2009年10月

 鳩山新政権や国会をめぐる多様な動きの情報の渦のなかで、下のような報道がありました。

 共同通信がスクープとして流した記事です。

 産経新聞でもその記事を使いました。

                                   

 

 

 官僚支配の打破をスローガンとする鳩山首相も国会での答弁では従来どおり官僚の方々に依存していくということのようです。

 

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首相答弁、官僚に作成指示 「格調高く、簡潔に…」

 

 

 首相官邸が鳩山由紀夫首相や平野博文官房長官らに対する臨時国会での質疑について、各省庁に「答弁メモ」を作成するよう指示していたことが26日、共同通信が入手した内部文書で分かった。

 

 指示は問答づくりを官僚に丸投げする内容となっている。

 

 民主党の小沢一郎幹事長が官僚の国会答弁を禁止する構えをみせるなど、政府・与党が掲げる「政治主導」と逆行する動きで「脱官僚依存」は看板倒れとの声も出そうだ。

 

 文書は内閣総務官室の名前で、先週末に各省庁に出された。

 

 首相や官房長官、官房副長官の答弁について文書は「これまで通り(麻生政権と同様に)各省庁の協力をお願いする」と記載。

 

 首相答弁では「首相にふさわしい格調高い表現」にするよう要求した上で「質問の趣旨を踏まえた簡潔な内容」にし、「結論を先に述べる」と、文書の書き方を指南した。

 

 ■「答弁メモ」作成指示文書

 

 ・鳩山首相や平野博文官房長官らの臨時国会での答弁メモづくりで、各省庁にこれまで通り(麻生政権と同様に)協力するよう指示。

 

 ・議員の質問と首相らの答弁を並べて文書にまとめるよう指定。

 

 ・首相答弁を格調高く、簡潔な表現にするよう要求。

 

 ・答弁に関係する与党3党の政策合意や民主党の政権公約を資料として添付するよう注記。

 

 ・答弁してはいけない内容を記すよう指示。

 

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自民党政権で経済財政政策担当の大臣を何回か務めた大田弘子さんが子ども手当の経済効用、とくに内需の拡大につながるのかどうか、ついて論文を書いています。
 
その答えはノーのようです。
 
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【正論】政策研究大学院大学副学長・大田弘子 「外需」抜きの成長戦略はない
2009年10月22日 産経新聞 東京朝刊 オピニオン面


 

 ≪「分配」ばかりが目立つ≫

 国政における与党と野党の最大の違いは、さまざまな政策を「予算」という最終形に落とし込む責任があるかないかである。
 
 予算は、政策のすべてを反映する。
 
 予算にする段階で、財源を工面せねばならないし、あれかこれかの選択を迫られる。予算を策定しなくていいのなら、あれをやれこれもやれ、と批判するだけでいい。

 これまで批判する立場だった民主党が、いよいよ本格的な来年度の予算づくりに入った。
 
 麻生内閣が短期間で積み上げた補正予算を斬ることと違って、新政権の真価を問う第一ステップになる。

 長年続いた自民党政権では、至るところに“鉄の三角形”、すなわち政治家と業界と官僚の三者がもたれ合う強固な既得権集団がつくられ、小さな改革でも岩盤にぶちあたった。
 
 本格的な政権交代で、この岩盤が崩されるのは、喜ばしいことである(もっとも、郵政という最強の岩盤は、逆に復元されそうだから、簡単に喜ぶわけにはいかない)。

 既得権から自由という利点の一方で、民主党の政策で決定的に欠けているのは、成長への危機感である。
 
 経済政策には、成長のための政策と分配のための政策がある。どちらも重要だが、民主党が重視するのはもっぱら分配政策である。
 
 最低賃金の1000円への引き上げ、製造業への労働者派遣の禁止、温暖化ガス25%削減…これだけでは、あたかも製造業は生産拠点を海外に移せばいい、と言っているようである。
 
 分配の源となる付加価値は、一体誰が生み出すのか、民主党の政策からは見えないのである。

 <  子ども手当は内需拡大策か≫

 月額2万6000円の子ども手当が、内需拡大策として掲げられ、国際会議でも表明された。

 個人消費の増加は、人口が減少する日本にとってきわめて重要な課題である。
 
 このことに異論はない。
 
 しかし、子ども手当は、ほんとうに内需拡大策なのだろうか。
 
 少子化対策ではあっても、内需拡大策とは言えないのではないか。

 消費を増やすために、2つの手法がある。
 
 第1は、政策によって、直接家計を潤し、消費を増加させる政策だ。
 
 定額給付金や所得減税や手当の増額がこれに当たる。
 
 第2は、転業・廃業の支援やグローバル化の加速などで企業の側の体質強化を促し、賃金を上げられるようにすること、また、規制改革などで消費者ニーズを満たす新サービスが生まれるようにすることである。

 第1の手法で政策的に家計に行くお金を増やせば、当然、家計の消費は増える。
 
 しかし、将来世代に依存する赤字国債で賄うのでない限り、その費用は同世代の誰かが負担するだけであって、消費の拡大効果がそう期待できるわけではない。
 
 もちろん、行政のムダを省くとか、子育て世帯を支援するとか、その趣旨自体はいいにせよ、これを持続的な内需拡大策として位置づけるには無理がある。
 
 むしろ、子ども手当は、明確に少子化対策として位置づけ、豊かな層も含めるのか、託児所などの育児サービス充実とどちらがいいか、を議論すべきではないか。

 日本経済の根本問題は、製造業以外の産業の生産性の低さと、グローバル化の遅れである。
 
 GDP(国内総生産)の7割を占める非製造業が体質強化しない限り、雇用機会は増えず、賃金も上がらない。
 
 したがって、第2の手法での改革を行わない限り、内需は強化されないと、私は考える。

 ≪アジアの中間層に着目を≫

 また、これからの日本の活路は、アジアである。
 
 アジアで増えつつある巨大な中間層(一定以上の所得を持つ層)にアピールする製品や農産物をどれだけ生み出せるか、観光等のサービスを提供できるか。
 
 この点に、日本経済の将来がかかっていると言ってもいい。
 
 中国だけで人口13億人、仮にこの1割が富裕層になるとしても、日本の人口を上回る。
 
 鳩山首相は「経済を内需中心に転換させる」と主張するが、人口が減る日本にとって、外需はきわめて重要である。
 
 国内での消費を増やすことと、外需を増やすこと、この両方はどちらも同じくらい重要であり、両方ともに、企業の体質強化とグローバル化がカギである。

 政策の人気度で言えば、財政で家計を直接潤す第1の手法は、歓迎される。
 
 他方、供給側に改革を促す第2の手法は、一部の人の痛みを伴うから人気がない。
 
 規制改革にも農業改革にも、抵抗が強い。
 
 しかし、第2の手法なしに、日本経済の将来展望は開けない。

 非製造業の生産性向上とグローバル化を柱に据えた成長戦略は、福田内閣でも策定し、実行段階に入りつつあった。
 
 政権交代だからといってすべてを反故(ほご)にするのではなく、逆に補強して加速させてほしい。
 
 既得権から自由な民主党だからこそ取り組める構造改革があるはずだ。

 国土交通省、経済産業省はそれぞれ成長戦略会議を設立するという。
 
 成長できる経済への政策が来年度予算にどう組み込まれるか、その点を私は最も注目している。(おおた ひろこ)
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考えてみれば、このブログで自民党指導部をテーマにするのは実に久しぶりです。それほど昨今の自民党は当方の関心を呼び起こさなかったわけです。

 

自民党の谷垣総裁が大胆な発言をしました。その発言について考えてみましょう。谷垣発言自体は以下のとおりです。

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自民・谷垣氏「民主議員はまるでヒトラー・ユーゲント」2009/10/26

 

演説で具体策にまで踏み込むことはなかった首相に対し、谷垣総裁率いる野党・自民党はどこまで切り込めるか=26日、国会 

 

 j自民党の谷垣禎一総裁は26日、鳩山首相の所信表明演説の際、衆院本会議場の民主党新人議員らが演説の節目節目で、一斉に拍手とともに「そうだ!」などと歓声をあげたことについて、「ヒトラー・ユーゲント(ナチス党の青少年組織)がヒトラーの演説に賛成しているような印象を受けた」と皮肉った。国会内で記者団に語った。

 

 大島理森幹事長も同日の記者会見で、「平成17年の郵政選挙後、小泉純一郎首相(当時)に若い自民党議員が拍手していたが、それ以上だった」と語った。

 

 自民党は昨年8月、麻生太郎幹事長(当時)が勢力を増す民主党をナチス台頭になぞらえ、その後、釈明した経緯がある 

 

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谷垣さん、珍しく、バシッとした発言ですね。

これからは戦う野党なのだから、このぐらいは言わなければ。

 

民主主義国家の政権党の議員をヒトラーに熱狂したドイツの若者たちにたとえるのは、失礼かもしれません。不適切かもしれません。でもヒトラーも民主的な選挙で出てきた指導者でした。

 

国会のその場にいて、小沢チルドレンたちの熱狂に、ついヒトラー・ユーゲントを連想してしまったなら、それは仕方ないでしょう。

 

ここで注釈ですが、私自身は小沢チルドレンという言葉は使ってきませんでした。小泉チルドレンも同様、選挙に立候補する人を「刺客」だなんて評することも、、作為的に過ぎると思っていました。

 

しかし朝日新聞などは小沢チルドレンという言葉をさんざん使っていて、肝心の小沢一郎氏や鳩山由紀夫氏に一喝されると、すぐ次の日からその表現を使うのを止めてしまった。小泉チルドレンは使ってもいいみたいです。これでよくいっての二重基準、もうちょっと悪くいえば、年来の偏向が露骨になりました。

 

私があえてここで「小沢チルドレン」という用語を使うのは半分以上、その用語を使わなくなったメディアへの当てつけです。

 

まあ余談はともかく、二重基準といえば、実は反自民党勢力も小泉政権時代の自民党の総裁かつ首相をヒトラーやナチスになぞらえようとしていた記録があります。民主的に選ばれた日本国の首相をユダヤ民族を大虐殺したヒトラーに重ねあわせていたわけです。しかも手のこんだ巧妙な方法で、でした。

 

具体的にいえば、朝日新聞です。

 

私は下の自書でその実例を紹介しました。

 

 この本は2003年6月に恒文社21から出版されました。

 この書の第六章「チョムスキーの正体」というなかに以下のことを書きました。時は小泉政権時代です。

 

<(他者への攻撃のための)「ゆがめ」にはアナロジー(類似)という手段もある。ある特定の人物の批判のために、その人物を悪の権化のような他の人物と類似していると断じ、並列において、一体化を図る、という方法である。連想させる方法といってもよい。どんな人物でもヒトラーとの類似を述べられたら、悪いイメージが生まれるに決まっている。

 

 朝日新聞の2001年12月11日朝刊にコラムニスト・早野透氏が書く記事が載った。そのタイトルは「ファシズムか『小泉酔い』か」だった。

 

 この「ファシズムか」という言葉自体が仰々しい。そんな言葉を小泉首相の名の直前におくこと自体が悪意な作為である。

 

 早野氏は次のように書いていた。

 

 「小泉さんはファッショなのかどうか。ファシズムといえばドイツのヒトラーだけど、それと比べるのはさすがに大げさだ。そこでチャップリンが映画『独裁者』でヒトラーを模したヒンケルと小泉さんと比べると、これがよく似ているので驚く。ヒンケルの演説は絶叫である。小泉さんの演説も絶叫でやんやの喝采を浴びる。ヒンケルはユダヤ人を敵に仕立てる。小泉さんは『私に反対するのは抵抗勢力』と明言している。ヒンケルはヒンケル・ボタン、小泉さんは小泉グッズを売り出す」>

 

 以上が朝日新聞のコラムの私なりの分析でした。

 6年前のことです。

 なんのことはない、このコラムは小泉純一郎をヒトラーに模しているのです。ただ巧妙にその二人の人物の間に映画を挿入し、

映画のなかのヒトラーと小泉が同じようだ、と書いているのです。

 

 こんな実例からくらべると、谷垣さんの発言は素直で温和ですね。でももうちょっと辛辣で過激で大胆になってもいいでしょう。

そして巧妙さは上記の朝日新聞のコラムをヒントにしていただいてもいいですね。

 

 なにしろ、日本のための戦いが始まっているのですから。

 

団結とか調和をスローガンにしてきたオバマ大統領がこのところ仮面をかなぐり捨てたように、対決姿勢をとり、自分たちの政策に批判的な組織に対し、次々に激しい非難の言葉を浴びせるようになりました。

 

FOXニュース・テレビへの攻撃の次に標的となったのは全米商工会議所です。この商工会議所は本部がホワイトハウスに至近の距離にあります。

トム・ドナヒュウー全米商工会議所会長

 

 

しかし商工会議所の側も平然と反論や否定を述べています。

なにかオバマ氏が仮面を少しずつはいできた、という感じもします。

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オバマ政権、全米商工会と対決 ロビー活動めぐり非難応酬


 

 【ワシントン=古森義久】オバマ米政権が米国で最大規模のビジネス連合体「全米商工会議所」に対し正面対決を明確にし始めた。
 同政権の政策に同会議所が反対を表明したためだが、「分裂よりも団結を」と主唱してきた同政権も最近の支持率低下などに駆られてついに新たな強硬姿勢に転じたと観測されている。

 全米商工会議所は参加企業約300万社、米国だけでなく、世界最大規模のビジネス連帯組織とされる。

 

 政治面では伝統的に共和党寄りだが、オバマ政権発足当初は協力の姿勢もみせ、同政権の景気刺激策には賛成を表明していた。

 

 しかし、10月上旬にはオバマ大統領自身が公開の場で全米商工会議所を名指しして、議会に対するそのロビー活動を非難した。同時にオバマ政権では同会議所の主要メンバーのIBM、コダック、コカ・コーラなど各社に直接に接触して政権への協力を求めるようになった。

 

 大統領補佐官のバレリー・ジャレット氏は「この会議所が本当に米国のビジネス界を代表するかどうか疑問だ」と述べ、巨大組織への対決を鮮明にした。

 

 オバマ政権がこうした姿勢をみせるのは一つには同商工会議所が今年夏以降、同政権の医療保険改革案の一部や気候変動対策案の一部、そして「消費者金融保護庁」新設に反対を表明し、議会への働きかけを拡大したことが原因だとされる。

 

 しかし同政権側も大統領自身が商工会議所の活動を「ここ10年間、計5億ドルもの資金をロビー工作に費やして消費者保護を妨害してきた」と非難したように全面対決の姿勢を打ち出してきた。

 

 一方、商工会議所側も「オバマ政権の『大きな政府』の過剰には反対せざるを得ない。

 

 同政権は会議所加盟の個別企業に脱退までを働きかけている」(ブルース・ロステン同会議所議会担当)と反論する。

 

 10月はじめには大手企業のアップル社が商工会議所を脱退し、同会議所がオバマ政権の工作だと非難する一幕もあった。

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私の通う「ジョージタウン大学・ワシントン柔道クラブ」での最近の模様をお伝えします。

 

夏が終わり、秋を迎えると、メンバーの入れ替えがかなりあります。 

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【朝刊 国際】
【外信コラム】ポトマック通信 柔道文化のモザイク化

 

 「ジョージタウン大学・ワシントン柔道クラブ」では大学が秋の新学期を迎え、新しい会員たちがまた30、40人も入ってきた。
 大多数は同大の新入の男女学生たちである。
 そんななかでショーン君は日本語をほぼ完璧(かんぺき)に話す異色の米国人学生だ。

 聞いてみると、彼はジョージタウン大学の1年生、父親はアイルランド系米人、母親は日本人で、日本に6歳まで住んだという。

 

 日本語が上手なのは家での母親との会話がほとんど日本語だからだそうだ。

 

 18歳のショーン君、身長は180センチぐらいで筋骨もなかなかたくましい。

 

 剛柔流の空手の黒帯だというだけあって、足腰が強い。

 

 柔道は初心者だというショーン君に受身と基本の投げ技をいくつか教え、次の週には組んで自由に技をかけあう乱取り練習を始めた。

 

 ところが、こちらが技をかけ、ショーン君を投げると、彼は倒れながら、なにか吐き出すように短い言葉を口にする。

 

 倒れるたびに同じ言葉を繰り返す。耳をすませて聞くと、なんと「チクショウ」と言っているのがわかった。

 

 「チクショウというのはやはり柔道の礼に反するよ」

 

 やんわりと注意すると、ショーン君は「投げられるとくやしくて、情けなくて、つい自分に対してチクショウと言ってしまうのです。子どものころ、なんとなく覚えてしまった言葉ですが、まずいですか」

 

 やはりまずいと答えると、彼は「わかりました。やめます」と素直に応じた。

 

 米国の首都での柔道は文化のモザイクをますます多様にしていくようだ。(古森義久)

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以下はワシントン柔道クラブの様々な写真です

 

Sensei (Instructors) of the Washington Judo Club

 

James Takemori

Tad Nalls

Tsuyoshi Miyazaki

Yoshihisa Komori

Yasutaka Ohkawa

 

 

 

 

 

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