2008年05月

日本にとって外交が重要であることは言を待たないでしょう。
その日本外交を支えるのは日本人外交官たちです。
日本の外交官たちには、どんな特徴があるのか。
日本の大使というのは、どう選ばれて、どう機能するのか。
加藤良三駐米大使が6年7カ月にわたる任期を終えて、ワシントンを離れたのを機会に考えて、記事を書きました。

日本の大使はふつうはその任期がきわめて短いのです。
加藤大使の6年7カ月というのは例外中の例外だったのです。

その日本外交官考察についてコラム記事を書きました。
5月31日付の産経新聞朝刊に載った記事です。


【緯度経度】ワシントン・古森義久 日本外交官の短サイクル

 

 5月26日に離任した加藤良三駐米大使はワシントン在勤6年7カ月と、日本の駐米大使としては戦後最長の勤務を記録した。この年月は他の諸国に駐在してきた日本大使たちとくらべても最長のようである。

 在勤の長さが大使職務にプラスとなったかと問われて、加藤氏はためらわずに首肯した。確かに多層な政治の回路が錯綜(さくそう)する超大国の首都での外交活動には、その舞台での経験や知識は多いほど効率がよいだろう。

 しかも加藤氏は大使任務の以前にもワシントンに2度、在勤した。日本大使館の書記官と公使として各数年、務めたのだ。だから大使赴任の時点ですでに任地をよく知っていたことになる。そのせいか、大使としては在勤初期の米国側の9・11(米中枢同時テロ)やイラク攻撃という激変の中でも支障なく機能し、日米両国の、とくに安全保障面での関係を戦後でも最も緊密で安定した状態にすることに寄与したといえる。

 確かに私も加藤氏の大使としての活動をかいまみて、どのボタンを押せば、どのベルが鳴って、どのドアが開くというワシントンの政治メカニズムの基本を熟知し、とにかく効率よく動いているように映った。

 だが加藤氏のような人事の軌跡はいまの日本外交では例外中の例外である。そしてその点にこそ日本外交の欠陥があるのだといえる。駐米大使ポストも加藤氏の前までは外務事務次官を務めた人物がスゴロクのあがりのように最終勤務として自動的に就任するという慣行があった。適材適所の原則よりも官僚の年功序列が優先される人事だった。

 だから駐米大使がワシントン勤務はもちろん、米国勤務も初めて、英語国に在勤したこともないという例も珍しくなかった。在勤も3年平均で、やっと慣れ始めたころに離任という繰り返しだった。米国政府関係者から「あの大使の英語は理解できない」と評され続けた日本大使もいた。

 だがそれでもワシントンはましな方だといえる。大使の選任は一般に赴任国の言葉も知識もまったく無関係、外務省の入省年次が最大基準となってきた。「美味のパイ」をできるだけ多くの人間に満喫させるかのように、古い外務官僚にできるだけ多くの大使勤務を経験させるような人事が横行してきたからだ。

 日本の大使たちの任期が極端に短いことは、すでに国際的な定評となっている。2年未満の駐在はざら。最短ではレバノン駐在の特命全権の日本大使が在勤1カ月だけという信じられないような実例があった。ベトナム大使の在勤正味わずか8カ月、その後は韓国やフランスの駐在大使を高スピードで三段跳びという例もあった。本人には楽しい体験かもしれないが、日本国代表にあっという間に去られてしまう相手国の心情はどうだろう。そして日本外交としての効率はどうか。

 日本外交のシステムでは大使の下で働く公使や書記官たちの任期も短い。外務官僚ならば1回の在外勤務は平均2年間なのだ。海外に家族を連れて赴任し、見知らぬ土地に居を構え、新任務に取り組むという作業には2年がどれほど短く、非効率か、一般企業なら熟知しており、そんな人事はまずしないだろう。

 だが日本外交ではたとえばワシントンの日本大使館で最も長期の蓄積が求められる米国議会担当の公使でも2年たらずで替わってしまうのだ。この官僚の1カ所勤務2年というサイクルは国内でも同様のようだが、根拠はなんなのか。ひょっとして日本人が50代で完全に衰えてしまった明治時代の寿命サイクルに合わせた遺物ではないのか。

 こうした従来のパターンを破った加藤大使の人事も1つだけ旧習に従っていた。駐米大使ポストがスゴロクのあがりということである。ご本人が政府を離れ、長い年月、ワシントンでせっかく積み上げた経験も知識も日本国の外交に直接、生かされることはなくなってしまうようなのだ。 

写真は加藤良三大使です。
帰国後はプロ野球のコミッショナーになる予定だそうです。

駐米大使の加藤良三氏



なお日本の外交の人事面の特異性については、私はかつて調べたことがあり、その結果が単行本となっています。
『亡国の日本大使館』(小学館)という書です。日本の外交官たちの実名を多数あげて、実際のケースを多々、紹介しています。

出世スゴロク人事、化石のような階級差別、邦人保護もできない総領事館、欺瞞だらめの改革論議ーーー

 


拉致議連(正式名称は「北朝鮮に拉致された日本人を救出するために行動する議員連盟」・平沼赳夫会長、安倍晋三顧問)が203議員の連名で5月27日、アメリカ向けに緊急決議を採択し、発表しました。米側の政府と議会の両方に伝達されます。

この決議の趣旨は北朝鮮の核兵器開発問題で安易な妥協をして、北朝鮮をアメリカ政府の「テロ支援国家指定リスト」から外すようなことはしないでほしい、という簡潔な要請です。もし米側がその指定解除に踏み切るならば、日本側としては反対し、アメリカと北朝鮮との「核合意」さえも認めないことを明確に表明し、場合によっては六カ国協議から脱退する、と示唆までしています。きわめて強い対米要請、いや対米警告ということもできるでしょう。決議は衆参両院203人の議員たちの連名となっています。

この動きの背後にあるのはもちろん横田めぐみさんに象徴される北朝鮮当局による日本人拉致事件です。この悲劇がなお解決されていないことによります。

           
寺越昭二さん
(1963年5月)
寺越外雄さん
(1963年5月)
寺越武志さん
(1963年5月)
加藤久美子さん
(1970年8月)
古川了子さん
(1973年7月)
久米裕さん
(1977年9月)
松本京子さん
(1977年10月)
横田めぐみさん
(1977年11月)
田口八重子さん
(1978年6月)
市川修一さん
(1978年8月)
増元 るみ子さん
(1978年8月)
曽我ミヨシさん
(1978年8月)
       
小住健蔵さん
(1980年)
原敕晁さん
(1980年6月)
       
           

■平成14年10月15日に帰国した5人

         

地村 保志さん
(1978年7月)
地村富貴恵さん
(1978年7月)
蓮池薫さん
(1978年7月)
蓮池 祐木子さん
(1978年7月)
曽我ひとみさん
(1978年8月)

■海外で拉致された方(年代順)


今回の決議は拉致議連の代表の平沼赳夫議員らが昨年11月にワシントンを訪問し、米側の政府、議会の当事者たちと面会して、日本側からの要求を強くぶつけた活動の延長上にあります。

今回の決議は拉致問題だけでなく核問題にまで具体的に踏み込んで、いまアメリカが国務省主導で進めている北朝鮮との間の「合意」がいかに欠陥だらけであるかを指摘した点も特徴です。

しかし繰り返しですが、背後にある日本にとっての最大の課題は自国民が拉致されたままでいる、ということです。以下の写真の横田めぐみさんがその代表例でしょう。もちろん他の被害者の方々の悲劇も最大限に語られ続けられねばなりません。

中学に入学しためぐみさん=昭和52年(横田夫妻提供)  

山口県萩市に家族旅行。めぐみさんの洋服はお母さんの手作り=昭和50年(横田夫妻提供)



さて、27日に採択され、発表された決議の日本語、英語の全文を以下に掲載します。繰り返しですが、この決議を生む日本側議員による外交努力は昨年11月に続き、今年4月にも「救う会」「家族会」との連携によって、ワシントンを舞台として、きわめて地味ながら精力的に継続されてきたからです。以下が全文です。



拉致議連緊急決議

「核と拉致の両面で無原則な対北譲歩をしてはならない」

 

 わたしたち「北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟」は、昨年来、北朝鮮が「完全かつ正確な」核開発計画申告を行っておらず、拉致問題が一切進展していないなかで、米国がテロ国家指定を解除するなら、日米同盟に深刻な危機が訪れると警告してきた。

 
 昨年11月に平沼赳夫議連会長をはじめとする7人の議員が家族会・救う会代表とともに訪米し、政府、議会関係者にそのことを伝えた。それを受けて米議会では国務省の交渉姿勢に対する批判の声が高まり、5月下院で安易なテロ国家指定解除を禁じる法案が可決された。5月はじめに議連役員が家族会・救う会代表とともに再訪米したが、そこでヒル次官補は核爆弾製造工場について「情報を得ていない」と明言した。

 北朝鮮は、ウラン爆弾開発計画とシリアなどへの核拡散については否認し続け、プルトニウム爆弾開発計画についてもプルトニウム量だけに議論を矮小化し、肝心の核爆弾の数や核爆弾製造工場を不明にしたまま開き直おろうとしている。拉致についても「解決済み」と強弁し続けている。

 北朝鮮の中距離核ミサイルはわが国にとって重大な脅威であり、わが国国民の拉致はわが国主権の侵害である。同盟国である米国が、核と拉致の両面において無原則な譲歩を行うならば、日米同盟の根幹である米国への信頼が大きく揺らぐ。本議連はわが国政府と米国政府に次の点を強く要請する。

 

1 わが国政府は、米国政府が核計画申告と拉致問題の両面で無原則な譲歩をしないよう外交努力を一層強めること。不十分な申告内容で米朝が合意した場合、承認しないこと。

 

2 米国政府は、北朝鮮の核武装と拉致を事実上容認することになる、上記のごとき安易なテロ支援国指定解除を行わないこと。

 

 

平成20527

北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟会長 平沼赳夫

 




League of Parliamentarians for Early Repatriation of Japanese Citizens

Kidnapped by North Korea

 

Urgent Resolution

Urging Refrain From Unprincipled Concessions to North Korea on Nuclear and Abduction Issues.

 

We, the League of Parliamentarians for the Early Repatriation of Japanese Citizens Kidnapped by North Korea, have publicly warned since last year that the US-Japan alliance would be seriously jeopardized if the United States removes North Korea from the List of State Sponsors of Terrorism before North Korea has made a “complete and correct” nuclear declaration and while there has been no progress on the abduction issue. 

 

Last November, seven Diet members representing this League, headed by Chairman Takeo Hiranuma, along with representatives of both the Families of Abduction Victims and its supporting organization, visited Washington DC and conveyed this message to relevant officials of the U.S. Administration and the Congress.  Since then we have noted mounting criticism in the Congress over the negotiating posture of the State Department and followed the legislation passed by the U.S. House of Representatives in May that would prohibit hasty delisting of North Korea from the Terrorism List.

 

Members of this league returned to Washington DC this year in early May, again accompanied by representatives of the Families of Abduction Victims and supporting organization, for additional meetings.  At that time, Assistant Secretary Christopher Hill clearly remarked that the U.S. does not have information on where North Korea’s nuclear bombs are manufactured and that it is a problem.  

 

North Korea continues to deny the existence of its enriched uranium program and nuclear proliferation to Syria and other countries while trivializing the debate on its plutonium development program into merely a question of the quantity of plutonium extracted.  Defiantly, it has obscured critical information about its nuclear bomb manufacturing facilities and actual number of bombs.  Moreover, North Korea steadfastly refuses to discuss the abduction issue, claiming it is already resolved.

 

North Korea’s intermediate nuclear missiles constitute a grave threat to Japan and the abduction of Japanese nationals is a flagrant violation of Japan’s sovereignty.  Should the United States as an ally of Japan ever make an unprincipled concession either on the nuclear front or the abduction issue, Japan’s trust in the United States, which is the basis of the alliance, would be greatly shaken.

 

Therefore, we the League of Parliamentarians strongly urge both the Japanese and the U.S. Governments to adhere to the following:

 

1. The Japanese government should strengthen its diplomatic effort toward the United States so that the U.S. Government would not make any unprincipled concession on either the nuclear program declaration or the abduction issue. If the United States and North Korea ever reach an agreement with an insufficient nuclear declaration, the Japanese government should not recognize the agreement.

 

2. The United States’ government should not lift North Korea from the Terrorist List without a complete and correct declaration of its entire nuclear program and resolution of  the abduction issue or it would amount to de facto acceptance of North Korea’s nuclear armament and its acts of abduction.

 

Adopted:  May 27, 2008

 

 

HIRANUMA, TakeoIndependent

Chairman

 

ABE, ShinzoLiberal Democratic Party, LDP

Senior Adviser

 

NAKAGAWA, ShoichiLDP

Acting Chairman

 

NAKAI, HiroshiDemocratic Party of Japan, DPJ

Acting Chairman

 

HARAGUCHI, KazuhiroDPJ

Vice Chairman

 

YAMATANI, ErikoLDP

Vice Chairman

 

URUSHIBARA, YoshioNew Komeito

Vice Chairman

 

ETO, SeiichiLDP

Vice Chairman

 

NAKAGAWA, YoshioLDP

Vice Chairman

 

NISHIMURA, SingoIndependent

Director General

 

FURUYA, KeijiLDP

Secretary General

 

MATSUBARA, JinDPJ

Acting Secretary General

 

* The League is made up of 203 members from both houses of Diet.

加藤良三駐米大使の離任パーティーは5月13日にワシントンの日本大使公邸で催されました。大盛況でした。日系米人の著名な上院議員ダニエル・イノウエ氏が乾杯の音頭をとったのが印象的でした。

イノウエ議員といえば、アメリカの国政の場では日系人の枠をはるかに越えた超大物です。この日系米人政治家は同じ日系米人のマイク・ホンダ下院議員が推した日本非難の慰安婦決議案には終始一貫、激しい反対を表明し続けました。その陰には加藤大使の活動もあったようです。
ちなみにイノウエ議員は本日5月24日、83歳で結婚式をあげました。相手は日系米人博物館長のアイリーン・ヒラノさんです。イノウエ氏は長年の妻を失い、最近は独身でした。
下は上院で活躍するイノウエ議員の写真です。
















さて、その日系米人に関して、以下のようなエッセイを書きました。
日系米人には珍しいマフィアの大幹部がいて、その人の人生を追ったドキュメンタリー
映画ができるという話です。

【あめりかノート】ワシントン駐在編集特別委員 古森義久
2008年05月24日 産経新聞 東京朝刊 1面

 ■ある日系マフィアの軌跡

 6年半の勤務を終えて近く帰国する加藤良三駐米大使の5月中旬の離任パーティーではダニエル・イノウエ上院議員が乾杯の音頭をとった。惜別の辞を述べた数人のなかにはノーマン・ミネタ元下院議員がいた。

 イノウエ氏は第二次大戦で米軍兵士として負傷し、勲章を得た長老政治家、ミネタ氏はブッシュ政権で運輸長官を務めた。ともに日系二世である。送別側での2人の存在は加藤大使が日系米人リーダーたちとの親交を深めた実績を物語っていた。

 日系米人の米国社会での成功はめざましい。だが個人としては控えめで、地味な人たちという定評がある。ビル・ホソカワ氏の著書「二世-このおとなしいアメリカ人」のタイトルが総括するように、社会では自己を律し、法を守り、家庭には範を示し、静かに生きる人たち、というイメージである。

 だが本当にそうなのか。

 そこで思い出すのは本格マフィアの大幹部だった日系二世ケン・エトー氏の型破りな生き方である。

 関西学院の体操教師を辞めて米国に移住した衛藤衛氏の長男としてカリフォルニアに生まれた彼は第二次大戦後すぐシカゴのマフィアに加わり、バクチの才で組織内をのしあがった。私生活も奔放で派手をきわめ、歌手やダンサーとの結婚と離婚を4回も重ねた。1980年代にはシカゴ北地区のビンセント・ソラノ一家のギャンブルを仕切る大幹部「トーキョー・ジョー」として押しも押されもせぬ地位を築いていた。

 トーキョー・ジョーの名は1983年、全米にひびき渡った。2月の厳寒の夜、シカゴ郊外の駐車場の車内でマフィアのヒットマン2人に至近距離から22口径ピストル3発をも後頭部に向け撃たれたのに、助かってしまったからだった。

 ジョーはその前年、トバク開帳容疑で検挙され、有罪宣告を受けていた。マフィアのドンはジョーが捜査当局との司法取引に応じ、免責と引き換えに、最高幹部たちの犯罪を暴露するのでは、と疑った。そして口封じを図った。ジョーには暴露のつもりはまるでなかったのに、だった。

 ジョーは忠誠を尽くそうとした上層部が自分を消そうとするならば、と暴露証言に踏み切った。シカゴのマフィアの最高幹部たちはその結果、根こそぎ検挙された。ジョーは連邦捜査局(FBI)の保護を受け、身分を変えて地下にもぐった。17年間も身を隠し続けた。

 私はトーキョー・ジョーの軌跡を当時、所属していた毎日新聞に「遥かなニッポン」というノンフィクション連載で詳しく書いた。日本の血を継ぐ日系人でも米国社会では「日本」からいかに遠くへいってしまうか、という意味をこめていた。

 それから20年余り、ジョーの生き方を描くドキュメンタリー映画「Tokyo Joe」がいまほぼ完成した。小栗謙一監督が5年以上もかけて制作したこの作品は英語のナレーションに日本語の字幕をつけ、今年11月には公開の予定だという。

 小栗監督は映画の主眼として「個人としての主体性や自分の存在価値をあくなく求めたケン・エトーというふしぎな人物の『個』を解き明かしたいと思った」と語る。自己を律し、法を守り、突出を避けて生きるとされる日系米人のステレオタイプ(定型化)とはおよそ反対の人物像である。

 米国社会はステレオタイプでは決して集約できない変幻の場だなと改めて感じた。(こもり・よしひさ) 

完成間近!
映画 Tokyo Joe


20世紀後半、マフィア社会でシカゴ五大ファミリーの幹部にのし上がった
ただ一人の日本人、ケン・エトー。その天才的な戦略と、冷酷非情さで
“ゴッド・ファーザー”たちからも恐れられたドンの華々しい栄光の裏には、
語られることの無い多くの物語が隠されていた。
彼を追い続けた元女性FBI捜査官、エレイン・スミスが浮き彫りにする
エトーの素顔とは…。初めて語られる伝説の日系マフィア『TOKYO JOE』の
真実を追う奇跡のドキュメンタリー。

監督:小栗謙一
原作:エレイン・スミス
音楽:ハズマ・モディーン http://www.hazmatmodine.com/

Title Tokyo Joe

Spellbinding documentary about real life Chicago gangland leader, Ken Eto, who rose through the ranks of one of the five major Chicago mob families in the latter half of the 20th century. The only person of Japanese descent to rise to national attention and earn a high profile in an American organized crime syndicate, Eto was known as a brilliant strategist with a steel heart, capable of instilling fear in the hearts of rival bosses. Based primarily on an account by female FBI agent, Elaine Smith, who amassed the most extensive profile on the enigmatic gambling don.

Directed by Kenichi Oguri
Original Story by Elaine Smith
Musical Score:Hazmat Modine http://www.hazmatmodine.com/

  フジテレビと東北新社が共同映画製作始動「TOKYO JOE」
 フジテレビと東北新社が共同で、ドキュメンタリー映画を製作することが決まった。タイトルは、「TOKYO JOE」。日系人マフィアを題材にしたもので、製作費は明らかにされていないが、両社折半となる予定。ドキュメンタリー製作後には、同じ題材で劇映画の製作も視野に入れている。
 「TOKYO JOE」は、東京ジョーと異名をとった日系人マフィア、故ケン・エトーさんの人生を描くもの。ケン・エトーさんは1919年、米カリフォルニアに生まれ、戦後、犯罪に手を染めはじめて、シカゴでマフィアの世界に入った。映画は、ケンさんと親交のあった元FBI捜査官のエレイン・スミスの話を主軸に、関わりの深かった関係者や家族などのインタビューを通して、米国のマフィア社会の裏側を描いていく。監督は、深作欣二監督の助監督を長年つとめ、これまで知的発達障害者のヒューマンドキュメンタリー「able」などを手がけてきた小栗謙一。昨年の12月から米国で撮影に入っており、完成は来年の4月。公開は配給元が現時点では未定だが、来年の秋が予定されている。今回の企画は、奥山和由プロデューサーから、フジテレビの亀山千広プロデューサーに持ち込まれたもの。奥山氏は、「8年前から企画していた。非常に興味深い人物なので、話をもっていったところ、快く映画化を受け入れてもらった」と語り、松竹時代から奥山氏の製作手腕を高く評価していた亀山氏も、「ドキュメンタリーに、関心がある。この題材で、劇映画の映画化も考えている」と語った。
 今年上半期、「LIMIT OF LOVE 海猿」(71億円)や「THE 有頂天ホテル」(60億8千万円)の大ヒット作品を生み出したフジテレビは、現在公開中のアニメ「ブレイブ ストーリー」の製作に関与するなど、今まで以上に製作のバリエーションを広げようと様々なチャレンジを進めている。今回のドキュメンタリーも、そうした幅広い製作志向の一環と見られる。
(8/10)









福田首相がアフリカ諸国向けの政府開発援助(ODA)を2012年までに倍増するという意向を表明しました。5月20日のことです。

日本のアフリカ向けODAは2008年度には約1000億円です。それを2012年までには2000億円程度に増すということでしょう。
アフリカ開発会議というのが28日から開かれるので、それに備えてのPRなのでしょう。

しかし私は日本政府が海外援助に関して、まだいまでも「倍増」などと、数字遊びをしていることに驚きました。数字が増えれば、なにか日本にとってよいことが起きるという示唆でしょうが、「倍増」と「日本への利得」あるいは「日本外交にとってのプラス」との間になんの因果関係はありません。金額だけを誇り、「日本はこれほどアフリカ開発に熱意を注いでいる」なんて、福田首相や高村外相あたり宣言するのでしょうが、空疎です。

町村官房長官がアフリカへの援助増額の理由について、
①国連安全保障理事会の常任理事国入りでの連携
②豊富な資源の獲得
――という二つの点をあげました。

しかしこれまた根拠のない、古い「ODA願望」です。カネをあげれば、相手がこちらの頼みをきいてくれるという願望ですが、これまた根拠はありません。
2005年から2006年にかけての日本の外務省の全組織をあげての常任理事国入りの運動は、戦後の日本外交でも最大の失敗ケースでしたが、このトドメの一撃はアフリカ諸国の「ノー」だったのです。当時も日本はアフリカに豊富にODAを提供していました。しかしなんの外交効果もなかったのです。

ODAを増せば、アフリカ諸国が日本に資源を回してくれる、というのも、夢想のような主張です。

そもそも日本のODAがいかに非効率で、失敗例が多いか。
私は『ODA再考』という書で詳述しています。

「ODA」再考 (PHP新書)

上記の書でアフリカ援助の虚しさに関して、以下のケースを報告しました。

▽1997年に当時の厚相の小泉純一郎氏がアフリカの重点援助国ジンバブエを公式訪問し、ムガベ大統領と会談する予定だったが、待てど、暮らせど、大統領は姿をみせず、完全にすっぽかされた。

▽1997年、ケニアで日本政府からの援助がモイ独裁政権に継続して供されることに対し、一般民衆からの大規模な抗議が起き、「日本大使よ、去れ!」というビラがまかれた。

▽ケニアには日本から1997年までの10年ほどに累計3000億円の援助が与えられたが、この間、ケニアの経済はGDP総額でも、国民一人あたりのGDPでも、逆に縮小してしまった。

そしていま福田政権がアフリカへのODA倍増を宣伝することには次のような問題点があるといえます。

▽日本のODAのシステムにそもそも費用対効果を測定する体系的メカニズムがなく、「倍増」がどんな効果をもたらすかの測定手段さえない。相手国の経済の実態や政権の腐敗などを考慮して、経済援助の効果を確実にする制度もない。

▽世界の経済のトレンドは市場経済の拡大であり、政府から政府への資金の供与であるODAはこの流れに逆行する。相手国の経済成長を望むなら市場経済ベースでの投資や貿易、さらには一般融資を拡大すればよい。

▽アフリカ諸国の間には外国からの援助を多く受け入れた国ほど、経済の成長が鈍くなる、あるいはマイナスになるというケースが多くなってきた。国民の平均所得がODAの受け入れ額に反比例して下がっていった国も少なくない。

▽日本は過去にアフリカ諸国に供与した有償ODAの債権を放棄することをたびたび迫られてきた。つまりアフリカ諸国側の債務をキャンセルしてきた。アフリカ側諸国の一部にはその債務放棄で生まれた資金的ゆとりにより、中国から新たな資金を借り入れた国もあった。

そしてなによりも日本政府のODAというのは日本国民に帰属する公的資金なのです。
もうODAでの「数字遊び」はやめにしてもらいたいところです。

四川大地震の被害はその後も拡大しています。というよりも当初の予測よりずっと犠牲や被害が大きかったことが判明している、ということでしょう。すでに死者だけでも4万を越えたとされています。
中国の犠牲者、被害者の方々には心からのお見舞いを申し上げたいと思います。
被災者で満杯になっている綿陽市内の体育館。行方不明の子供や家族を捜す掲示板でいっぱいになった=19日(野口東秀撮影)


さてその一方、中国政府は5月18日、「各地の核関連施設での地震による放射能漏れなどの被害はない」と発表しました。核施設の「安全が確保された」というのです。
この発表については産経新聞5月19日の記事が「四川大地震 中国政府 核施設『安全』強調 放射能漏れ うわさ警戒」という見出しで報じています。

アメリカ側では中国の軍事動向を研究している専門家たちがこの中国政府発表には最大の注意を向けています。なぜならば、この大地震の震源地となった四川省は中国全土のなかでもとくに核兵器の研究、開発、製造、貯蔵の各面で最も多くの施設が集中的に建設されてきた地域だからです。大地震があれば当然、核関連施設の安全には最大の懸念が向けられます。旧ソ連のチェルノブイリの原子力発電所の事故による放射能放出の恐ろしさは、その理由の一つでしょう。だから米側専門家たちは、四川省の核施設に特別の注意を向けてきました。                                 

 

 しかし四川省が中国人民解放軍にとって全土でも最大級の軍事生産拠点であることは、あまり話題にはなりません。ましてその四川省が中国の核兵器、核戦力の最大施設を抱えてきたことは、日本ではほとんど知られていないでしょう。なにしろ核兵器の惨禍にあった広島県がよりによって核兵器だらけの四川省を友好縁組みの相手に選んでいる(岩波『現代中国事典』による)ほどですから。しかし四川省はとくに核弾頭の開発、製造では中国最大の施設を有する、というのです。

 なぜ四川省にそんな重要な軍事施設や軍事基地が多いのか。これには歴史的な理由があります。

 内陸部の広大な地域を占め、山岳地帯も多い四川省は1960年代から国防上の最重要地区にされてきました。当時の毛沢東主席が軍事上の最重要の基地や施設を沿岸部から内陸部に移すことを目的として進めた「三線建設」の中心が四川省だったののです。
 「三線建設」とは、中国の沿岸部と国境地帯を「一線」、沿岸と内陸の中間を「二線」とし、内陸を「三線」と呼んで、その「三線」にあたる四川、貴州、甘粛、青海などの各省の山岳部に軍事関連の基幹施設を点在させて構築する計画でした。ソ連と険悪な関係にあり、アメリカとも対立する当時の中国が核攻撃を受ける最悪シナリオをも想定し、その場合の被害を少なくするために毛沢東主席が決めた大胆な軍事戦略が「三線建設」でした。


 四川省にはその「三線建設」の結果、建設された多数の重要軍事施設がいまも機能しているというのです。その種の施設で国際的にも有名なのは四川省の省都の成都にある「成都航空機工業公司」でしょう。この巨大な軍事生産施設は中国軍が誇る最新鋭の多目的戦闘機「殲10号」(J-10)を量産することで知られています。

 

しかし四川省の核兵器施設はさらに重要とされます。ワシントンの中国軍事動向研究機関「国際評価戦略センター」のリチャード・フィッシャー副所長は次のように語りました。

「四川省には中国全土でも最重要の核弾頭の開発や製造の一連の施設があります。省内の綿陽地区には核兵器の開発、とくに構造や機能を設計する研究施設があります。廣元地区には核兵器用のプルトニウム製造などの一群の施設があります。この廣元地区の研究所・工場は中国全土でも最大のプルトニウム関連施設であり、大地震で被害を受ければ、放射能漏れの恐れがあります。アメリカ政府もこの点に重大な懸念を抱き、偵察を強化しているようです」

要するに、四川省は中国軍の核戦力にとって最重要地域だというのです。そうした核施設がある綿陽市は省都の成都から北東に80キロほど、廣元市はさらにそこから北東に50キロほどの距離にあります。そして、いずれも今回の大地震の震源地から70キロから150キロという近距離の地域なのです。アメリカ政府もこれら震源地近くの核兵器施設への被害について気にかけるのは、二重三重の意味で当然です。

 

アメリカ政府のこの懸念はニューヨーク・タイムズ5月16日付でも「西側専門家たちは中国の核施設の地震被害を調べている」という見出しの記事で報じられました。記事は四川省の重要核施設で放射能漏れがあったかどうか、アメリカ政府も人工衛星での偵察やその他の情報収集手段を強化してモニターを始めた、という趣旨だった。


 同記事はそしてアメリカの核問題専門家らの情報として、四川省内の核兵器関連施設について①廣元市北東25キロほどの広大な地域に核兵器用プルトニウム製造のための中国最大の原子炉とその関連施設(821工廠と呼ばれる)がある②綿陽市には核兵器の開発、とくに構造設計をする中国最主要の研究所が存在し、実験用の小型原子炉がある③綿陽市の北にはプルトニウムを核弾頭用の小型の球体にする特殊工場がある④綿陽市の西には核弾頭爆発を補強する素粒子開発のための特殊の高速度爆発原子炉がある⑤綿陽市のさらに北の険しい山岳地帯には実際の核兵器を貯蔵する大規模な秘密トンネル網が存在する――などと報じていました。

ニューヨーク・タイムズのこの報道は、核施設への被害については、アメリカ側の官民いずれの専門家たちとも、「現在のところ注意すべき損害は探知されていない」と述べていることを伝えました。この種の軍事用の核関連施設はそもそも有事には敵のミサイル攻撃などを受ける可能性までを想定しているから、外部からの衝撃に耐えるための最大限の防御策がとられており、地震ならいかに激しくてもまず破壊されることはない、という見解も記されていました。

 
 しかし前述のフィッシャー氏は述べています。

「中国の核兵器関連施設というのはそれ自体、すべてが極秘にされる存在だから、それに対する地震の被害の有無というようなことは、重大機密扱いとなります。アメリカ側のその実態を探知しようとする試みも、そのこと自体が機密となります。だから真相は簡単にはわからなず、表面に出た情報だけでの即断は禁物です」

真相はまだまだわからないというのが総括なのでしょうが、中国の核兵器保有の軍事大国ぶりがこういうところでも露呈するということでしょうか。


なおこのテーマについては以下のサイトでも書きました。
関心のある方はご参照ください。


http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/75/

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