東京裁判をめぐる論争はなお絶えませんが、日本を有罪にするという大前提に合致しない資料が弁護側から申請されても却下されてしまったことは、周知の事実です。
すでに日本でも訳書が刊行されたレジナルド・ジョンストン著『紫禁城の黄昏』もその却下資料のひとつでした。
今回、それを追う形で戦前、戦中に中国で活躍したアメリカ人ジャーナリストのジョン・パウエル氏の体験記"MY TWENTY-FIVE YEARS IN| CHINA"の日本語訳が『「在支二十五年」米国人記者が見た戦前のシナと日本』として出版されました。刊行元は祥伝社、訳は中山理氏、監修が渡部昇一氏です。
著者のパウエル氏はタイトルどおり、戦前、戦中の中国で上海を中心に25年も過ごし、英米系の雑誌「チャイナ・ウィークリー・レビュー」の編集長として活動しました。
パウエル氏は当時の大多数のアメリカ人記者と同様に、中国を全面的に支持し、日本を嫌っていました。その「親中反日」のどあいはものすごいものだったようです。実はこのパウエル氏が日本軍によるとされる南京での「大虐殺」や「百人斬り」を最初に英文で流したのです。
そんな反日傾向の強いパウエル氏の体験記が日本を裁く東京裁判では資料として採用されなかったのか。その理由の一端はこの書での中国共産党についての記述にあるそうです。
戦争の歴史に関心を持つ向きには、とてもおもしろい書だと重います。上下二巻の大作、下は下巻の写真です。