「中国に関する議会・政府委員会」という組織が開催した公聴会を取材するためでした。この組織は立法府である議会と行政府である政府とが合同して、中国や米中関係にかかわる課題について取り組むことを機能目的としています。実際にはその課題は中国の社会問題、とくに人権抑圧などが多く、中国側での人権状況が米中関係にどう影響し、どう位置づけられるか、というような見地から批判的に提起しています。
この日の公聴会のタイトルは「2008年の北京オリンピックが中国の人権と法の統治に与える影響」でした。
なおこのテーマについては別の場でも報告しています。
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/69/
しかしこの公聴会の熱気には驚きました。
まず会場が超満員なのです。しかもなんともいえない緊張と高揚が部屋に満ち満ちていました。公聴会を仕切るのは議会と政府の代表、議会側は上下両院のかなり大物の議員たちも顔を並べていました。チャック・ヘーゲル上院議員、クリス・スミス下院議員などです。この議員たちの発言はあとで紹介します。
この公聴会では中国が五輪の主催国となり、国際規範を守ることを前提に、実際の五輪開催へと進んでいるのに、その一方で国内での人権弾圧は少しも減っていないではないか、それでも五輪開催の資格があるのか――という非難が中心でした。
中国の共産党政権がなお実行している種々の人権抑圧のなかでも、同公聴会では報道や言論の自由の抑圧が主テーマとまりました。
証人の一人として登場した「ジャーナリスト保護委員会」という国際組織のアジア調整官ロバート・ディーツ氏が要旨、以下のような報告をしました。
「中国政府は2008年北京五輪を絶対の成功とするために、中国のマスコミの統制を一段と強めている。中国当局は現在、少なくとも25人の中国人の記者や編集者をその仕事の関連で逮捕し、拘束している。公式の容疑は国家機密漏洩とか社会安定への脅威、国家転覆煽動などとされているが、実際にはどのケースも政府に都合の悪い言論、報道の活動をしただけなのだ」
「典型的なのは当代商報の記者だった師濤氏のケースだ。師の『罪』は共産党同局が彼の新聞に対し、天安門事件の記念日のニュースの扱い方などを指示した命令書の内容を電子メールで流したことだけだった。だが彼は国家機密海外漏洩罪で懲役10年の刑に服している」
ディーツ氏はその他、多数の中国人記者、編集者たちが弾圧を受け、投獄されている実例をあげました。そして国際社会が中国政府に「北京五輪を主催するならば、人権弾圧を停止せよ」と抗議することなどを訴えました。
以下はその「ジャーナリスト保護委員会」の出した中国政府の言論弾圧報告書のカバー写真です。
上記の公聴会に出たアメリカ議会の議員たちの発言をまとめた記事を以下に紹介します。
■「人権弾圧中国に五輪の資格なし」米公聴会で批判続出
【ワシントン=古森義久】米国の「中国に関する議会・政府委員会」が27日に開いた「北京五輪の中国での人権と法の統治に対する影響」と題する公聴会で、米国議会上下両院議員たちが中国政府の人権弾圧の事例を次々に指摘し、五輪開催国にふさわしくないという批判が続出した。
同委員会の委員長のサンダー・レビン下院議員(民主党)は「中国政府は国内の人権擁護促進への誓約を前提条件の一つにして五輪開催国になったが、人権弾圧は依然、続いており、この数週間でも当局は人権への懸念を五輪とからめて述べただけの活動家たち数人を拘束した」と指摘して、中国政府への抗議の姿勢を明確にした。
クリス・スミス下院議員(共和党)は「中国には言論、報道、集会の各自由がない」と前置きして「中国政府のそうした人権侵害の性格と規模を考えると、オリンピックが中国の首都で開かれるというのは恥辱だ」という抗議の意を表明した。
バイロン・ドーガン上院議員(民主党)も「中国当局は従来の人権抑圧に加えて、2008年の北京五輪の開催を利用して自国政府の人権弾圧の実態を広く内外に知らせようとした中国人活動家たちをすでに逮捕し始めた」と非難した。
同議員はさらに「中国政府は自国民に自由な発言の権利、労働者の権利、政府批判の権利などを認めておらず、その状態は五輪の精神に違反する」と述べ、中国人政治犯のうちの主要人物7人の実名をあげ、その釈放を要求した。
以上が記事の紹介です。
しかし北京五輪がらみの中国の人権弾圧問題といえば、アメリカ側での「ダルフール虐殺非難」を除くことはできません。アメリカ議会では
「中国はスーダン政府に圧力をかけて、ダルフール大量虐殺を止めさせない限り、北京五輪の主催国の資格はない」という趣旨の決議を全会一致で成立させているのです。
そのダルフール問題で活動するアメリカの団体が以下のような写真を
宣伝しています。