2009年07月

中国の新疆ウイグル自治区で中国政府が長年、実施した核兵器爆発の結果、放射能が大量かつ長期に放出され、ウイグル人主体の住民の命を奪ったという調査結果がついにアメリカの大手科学雑誌に掲載されました。

 

同地区を通るシルクロードの核汚染が国際的に広く認められ、報じられたともいえます。

 

こうした核汚染について一切、「認識がない」と言明してきたNHKにとっても、新たな事態の展開だといえましょう。

 

 

 

中国核実験 「ウイグル死者、数十万」 米有名科学誌が可能性指摘


 

 米国で最も人気の高い科学雑誌「サイエンティフィック・アメリカン」7月号が、中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区で中国当局が実施した四十数回の核爆発実験の放射能により、数十万ものウイグル住民が死亡した可能性があるとする記事を掲載した。(ワシントン 古森義久)

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 記事は、ウイグル人医師のアニワル・トヒティ氏と札幌医科大教授で物理学者の高田純氏の合同調査結果を基礎に書かれた。

 

 高田教授は同自治区のシルクロード紀行番組を長年、放映したNHKの核実験無視の姿勢を非難している。

 

 「サイエンティフィック・アメリカン」7月号は、「中国の核実験は多数の人を殺し、次世代を運命づけたのか」「中国が40年にわたり核爆弾を爆発させたことで、放射能の雲は住民の上を覆った」という見出しの記事を掲載した。

 

 同記事はまず、トヒティ医師が新疆ウイグル自治区で1973年の子供時代、3日間、空が黒くなり、土砂のような雨が降ったのを目撃し、後年、それが核爆発の結果だったことを認識したと指摘している。

 

 その上で、同記事は「シルクロード上のロプノル実験場における、1964年から96年までの四十数回の核爆発による放射能の結果、数十万の住民が死んだ可能性がある」と報じた。

 

 記事はさらに、現在、英国やトルコを拠点にウイグル人の放射能被害を研究するトヒティ医師が、高田教授と「ロプノル・プロジェクト」という共同研究を進めているとし、高田教授の「新疆ウイグル自治区で放射能汚染のために19万4千人が死亡し、120万人が白血病などを病んだ」という算定を伝えた。

 

 「サイエンティフィック・アメリカン」は米国だけでなく国際的な評価も高く、同誌が今回、事実として正面から伝えた「シルクロードの核汚染」は、それを否定してきた中国政府にも厳しい詰問となる。

 

 また、高田教授はNHKが長年、シルクロードの番組を放映し、多数の日本人観光客に核汚染が明白な地域を訪問させながら、核爆発についてはいっさい、沈黙してきたとして今年4月、公開質問状の形で抗議した。

 

 NHK側は「(放射能汚染についての)認識は放送当時も現在も持っていない」と回答したというが、今回の米国の科学雑誌の記事は、高田教授側の研究の成果や意見に国際的認知を与えたこととなる。

 

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 ラシャワー元駐日大使のインタビュー記録の紹介をさらに続けます。

 

 今回の部分では驚くことに、ライシャワー氏は日本がアメリカの核兵器を国内に配備させることを考えるべきだという提案をしています。彼なりの慎重で婉曲な表現ではあります。

 

 私はライシャワー氏の発言のこの部分を新聞でも雑誌でもあえてハイライトを浴びせて報じることはいませんでした。やはりあまりにも過激で大胆な提案だと感じたからでしょう。しかしいま彼の発言を再読してみると、日米同盟の枠内での核抑止政策という観点からみると、きわめて理にかなった提案として映ります。

 

 ライシャワー氏はこの提案に「 日本がもしアメリカの核のカサを受け入れるならば」という前提をつけています。当然ながら日本はその安全保障政策の根幹の一つとして「米国の核抑止」を受け入れるどころか、それに依存することを宣言しています。

 

 ライシャワー氏は1981年という早い時期にここまで考えていたという事実には改めて新鮮な驚嘆を覚えます。

 

 では以下がその記録の続きです。

 

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 古森 しかしライシャワー教授、日本政府がこの問題をもうはっきりと明るみに出す時期が来たのだと、いまあえてあなた自身が提言するところまでいってもよいと思いますか。

 ライシャワー そうしてもよいですね。

 もし日本政府がそういう時期が来たと考えるならば、明るみに出すのは結構なことです。

 しかし外部からこの種のことを法的に変えようというようなことは、試みない方がよい。

 日本国民がそうした認識を持つにいたった時にこそ、そういう時期が来たことになるのです。

 そしてあなたも言うように、日本がもしアメリカの核のカサを受け入れるのなら、そういうことを明るみに出すというにとどまらず、もっと先へ進むべきでしょう。

 たとえばこの核のカサの基盤の一部を、日本国内に置く、というようなことです。

 そうしても、核のカサの基盤の一部が日本国内にない時にくらべて、日本にとっての危険がより増すというようなことはありません。

 なぜならそれは核のカサの主要な根源とはならないからです。

 核のカサが常に置かれている主要な場所は、アメリカの西部とか海洋なのです。

 その他の場所は、いわば末端の支えでしかありません。

 古森 ただ日本に核兵器が置かれた場合、それは象徴的な意味を持つことになります。

 ライシャワー だれもそんな(日本に置かれるような)基地など攻撃しようとはしません。

 もし核戦争を始めるならば、核戦力の中枢部で始めるでしょう。

 古森 そうですね。

 しかしライシャワー教授、日本政府はなお今日にいたるまで、核兵器積載のアメリカ艦艇の日本領海通過でさえ、日米間の事前協議の対象になる、という立場を公式にとっています。

 それに対してアメリカ側はそうした艦艇と、そこに積載されている兵器とは区別不可能、という立場をとっています。艦艇に積んだ兵器の種類はいちいち認定しない、というわけです。

 ライシャワー われわれは核兵器がどこにあるかは、決して明らかにしません。

 古森 だったら核兵器を積んでいても、それは事前協議の対象とはなりえないわけです。

 ライシャワー 事前協議の対象とはなりえません。

 なぜならそんなことをすれば核兵器が船上にあることを、一般の人々に告げることになってしまうからです。

 アメリカはそんなことは決して言いません。

 これはとくにはっきりさせておくべきことです。

(つづく)

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ライシャワー夫妻

 

 

インタビューの舞台となったレイシャワー邸

File:Edwin O. Reischauer Memorial House (Kodansha) - Belmont, MA.JPG

 

 

在外ウイグル人の世界的組織「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル議長が7月28日午後、成田空港に着き、東京を訪問します。

 

新疆ウイグル自治区での中国当局によるウイグル人弾圧や、国際的な反響、そして日本と中国との関係などを考えると、中国当局が新疆ウイグル自治区での「暴動の首謀者」として糾弾するカーディル女史の来日には非常に重大な意味があります。

 

なおカーディルさんは中国当局の主張とは対照的に、国際的にはノーベル平和賞候補に指名されたことも複数回ある人物です。

 

だからこそなのか、中国政府はカーディルさんの来日には激しい反対を表明しています。

 

以下はその点についての産経新聞の北京発の記事です。

 

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中国「強烈な不満」 ウイグル会議議長きょう来日


 

 【北京=野口東秀】世界の亡命ウイグル人組織を束ねる「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル議長(62)=米国在住=の28日からの日本訪問をめぐり、中国外務省は27日、「日本政府は中国が何度も申し入れたことを顧みず、カーディル(氏)が日本を訪問し反中分裂活動を許したことに強烈な不満を表明する」とする報道官談話を発表した。

 

 中国政府は新疆ウイグル自治区で5日に起きた暴動でカーディル議長を「扇動の黒幕」と名指しで非難、各国のビザ(査証)発給に神経をとがらせているが、この件で反日感情が広がることも懸念しており、激しい批判は控えている。

 

 中国共産党機関紙・人民日報傘下の「環球時報」は27日、インドの地元紙の報道を引用する形で、ウイグル暴動前にカーディル議長がインドにビザを申請したが、「インド領土内で反中的政治活動は許可できない」(インド外交筋)として「拒絶」されていた事実を挙げ、日本の対応は「非常に非友好的だ」との学者の声を紹介した。

 

 記事には外交学院アジア太平洋研究センターの蘇浩主任の「(日本政府が)ビザを発給したのは、中国の台頭を抑えるためであり、西側諸国への追従でもある。中日関係に大きな障害をもたらすことになる」との批判も掲載された。

 

 この報道を受け、インターネット上の掲示板には「日本を地球上から抹殺せよ」「日本製品の不買運動をしよう。中国は強大になった。打倒、小日本(日本への蔑称)」「日本の野心は永遠に変わらない。核兵器でつぶせ」などの書き込みがあふれた。

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ワシントンの夏の一つの情景です。
 
【外信コラム】ポトマック通信 多様な“道場破り”
2009年07月23日 産経新聞 東京朝刊 国際面


 

 私の通う「ジョージタウン大学・ワシントン柔道クラブ」は夏は顔ぶれがかなり変わる。
 
 学校が長い休みとなるため、学生の数が減る。
 
 かわりに短期の訪問者が増える。
 
 夏だけ首都で研修をする若者や、休みを利用して遠くの柔道クラブからくるベテランが顔をみせるのだ。
 
 こういう訪問者はみな柔道の経験者で、「道場破り」とまではいかなくても、かなり強い。

 先週も、巨漢の黒帯が2人、現れた。
 
 いずれも身長は190センチ近く、体重も100kgは軽く越えそうだ。
 
 一人はスキンヘッド、もう一人は毛むくじゃらの胸が威圧感を与える。
 
 いずれも30代後半にみえる。
 
 2人ともエジプト出身だと自己紹介した。

 いざ自由な乱取り練習となると、クラブ側の常連たちもいかにも強そうな2人に挑むには最初はためらった。
 
 だがやがて茶帯から黒帯と順にぶつかっていくと、2人ともすぐに息を荒げ、疲れをみせた。
 
 経験は十二分に積んではいるが、スタミナがないのが明白で、そのうち投げられ始めた。

 一息ついたところで毛むくじゃらが私のところにきて「いやあ、しばらく練習をしていないんで、ダメですね」と苦笑する。
 
 スキンヘッドもぐったり疲れていた。
 
 さらに話すと、前者は歯科医、後者は内科医で、2人ともすでに米国籍を取り、ワシントン近郊で開業しているという。
 
 柔道とはなんと多様な人間同士を集めてしまう共通項だろうと痛感させられたのだった。(古森義久)

 古森義久によるエドウィン・ライシャワー氏のインタビュー記録をさらに紹介します。

いままた浮上した核兵器論議についての資料です。

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事実を認める時期が来た

 古森 私はあなたの駐日大使としての前任者のダグラス・マッカーサー氏と話す機会があったのですが、その時マッカーサー氏は、安保改定のための日米両国政府間の交渉プロセスでは、核兵器を積んでいるとみられるアメリカ艦艇のいわゆる“通過”とか“立ち寄り”は、まったく言及されなかった、と述べていました。

  安保改定の交渉が終わり、日米間の取り決めが成立した後、日本の野党の議員が国会でそれを持ち出し、政府がそれに答えねばならなくなり、そこで初めて通過などの問題が出されたようです。

 その意味では、アメリカ側はそれまでツンボさじきにおかれていた、ということになります。

 ライシャワー ええ、そうかも知れませんね。

 安保条約改定の交渉中、その点は多分、明確にされなかったのでしょう。

 文書にしてはっきり示すような形では、明確にされなかったことは、間違いありません。

 しかしそういうこと(アメリカの核装備艦艇の日本への入港や領海通過)をしてもさしつかえないというのが、確実にアメリカの軍部や政府の理解だったのです。

 だからこそ私が駐日大使だった間、この問題が日本の国会で取り上げられ、日本政府の代表が答弁に立って、通過や寄港は許されないのだという、われわれとは異なった解釈に沿った発言をし、「しかしわれわれはアメリカを信頼している」と述べるたびに、私は何度も、非常に恥かしい思いをさせられたのです。

 なぜなら日本側のそうした発言は、アメリカがなにか不正をしているような立場におくことになるからです。だから私は実際に、日本の外務大臣にこの問題について話をし、「どうかそういうふうには答弁しないで下さい」と申し入れました。

 古森 藤山外相にですか。

 ライシャワー いいえ、違います。 大平氏です。

 

 古森 当時の大平外相にそういうことはしないよう要請したわけですね。

 ライシャワー 「アメリカにとって大変な当惑となるから、どうか、そういう言い方で答弁しないで下さい。なぜならそれは事実がこうだというアメリカ側の了解とは違うからです」と申し入れたわけです。

 そして大平氏は日本政府の代表たちに違った表現で答弁させるようにすることを、とても手際よくやりました。

 そしてこの問題全体は非常に急速に消えてしまいました。

 それからまた数年後、この問題はふたたび浮上し、しばらくしてまた忘れられる、というふうに、私たちは同じ種類の問題を繰り返し経ているのです。

 古森 この問題はこんごも繰り返し繰り返し表面化するでしょうね。

 ライシャワー そう、繰り返し繰り返し表面化するかも知れませんね。

 でも、あのラロック証言をあなたは覚えていますか。

 1972年でしたかね。

 古森 74年です。

 ライシャワー 74年? ああそうでしたね。

 あの時は大変なさわぎだったけれども、すぐにおさまってしまいました。

 非常に早くさわぎはおさまってしまったのです。

 ということは、少なくとも私が解釈したところでは、日本の国民一般が「そんなことは常識ではないか。そんなことでさわぐのはまったくくだらない。日本の政治家たちはこんなことでさわぎを起こしているが、よく考えてみれば、ばかげている」と受けとったことを意味しています。

 それ以来ずっとそれは深刻な問題とはなっていません。

              <ここらあたりですでに日本にとっては大ニュースとなる発言が出てきているが、ライシャワー氏の口調にはなんの意気ごみも、とまどいもない。それまでと全然ペースの変わらない話しぶりで、質問に答えていく>

                                 (つづく)

 

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