2009年12月

 ワシントンではこのところ日米両国政府間での普天間基地の扱いをめぐる摩擦など、やや緊張し、不快な事態が続いています。
 
 そんなときに体を精一杯に動かす柔道は効果のある精神の開放となります。その柔道での最近のおもしろい情景を記事にしました。
 
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【外信コラム】ポトマック通信 柔道で日露交流
2009年12月18日 産経新聞 東京朝刊 国際面


 

 私が通う「ジョージタウン大学・ワシントン柔道クラブ」に最近、体は小さいのに下唇をかむような引き締まった顔つきの少年が入ってきた。
 
 モスクワからきたばかりだというグリブという名の7歳の少年だ。
 
 父親のイーゴリさんがワシントンのロシア大使館に配属になったので、しばらくこの地に住むのだという。

 同行したイーゴリさんの話だと、グリブ君はモスクワですでに柔道を1年近く習ったとのことで、その夕も柔道着を持参していた。
 
 ただそのときの練習に子供が1人もおらず、グリブ君はすぐ稽古(けいこ)に加わることにはためらいをみせた。
 
 そこで私が子供1人だけでも自分がやさしく相手をするから心配ないと説得を試みた。

 だがグリブ君はなかなか首を縦に振らない。
 
 英語が「マイ・ネーム・イズ・グリブ」のほかにはまったくできないことも不安の原因のようだった。
 
 父のイーゴリさんを通じて「どのぐらい柔道ができるか、みせてくれるだけでよい」と説くと、やっとうなずいた。

 さて柔道着に着替えたグリブ君と柔軟体操から受け身、打ち込みという普通の手順で練習を始めると、彼がすでに基本をしっかり身につけているのに感嘆した。
 
 自由に技をかける乱取り稽古をすると、背負い投げ、大外刈りと、きれいに飛び込んできて体を回転させる。
 
 合わせて30分以上、こちらも受け身を30回ほどもとったので、汗びっしょり、グリブ君よりも荒い息をついているのに気づき、こんな日露交流もあるのだと思わず苦笑した。
 
                      (古森義久)
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  鳩山政権の普天間問題に対する「決定延期」などによりアメリカ側の態度が険しくなってきました。

 

 それでもなおオバマ政権自体は内心の不満や怒りをあらわにせず、柔軟であるかのような姿勢を保とうと努めています。

 

 内政でも外交でも苦しい立場にあるオバマ政権は「対日関係もまた失敗した」と非難されることを恐れています。

 

 だからオバマ政権の当局者たちは、鳩山政権に対しても、できるだけ批判の表明を避けようとします。本音を語っていないわけです。

 

 この点、野党の共和党側では、もっと本音に近い見解や心情が述べられます。そんな一例を紹介します。

 

 ワシントンの大手シンクタンクのヘリテージ財団が発表した日米同盟の危機についての政策提言報告書です。同財団は共和党寄りということもあって、オバマ政権よりはずっと率直な認識や意見を打ち出しています。

 

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【朝刊 国際】
日米同盟 危機迫る 「鳩山政権、早急に代案を」 米シンクタンク

 

 【ワシントン=古森義久】米国の大手研究機関「ヘリテージ財団」は16日、沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設に対する鳩山政権の態度が日米関係を深刻に緊迫させ、日米同盟を傷つけているとする報告書を発表した。
 報告書は政策提言としてオバマ政権に普天間移設の従来の合意の履行をあくまで目指すべきだと勧告する一方、日本側には合意を守らない場合、明確な代案を早急に示すことを求めた。

 「米国は沖縄の米軍再配備の履行を確固と進めるべきだ」と題された報告書はまず、現在の日米関係の緊迫は、鳩山政権が日米両国の13年間に及ぶ交渉の成果である普天間移設を含む沖縄の米軍基地に関する合意を守らず、鳩山由紀夫首相の前言変更や、岡田克也外相、北沢俊美防衛相の言明との矛盾によりさらに深まり「米日2国間の軍事同盟を傷つけている」とした。

 

 事態はまだ危機にはなっていないが、日本側がこれまでと同じあいまいさを続けた場合、同盟の危機になるだろうと予測している。

 

 鳩山政権が普天間移設など米軍基地問題を「戦略的にはまったく考えておらず、国内の政治面からだけ考えている」とし、こうした態度が同盟を傷つけ、日本とアジアの安全保障への真剣な取り組みの機会を奪っている、と断じている。

 

 また、「日本の民主党は日本国内での米軍のプレゼンスをとにかく減らすというのならば、その分を日本独自の防衛強化で補うつもりがあるのか」と問い、「鳩山政権が当初に打ち出した『対等な防衛』という言葉の意味を定義づけてほしい」と日本側に迫った。

 

 同報告書は米国政府には

 

 (1)日本政府に普天間飛行場の県内移設などあくまで合意通りの実施を求める

 

 (2)日本政府のあらゆるレベルと接触し日米同盟の重要性を幅広く訴える

 

 (3)鳩山政権に自国の防衛だけでなく、地域的かつグローバルの安全保障の責任を問う

 

 -ことなどを勧告した。

 

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鳩山首相が普天間基地移設の関する決定を延期したことをニューヨーク・タイムズが12月16日付の記事で報じました。東京特派員のマーティン・ファックラー記者の報道です。

      

 

 

この記事の見出しは「日本の指導者が基地についての決定を延期する」となっています。この延期が日米関係、日米同盟にどのような結果をもたらすか。記事はいろいろな識者、関係者たちの言葉を引用しながら、以下のように記していました。

 

「この延期は日本の最も緊密な同盟国であるアメリカとのすでに悪化したきずなに、さらに新しい圧力をかけることが確実である」

 

「アメリカ政府にとってのチャレンジの一つは鳩山氏の主張の明確さ欠落である。鳩山氏は日米関係での日本の下位の立場を終わらせると唱えながら、アメリカとの同盟が依然、日本の安全保障の礎石だと強調するからだ」

 

「この延期は普天間移設問題に早期の決定を求めてきたアメリカ側の当局者たちをさらにいらだたせることになる」

 

「オバマ政権側がこのまま静かに数ヶ月、待てないとなると、日米関係は両国の戦後の同盟の歴史でも最悪の事態となるだろう」

 

「延期の決定は日本の有権者たちの間に鳩山首相のリーダーシップとアメリカとの致命的に重要な関係の管理能力への疑問を生み、離反させる危険がある」

 

 

まあ、以上のような諸点は日本側では常識だといえましょう。

 

しかしこのニューヨーク・タイムズの記事は次のような政治アナリストたちの言を結びとしていました。

 

「鳩山首相は普天間基地の(予定どおりの)キャンプ・シュワブへの移設以外には現実的な選択肢はないだろう。だから鳩山首相は結局は既存の合意に沿って、元の移設先への移転に同意することになるが、まず最初にアメリカに対して抵抗するというショー(芝居、見世物)を演じてみせねばならないのだろう」

 

つまりは、鳩山首相の今回の延期の決定も、自分が反米であることを誇示する大芝居かもしれない、というのです。

 

しかしこの解釈も疑問の余地は大ですね。

 

鳩山首相の現実感覚は識者の現実感覚とは異なるかもしれません。それに鳩山首相の「反米」は芝居ではなく、自然にわいてくる態度なのかもしれないからです。

 

 昨年の共和党大統領候補だったジョン・マケイン上院議員までが日米同盟の揺らぎを懸念し、鳩山政権に対して批判的と受け取れる言明をしました。

 

マケイン議員は年来、日米安保関係には強い関心をみせ、日本をも何度も訪れて、日米同盟の効用の高さを説いてきました。日米同盟堅持の立場をとる有力政治家なわけです。

 

そのマケイン議員が昨12月15日、日米同盟が揺らいでいる状態についてコメントしました。その内容はトーンとしては穏やかですが、よく行間までも読むと、いまの鳩山政権の日米同盟への対応、とくに鳩山政権の普天間基地問題への対処には明らかに批判的であることが歴然としています。

 

John McCain

 

 マケイン議員は現在、上院の軍事委員会の有力メンバーです。

普天間基地や沖縄在のアメリカ海兵隊について議会で審議する立場にあります。

 

 同時にマケイン議員のこの発言は鳩山政権への批判が共和党側へも広がっていくことの兆しかもしれません。

 

 マケイン議員のこの発言を産経新聞で報じました。

 

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「アジア、新政権を疑問視」 普天間問題でマケイン氏


 

 【ワシントン=古森義久】米国の昨年の共和党大統領候補だったジョン・マケイン上院議員は15日、沖縄の米軍基地をめぐる日米間の論議に触れ、アジア全体から日本の新政権の態度へ疑問が向けられていると述べ、在日米軍はアジアの安定要因だと強調、従来の合意の実行を促した。
 

 ワシントンの大手研究機関「ヘリテージ財団」でアフガニスタンに関する主要演説をし、演説後の質疑応答で日米同盟と沖縄米軍基地問題について論評した。

 

 マケイン議員は、アフガンでの米軍の対テロ作戦に関連して自衛隊がインド洋で実施してきた給油活動に対し「非常に重要な寄与であり、日本の国民と政府に感謝する」と述べた。

 

 さらに日米両国間では「沖縄の米軍基地などに関して非常に慎重を要する交渉がいま進行している」と語り、「日米両国が海兵隊やその他の米軍部隊の基地の問題について合意するだけでなく、従来の非常に緊密な安全保障関係を保持することを心から望んでいる」と述べ、普天間問題を含む日米安保関係の諸課題がこれまでの日米同盟を堅持する形で和解を見ることへの期待を強調した。

 

 マケイン議員はまた、「日本に駐留する米軍はアジア全体での安定要因だ」と強調して、日本が従来の合意どおりに在日米軍の再編成を履行することに期待を見せた。

 

 そのうえで、「日本の新政権の態度のために今、日米関係がどうなるのかアジア全体から疑問が向けられている」として、現在の日米間の交渉ができるだけ早期に解決することを望むと語った。

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 日本ではこのところ中国の存在の大きさをことさら感じさせる事態があいついで起きています。

 

 小沢訪中団の媚中朝貢ぶりや、習国家副主席の天皇陛下との会見をめぐる国辱的な横車など、そして民主党幹部議員の「日中米正三角形論」など、そのほんの実例でしょう。

 

               

                      習近平国家副主席

 

 鳩山政権のこうした中国接近の前提にあるのは、中国も日本と同質の国家であるかのような誤認です。誤認といえばひびきはまあまあですが、事実を知っていて、その事実と異なることを表明していれば、ウソとか欺瞞ということになるでしょう。

 

 中国は周知のことながら日本が国家の最大の基本、そして最大の前提ともする民主主義を否定している国なのです。北京の中心部で、あるいは地方でも、共産党の批判をしたり、国家主席の辞任を求めたりすれば、即座に弾圧されてしまう独裁体制の国なのです。だから中国は日本にとって価値観を共有する同盟国のアメリカと等距離の国であるはずがありません。

 

 中国のその独裁体質を示すささやかな実例――こうした例は無数にあるわけですが――を紹介します。

 

 アメリカの議会と政府が共同で進めている中国の人権状況調査のプロセスで出た指摘です。

 

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中国民衆に「危険」 苦情申し立て制度 国民管理・弾圧に利用
2009年12月06日 産経新聞 東京朝刊 国際面


 

 【ワシントン=古森義久】中国の人権状況などを調査している米国の「中国に関する議会・政府委員会」は4日、中国の苦情申し立て制度「信訪」に関する公聴会を開き、一般大衆の声を聞くための民主的制度として宣伝されてきた「信訪」が、実際には中国政府の国民管理に利用されているという実態が報告された。

 公聴会では、信訪制度を専門に研究しているワシントン大学のカール・ミンズナー教授が、中国では毎年、平均約1100万件もの苦情申し立てがなされてきたが、そのうち当局によって取り上げられるのは、全体の0・2%に過ぎないと証言した。

 ミンズナー教授は信訪制度には民衆にとってマイナスや危険な面があるとして、
 
 (1)苦情の解決よりも情報収集が優先される
 
 (2)共産党上層部は信訪により民衆の動向を知り、特定の運動の指導者の弾圧に利用する
 
 (3)正規の司法制度の比重を減らし、法治よりも人治の傾向を強める
 
 -と述べた。

 中国出身で中国の司法制度を研究するメリーランド大学のシャオロン・リー教授は「信訪制度では当局が全面的に介入し、苦情申し立ての当事者を沈黙させてしまうことが多い」と証言し、「介入」の方法として、苦情申し立ての中心人物の誘拐や襲撃、逮捕、労働収容所での再教育などをあげた。
 
 2007年の調査では、請願者全体の3・1%が精神病患者用施設に拘束されたという。
 
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