2008年10月

 終盤のアメリカ大統領選で「エーコーン」という名前がしきりに語られるようになりました。

 

 ACORN――その英語の名称を翻訳すれば、「共同社会組織即時改善協会」となりましょうか。

 

 民主党リベラル系の政治組織です。公式にはその活動の主眼を低所得層や少数民族の住宅融資、福祉改善、そして政治参加におくとしています。

 

 このACORNが全米の民主、共和の両党が人気を競う競合州、激戦州で有権者登録のキャンペーンを展開してきました。どころがその登録に不正があったことが次々に明るみに出てきました。

 

 ACORNはもちろんオバマ候補を支持しています。その選挙組織の一端とみてよいでしょう。

 

 この動きについて記事を書きました。

 

民主系、有権者水増し 共和党 オバマ氏の関与追及


 

 【ワシントン=古森義久】終盤を迎えた米国大統領選挙戦で民主党系団体による全米規模の有権者登録の不正事件が明るみに出て、波紋を広げ始めている。
 共和党のマケイン陣営はこの団体には民主党のオバマ候補もかかわりがあると非難しているが、民主党側は否定している。

 この団体は「共同社会組織即時改革協会」(ACORN)。公称会員35万、全米各州に支部を開き、少数民族や低所得層の住宅融資や福祉への協力を活動の主眼として掲げる一方、1990年代から民主党の選挙運動を活発に支援してきた。

 

 とくに民主党傾斜の少数民族などの有権者登録の組織、支援を専門とし、今回の大統領選でもオバマ候補への支持を鮮明にしながら1600万ドルの経費を使って全米で合計130万人の新規有権者を登録させてきたと発表している。

 

 ところが、ここ数週間に同協会が直接関与した有権者登録の中で

 

 (1)ペンシルベニア州で25万人の登録申請のうち約5万7000人が不正あるいは不備として却下された

 

 (2)オハイオ州では同一人物が73回も登録を重ねていた

 

 (3)ネバダ州では3000件ほどの不正申請が出て捜査当局が協会支部を家宅捜索し数人を逮捕する一方、テキサス州在住のプロフットボール選手がチーム全員、不正に有権者登録されていた

 

 (4)インディアナ州ではレストランや死者が有権者登録された-などのケースが立証された。

 

 共和党側ではオバマ候補がかつて同協会の顧問弁護士をしていたことや、オバマ選対が同協会の関連組織に有権者登録活動費として83万ドルを払ったことを指摘し、非難し始めた。

 

 14日には共和党全体を代表する形でジョン・ダンフォース元上院議員が「この大規模な不正を放置すれば投票後に必ず深刻な対立が残るので超党派の監視委員会をいま結成しよう」と民主党側に呼びかけた。

 

 オバマ陣営は呼びかけには応じず、「オバマ候補は協会とは直接の関係はなく、協会もオバマ陣営の選挙活動自体には加わっていない」と反論した。

 

 しかしマケイン陣営は協会の疑惑の活動が両候補が激しく争う競合州8州ほどに集中している点も重視し、非難を強める構えをみせている。

 

周知のようにブッシュ政権は北朝鮮を「テロ支援国家」ではないと断定する措置をとりました。

 

日本人拉致事件が未解決のまま、同盟国の日本の官民からの懇請を無視する形です。

 

しかも民主党大統領候補のオバマ氏がこの指定解除を「適切」だとして支持しました。ちなみに共和党のマケイン候補は反対です。

 

この状況に対し、わが麻生太郎首相はどう反応したのか。

 

それがどうも不十分のようなのです。

 

麻生首相がアメリカでどんな評価を受けているか。

この点は別のサイトに詳述したので、参照してください。http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/85/

 

 

麻生首相の北朝鮮「テロ支援国家」指定解除に対する言葉での対応については、拉致問題の「救う会」の島田洋一副会長が幅広い材料を集めて、がっちりと論評しています。

 

その島田氏のサイトからいろいろ引用、転用させていただきました。

 

 島田氏はまず麻生発言に対し「危惧」を強く表明し、次のように記しています。     

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昨年来、米政権の北朝鮮政策に詳しいあるアメリカの専門家が、繰り返し次のように述べていた。

 

米朝がどんな形で妥協しても、結局日本は付いてくる。彼ら(国務省)はそう高をくくっているThey take Japan for granted.)。

 

下記、麻生首相の反応中、「きちんとやったほうがいいというので」「一つの方法だと思う」「6カ国協議をさらに進めていくときに今後いろんな交渉の過程で」といった言葉は、まさに国務省の思惑通りのものだ。危惧の念を覚えざるをえない。

 

検証過程で北に拒否権を認めた今回の妥協は、到底「きちんと」と表現してよいものではない。

 

 上記専門家は、「日本が六者協議のフェイズ2(第二段階)で、安易に米朝合意に賛成してしまえば、フェイズ3での北朝鮮への軽水炉供与問題で、日本に莫大な額の請求書が回ってくるだろう。フェイズ2で、あくまで筋を通せるかが日本にとっての勝負どころだ」とも強調していた。

 まったくその通りである。6カ国協議をさらに進めていくときに今後いろんな交渉の過程で」などとのんびり構えていてよいときではない。

 

 詳しくは、別にエントリを立てるが、日本は、今回の米朝野合(北が認めた場合にのみ未申告施設に立ち入り調査できる。すなわち事実上、検証を放棄したもの)を六者の場で追認せず、「未申告の施設についても、国際原子力機関IAEA)が必要と認める場合、北は査察を受け入れる」といった対案を提出し、原則的姿勢(原則にはずれたことには今後ともカネを出さない)を強く打ち出すべきだ。

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 島田氏は資料として以下の記事を紹介しています。

 

{テロ指定解除}麻生首相発言要旨

10/12 21:30更新

 米国による北朝鮮へのテロ支援国家指定解除に関する浜松市内での麻生太郎首相の発言要旨は次の通り。

 

 ――拉致被害者家族に不安が広がっている

 

 「北朝鮮の非核化には、検証を実質的にやれる枠組み作りが一番。6カ国協議でも、この話は北朝鮮以外はみな一致(している)。その実質的な検証ができる枠組み作りが全然進んでおらず、それを取るために米国テロ支援国家指定解除を利用した。昔から米国はこの方法が実効が上がるとずっと言っていた。まったく動かない状況のまま置いておくより、きちんとやったほうがいいというので(解除に)踏み切ったと理解している。一つの方法だと思う

 

 ――拉致問題に関する交渉のてこを失うのでは

 

 「(質問を遮るように)全然ありませんね。全然見解が違う。少なくとも拉致被害者の家族のことに関しては、(ブッシュ米大統領との)電話の時もブッシュ大統領の方からその話はしていましたし、きちんとした対応がなされていると思う。6カ国協議をさらに進めていくときに今後いろんな交渉の過程で十分に拉致の話ができる。これでてこを失うなんてことは全くない」

 

 

イザ!ニュース

 【テロ指定解除】正念場の麻生政権 米朝合意を承認すれば北の核兵器保有黙認にも

08/10/13 01:16更新

 米国による北朝鮮へのテロ支援国家指定解除で、拉致問題を抱える日本は厳しい対応を迫られることになりそうだ。麻生太郎首相は12日、拉致問題への影響を否定したが、6カ国協議などで拉致問題が置き去りにされるとの懸念を払拭(ふっしょく)することはできない。

 

 麻生首相は12日、「(核問題が)動かない状況のまま置いておくより、きちんとやったほうがいい」と指定解除に一定の理解を示した。拉致問題解決に向けた交渉上のテコを失う可能性に関しても「全然ない」と否定した。日本青年会議所(JC)全国会員大会に出席のため訪れた浜松市内で、記者団に語った。

 

 指定解除で、政府は今後、拉致と核の2つの問題をめぐり、正念場を迎える。首相は11日のブッシュ米大統領との電話会談についても「(拉致問題は)こちらから言う前に、大統領の方から話していた」と述べたが、楽観的な「公式見解」とは裏腹に、厳しい局面に立たされている。

 

 指定解除は、北朝鮮の核施設の検証の枠組みに関する米朝基本合意に基づくが、河村建夫官房長官らが「さらに確認すべき点が残っている」と指摘したように、日本が納得できるものではなかった。

 

 米朝合意は、北朝鮮の申告書に含まれない疑惑施設の査察には「双方の同意」が必要とされるほか、ウラン濃縮による核計画の検証は先送りされるなど「事実上、核兵器の『検証の放棄』を合意したものだ」(拉致被害者を救う会幹部)ともいえるからだ。

 

 指定解除自体は、第一義的に米国内法の問題であり、日本は米政府の決定を受け入れざるを得ない。だが、米朝合意の結果を、6カ国協議の総意として了承することには、「北の核の脅威を最も強く受けている日本として認めてはならない」(閣僚経験者)との意見もある。ここで譲れば、麻生政権への弱腰批判が起きる可能性もある。

 

 「6カ国協議プロセスを動かしたいとの米国の意向に協力することはやぶさかではないが、拉致問題が置き去りになってはいけないという強い思いがある」

 

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【テロ指定解除】米の専門家は「反対」

【ワシントン=古森義久】米国のブッシュ政権が北朝鮮テロ支援国家指定を解除したことに対し、米国政府でかつて北朝鮮問題を担当してきた専門家2人が11日、産経新聞とのインタビューで、いずれもこの解除措置やその根拠とされる米朝間の検証をめぐる合意が不適切だとして反対する見解を明らかにした。

 ■チャック・ダウンズ氏

 テロ支援国家指定解除はきわめて無謀な措置であり、その根拠とされた検証関連の枠組みも含めて論理にあまりに反している。

 国務省主導の最近のブッシュ政権はとにかく外交面、とくに北朝鮮核問題に関して何かを成し遂げたという「成果」を誇りたいあまり、譲歩や妥協を重ね、北朝鮮にいかに最小限でも、何かを受け入れさせることに腐心してきた。

 今回の合意でもブッシュ政権は北朝鮮の核兵器開発計画の全体像を無視している。どこにどのような核物質があり、核ミサイルの配備がある、という諸点を把握しているとは思えない。それなのに北朝鮮に最大限の報奨を与えてしまった。

 北朝鮮はいまも韓国にスパイや刺客を送りこみ、脱北者の暗殺をはからせている。これだけでもテロ支援国家の要件は十二分だ。しかも金正日総書記の消息も明確ではない。

 こんな時期に米国政府が貴重な同盟国・日本の拉致事件の解決努力を痛めつける形で、「北朝鮮はテロ国家ではない」という手続きをとることはあまりに不適切だといえる。

 今回の検証枠組みは、基本的には米側が北朝鮮の言辞に依存することが前提となっている。北朝鮮の言葉がいかに現実の行動とはかけ離れているか、これまでの実際の行動や考察により、あまりに明白だろう。

 【プロフィル】チャック・ダウンズ 先代のブッシュ政権や現ブッシュ政権の国防総省、国務省で北朝鮮核開発を含む朝鮮半島問題を担当

 ■デービッド・アッシャー

 今回のテロ支援国家指定解除は、米側が北朝鮮の申告する核施設を検証できるとする合意を根拠としているが、まずこの合意がご都合主義であり効果がない。

 北朝鮮の核兵器開発に対し米国や日本が求めるのは、核物質の兵器化や核弾頭ミサイルの配備、核兵器や関連技術の拡散のはずだが、今回の合意はそのいずれも阻止できず、北朝鮮を事実上の核兵器保有国として認知してしまうことに等しい。兵器化や核ミサイル配備に対する予防や阻止の措置も「検証の枠組み」に含まれていないのだ。

 北朝鮮は現在も間違いなく主要な「テロ支援国家」だといえる。シリアへの核兵器開発の技術や施設の拡散だけでなく、イランの「イスラム革命防衛隊」への軍事支援一つをとってもテロ支援国家に相当する。

 その北朝鮮の指定を解除することは日本にとって二重の危険を生むだろう。第一は米朝間の効果のない「核検証枠組み」により、北朝鮮が日本に照準を合わせて核弾頭装着のミサイルの配備を着実に進めることであり、第二は北朝鮮が日本人拉致問題の解決に努める動機を失うことだ。

 北朝鮮への対処には確かに関与が必要だが、同時に封じ込めや抑止も欠かせない。今回のブッシュ政権の動きはその関与だけを先行させ、しかもその関与の内容が空疎となっている。

 【プロフィル】デービッド・アッシャー 2001年から第一次ブッシュ政権で国務省東アジア太平洋局顧問として北朝鮮の核問題などを担当
  

 

大詰めを迎えたアメリカ大統領選挙の一断面をコラム記事で書きました。

 

 

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【緯度経度】ワシントン・古森義久 オバマ氏のタブーとは

10月11日8時1分配信 産経新聞


 米国大統領選挙の共和党ジョン・マケイン候補を支援するペンシルベニア州での9日の集会で地元の代表がこんな発言をした。
 
 「バラク・フセイン・オバマが米国大統領になったときのことを考えてみよう!」

 当のマケイン陣営は即座に「われわれはこうした不適切な言辞は認めない」という声明を出した。
 
 フセインというのは民主党オバマ候補の正式なミドルネームである。
 
 だがそのフセインという名を口にすることは「不適切」だというのだ。
 
 フセインという名がいまの米国では好イメージではないイスラムを連想させるため、その指摘はオバマ候補への不当な個人攻撃とされる、という配慮からだろう。
 
 実際に民主党側や民主党支持の大手メディアは「フセイン」の名を口にした側を「人種差別」「汚いののしり」として袋叩きにする。

 オバマ氏のミドルネームは触れてはならない聖域、あるいは禁忌となっているのだ。
 
 だが客観的にみて、大統領候補の実名の一部を口にしてはならないというのは奇妙な話である。
 
 オバマ候補に関してはこうしたタブーの領域が少なくない。

 とくに大手メディアの自主規制的な聖域が多いようにみえる。

 オバマ氏のケニア人の祖父は敬虔(けいけん)なイスラム教徒でフセインという名前だった。
 
 父親もケニアではイスラム教徒とみなされていた。
 
 オバマ氏の母が再婚したインドネシア人の継父もイスラム信者だった。
 
 オバマ氏が6歳からの4年間を過ごしたジャカルタでもうちの2年は公立学校に通い、イスラム色のついた教育を受けたという記録もある。

 イスラム教自体は誇るに値する宗教だろう。
 
 だがオバマ氏自身は自らキリスト教徒だと強調し、オバマ陣営はイスラムとの間接のきずなさえも否定する。
 
 そしてなによりもニューヨーク・タイムズに代表される民主党傾斜の大手メディアが、イスラムの影がにじむオバマ氏の出自については不思議なほど報じないのだ。

 同じニューヨーク・タイムズがマケイン氏の米国外パナマの米軍基地での出生を長文記事で批判的に報じたのとは対照的だった。

 オバマ氏の生まれや育ちについては「オバマの国」という新刊書が詳しい。
 
 著者はハーバード大学で博士号を得た政治学者ジェローム・コーシ氏、保守派だが共和党員ではない。
 
 同書はオバマ氏のケニア、インドネシア、イスラム、そして左翼や黒人の過激派とのかかわりの記録を詳細に報告する。
 
 衝撃的な軌跡も多いのだが、大手メディアからはいずれも事実の検証の前に「個人攻撃」として排されてきたたぐいの情報である。

 オバマ氏と極左テロ組織「ウェザーマン」の指導者だったウィリアム・エアーズ、バーナディン・ドーン夫妻との長年のつながりも、大手メディアでは聖域にみえる。
 
 一応の報道はしても、ごく表面的なのだ。

 反体制の同組織は1970年代に国防総省や議会、銀行などを爆破し、死者まで出した。
 
 エアーズ夫妻は80年代まで地下に潜伏した。
 
 その間、捜査側の証拠取得に不備があり、夫妻は自由の身となった。
 
 だが一連の犯行は認め、2001年にはエアーズ氏は「まったく後悔しておらず、もっと爆破すればよかった」と述べた。

 同氏は社会復帰後にイリノイ大学の教授となり、95年からオバマ氏と共同で教育財団の運営にあたる一方、オバマ氏を州議員選で支援する。
 
 今回の大統領選でオバマ氏はエアーズ氏との関係を問われ、当初は「近所の住民だった」とだけ答えていた。
 
 だが大手メディアはこのへんの言動の是非や疑惑を追及することはない。
 
 その寛容な姿勢は共和党のサラ・ペイリン副大統領候補個人に対する攻撃的な大規模調査報道とはコントラストを描く。

 だから共和党側は「もしマケイン候補が妊娠中絶をする診療所を爆破した犯人と長年の親交があれば、大手メディアは大々的な調査報道を展開し、糾弾するだろうに」と憤るのである。

 

講道館の公式雑誌『柔道』の2008年9月号に掲載された私の記事の紹介を続けます。

 

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さて「ワシントン柔道クラブ」の特色の一つは会員たちの多様性だといえる。

 

アメリカ社会の実にさまざまな職業分野や年齢の男女が集まってくる。

 

 全米レベルの試合でも活躍してきたメンバーでは、ロイ・イングラー五段は最高裁判所にかかる訴訟案件を専門に扱う弁護士、トム・カウフマン三段はコンピューター企業の幹部技師、アンドレアス・ブラント三段は救急医学専門の医師、ジム・スターニク三段は建築家、アービン・ブランドン二段は民間の警護スペシャリスト、女性ではフラン・バール五段が元国務省外交官、レイチェル・フリードリッヒ三段が国防総省の現職の幹部職員などなど、である。

 

 やはり首都地域ならではの社会とのつながりなのだ。

 

 段位を省略しての初段クラスや茶帯、青帯について述べるならば、首都地区で殺人事件専門の連邦検事だったマーク・キャロル、ジョージワシントン大学教授のエイモス・ゲルブ、ジョージタウン大学医学部の女性救急医のキャシー・クランシー、最高裁の女性書記官のアンジェラ・オンケン、アメリカン航空のパイロットのエリック・スミスといった職業人として活躍するアメリカ人男女が定期的に練習に出てくる。

 

こうした社会人、職業人が二十代から三十代、四十代はもちろん五十代以上でも参加して、自分なりのペースで稽古ができる点がこのクラブの特徴なのである。

 

日本人として柔道に励み、なおアメリカ社会に柔道以外で接する筆者としては、社会のこれほどの中枢で働く多彩なアメリカ人男女が日本で生まれ育った柔道をこれほど熱心に稽古し、後述するように日本の柔道リーダーシップへの敬意をこれほど表するという現実はなんともうれしく、誇りに感じてしまう。

 

職業にはもちろん貴賎はないとはいえ、アメリカの官民の枢要部分で機能するエリート・プロフェッショナルたちが、それぞれ個人ベースで長い年月、柔道の稽古を続けているという状況は、日本の柔道関係者たちにもぜひ知らせたいところである。

 

学生も多彩である。

 

地元のジョージタウン大学の新入生、医学生、ジョージワシントン大学の国際関係大学院生、アメリカン大学の法科大学院学生ら、もちろん男女混合、そして黒人の多い有名校ハワード大学の大学院で心理学と法律をそれぞれ学ぶティファニー・ポークとジャスティン・ポークの姉弟は人種の多様性を改めて印象づける。

 

ハイスクールの生徒たちも数人くる。

 

首都には全米各地から種々の研修のために夏休みだけ、あるいは一年間だけ、という期間でやってくる若者たちも多い。

 

アメリカの政府機関や議会、研究所でインターンなどの短期、中期の研修をするというような若者たちである。

 

そのなかにすでに柔道を知っている人たちがいて、ワシントン柔道クラブの評判を聞いたり、インターネットで発見して、入門してくる。

 

つい最近では西海岸のスタンフォード大学を卒業した目の不自由な青年が連邦貿易委員会というところで研修を受けるためにワシントンに一年間、滞在する間、当クラブで稽古をした。

 

視力の弱い彼には多くのメンバーが文字どおり手取り足取りで熱心に指導をした。

 

だが同クラブの最大の人材源はやはり当のジョージタウン大学そのものである。

 

新しい学年や学期の始めにはクラブ側が数百人の新規学生を対象にJUDOの宣伝のチラシを配り、クラブ入会を呼びかける。

 

その結果、いつも数十人が入門してくる。

 

三ヶ月ほどの期間の終わりには通ってこなくなる学生も多いが、そのまま次の学期に数人から十数人が残るというケースも珍しくない。

(つづく)

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