに合計200万ドルもの献金をしていた中国系元ビジネスマン、ノーマン・シュー(徐)被告の軌跡は、知れば知るほど奇怪である。

 献金の相手はヒラリー・クリントン上院議員をはじめ民主党候補ばかりに限られているため、特定の政治意図を当然、感じさせる。詐欺まで働いて私財を肥やしてきた人物が巨額の資金を単に寄付してしまうという行為は、背後の大きな資金源をも感じさせる。

 こんご大統領選キャンペーンの本格化によっても、刑事事件捜査の進展によっても、米国の国政の場でこのシュー事件がより詳しく語られることは確実である。ナゾの数々も明らかにされることだろう。

 だがこの事件のいまの黒い霧のなかでも、シュー被告の違法の疑いが濃い献金活動の軌跡が日本を糾弾する慰安婦決議案の推進で広く知られたマイク・ホンダ下院議員(民主党)と接点を持ったことははっきりしている。ホンダ議員は9月下旬、シュー被告とその代理人から受け取った献金計5000ドルを放棄することを発表したのだ。放棄した資金は日系米人の高齢者介護施設などに寄付するという。

 米国の民間の政治資金調査研究機関の「有責政治センター」(CRP)が公表した記録によると、ホンダ議員はノーマン・シュー被告から1000ドル、ディミプル・ポー(鮑)氏から1000ドル、ビビアン・ポー氏から1000ドル、ウィリアム・ポー氏から1000ドルをそれぞれ選挙のための献金として受け取った。受け取りの日付はいずれも今年6月25日だった。

 ポーという人たちは発着する航空機がすぐ頭上を頻繁に飛ぶサンフランシスコ空港近くの小さな家に住む中国系家族である。家長のウィリアム氏は郵便配達員で年収は4万ドルほどだが、一家はここ数年、その数倍もの額を民主党の多様な政治家たちに献金してきた。一家の長男がかつてシュー被告の会社で働いた経歴があり、家族たちは同被告の代理として献金をしてきたことが明白だった。

 ホンダ議員がシュー被告のからむもう一口の献金1000ドルを含めて違法性の強い計5000ドルを受け取ったことは、同議員と中国系の個人や団体との緊密なつながりを改めて印象づけた。同議員は慰安婦問題や南京事件で日本を一貫して糾弾する在米中国系団体の「世界抗日戦争史実維護連合会」の幹部たちから過去8年近い連邦議員歴で、ここぞという時期にいつも献金を受けてきた。

 ホンダ議員の選挙民の3割がアジア系という構図のなかでも中国系からの献金が突出していた。その献金と引き換えの形で同議員はこれまた一貫して慰安婦決議案を連邦議会でプッシュしてきた。同議員と中国系とのこうした緊密な資金援助の関係をシュー被告の今回の一連の献金がさらに裏づけたということだろう。

 公式の記録では、シュー被告は今年6月、ホンダ議員の誕生日パーティーを選挙区内で主催した際に、これらの献金をしたことになっている。だが同時に6月25日というのは、下院外交委員会で慰安婦決議案への投票が実施された日の前日だった。

 ここまではシュー被告の献金と下院での慰安婦決議案の推進と、点と点とを結ぶだけの推測だとしても、同被告の献金が慰安婦決議案の早い時期の共同提案議員たちにも届けられていた事実は全体の構図をもう少し鮮明にする。シュー資金は下院のトム・アレン、パトリック・ケネディ、デービッド・ローブサック、フランク・パロン各議員ら民主党の議員連に軒並み贈られていたのだ。各議員ともホンダ議員が今年1月末に提出した慰安婦決議案のごく早い時点での共同提案者ばかりなのである。

 各議員たちがシュー被告のような中国系勢力から献金を受けたから、慰安婦決議案の推進へと動いたのだなどという断定はできはしない。多くはナゾに包まれたままである。

 しかしホンダ議員にとってシュー被告からの政治献金は一体どんな意味や目的があったのか。だれもが感じる疑問だろう。同議員のカリフォルニアの選挙区内外では圧倒的に人気のある地元新聞「サンノゼ・マーキュリー・ニューズ」も、当然、ホンダ議員がシュー被告から受け取っていた疑惑の献金の返還について詳しく報道した。その報道記事は「本紙がシュー氏に関する取材インタビューを数回、申し込んだのに対しホンダ議員は一切、返事をしていない」と伝えていた。

 日本側に対し公正や道義を何度も説いたホンダ議員らしくない対応である。(古森義久) 


民主党代表の小沢一郎氏が説く国連至上主義の虚構と危険に対しては、繰り返し警鐘を発する必要があります。
日本が小沢氏の主張するように、自国の安全や地域の安全を国連にゆだねて、主権国家としての自国の安保努力を怠れば、亡国の道があるのみです。

小沢氏の国連に対する認識が基本部分でまちがっています。同氏は日本の安全保障と国際協力に関する「基本原則」の文書で以下のように述べています。


「世界秩序を維持できる機能を有する機関は国連しかない」

国連は理論的にはそうした機能を有しているかも知れません。しかし現実には国連は誕生してから62年、いまだかつてそんな機能は有していません。
国連は戦争を防止もできません。紛争の抑止にも無力です。平和維持にもさんざん失敗しています。虐殺を防止できないだけでなく、目の前で座視した事例も多数あります。

小沢氏の国連至上主義の虚構のひとつは、「国連軍」への態度です。
小沢氏は「基本文書」で次のように述べています。

将来、国連が自ら指揮する『国連軍』を創設する時は、我が
国は率先してその一部と
して国連待機部隊提供し、紛争の解決や平和の回復のため全面的に協力す
る」

この記述は、いかにもこれから「国連軍」という部隊が創設されるように書いています。しかし現実には「国連軍」の構想はとっくに破綻しているのです。もうその創設をうたった国連憲章も死文化しているのです。その経緯と実態を国連の歴史をさかのぼって報告しておきましょう。小沢氏の国連論の虚構を説明するためです。


周知のように、国際連合は1945年4月からサンフランシスコで開かれた全連合国会議でその創設が決まり、同年6月のこの会議での50カ国による国連憲章への調印を得て、事実上のスタートを切りました。

憲章が決めた国連のメカニズムでは国連自体が歴史上、初めての国際機関として独自の軍隊を持ち、平和の維持や執行にあてることになっていました。
国連への加盟はすべての主権国家が大小を問わず、平等に、1国1票の権利を有することとなりました。組織の運営は総会と安全保障理事会が主軸となることになりました。

だが総会はあくまで「勧告」の権限しかないのに対し、安保理事会は「執行」の権限を与えられ、しかも平和と安全に関する案件はすべて安保理が優先し、独占してまず扱う権利をも託されました。そのうえに安保理では常任理事国5カ国それぞれが拒否権を有し、いかなる提案でも1国がノーといえば、葬り去られることとなっていた。
平等であって、平等ではない国連の最大特徴がここに存在するわけです。

しかしそれでも1945年10月24日、加盟国の半数以上の国連憲章批准が終わり、国連が正式に発足したとき、この新国際機関こそが以後の世界の平和を守る実効組織だとする高い期待が全世界に広まりました。同年8月には日本もついに降伏し、長く苦しい世界大戦もやっと終幕を迎えていたわけです。

そうした世界情勢の背景の下、国連は戦後の新時代の輝く平和の守護者としてあがめられました。しかしそんな希求も期待も長くは続きませんでした。きらきらした理想がどんよりとにごる現実にさえぎられるのに長い時間はかからなかったのです。
 
国連独自の軍隊という壮大な歴史的実験は、着手さえできないことが判明したからです。

「国連軍」の構想は国連憲章の第42条から47条あたりまでの規定できわめて具体的に決められていました。
国連の必要に応じて加盟各国が随時に出す平和維持軍とは異なり、国連指揮下の常設の平和と安全のための軍隊が「国連軍」だという構想だったのです。

この国連軍は軍事参謀委員会により結成され、運営されることになっていました。軍事参謀委員会は安保理常任メンバーの5大国の参謀総長により構成されるはずでした。5大国から空軍、陸軍、海軍それぞれどれほどの兵力と装備の部隊を募り、全体としてどんな国連軍を編成するかはこの委員会で決められることになっていたのです。
 
しかし国連の発足1年あまりでアメリカやソ連によるこの軍事参謀委員会の討議は完全に破綻してしまったのです。
 
以来60年、国連軍というのは、その創設が語られることもなく歴史は流れました。唯一、「国連軍」が結成されたのは1950年6月に起きた朝鮮戦争のときだけ1回でした。北朝鮮の侵略を国連が非難し、武力行動をとることが合意されたのですが、この動きは当時、ソ連が中国にからむ問題で国連安全保障理事会をボイコットしていたという特殊な理由からでした。例外中の例外というケースです。ましてその「国連軍」の実体は米軍であり、歴史上でも最も血なまぐさい戦闘の一つを展開したわけです。

小沢氏は上記の歴史を知ったうえで、国連を世界の最高至上の平和維持組織とあがめ、国連軍が来年にでも創設されるかのように語るのでしょうか。

国連軍というのは、まぼろしなのです。
 

民主党の小沢一郎氏の安全保障政策や自民党の福田康夫首相の外交政策について、論じてきましたが、つい最近まで日本外交を主導した麻生太郎氏はどうでしょうか。

周知のように、麻生太郎氏はさきの自民党総裁選では福田氏の330票に対し197
票と、予想外の善戦をしました。自民党の主要派閥がこぞって福田支持を打ち出したことを考えれば、びっくりさせらるほどの多数の得票でした。

その麻生氏は福田内閣への参加を辞退し、全国各地の遊説その他に出かけました。これからの日本の政治では無視も軽視もできない主要リーダーの一人であることはまちがいありません。

さてその麻生氏は日本の外交政策をどうみているのか。さらには世界をどうみているのか。同じ自民党でも、どうもそのへんがはっきりしない「和」だけの福田氏にくらべれば、麻生氏はこれまで自分の思考や見解を明確にしてきました。
その一端として麻生氏の近著『自由と繁栄の弧』から紹介し、議論の土台としてみましょう。

麻生氏が最近の日本国民が外交に対する関心を急速に高めてきたとして、その理由をいくつかあげています。

「第一に、いま日本は、何か大きな歴史の曲がり角にあるという時代認識を、多くの国民がもつに至っているのではないかということです」

以上のように述べた麻生氏は疑問符を抱かせる中国などの隣国とこの先、どう付き合っていくべきか、という課題などが日本国民にも迫ってきた、としています。

「第二に、いまや日本人は新たな自画像を持ちたいと切望しているのだと思います」

麻生氏は戦後の日本国民が「武器を持たされたらまた何をしでかすかわからないのが自分だ」という自己認識を抱いてきた、と述べます。抜き難い自己不信というわけです。また武力にまつわることはすべて否定するか、蔑みの対象ともみてきた、というのです。
しかしこの自己不信もいまやほぼ消滅しようとしている、と麻生氏は述べます。

「第三には、理不尽な現実に対する憤りがあるでしょう」

北朝鮮による横田めぐみさんらの不当な拉致への怒りが国民の間に広まりました。日本国民は隣国の横暴には毅然と怒りを表明するようになってきた、というのです。

そして周知のように、麻生太郎氏は日本外交のキーワードとして、この書のタイトルでもある「自由と繁栄の弧」という用語を打ち出したのです。この言葉は「価値の外交」という語にも置き換えられています。
その外交の新機軸として麻生氏は以下のことを言明しています。

「第一に、民主主義、自由、人権、法の支配、そして市場経済、そういう「普遍的価値」を、外交を進めるうえで大いに重視してまいりますというのが「価値の外交」であります」
「第二に、ユーラシア大陸の外周に成長してまいりました新興の民主主義国。これらを帯のようにつなぎまして「自由と繁栄の弧」を創りたい、創らねばならぬと思っています」

日本の外交で民主主義と自由と人権が重要だと宣言すれば、おのずから中国や北朝鮮という自由弾圧国家との距離は離れていきます。
麻生氏はこれほど明確な概念を自分の外交政策に打ち出したのです。

以上のような麻生氏の主張は念頭にいれておく必要があるでしょう。
また政治の変転で麻生氏が正面舞台に飛び出してくる可能性も否定できないからです。

アメリカ議会の下院外交委員会が90年以上前のアルメニア人の虐殺を取り上げ、当時のオスマン・トルコ帝国を非難する決議案を採択しました。賛成27、反対21の僅差ではありましたが、可決は可決です。

この決議案にはトルコが国をあげて反対しています。
事実関係も曖昧だし、いまアメリカがこの歴史的事件を単にトルコ側による「ジェノサイド」(大量虐殺)と断じれば、せっかくのトルコとアルメニアとの和解も吹き飛んでしまう、というのです。
そしてトルコはアメリカ議会が本会議でこの決議案を無理にでも通すのならば、、いまイラクでの米軍の活動に不可欠となっているトルコ領内の軍事基地の使用までも拒む、と示唆するのです。

トルコはかつてフランスの議会が「アルメニア虐殺を否定することを禁じる」という法的措置をとったことに反発して、フランスとの一切の軍事関係を断絶しました。それほど強い反発をみせたのです。今回ももしアメリカ議会が強硬に出れば、トルコ当局はフランスに対して以上に強く抗議行動を取ることを示唆しています。

外国で起きた遠い過去の案件を持ち出してきて、いまの外国の政府を責めるというのは、アメリカ側が日本の慰安婦に関してとった行動と同じです。しかし日本側は強く反発することはしませんでした。

ところがトルコの反応は違うのです。
強硬な反発なのです。
日本とはずいぶんと異なります。
さあ、どうなるか、注視せざるをえません。

ではこの「アルメニア虐殺」非難決議の可決からお知らせしましょう。
産経新聞10月12日朝刊の記事です。 


米下院外交委 僅差で「トルコ非難決議」を可決 (1/2ページ)

2007.10.11 19:53 

このニュースのトピックス:慰安婦問題

 【ワシントン=古森義久】米国下院外交委員会は10日、90年以上前のアルメニア人虐殺に関して当時のオスマン・トルコ帝国を非難する決議案を27対21の僅差で可決した。米国、トルコ両政府とも同決議案は両国関係を傷つけ、米国のイラクでの軍事活動にまで支障を及ぼすとして強く反対しており、米国が中東戦略で頼りにするトルコとの同盟関係を緊迫させる見通しとなった。

 決議案を審議する下院外交委員会(トム・ラントス委員長)が10日午後、開いた公聴会はアルメニア系、トルコ系の関係者らで満席となり、テレビ傍聴の別室まで満員となって熱気を高めた。

 決議案は1915年から数年間に起きたアルメニア人大量虐殺を公式に「ジェノサイド」(事前に計画された集団的虐殺)と呼び、その悲劇への理解などを米国の外交政策に反映させるという内容だが、虐殺をオスマン・トルコ帝国の全責任とし、犠牲者150万として「ジェノサイド」と断じる点などに対しトルコ政府が激しく反対している。 

 トルコ政府が「事実の一方的解釈」と非難する点で同決議案は日本糾弾の慰安婦決議にも類似する。 

米国議会側ではアルメニア系米人の意向を受けたカリフォルニア州選出のアダム・シフ下院議員(民主党)らが決議案を提出し、下院で226人、上院で31人の共同提案者を得るにいたった。

 トルコ政府は「いわゆるアルメニア虐殺の実態は不明確な部分も多く、ジェノサイドとは呼べず、決議採択はトルコ国民を激怒させて、トルコ・米国関係に重大な打撃を与える」として反対し、エルドアン首相が5日、ブッシュ大統領に電話して議会に抑制を求めることを要請した。同大統領も10日朝の会見で「決議案採択はNATO(北大西洋条約機構)、そして対テロ国際闘争での枢要同盟国との関係を傷つける」として改めて反対を述べたばかりだった。

 米国はイラクでの軍事活動に必要な機材や物資の7割以上をトルコ領内のインジルリク基地などを経由して運んでいる。トルコ側では同決議案への反発が激しく、外相や議員団をワシントンに送って、採択された場合は同基地を使用禁止にする意図までを示唆してきた。こうしたトルコの官民の激烈な反応は慰安婦決議案への日本側の対応とは対照を描いてきた。

 同外交委員会の審議では委員長のラントス議員(民主党)が「大虐殺は非難されねばならない。トルコとの関係は確かに重要だ。だが日本の慰安婦決議案の審議でも、『これを通せば日米関係に重大な結果が起きる』と警告があったが、なにも起きなかった」と賛成論を述べた。これに対しダン・バートン議員(共和党)らは「現在のトルコの政府も国民もこの虐殺への責任はなく、トルコはいまイラクだけでなく中東全域への米国の対応で最も頼りになる同盟国だ」と述べ、同決議案に反対を表明した。

 外交委員会で可決された不拘束の同決議案は次に下院本会議にかけられる。だが委員会レベルでの採択でもトルコ側は官民で激しく反発することが必至となった。

             
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