2009年04月

オバマ政権は国連が4月20日からジュネーブで開いた世界反人種差別会議をボイコットすることを発表しました。

 

オバマ大統領は19日の演説で「この会議の宣言案は前回の2001年と同様に、イスラエルに対する一方的、偽善的、かつ非生産的な非難を含んでおり、アメリカとしては参加はできない」と言明しました。

 

この国連世界反人種差別会議をボイコットしたのはアメリカ以外に、ドイツ、カナダ、オーストラリア、イタリア、イスラエル、オランダなどの主要諸国です。

 

世界反人種差別会議は前回は2001年に南アフリカで開かれましたが、アラブ諸国や急進アフリカ諸国が数を頼んで、反米、反イスラエルの方向に走り、とくにイスラエルに集中的な非難の砲火を浴びせる形に終わりました。

 

今回の同じ会合でもイランその他の急進派がイニシアティブを握り、イスラエルへの糾弾やイスラム教の非難の逆非難を強く打ち出す兆しが明白でした。

 

アメリカも決して国連信奉ではなく、あくまでも自国の国益へのプラス、マイナスを指針として、国連をそのとき、そのときで、自国の都合よい方向へ使うことを大前提にしているということです

ね。

 

自国の利害よりも国連なる機関の意思を優先させる国連中心主義なんて、主権国家の外交政策としてはありえない例証でしょう。、

ワシントンで活発な発言をした安倍晋三氏の主張で付記しておかねばならないのは、中国に核軍縮を求めた点でしょう。

 

安倍氏は4月17日のブルッキングス研究所での演説の後の質疑応答で以下のような発言をしました。

 

▽オバマ大統領がプラハでの演説で核兵器廃絶の目標を掲げたことに関して、述べたいのは、この核軍縮はアメリカとロシアだけでなく中国をも視野に入れねばならないということだ。アジアでは冷戦構造が残っており、中国の核兵器や北朝鮮の核兵器の脅威がなお存在する。

 

▽しかしアメリカの核軍縮も東アジアでのアメリカの核抑止力が損なわれてはならないと思う。日本の安全保障にとっても、アメリカによる核軍縮の目標と核抑止力の維持とが共存することは、まった矛盾しない。

ワシントンを訪問中の安倍晋三元首相は4月17日、大手政策研究機関のブルッキングス研究所で演説し、「日本人拉致問題の解決なしに北朝鮮との正常な関係を築くことはできない」と強調する一方、その後の質疑応答で日本の民主党の政策に対し「統一された政策を持っていない」、「とくに民主党の外交政策はわけがわからない」と、こきおろしました。

 

安倍氏の民主党批判の発言は以下のとおりです。

 

「民主党は統一された政策を持っていない。安全保障や外交については小沢一郎党首は『在日米軍は第七艦隊以外は要らない』と述べ、アメリカ海兵隊も日本から去ってほしいようなことを述べているが、政策としてよくわからない。一方、前原誠司元党首が従来から述べている外交・安保政策は自民党のそれと変わらず、理解はできる。だが前原氏は今回のワシントンでの会議では沖縄米軍のグアムへの移駐に反対すると述べた。これではいまの民主党の外交政策はわけがわからない」

 

なお日本の安保に関連して、北朝鮮のミサイル発射と日米同盟の相関関係について以下のサイトにレポートを書きました。

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/98/

 

 

安倍晋三元総理と前原誠司民主党元代表とがワシントンで肩を並べ、親しげに談笑しました。現地時間で4月15日の夕方です。

場所は駐米日本大使の公邸でした。自民党と民主党のそれぞれ大物がいまなぜ、という推測をも生む、微妙な時期の顔合わせでした。

 

実はこの二人は最近、防衛大臣を短期間ながら務めた自民党の林芳正参議院議員とともに、日米の海上安全保障に関する大きなセミナーの参加するためにワシントンを来訪したのです。16日からのセミナー開催を前に、藤崎一郎駐米大使が日米の安全保障関係者を多数、招き、安倍氏らを賓客とするレセプション15日の夕方、開きました。

 

このレセプションにはオバマ政権の政府や軍の要人や前ブッシュ政権の元高官たちも多数、出席し、米側のアジア政策担当者、研究者たちのオンパレードでもありました。主賓の安倍、前原、林の三議員は藤崎大使とともに、レセプションの入り口に立って、来客に挨拶し、さらに内部で懇談を重ねましたが、自民党と民主党の有力政治家である安倍、前原両氏が親しげに言葉を交わす光景は日本側出席者たちの注視を集めていました。それはとくに根拠はなくても、どうしてもいままたちらほらうわさされる「大連立」とか「政界再編成」という言葉を連想させるからでしょう。

 

安倍氏はとくに元気いっぱいでした。この日、バイデン副大統領との会談をすませ、このレセプションでも最主賓として挨拶に立ち、草稿もメモも使わず、またオバマ大統領のようにプロンプターも見ずに、10分ほど演説をしました。内容は主としてアジアの海上安全保障、シーパワーの重要性であり、日米の海上安保協力の必要性、北朝鮮の脅威への共同対処の緊急性などでしたが、

前原氏と同席したことにも軽く触れていました。

 

「民主党の前原氏と自民党の私氏がこの時期にこうして姿を並べると、日本のメディアは肝心の海上安全保障についてはさほど関心を示さずに、もっぱら安倍・前原会談のほうに関心を向けているようです。だが前原さんと私は日本の総選挙前についても、選挙後についても、なんの合意もしてはいません」

 

安倍氏はこんなことを述べて、会場を笑わせていました。

あまり深読みは禁物ですが、おもしろい情景ではありました。

 

 

オバマ政権の誕生からもうそろそろ3カ月、この短い期間にオバマ大統領は予想されたよりもずっと多くの施策を断行しています。しかも予想されたよりずっと果敢で大胆な方法で、といえます。

 

その施策の内容はこれまた当初、予想されたよりずっとリベラル色が濃く、左傾斜の、社会主義的傾向さえ強い措置ばかりでした。当初は「オバマは中道、穏健、実利的な施策を進める」という予測も多かったのですが、これらは適中しなかったことになります。

 

この点、自画自賛となるかもしれませんが、私はオバマ大統領がリベラル色の強い政策を打ち出すことを予測していました。自書の『オバマ大統領と日本沈没』の中で、です。

 

なお最近の北朝鮮のミサイル発射へのオバマ政権の対応と日米同盟へのその意味については以下のサイトに別のレポートを書きました。

 

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/98/

 

さて『オバマ大統領と日本沈没』ですが、オバマ大統領が誕生したか、しなかったかという1月20日前後に書き終えたのがこの書です。

 

 その時点でオバマ大統領の「大きな政府」「リベラル傾斜」を予測したことに、いまささやかな満足を覚えています。

 

同書の中のその適中部分を改めて紹介します。

 

オバマ大統領と日本沈没

 

 

 

 

 

同書の第三章から、です。

 

 

衝撃の新政策が飛び出すか

 私は前に「エッと驚く衝撃的な政策が飛び出すかもしれない」と記した。

 

 では、オバマ新政権下では、どのような衝撃的政策が考えられるだろうか。

 

 なかには予測されるが、その内容が激しいという政策もある

第一はすでに説明してきたような、高所得者に対する画期的な増税である。

 

レーガン大統領は「政府は問題の解決策ではなく、むしろ問題そのものだ」と断言していた。

 

政府の役割を最小限にすることを唱える保守思想だった。

 

ところがオバマ大統領は、政府こそが問題を解決する責務を持つという考え方に立つ。

 

オバマ氏は、規制のない自由主義経済は高所得層の我欲(greedグリード)に振り回されると考えている気配がある。

 

その高所得層を懲罰する意味でも、その層への課税の拡大はリベラルの道義にかなうこととなる。

 

経済や金融の諸問題の根源を過剰な自由にあるとみるリベラリズム思考である。

 

いささか誇張するならば、自由市場それ自体が問題なのだとみなすのがオバマ氏の思想に近いだろう。

 

そのため、解決策を講じるのは政府しかないとして、「大きな政府」を主唱する。

 

その背後にじわりと浮かび上がってくるのは社会主義的な経済思想である。

 

社会主義となれば、富裕層、高所得層は当然、「富の再配分」による大きな収奪を受ける。

 

いざ社会主義ということになると、アメリカ国民の圧倒的多数はまず生理的に反発してしまうだろう。

 

しかし、いまのアメリカ経済の建て直しには社会主義的な措置も臨時には必要かもしれないと感じる層が広がっていることも現実のようである。

 

 実際、オバマ大統領が政府の資金を巨額に投入して、ビッグ3(アメリカの三大自動車メーカーであるGM、フォード、クライスラー)や大金融機関を救済しても、世論調査では賛否が真っ二つに分れ、絶対反対派は少なくとも圧倒的多数を占めてはいない。

 

だが反対の声ももちろん少なくない。

 

ビッグ3の労働組合は強いから、会社が危機に瀕しているこの期に及んでも「時給七十ドル」などという給与水準を保っている。

 

一般国民がそんな部分に反発するのは当然だろう。

 

自動車メーカーやその労組が一般国民にも受け入れやすい再建案を提示していないことも障害となっている。

 

しかしオバマ大統領は自動車労組の要求に対しては一般国民よりは同情的である。

 

大統領選挙で自動車労組から強い支援を得ていたからだ。

 

こうした公的資金の需要の拡大にともない、政府はより多くの財源を必要とする。

 

財政赤字でもその需要は補えるとはいえ、政府が高所得層からの税収を増やせば、財源確保の一助となることは自明である。

 

第二に考えられる画期的な政策は、医療面での国民皆保険の推進である。

 

アメリカでは国民皆保険には、われわれ日本人では理解できないほどの反発があることはすでに述べた。

 

その反発は一般国民にとって自分たちが苦労して払う税金が働かず、納税もしない層も含む国民全員の医療費に恒常的にあてられるという不公正の意識に根ざすといえる。

 

国民の医療を政府がすべて管理することへの反発もある。

 

国民が自分たちの健康や生命をすべて政府の手にゆだねることは、それこそ社会主義の発想ではないかとして、反対するわけである。

 

しかし、昨今のような経済不況の波に襲われ、国民の生活が苦しいなかでは国民皆保険が受け入れられやすい素地が増していることも事実だといえる。

 

オバマ大統領が国民皆保険制度の導入を真剣に考えていることも、容易に想像できる。

 

もしオバマ大統領がその国民皆保険導入のための実際の政策措置を取り始めたら、彼が国民と政府との関係を根本的に変えようとして、その実行に着手したとみてよいだろう。

 

いいかえれば、これまでアメリカをアメリカたらしめてきた基本枠にチャレンジし、トランスフォームを図ろうという決意とみてよいのである。

 

三番目は、労働組合を結成するときの労働者たちの投票方法の変更である。

 

これは小さな問題のようにもみえるが、実際には非常に大きな政治的意義を有している。

 

労働組合のない企業の従業員たちが組合を結成するか否かを決めるには、現在の規定では従業員、あるいは労働者たち自身が投票で結論を出す。

 

その場合の投票は現行の規定では無記名である。

 

つまり誰がどんな意思を表明したかわからない「秘密投票」である。

  

だが労働組合側とそれを支援するリベラル政治勢力は記名投票を長年、求めてきた。

 

 記名であれば当然、誰がどちらに投票したかがわかる。

 

 労組側からすれば、どの労働者が組合結成に反対したかがわかる。

 

 労働者側にすれば、投票の中身が秘密だからこそ、自由に真意を表明できる。

 

 一方、投票に記名制が導入されて、中身がわかってしまうことになれば、労組側から非難される。

 

 非難される恐れが重大な圧力となる。

 

 だから組合結成にはイエス票を投じる可能性が高くなる。

 

一見、細かい話のようだが、民主党は労組を大きな支持基盤にしているため、長年の大きな課題として記名投票制をプッシュしてきた。

 

共和党はもちろん反対である。

 

一般労働者の間でも現行の無記名投票、つまり秘密投票を支持する勢力が強く、労組・民主党側の要求は抑えられてきた。

 

だがオバマ大統領は大統領権限の思い切った行使によって記名投票実施を断行するのではないか。

 

そうした動きに対して共和党が警戒を強めていることはいうまでもない。

 

四番目は、環境保護のための大胆な新政策である。

 

オバマ氏は上院議員時代の実績をみればわかるとおり、京都議定書問題や地球温暖化問題にきわめて積極的に取り組んできた。

 

歴代の政治指導者のなかでもこの環境保護重視はとりわけ強いといえる。

 

その立場から経済成長をある程度、犠牲にしてまでの新しい環境保護の政策を打ち出してくる可能性がある。

 

一九七九年のスリーマイル島(アメリカ)や、一九八六年のチェルノブイリ(旧ソ連、現ウクライナ)での原発事故以来、全世界規模で原発反対運動が広がったのは周知のとおりである。

 

アメリカでもすでにこの三十年ほど、原子力発電所の建設を中止してきた。

 

先進国で新規に原発を建設してきたのは日本とフランスぐらいだった。

 

その結果、原発にかかわる技術はアメリカより日本の方が圧倒的に先にいってしまった。

 

アメリカでは近年、原子力発電所の建設が解禁され、日本から東芝や三菱重工業、日立製作所などが原発建設のためにアメリカに進出するようになった。

 

アメリカでは原油価格の上昇や地球温暖化対策として再び原発がみなおされるようになってきたのだ。

 

現に、ブッシュ前政権はアメリカ国内に新規原発を建設しようと動き出した。

 

その結果、すぐれた技術と豊富な経験を有する日本企業がアメリカ各地で原発建設プロジェクトを受注するようになったのだ。

 

「原発はNO」というのがオバマ氏の本音だろう。

 

上院議員時代には実際にノーを表明していた。

 

だが大統領選挙のキャンペーンでは態度を鮮明にしなくなった。

 

こんごオバマ新大統領はこの原発問題にどう対処していくのだろうか。

 

なかなか展望が読みにくい。

 

新規の原発建設は再度、凍結し、核燃料の再処理に対する厳しい新規制に乗り出す可能性もある。

 

石油開発問題も同様である。

 

ブッシュ政権は二〇〇八年七月、それまでの十七年間、存在してきたアメリカ沖での油田開発禁止令を解除した。

 

この禁止令は環境保護のためだった。

 

だが、石油への需要が高まり、ブッシュ政権は自国の石油産出を増すことが総合的エネルギー政策の観点からも不可欠となったとして、自国沿岸での石油開発を認めることを決めたのだった。

 

だがオバマ氏は上院議員としてはこの禁止令に賛成していた。

 

大統領候補となってからは、沿岸での石油開発への反対を口にしなくなった。

 

オバマ大統領はこの問題にこんごどう対応するのか。

 

従来の油田開発禁止令が復活する可能性もあるといえよう。

 

確かに環境の保護はすばらしいことである。

 

しかし、経済の開発や成長を犠牲にしてまで環境を保護すべきなのか。

 

人間の生活の保持や向上に直結する産業発展を抑えても環境を保護すべきなのか。

 

議論はこんご激しい展開させみせるだろう。

 

オバマ新大統領の経済政策のなかで環境保護はどう位置づけられるのか。

 

オバマ氏は大統領就任から六日目の一月二十六日には、自動車の排気ガスとガソリン消費率を規制する新たな大統領令に署名した。

 

こんごもなお新たな政策や措置がいくらでも飛び出しそうな領域である

 

その結果は日本にも大きな影響を及ぼすこととなる。

                ×  ×  ×

 

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