2008年05月

チベット問題に関連して、胸に迫る手記を読みました。
いわゆるチベット問題の理解に有益な手記なので、紹介させてください。

いま発売中の文藝春秋6月号に掲載された「私は見た 中国の『洗脳・密告・公開処刑」という論文です。副題に「チベット亡命医師の手記」とあります。
筆者は武藏台病院副院長の西蔵ツワン氏です。

西蔵氏は本来の名をツワン・ユーゲルというチベット人で、シガツエという町に生まれ育ち、中国軍がダライ・ラマやチベット政府、指導者らを追放し、粛清し、軍事支配を確立した1959年には7歳でした。

このシガツエというのは、チベット地区ではラサに次ぐ第二の都市(といっても小さな市ですが)で、私も実は訪れたことがあります。ラサ同様に、大きな寺院が町の中心であり、住民の信仰の深さを印象づけていました。

ツワン少年は以後、中国の軍や共産党の要員がチベットの宗教や文化を骨抜きにし、僧侶を抑圧し、高僧を公開処刑するというような弾圧の進行を目撃し続けます。高僧も上層階級も「人民から搾取し、土地を奪った」という罪で抗弁は許されず、後頭部に一発、銃撃を受けて、射殺されるという光景を何度もみたそうです。

あまり詳しくこの「手記」の内容を紹介すると、文藝春秋に叱られそうです。
とにかくツワン少年はこの中国支配のチベットで3年を過ごし、10歳のときに、父親に連れられて、ヒマラヤを越え、ネパールからインドへと脱出しました。インドのダラムサラのチベット亡命政府に身を寄せ、ダライ・ラマから選ばれて、イギリス式の教育を受けた後、1965年、13歳のときに日本に送られてきました。目的は教育です。

日本では小学生の教科書で日本語を学ぶところからスタートし、やがて埼玉医科大を卒業し、1981年に日本の医師国家試験に合格し、87年には日本国籍を取得、つまり日本国民になったそうです。日本名の西蔵というのはもちろんチベットのことです。

私はこの西蔵医師の手記を読み、感動しました。こういう人がいたのか、と驚きました。
日本在住のチベット人といえば、ペマ・ギャルボさんしか知らなかったのだから、私が単に無知だったということかも知れません。


西蔵ツワン医師の写真です。同医師主宰のNPOのサイトからコピーさせていただきました。





 


















西蔵医師のNPOの活動についての記述も引用します。
同じサイトからのコピーです。

 


この度は、NPO法人「BODAIJYU」の発足にあたり心からお祝い申し上げます。
1959年、中国軍のチベット侵攻により約6万人のチベット人がインドに亡命し、以来48年間母国に帰れることを夢見ながら難民生活をおくっています。

私は42年前、埼玉医科大学前理事長・丸木清美先生の招聘のもと、チベット難民のひとりとして来日しました。チベット同胞のための医療貢献を目指し、27年前に医師となりました。故丸木清美先生をはじめ、多くの恩師がこうしたチベットの現状を理解され、私を育ててくださったものと感謝しております。

以来、多くの諸恩人方のお考えを引き継ぎ、医師仲間とともにチベット難民に対する医療と教育を中心とした支援活動を行ってきました。現在、インド、ネパールに50余箇所のチベット難民キャンプがあります。

チベット亡命政府および諸外国の支援によって辛うじて運営されています。チベットの精神的指導者ダライ・ラマ法王は、将来のチベット国のためには人材育成が不可欠であると考えております。若いチベット人に対する近代的教育が第一であると考えております。

こうしたお考えは少しずつ浸透し、現在、インド、アメリカ、ヨーロッパ諸国で教育を受けたチベット人たちが各分野で活躍中です。しかし残念なことに、いまだ人材不足、教育の為の資金不足をはじめ多くの諸問題が山積みされています。

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しかし日本にはいろいろな人たちがいるのだと、改めて痛感しました。
西蔵医師のような人物が日本国民になってくれたことを、ついうれしく感じました。


さて、その一方、現在のチベットでなにが起きたのか。
「フリー・チベット」が発表している写真をまた掲示しておきます。







 アメリカ大統領選の民主党側予備選ではなおバラク・オバマ候補とヒラリー・クリントン候補の死闘が続きます。今日5月13日はウェストバージニア州での予備選です。
白人の労働者層が圧倒的に多いこの州ではクリントン候補の勝利が確実視されています。しかしそれでもなお、全体としてのオバマ候補の優位は揺るがず、このままだと特別代議員を争う戦いももうオバマ勝利の確定となりそうです。

さてこの大統領選挙のプロセスで意外と大きな役割を果たしているのは、ラジオのトークショーです。アメリカの大手マスコミは全体が民主党、リベラルに傾斜するなかで、ラジオのトークショーは圧倒的に保守支持です。トークショーというのは、その番組を主宰するホストがいて、そのホストが政治的なコメントを自由に述べて、一般聴取者が電話で参加するという構成です。

このトークショーの全米第一の人気者はラッシュ・リムボウ氏です。この人は政治評論家と呼んだほうがよいほど政治を一貫して語り、しかも膨大な聴取者と影響力を誇っています。その放送はなんと月曜から金曜まで連日、3時間、全米に流されます。この3時間、リムボウ氏がほとんど話し続け、リベラル批判、保守擁護の内容をアピールし続けるのです。首都のワシントン地区でも正午すぎから午後3時まで、最も人気のあるAM放送局から流されています。

リムボウ氏はユーモア混じりの保守派ポピュリストともいうべき話し方で、リベラル派の矛盾や失敗をおもしろおかしく語ります。なにしろ保守本流を宣言していますから、つい最近までは共和党のジョン・マケイン候補にも反対を表明していました。しかしいまはマケイン支持、しかも同時に自分の番組を聞く共和党系の人たちに「民主党に一時的に登録して、予備選でヒラリーに投票せよ!」と訴えています。狙いは民主党側のオバマ候補の勝利確定を遅らせ、民主党内の対立を激化させ、延長させることだというのです。

なにしろリムボウ氏の番組を聞く人の数は全米で一日2000万とも3000万とも言われています。ラジオ放送の専門調査では毎週1400万という数字も出ていますが、いずれにしてもリムボウ氏がアメリカで最も聴取者の多いトーク番組の持ち主であることは事実です。

これがラッシュ・リムボウ氏、彼のホームページからのコピーです。
          



以下はこのリムボウ氏の最近の活動について書いた私の記事です。

米国大統領選挙の民主党側予備選でオバマ、クリントン両候補の対決が過熱するなかで、全米一の聴取率を誇る保守派のラジオトーク番組を持つ政治評論家ラッシュ・リムボウ氏が各州の共和党支持者に民主党へ一時的に登録し、予備選でクリントン候補に投票することを呼びかける作戦を展開していることが大きな話題となってきた。この作戦の狙いは民主党側の対決を長引かせて分裂を深め、共和党側を有利にすることにあるという。

   
 リムボウ氏は全米で毎日2000万とも毎週1400万とも推定される圧倒的最多数の聴取者を持つラジオトーク・ショーのホストで、その評論は保守に一貫し、リベラル派の政策や言動をユーモア交じりに徹底して批判することで定評がある。

 リムボウ氏はバラク・オバマ候補の優位が顕著になった3月はじめのテキサス州やオハイオ州での予備選直前から共和党層や保守層に民主党側に一時登録して、ヒラリー・クリントン候補に投票することを繰り返し訴えるようになった。リムボウ氏はこのアピールを「混乱作戦」と呼び、オバマ候補の指名確定を先延ばしにすることが目的だと公言した。

 テキサスの政治評論家のデーブ・マン氏は「共和党や中立層から転進した民主党有権者はそれまでの各州ではオバマ候補により多く投票するパターンが確立されていたが、テキサス州やオハイオ州では逆転し、クリントン候補への票が多くなった」と述べ、「混乱作戦」の効果を認めた。この両州での勝利が結果的にクリントン候補の寿命を延ばし、勢いを増した。

 同作戦の効用がさらに語られたのは5月7日のインディアナ州予備選。ワシントン・ポストは8日付第一面で「リムボウ氏がインディアナ州の結果を変えたか」という記事を掲載し、共和党側の登録有権者も民主党の投票に自由に参加できる同州ではとくに「混乱作戦」の効果が大きかったようだと報じた。

 同報道によると、クリントン候補が僅差で勝ったインディアナ州では民主党予備選投票者の10%が共和党員だと判明し、しかもその10%のうちの多数派がクリントン候補に投票しながらも、その6割は本番選挙では共和党候補に投票すると答えたという。

前回の民主党大統領候補で今回はオバマ氏を支持するジョン・ケリー上院議員も「リムボウ氏が民主党予備選に不当に介入し、クリントン候補の票を増やしている」と述べる一方、オバマ選挙陣営のデービッド・プラウフ代表も「リムボウ氏は民主党側予備選での得票結果の明白な変動要因だ」と語った。

 報道と選挙の相関関係を研究する「エディソン・メディア研究所」のジョー・レンスキ次長はペンシルベニア、ミシシッピー両州の民主党予備選でもリムボウ氏の呼びかけがクリントン票を大幅に増やしたと言明している。

 

中国の胡錦涛国家主席も訪日を終えました。
夕食会で乾杯する、中国の胡錦濤国家主席(左)と福田首相=8日夜、首相官邸


注視すべき動きは多々ありましたが、ここでは胡主席が福田康夫首相とともに発表した日中共同声明について、もう一度、考えてみます。

長文の声明文を読むと、何回も何回も出てくる言葉と、当然、出てきてもよいのにまったく出てこない言葉が、おもしろいコントラストを描きます。

出てこない言葉です。

民主主義:0
人権:0
自由:0

さあ出てくる言葉です。

協力:19回
平和:16
互恵:9
友好:8
発展:7
安定:6
理解:5
信頼:4
未来:3
歴史:1
長期:1
将来:1

 この共同声明は言うまでもなく、日本側からすれば中国という重要な大国への接し方の基本をうたった文書です。
  協力、平和、互恵、友好、発展などなど、実に多数で多様な概念をうたっています。いずれも日本が目指すことを約した概念であり、目標です。しかしそれらのなかには、日本の国のあり方、国民の生き方のそのものを支え、律している基本概念はまったく出てこないのです。
 それらの概念とは、民主主義、人権、そして自由だといえます。

 いまの日本という国家はどんな思考や価値観の上に成り立っているのでしょうか。
 まず民主主義でしょう。
 国民が自らを統治する国家や政府の枠組み、そしてその内容を自由に決められる政治制度が民主主義だといえましょう。複数の政党、複数の政治指導者のなかから国民自身がトップを選ぶわけです。統治される側が統治する機構を決め、選ぶ、ということです。国家権力というのが国民自身の権力であるシステムです。
 この民主主義をまったく除外したら、いまの日本は国家としての意義を失うでしょう。民主主義とはわが日本国にとっては、それほど致命的に重要な基本的価値観なのです。

 もっとも民主主義の価値は国際的にもほぼ全世界で認められているといえましょう。現代の人類にとって、国際社会にとって、普遍的に受け容れられた価値観だということです。

 個人の人権や自由も日本社会の最重要部分です。俗っぽくいえば、日本国民が時の首相を非難しても、政権党の政策を批判しても、逮捕されることはない自由だといえます。日本国民が自分の望むままに生活し、行動し、結集し、発言し、移動し、という自由であり、権利です。自分の好きな思想、宗教、理念を信じ、唱え、表現するという人間の個人としての基本的権利でもあります。

 民主主義をはじめとする以上の基本的価値観は日本および日本国民が外部世界に顔や体を向けたときも、消えてなくなるはずはありません。たとえ中国と接するときにも、自分たちの側の指針としては巌と存続しているはずです。中国に向かって、それを叫び、押し付けることはしないにせよ、自らの言動の指針としても、一切、禁句のように沈黙を保ってしまうべきテーマでもないはずです。

 ところがこの日本の中国への接し方をうたった長文の日中共同声明には、民主主義、人権、自由という言葉は日本側だけの指針としても、まったく出てこないのです。
自分たちが信じ、頼る基本的な価値観を一言も表明できない「共同声明」とはなんなのでしょうか。

国会に入る胡錦濤・中国国家主席(右)を出迎えた河野洋平・衆院議長=8日午前9時57分、国会(酒巻俊介撮影)


朝食会に臨む(左から)海部元首相、森元首相、中国の胡錦濤国家主席、中曽根元首相、安倍前首相=8日午前、東京都内のホテル

中国の胡錦濤国家主席の来訪が日本をにぎあわせています。
アメリカ側の反応はきわめて控えめです。
大手新聞各紙でも胡主席訪日のついての記事はなかのほうの小さな扱いばかりです。見出しは「中国の指導者、訪日で親善を求める」(ニューヨーク・タイムズ)という感じです。
どの記事も、胡主席が北京五輪を控えて、中国の対外イメージをよく保たねばならず、そのためにはまず日本との友好を誇示したいのだ、という感じの解説をつけています。しかしその実態となると、以下のような記述がウォールストリート・ジャーナルの記事に出ていました。

「胡氏と福田首相が両国間の懸案をなに一つ、解決はしなかった。とくに日中両国はともにガス田を開発しようとしている東シナ海の海域に関し対立している。(が、なんの対立の解消もなかった) 福田首相は『大幅な前進が可能かも知れない』と述べてはいたが、5月7日の首脳会談の唯一の公式合意は東シナ海を『平和と協力と友好の海』にするという記述だけだった」

さて福田、胡両首脳が調印した日中共同声明の内容をそこで使われた単語の登場頻度から分析すると、以下のようになるようです。
この解析は東京で胡訪日を綿密に取材している私の知己の敏腕記者(産経新聞記者ではありません)が自分の使用後に示してくれたものです。

共同声明に出てくる用語とその登場回数です。

その前に出てこない重要な言葉を先にあげておきましょう。

民主主義:0
人権:0
自由:0

さあ出てくる言葉です。

協力:19回
平和:16
互恵:9
友好:8
発展:7
安定:6
理解:5
信頼:4
未来:3
歴史:1
長期:1
将来:1


ちなみに前回の1998年の日中共同声明では「友好」が12回、しかしその一方、「歴史」については特別扱いで一段落をさき、ながながと日本側に叱責を述べていました。

まあ、全体として「歴史」が減って、「協力」が増えたということでしょうか。

しかし日本にとって現実に脅威を受け、国民の生活や生命さえ脅かされる中国の軍拡、尖閣への領有権主張、ガス田問題、毒ギョーザ、中国での年来の反日の教育や展示などは、実際にはなにも触れられていません。まあ親中の福田首相への期待には最初から限度があるのでしょう。

でもこの胡主席訪日に対し日本側が草の根レベルで示した反対や抗議、不快感は、福田首相らの対応とはコントラストを描き、日中関係の真実を期せずして照らし出したといえましょう。その意味では主席の訪日は価値があったのかもしれません。

胡主席は中国側からみて重要とみなす各界要人と次々に会いましたが、下はそのプロセスでの創価学会の池田大作氏との会談の写真です。



会談を前に創価学会の池田大作名誉会長(左)と握手する、中国の胡錦濤国家主席=8日午後5時41分、東京都千代田区のホテルニューオータニ(代表撮影)


しかし胡主席の日本側との会談でほぼ唯一の清涼剤となったのは、安倍晋三前首相の発言でした。胡氏と歴代首相経験者たちとの朝食会で、安倍氏は多くの日本国民が気にしているのに、福田首相はオクビにも出さない主張をきちんと述べたのです。
この主張の冒頭は中国が小泉首相の会談を拒み続けたことへの強烈な批判です。

朝食会での安倍晋三前首相の発言要旨は次の通りです。

 戦略的互恵関係の構築に向け、相互訪問を途絶えさせない関係をつくっていくことが重要だ。国が違えば利益がぶつかることがあるが、お互いの安定的関係が両国に利益をもたらすのが戦略的互恵関係だ。問題があるからこそ、首脳が会わなければならない。

 私が小学生のころに日本で東京五輪があった。そのときの高揚感、世界に認められたという達成感は日本に対する誇りにつながった。中国も今、そういうムードにあるのだろう。その中で、チベットの人権問題について憂慮している。ダライ・ラマ側との対話再開は評価するが、同時に、五輪開催によってチベットの人権状況がよくなったという結果を生み出さなければならない。そうなることを強く望んでいる。

 これはチベットではなくウイグルの件だが、日本の東大に留学していたトフティ・テュニヤズさんが、研究のため中国に一時帰国した際に逮捕され、11年が経過している。彼の奥さん、家族は日本にいる。無事釈放され、日本に帰ってくることを希望する。



 

日本国内の大方の関心が中国にからむ諸問題に向けられている間に、北朝鮮による日本人拉致問題をめぐっての日米間の重要な動きがワシントンでありました。

なおこれに関連するテーマについて私は他のインターネット・サイトでも報告をしています。そのサイトのアドレスは以下のとおりです。

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/74/

4月28日から5月3日まで、拉致問題の「家族会」の増元照明氏、「救う会」の島田洋一氏、恵谷治氏らが「合同訪米団」を結成してワシントンを訪問しました。公式な主目的は米側の人権団体が組織した「北朝鮮人権週間」の行事に参加することとされていましたが、現実にはアメリカの政府や議会に対し、改めて拉致問題の解決への協力を要請し、ブッシュ政権が核問題での不完全な「合意」を理由に北朝鮮を「テロ支援国家」指定から解除してしまうことがないよう訴えることがより大きな目的でした。

この合同訪米団には一歩、遅れて民主党の松原仁衆議院議員、自民党の中川昭一衆議院議員が加わりました。同様の訪米団は昨年11月にも平沼赳夫議員を団長として、ワシントンを訪れています。そのときとくらべて国会議員の参加はずっと少なかった
のですが、今回も非常に大きな成果をあげたといえます。

今回の訪米団は米国政府のクリストファー・ヒル国務次官補はじめ国家安全保障会議のデニス・ワイルダーアジア上級部長、デービッド・シドニー国防次官補代理らと会談する一方、議会では共和党のサム・ブランバッグ上院議員、イリアナ・ロスレーティネン下院議員ら多数の関係者と面会しました。

この一連の会談では日本側は拉致問題解決への協力の要請とともに、北朝鮮の核兵器開発問題での安易な妥協への反対を繰り返し、表明しました。ブッシュ政権がもし北朝鮮の核兵器に関する不十分な「申告」をそのまま受け入れ、引き替えに北朝鮮を「テロ支援国家」リストから外した場合、日本の北朝鮮への経済制裁を骨抜きにし、拉致問題の解決を阻む、という主張を再三にわたり伝えました。

日本側関係者の報告によると、この一連の会談では松原仁議員の発言が鋭く米側に迫り、大きな効果があったそうです。やはり国会議員の代表としての発言という部分が重みを発揮したのでしょうが、松原氏自身の的を射た遠慮のない意思表明の迫力も大きかったようです。日本の政治家の間でもアメリカに対して、堂々と自己を主張する人材が増えてきた、ということでしょうか。

その松原議員が先頭に立ってのヒル国務次官補との会談の内容を以下に紹介します。

Picture of Christopher R. Hill










ヒル国務次官補と拉致被害者家族会など合同訪米団面会/詳報
 
2008.5.3 18:34

 複数の出席者が明らかにした2日の拉致被害者「家族会」などの合同訪米団と、ヒル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)との面会の主なやりとり。(ワシントン 有元隆志)

【核問題】

  松原仁拉致議連事務局長代理(民主党) あえて核問題から聞きたい。

 ヒル氏 今日は核をやるのか、拉致をやるのか。

 松原氏 核についてまず聞きたい。北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除するハードルがどんどん下がってきているのではないか。核についても完全かつ正確な申告をしないと指定を解除しないという話になっているが、完全な申告の中身もどんどんハードルが下がっているのではないか。たとえば北朝鮮の核爆弾を製造した施設の場所がどこにあるか。当然、完全な申告の重要な部分のはずだが、情報をとれているのか。

 ヒル氏 核問題には核拡散、ウラン濃縮プルトニウムの3点がある。

拡散ではシリアの問題で北朝鮮側と突っ込んだ議論をしてきた。彼らはシリアとの現在進行形の核計画はないといっている。米情報機関もそのようにみている。ただ、過去に北朝鮮とシリアが、共同で核開発をしていたのは間違いない。現在、合同核計画がないのはイスラエル軍による空爆のおかげだ。

 ウラン濃縮による核計画については、過去はやっていたが、いまはやっていないということなのかと何度も聞いている。北朝鮮が140トンのアルミ管を外国から手に入れたことは間違いない。これは核開発にしか使えない性質のものだ。遠心分離機にしか使えない。よいニュースとしては現在遠心分離機には使われていないことを確認している。悪いニュースはミサイル部品として使われていることだ。

 プルトニウムによる核計画に関しては、米国の5人のチームが寧辺にある施設の無能力化の作業を続けている。プルトニウムの保有量は30キロから50キロの間のどこかだろう。すでに核爆弾になっているものもあるだろう。問題はプルトニウムがテロ集団に簡単に渡せるような状態にあることだ。

 自分たちの第一の仕事は、北朝鮮がどのくらいのプルトニウムを抽出したのか検証することである。どこにあるのかも検証する必要がある。

 申告内容のハードルを下げていると批判する人が米国にいることは自分も承知しているが公正でない。例えば、米外交官を現場に送り、アルミニウム管の状態をみた。そういうこともやっている

松原氏 いい加減な合意をするなら、米国は日本よりも北朝鮮を重視しているとみざるをえない。

 ヒル氏 北朝鮮との関係は米国にとって重要でない。日本との関係とは比べものにならない。米朝で決めているといわれるがあくまで決めるのは6カ国協議である。斎木昭隆外務省アジア大洋州局長ともコンスタントに連絡をとり、いろいろ話をしている。

 松原氏 再度聞くが、核爆弾製造施設の場所を北朝鮮側から情報としてとっているのか

 ヒル氏 いや。それが問題点だ。

【拉致事件】
  増元照明・家族会事務局長 拉致問題を抜きにして、棚上げにして、テロ支援国家指定を解除するのは、圧力を通じ拉致問題を解決しようとしている日本の努力を無にするようなものだ。日本政府から6カ国協議では核問題とともに人権問題も話し合うことになっていると聞いているが、米朝間では核問題しか話されていない。それをもって指定解除することは非常に困る。ヒル氏は北朝鮮が「拉致被害者は死亡した」といっていることを信じて、拉致を棚上げし、核問題を優先しようとしているように思われる。

 ヒル氏 被害者が生きているか自分はわからない。期待値を上げたくない。みなさんが喜ぶことを言わないことにしている。圧力が下がっているといわれるが、米国は多くの圧力をかけている。例えば、日本が北朝鮮の船舶を入港させない制裁を行ったが、そういうことは米国は以前からやっている。

 松原氏 われわれは拉致を現在進行形のテロとみている。テロ支援国家指定を外すのはまったくおかしい。あなたはどういう認識か。

 ヒル氏 私は政策をつくる立場でないし、拉致がテロであるか定義したりする立場にはない。

 北朝鮮の人々は自分が経験したことのないような人たちだ。バルカン半島で戦争している人たちとの交渉にかかわったことがあるが、北朝鮮はそういう人たちとも全然違う。

 松原氏 北朝鮮が誠実に対応するかどうかだ。

 ヒル氏 北朝鮮が誠実であるはずがない。必ずそれは検証しなければならない。

 しばしば東京にいくが、米国大使館のすぐそばにイラン航空の代理店がある。われわれはイランを敵国ととらえており、イランでは米外交官、国民が捕らえられた。なかには私の古くからの友人もいて、最終的に開放されたが、当時の苦痛がいまでも残っている。あなたたちはどう思っているのか。

 松原氏 それは理解できる。

 ヒル氏 北朝鮮には常に圧力をかけている。これ以上の情報はあるのか。

 増元氏 民間団体が認定している36人の拉致された可能性が高い人がいる。拉致と認定された2人の子供もいる。

 

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