2009年10月

アメリカのケーブル(有線)テレビ・ニュースの10月の視聴率結果が27日に報じられましたが、CNNがまた最下位、日本では最もなじまれているこのアメリカのテレビの凋落は目を覆うものがあります。

 

まったく正反対にトップを走っているのはFOXニュースです。

 

周知のようにCNNはクリントン政権時代、クリントン・ニュース・ネットワークと揶揄されたほど、民主党、リベラル傾斜が顕著でした。その基本的な政治スタンスはいまも変わりません。

 

その一方、FOXはオバマ政権に叩かれ続けるほど、反リベラルに徹しています。こうしたテレビの政治傾斜と視聴率の相関関係は細部の科学的証明は不可能であっても、大枠は自明のようです。

 

さてニューヨーク・タイムズ10月27日付の報道によると、10月のケーブル・テレビの視聴率は1位がFOX,2位がMSNBC,3位がHLN、4位がCNNという順位でした。

 

主要なケーブル・テレビ・ニュースというのはこの4局を指すようですから、CNNは最下位ということです。しかもその数字をみると、CNNの凋落がさらに印象づけられます。

 

プライムタイムといわれる午後8時の視聴者数ではFOXの超保守ビル・オライリー氏の番組は881,000人、一方、その時間帯のCNNの視聴者はなんと162,000でした。

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CNNの創設者のテッド・ターナー氏と当時の妻のジェーン・フォンダさんの写真です。

 

金正日総書記の後継は誰なのか。
 
もっぱらの予測は三男の金ジョンウン(当初は正雲と表記された)だということですが、そうはならないとの見解がワシントンで北朝鮮出身の気鋭の研究者により表明されました。
 
とにかく権力の移譲自体がスムーズにはいかないだろうという予測なのです。
 
そのことを記事にしました。
 
北の世襲に時間の壁? 亡命の研究者「集団指導も」
2009年10月29日 産経新聞 東京朝刊 国際面


 

 【ワシントン=古森義久】北朝鮮の朝鮮労働党中枢で外貨の獲得にあたり、韓国に亡命後、現在は米国の民間研究機関「北朝鮮人権委員会」の研究員を務める金光進氏が27日、「金正日以後」と題する報告書を発表し、北朝鮮の権力移譲が円滑に進まない可能性がますます高まっているとする予測を明らかにした。

 金光進氏は報告書の発表とともに、ブルッキングス研究所でのセミナーで講演し、金正日総書記の病気の突然性や北朝鮮の国家体制の弱さのために、後継者との情報がある三男の金ジョンウン氏への権力移行が円滑に進む保証は全くないことを強調した。

 報告書によると、ジョンウン氏への世襲でも、
 
(1)金総書記による決定の確認
 
(2)金一族関係者(総書記の妹の金敬姫氏や夫の張成沢朝鮮労働党行政部長)による受け入れの確認
 
(3)後継者の段階的な訓練のための昇進人事の実施
 
(4)国民一般の広範な認知-
 
 などの手続きが不可欠とされ、後継者のトップポストへの就任には時間がかかる。
 
 このため、権力移譲には世襲以外の体制も必要とされ、暫定政権や集団指導体制が浮上することもありうるという。 

 報告書は、権力が時間をかけてジョンウン氏に世襲されるという方針が打ち出される場合でも、
 
 (1)世襲以外の後継として「摂政」の形で張氏が権力代行を務める
 
 (2)金総書記が張氏への暫定的な権力移譲にも難色を示した場合、集団的指導体制が誕生する
 
 (3)非世襲の後継政権でも恒久になる場合がありうる
 
 -などというシナリオを打ち出している。

 “金総書記後”に権力がどのように継承されても、これまでのような金正日氏個人の絶対独裁制を保つことはきわめて難しい-との予測を報告書はしており、締め付けがいくらかは緩和されて人権弾圧や政治犯の拘留も弱まる見通しがあると分析している。

 なお、報告書は金書記の長男の金正男氏を世襲の候補者リストには加えていないが、もし中国が全面支援して推せば、正男氏の権力取得もありうるとしている。
 
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   張成沢氏

日米関係の摩擦が思わぬ展開をみせ始めました。

 

まず11月中旬に予定されているオバマ大統領の来日が中止になるようだ、という未確認情報に基づく報道が流れたのです。内容を読むと、単に観測の報道のようにも読めます。

 

 

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オバマ来日中止も!?普天間問題先送りに米側が激怒 title end

date 2009.10.28 date end

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オバマ大統領率いる米民主党政権の要求に対し、四苦八苦している鳩山首相と岡田外相

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 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題で迷走する鳩山由紀夫内閣に対し、米国のオバマ政権の怒りが頂点に達しつつある。何と、来月12、13日のオバマ大統領来日を見合わせるべきだとの意見が急浮上しているというのだ。こうした情報を受けてか、岡田克也外相は急きょ訪米を検討している。安全保障や経済の基軸である日米関係は大丈夫なのか。

 「日替わりメニューのように変わるのはいかがか。具体的内容がないまま、あちらこちらで発言している。そんな簡単なものではない」

 沖縄県の仲井真弘多知事は27日夜、普天間移設問題をめぐり鳩山内閣の閣僚発言が二転三転していることに関し、こう苦言を呈した。

 それもそのはず、27日の鳩山内閣の足並みの乱れはひどいものだった。

 口火を切ったのは北沢俊美防衛相。27日午前の記者会見で、キャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市など)に移設する現計画について「われわれの選挙公約を全く満たしていないと認識するのは、少し間違いだ」として、容認する姿勢を打ち出した。
                      (以下、略)
 

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実は私は東京発で上記のような情報が流れていることを知りませんでした。

 

なぜ知ったかというと、ワシントン在の中国関係者からの問い合わせが回り回って、届いたからなのです。こういう報道があるが、なにか知っているか、という問い合わせでした。

 

その後、日米関係に関連する大きなレセプションがあったので、旧知のアメリカ政府当局者に雑談のような会話のなかでちらりと尋ねると、即座に否定されました。オバマ大統領は予定どおりに日本を訪問することになっている、というわけです。

 

だからオバマ大統領の訪日が中止になるというショッキングな事態はいまのところまず「ない」と断言できるようです。

 

しかし不思議なのはこの報道に中国政府関係者が異常なほどの関心を抱いていることです。北京からワシントンの日本関係者にさりげなくにせよ、この件での質問があったことです。

 

聞くところでは、中国政府はこの報道に強い興味を覚え、本当にそんな事態が進行しつつあるのかどうか確かめようとしているようです。しかもこのオリジナルの報道の内容は日本語から中国語に翻訳され、政府関連部局の間で流通しているとのことでした。

 

でも中国がなぜ関心を持つのかは想像がつきます。

中国は日米同盟のあり方にいつも戦略的な関心を抱いてきました。アメリカと日本が摩擦や対立を起こし、日米離反というような事態となれば、実はひそかに歓迎なのでしょう。

 

中国が歓迎するような事態は起きないほうが日本にとってはプラスだという点、自明だとは思うのですがーーー

なお東アジア妄想体にとりつかれているような鳩山首相にぜひ知ってもらいたい論文があります。
 
学習院大学の井上寿一教授が東アジアでのこの種の連合体について歴史をさかのぼって、解説しています。
 
その結論は現状では「東アジア共同体はできない」ということです。
 
以下の井上論文の最後の段落にとくに注意を払ってください。
 
なぜ東アジア共同体という考えが現実の政策としては幻想や妄想にすぎないことがよくわかるでしょう。
 
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【正論】学習院大学教授・井上寿一 米国除く「共同体」は機能せず
2009年10月27日 産経新聞 東京朝刊 オピニオン面


 

 ≪過去にも2回同様の議論≫ 

 「東アジア共同体」をめぐる議論が活性化している。
 
 この構想の提唱者、鳩山由紀夫首相は、今回の東南アジア諸国連合(ASEAN)の場での首脳会合でも「東アジア共同体」の構築を日本外交の目標に掲げた。

 「東アジア共同体」論の高まりは、今回が初めてではない。
 
 近くは2005年、遠くは1930年代に、同様の議論が起きている。
 
 皮肉なことに、これまでの「東アジア共同体」論は日中関係の悪化(たとえば2005年の反日デモ、あるいは1930年代の日中戦争)とともに台頭してきた。
 
 それが今回、初めて、日中関係の修復とともに、議論されるようになった。
 
 「東アジア共同体」は、実現に向けて、一歩、踏み出したかに見える。

 しかし問題も多い。
 
 予想通り、「東アジア共同体」論はアメリカの警戒を招いた。
 
 政権内に温度差もある。
 
 アメリカは「東アジア共同体」の構成国か否か。
 
 鳩山首相は「除外しない」と言う。
 
 対する岡田克也外相は「含めることになっていない」との立場である。
 
 両者には、「アジア共通通貨」構想をめぐっても、意見の相違がある。
 
 「東アジア共同体」への第一段階として「アジア共通通貨」の創設を唱える鳩山首相に対して、岡田外相は否定的だ。

 ≪「東亜共同体」との2類似≫

 「東アジア共同体」は成立するのか。
 
 成立するとすれば、どのような条件を満たすことが必要か。
 
 以下では1930年代の歴史に手がかりを求めて、「東アジア共同体」の成立条件を考えてみたい。

 1930年代の「東亜協同体」と今の「東アジア共同体」とを比較する理由は2つある。
 
 1つは国際政治の類似性である。
 
 「東亜協同体」は、米国主導の世界経済が恐慌をもたらしたことに対する地域主義構想だった。
 
 同様に今の「東アジア共同体」も米国主導のグローバリズムに対するリージョナリズム(地域主義)の対外構想である。
 
 2つは国内政治の類似性である。
 
 「東亜協同体」論は、新しい政治指導者、近衛文麿首相の下での国内新体制と連動していた。
 
 対する「東アジア共同体」論は、鳩山新首相の下でのポスト55年体制と連動している。
 
 これらの理由から、「東亜協同体」論を歴史的類推の対象とする。

 日中戦争下、「東亜協同体」論を展開する知識人の1人に蝋山政道がいた。
 
 東京帝国大学教授の蝋山は、近衛首相の助言者集団(昭和研究会)の中心メンバーだった。
 
 蝋山の「東亜協同体」構想は、アジア主義的な理念「東洋の統一」を掲げる。
 
 そのうえで蝋山は、「東亜協同体」が自給自足圏やブロック経済体制ではない、開放的地域主義に基づく国際秩序であることを強調する。
 
 「最も重要な地域協同体の理論は決してアウタルキー(自給自足圏)でもブロック制でもなくて、世界体制、従って世界政治経済構成の原理である」。
 
 蝋山の開放的地域主義は、「東亜」経済が域内よりも域外(すなわちアメリカ)に依存している現実から出発していた。

 蝋山の構想は、結局のところ挫折する。
 
 「東洋の統一」のための提携国、中国との戦争が続いていたからである。
 
 蝋山は蒋介石政権を打倒し、「親日」政権と提携するために、戦争を支持した。
 
 日中戦争の継続は対米関係を悪化させる。
 
 「東亜協同体」と対米協調との均衡が失われる。
 
 「東亜協同体」が実現することはなかった。

 ≪地域主義も「開放的」で≫

 以上の「東亜協同体」論との歴史的な類推から、「東アジア共同体」の成立条件として、第1に、日中の共同パートナーシップを挙げることができる。
 
 東アジア地域をめぐる主導権争いではなく、協調的なリーダーシップを発揮する。
 
 そのためには、日中両国が「アジアの一員」であるとの自国認識を確立しなくてはならない。

 第2に、「東アジア共同体」は開放的地域主義の観点から構想する必要がある。
 
 東アジア地域は、国際金融・情報も含めれば、1930年代以上に米国経済に依存している。
 
 そうである以上、「東アジア共同体」はアメリカを排除できない。
 
 それでは地域主義と対米協調の均衡はどう保持できるのか。
 
 「東アジア共同体」を単一の共同体ではなく、複数の共同体によって構成される重層的で機能的な共同体として構想すればよい。

 第3に、政治の意思である。
 
 「東アジア共同体」は、経済合理性によって自ずと成立するものではない。
 
 挫折はしたものの、日本が「東亜協同体」の可能性を追求できたのは、近衛の意思があったからである。
 
 同様に「東アジア共同体」も、政治主導でなくては成立しないだろう。

 これらの3条件を満たすことは、現状ではむずかしい。
 
 しかし国際政治の構造変動のなかで、日本が国際的な存在感を高めていくためには、地域主義の問題は避けて通ることができない。
 
 長期目標としての「東アジア共同体」をめざして、どのような政策の段階的な実施をおこなうのか。
 
 鳩山外交の真価が問われている。
 
 (いのうえ としかず)
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鳩山政権の当事者能力喪失のような迷走によって日米安全保障関係がきしんでいます。日米同盟の危機といっても、そう誇張ではないでしょう。

 

控えめにみても、日米同盟に暗い影が広がっているといえましょう。そんな状況を懸念して鳩山政権への批判を表明する識者が増えています。

 

識者の範疇にはいるのかどうかはわかりませんが、日本経済新聞のもそういう批判をかなり強く打ち出しました。日ごろ経済問題以外では燃えることの少ない日本経済新聞の諸氏が安保や政治で熱を込めて批判を述べるというのは珍しいといえます。

 

日本経済新聞10月22日の社説です。

「日米同盟の危機招く『安保摩擦』を憂う」という見出しでした。

 

その重要部分を以下に紹介します。

なかなか説得力があると、私は思いました。

 

「何のために太平洋を越えてきたのか。ゲーツ米国防長官は、そんな思いではないか。

 

 会談した鳩山由紀夫首相、岡田克也外相、北沢俊美防衛相のだれも、聞きたい話をしてくれなかった。インド洋の給油中止の見返るとなる支持の具体策であり、沖縄・普天間基地の移設をめぐる日米合意の確認である。

 

 立場を入れ替えて考えれば、わかりやすい。米側で政権交代があり、日本の防衛相が訪米したとする。米前政権との合意を再確認したいと考える防衛相に対し、米側は具体的な言質を与えない。何のための訪米だったのかと彼は首をかしげるだろう」

 

「安全保障をめぐる不一致が長く続くようなことになれば、同盟関係は緩み始める。

 

 オバマ政権は、同盟国日本よりも中国を信頼に足るパートナー

と考えるようになる。北朝鮮問題をめぐる外交でも、現在以上に中国ペースになり、日本には不満が蓄積する。ガス田をはじめとする日中間の懸案をめぐる交渉でも、米国の後ろ盾を失った日本の立場は弱くなる」

 

 「鳩山政権が繰り返す『日米基軸』が外交辞令でないとすれば、給油の実質的継続と、いち早い普天間基地移設の実現に向かい、具体的行動を示す必要がある。できなければ、日米同盟は名存実亡となり、緊急事態に機能しなくなる。

 

 首相、外相、防衛相に危機感が足りない。それが同盟の危機だ」

 

このへんのところがいまの日本の平均層の考えだといえましょうか。

 

 

 

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