2009年09月

鳩山政権の夢想「東アジア共同体」はわが同盟相手のアメリカからどうみられるのか。

 

「もう時代遅れだ」という意見がアメリカでのベテラン中国専門家から述べられました。

 

この人物はアメリカ議会の米中関係についての政策諮問機関の中核にある識者です。

 

やはり東アジア共同体は東アジア妄想体なのかーーー

                    

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東アジア共同体構想 中国が発案、時代遅れ 米専門家


 

 【ワシントン=古森義久】

米国議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」のラリー・ウォーツェル副委員長は28日の産経新聞との会見で日本の鳩山政権が中国に提唱した「東アジア共同体」構想について「本来、中国が米国を東アジアから後退させる意図で開始した外交作戦で、すでにアジアの多くの国から排され、日本の提案は遅すぎる」という見解を語った。

 

 中国の外交や対外戦略に詳しいウォーツェル氏は日本がこのほど提案した東アジア共同体構想について「まだ日本の新提案の具体的な内容は不明だが、基本的に中国が2005年ごろからASEAN(東南アジア諸国連合)の会議などで打ち上げた外交作戦としての『東亜共同体』と同様の構想だろう。その時の中国の意図は東アジアから米国を後退させることだった」と述べた。

 

 同氏はさらに日本の東アジア共同体提案について「アジアの多数の国からも米国からも広くは受け入れられず、あまり先には進展しないだろう」との予測を明確にし

 

 ①中国は東アジア共同体構想を自国の外交攻勢の『平和的台頭』や安保戦略の『上海協力機構』と合わせてプッシュしたが、アジア諸国の多くからすでに排され、構想自体がすでにほぼ死んでいたため、この時期に日本が同様の構想を再提案すること自体が遅すぎた観がある

 

②日本の構想を単に地域協力案としてみても、アジアにはすでにAPEC(アジア太平洋経済協力会議)、ASEANプラス3(東南アジア諸国連合と日中韓の三国)、ASEAN地域フォーラムなど各種の対話や協議の機関が多数、存在するため、あまり意味がない

 

③日本の提案をEU(欧州連合)のように人や物の国境を越えての移動が自由な共同体案としてみれば、シンガポール、マレーシア、ベトナムなどただちに拒むことが確実な諸国が多いだろう

 

 ―などと説明した。

 

 ウォーツェル氏は米国の反応について「オバマ政権自体が即時に公式の反対を表明することもないだろうが、議会などからは強い反対も起きるだろう。米国として広く一般に受け入れることはないと明言できる」と語った。

 

 ウォーツェル氏は1970年代から米陸軍でアジアの軍事分析にあたり、国防総省勤務から陸軍大学教官、ハワイ大学で博士号取得、80年代後半から計2回7年間にわたり北京の米国大使館駐在武官、2000年からヘリテージ財団のアジア部長、副所長を歴任、翌年から米中経済安保調査委員会の委員となり、委員長を務めた後に現職に就く。

 

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興味ある記事が産経新聞9月29日朝刊に出ました。

 

オバマ政権の高官が実は日本側に鳩山首相の東アジア共同体提案には反対の旨を伝えていた、というのです。

 

 

東アジア共同体構想 “外された”米、反発 不信感払拭できず


 

 【ワシントン=有元隆志】鳩山由紀夫首相が国連総会の一般討論演説で表明した「東アジア共同体」構想に対し、米政府高官が米国抜きの構想だとして強く反対する意向を日本側に伝えてきたことが28日、分かった。
 日米関係筋が明らかにした。
 就任直後の訪米で、オバマ米大統領との信頼関係の醸成に自信を示した首相だが、首相の外交政策への米側の懸念がかえって強まっていることを示している。

 同筋によると、構想に反対し懸念するとの意向は、24日の首相の演説直後に、米政府高官が日本政府高官に伝えた。

 

 首相は23日に行われたオバマ大統領との初会談では、アジア政策は日米同盟なくしては成立しないとの認識を強調したものの、「東アジア共同体」構想については説明しなかった。

 

 ところが、翌日の国連演説で、首相は「FTA(自由貿易協定)、金融、通貨、エネルギー、環境、災害救援など、できる分野から協力し合えるパートナー同士が一歩一歩協力を積み重ねることの延長線上に、東アジア共同体が姿を現すことを期待している」と述べ、構想の実現に強い意欲を表明した。

 

 首相は21日に中国の胡錦濤国家主席とニューヨークで会談した際も、「東アジア共同体」構想に言及し、「日中の違いを認めながら、違いを乗り越えて信頼を築き、構築したい」と語っていた。

 

 首相は16日の就任記者会見では「米国というものを(構想から)除外するつもりはない。米国抜きで必ずしもすべてできるとは思ってもいない」と語ってもいる。

 

 しかし、かねてから同構想への警戒感を抱く米側は、日米首脳会談で首相の「真意」を確認できないままに終わり、構想の説明については米国は“外された”格好にもなったことから、不信感と懸念を強めたものとみられる。

 

 米政府はブッシュ前政権時代から、「東アジアから米国を排除するようなもの」(アーミテージ元国務副長官)とするなど、同構想への反対姿勢を鮮明にしてきた。

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【用語解説】東アジア共同体構想

 民主党がマニフェスト(政権公約)に、アジア外交を強化する枠組みとして明記。具体的には(1)中国、韓国などアジア諸国との信頼関係強化に全力を挙げる(2)通商や金融、エネルギー、環境、災害救援、感染症対策の各分野で協力体制を確立する(3)投資、労働、知的財産分野を含む経済連携協定(EPA)交渉を積極的に推進する-など。

 

いささか旧聞に属すのかもしれませんが、日米首脳会談もひとまず無事に終わりました。

 

戦後の日米外交史上でもおそらく最も短い首脳会談でした。

合計わずか25分でした。

 

 

 

アメリカの大手メディアはこのオバマ・鳩山会談をほとんど無視しました。

 

有力新聞ではウォールストリート・ジャーナルが中のほうの面の下、ごく地味な扱いで報じたくらいです。

 

主要テレビは私の見聞の範囲ではゼロ報道でした。

 

しかし両首脳が「日米同盟の重視」や「信頼の強化」という大まかなで自明の基本とはいえ、きずなを確認しあったことは前向きな成果でしょう。

 

とはいえ、重大な疑念が残ります。

 

鳩山首相は民主党の公約や持論の「対等な同盟関係」とか「在日米軍地位協定の見直し」についてはオバマ大統領に向かってただの一言も語らなかったのです。

 

いくら儀礼的な会談だといっても、いま最大の懸案となった民主党の一連の「日米同盟見直し政策」の一端ぐらいはオバマ大統領に告げるべきだったでしょう。

 

鳩山首相は日本国民に向かっても、さらにはニューヨーク・タイムズ掲載論文を通じてアメリカ国民にも、すでにその「見直し」を明確に述べているのです。

 

しかし肝心のアメリカ大統領にはなにも話さない。

 

国際通信社の発信はその点を鋭く指摘していました。

 

「鳩山首相とオバマ大統領は日本国内の米軍基地をどうするか、日本はアフガニスタン作戦用のアメリカ艦艇への給油の合意を延長するかどうか、などという両国間の懸案の外交課題については具体的になにも語らなかった、と鳩山首相は述べた」(ロイター通信)

 

「日米両首脳は日本国内の大規模な米軍の存在を見直すという鳩山首相の計画には触れなかった。この計画は日本の前政権の親米的な立場とは鮮明なコントラストを描く試みだ」

(AP通信)

 

 

鳩山首相が「対等な同盟」という民主党の対米新姿勢の最も重要な部分に触れないというのは、どういうわけでしょうか。

 

両通信社電からはそんな疑問が浮かびあがってきます。

 

鳩山首相の対米政策というのは相手によって使い分けるということなのでしょうか。

ニューヨークでの日中首脳会談で鳩山由紀夫首相が明らかに熱を込めて提案した「東アジア共同体」構想に中国の胡錦濤国家主席はなにも述べなかったことが報じられました。

 

この点は注目すべきでしょう。

会談を前に握手する鳩山首相(左)と胡錦濤・中国国家主席=21日、米ニューヨーク市内のホテル(代表撮影)

 

 

北京での中国政府代表たちも鳩山首相の東アジア共同体構想には誰もがノーコメントを通しているようです。

 

いまのままではせっかくの鳩山大構想も日本側だけの片思いに留まった感じです。

 

この構想が最初は中国が打ち上げ、プッシュしてきた経緯はすでに広く知られています。中国の提案した「東亜共同体」が東アジアからアメリカを排除しようという意図を含んでいたこともさまざまな例証から明らかでした。

 

しかしそれから時間が過ぎています。

 

いまの中国政府は東アジア共同体の推進への熱意を減らしたような感じでもあります。スタンスの微妙な変化も感じさせられます。その一つは中国政府の代表が東アジア共同体なる存在にアメリカを含めてもよいという趣旨を最近、発言するようになったことです。

 

東アジアの共同体なる組織に太平洋の彼方のアメリカが加わるとなると、東アジアという地域の独自性が失われ、もう東アジア共同体は東アジアではなく、アジア・太平洋共同体のようになってきます。

 

そこですぐ連想されるのは現存するアジア太平洋経済協力会議(APEC)です。共同体と経済協力機構の差こそ大きいですが、

東アジア共同体にアメリカを加えた組織となると、いまのAPECがきわめてそれに近い存在として浮かびあがります。

 

しかしアメリカを含めたアジアの「共同体」というのでは、地理的な概念、鳩山さんの好きのような空間という概念から考えると、出発点の基軸だった「東アジア」はもうどこかへ吹き飛んでしまいます。

 

東アジア共同体という構想を中国がアジアからのアメリカ排除の道具にしようと意図するこの基本が変わってしまったという証拠もありません。ただなにかが変わりつつあるという印象なのです。

従来の政策が少しも変わっていないならば、胡錦涛主席は鳩山首相の東アジア共同体創設提案にただちにイエスを表明したことでしょう。

 

さあ、胡錦涛主席はじめ中国の政府の代表たちはいまなぜ日本の首相が正面から提唱した「東アジア共同体」構想に沈黙を保つのか。

 

ひょっとしてアメリカを刺激したくないからかもしれません。

 

あるいは中国はアメリカと二国でアジアや太平洋を仕切っていくG2方式を優先させたいのかもしれません。

 

あるいは人や物や金が自由に国境を越えて動くなどという「共同体」を東アジアに創設することの夢想、幻想がわかってしまったのかもしれません。

 

とにかくこの中国の沈黙には注視したいと思います。

 鳩山新首相が国際舞台ではまったくの唐突な形で提起した「東アジア共同体」なる構想は国際的にどうみられているか。

 

 これから少しずつ紹介していきましょう。

 

 その冒頭がまずアメリカ議会でのハーバード大学の中国研究学者の証言です。

 

 以下の記事は3年以上前のアメリカ議会の公聴会の報道ですが、この場でも東アジア共同体は正面から論じられています。

 

 記事の一部をコピーしますが、その後半部分に東アジア共同体は中国の策謀だとする見解が証言として出てきます。

 

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「中国、最大の潜在敵」 日米同盟、離反図る 米下院委指摘
2006年02月16日 産経新聞 東京朝刊 国際面


 

 【ワシントン=古森義久】米国議会下院国際関係委員会が十四日に開いた米中関係に関する公聴会で議員側から「中国は米国の最大の潜在敵」という見解が再三、表明される一方、専門家の証人側からは中国はアジアで日本と米国の離反を図り、米国では各種研究所への影響力を強め、中国側に有利な政策を採択させるようになったことが報告された。

 同国際関係委員会の監視調査小委員会(小委員長デーナ・ローラバッカー議員)は「米国の外交政策への中国の影響力行使」に関する公聴会を開いた。
 
 共和党の有力議員の同小委員長は冒頭、「中国の不吉な軍拡、キリスト教徒や仏教徒の残酷な弾圧、知的所有権の厚顔な違反、北朝鮮、イラン、スーダンなど危険な無法国家との協力関係、北朝鮮やパキスタンへの核兵器技術の拡散、民主国家の日本への脅しなどは、中国が世界規模の覇権の樹立を目指すことを示している」と述べ、「この中華帝国の誇大妄想的な野望を抑えられる国は米国しかなく、その意味では中国は米国の最大の潜在敵だ。この明白な事実を指摘すると、これまでは米国のいわゆる主流派の学者やマスコミからあざけられてきたが、いまや米国と世界の安定にとっての最大の脅威である中国に直面するときがきた」と強調した。
 
 

 ハーバード大学東アジア研究所のロス・テリル研究員は「中国の当面の対外戦略は他国と紛争中の領土をすべて獲得するとともに、東アジアでの米国の影響力を減少させることだ」として、そのために日米両国を離反させようとしていると証言した。
 
 テリル氏は中国の対日政策に関連して、中国は
 
 (1)東アジア共同体構想を利用して米国のアジアからの排除を図る一方、日本は中国の意向に従う状態にして同共同体に入れようと努めている
 
 (2)「日本の軍国主義の危険」を喧伝(けんでん)するが、現実には中国自身がいまの世界で最大の軍拡を進め、過去半世紀に周辺の五カ国と戦争をしたのに対し、日本は同じ期間、外国人をただの一人も戦死させていない-などと強調した。
 
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