2010年03月

 国会でのNHK平成22年度予算審議というのをテレビでみて、驚きました。

 

 民主党議員のNHKの活動目的についての質問に答えて、NHKの福地茂雄会長が「世界平和の理想の実現と人類の幸福の実現」と述べたのです。

 

 この回答を中心とする質疑応答ではもっぱらNHKの活動の基本目標として語られたのは「世界の平和」と「人類の幸福」だけでした。 「日本」という言葉はそのやりとりで一回も出ませんでした。

 

 日本国民が強制的に払わされる視聴料で運営される日本の公共放送がその活動の基本目標に関して日本を語らないのです。NHKはいつから国際平和機関になったのでしょうか。

 

 日本国民からの公費で運営される事実上の国有メディアであれば、その施主たる日本国民への奉仕をまず最優先させるのが当然でしょう。日本国民のために客観的で正確な情報を報じ、物事の考え方としては日本国民という基点からの多様な見解を流すことが責務のはずです。

 

 であるのに「日本の平和」「日本国民の幸福」よりも「世界の平和」「人類の幸福」が先だというのは、日本の公共放送としては倒錯です。なにか気持ちが悪くなる発想を感じさせます。日本は従属的な立場でしかないという考えを思わせるからです。

 

 しかも「世界の平和」という場合の「平和」というのはなんでしょうか。単に戦争のない状態を平和と呼ぶのでしょうが、その[平和」には条件が必要です。

 

 植民地統治下の平和でもいいのでしょうか。

 一党独裁で個人の自由が抑圧される平和でもいいのでしょうか。

 貧富の差が固定されている社会構造での平和でもいいのでしょうか。

 民主主義が否定される平和でもいいのでしょうか。

 奴隷の平和でもいいのでしょうか。

 

 平和というのは、その質が規定されなければ、人間集団のあり方としては意味がありません。「世界の平和」という標語には、その標語を叫ぶ側の価値観や理念が感じられません。

 

 戦争は悪だ、戦争はいけない、と叫ぶだけの平和論はあまりに無責任です。ナチスの悪を滅ぼした戦争は悪なのでしょうか。日本の軍国主義を倒した戦争も悪だったということになると、日本の戦前の国体や政策のあり方が善ということになりますね。

 

 NHKにはぜひ、日本をもっと真面目に考え、「平和」とか「幸福」という一見、深遠や有意義に響きながらも、その言葉単独では現実の国際社会でほとんど意味のない「NHK用語」の乱用はどうぞ、やめてください、というところです。

私自身の産経新聞での連載記事の紹介です。

 

【安保改定から半世紀 体験的日米同盟考】(6)日大闘争


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1968年9月、東京・神田の日大近くで、角材を持ち道路いっぱいにデモする学生たち

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1968年9月、日大経済学部の事務室は学生たちに破壊され、壁には殴り書きが

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 ■「米国の軍事政策もかかわる」

 ビートルズの曲が流れ、団塊の世代がヘルメットにゲバ棒で政府や大学に抗議して、バリケードを築いたあの時代、

 

 各大学の紛争のなかでも日本大学での闘争が最も劇的で、最も激しく広く社会を揺さぶったといえるだろう。

 

 マンモスと呼ばれた日大はなにしろ規模が巨大だった。

 

 私は日大闘争には新聞記者として裏と表からかかわった。

 

 1968年春、警視庁詰となった私は捜査2課の担当になった。

 

 汚職、横領、詐欺などの知能犯を取り締まる部門である。

 

 その捜査2課が日大の使途不明金の捜査をひそかに始めていた。

 

 この使途不明金こそ学生たちが大学当局への抗議を始めた最初の理由だった。

 

 事件記者とも称された警視庁詰記者は、警察署まわり記者からは昇進であり、取材の方法も異なった。

 

 NHKのテレビドラマ「事件記者」が描いたかっこよいイメージとはほど遠く、捜査官の自宅を夜こっそり訪れて、情報をもらうことが最大の作業だった。

 

 新聞各社のスクープ争いはものすごかった。

 

 警視庁が扱う事件も当時はいまよりずっと大きく、紙面でも大見出しの1面記事となった。

 

 だから自社だけの特ダネを求める圧力は強く、他社に抜かれたときの糾弾は酷だった。

 

 私が所属した毎日新聞では記者10人ほどを警視庁に常時、おいていた。

 

 佐々木叶キャップ以下、捜査2課の担当は白根邦男、今吉賢一郎両記者の下に私が入り計3人だった。

 

 このころ警視庁の事件報道ではサンケイ(現産経)新聞が福井惇キャップの下、強みを発揮していた。

 

 とくに捜査2課がらみでは鈴木隆敏記者らがスクープを放つことしきりだった。

 

 自分の担当する部門でのまったく知らない話がサンケイの1面の大記事になっているのを朝のフトンの中でみて、自分の記者能力を全否定されたようなみじめな思いをよく味わわされた。

 

 そのころは自分が将来、サンケイ新聞に入ることはむろん想像もしなかったから、鈴木記者らをなんとも憎たらしく思ったものだった。

 

 このころ日大では経済学部の富沢広会計課長が失踪(しっそう)していた。

 

 日大が脱税容疑で東京国税局の捜索を受け、その対策を赤坂の料亭で大学幹部と協議した後、忽然(こつぜん)と姿を消したのだ。

 

 日大経済学部は2億6千万円の使途不明金を出す経理不正を指摘され、富沢課長はそのカギを握るとされていた。

 

 警視庁捜査2課はこの事件の捜査に着手し、まず富沢課長の行方を追っていた。

 

 その追跡の作業を私たちは知って、取材を進めた。

 

 捜査員は同課長が多額の公金を持って逃走し、渋谷の円山町で毎月、恋人と会い、ハイヤーを呼んで横浜まで戻っていた、というようなところまではつかんでいたが、タッチの差で後手にまわっていた。

 

 この経理不正が日大闘争の発火点となった。

 

 学生たちは大学当局の脱税や使途不明金に抗議して、活動を始め、日大全共闘の結成へと進む。

 

 その過程では学内での建物封鎖や街頭でのデモにからんで暴力行動もあいついだ。

 

 「バリケード内の大衆団交」が叫ばれる季節だった。

 

 私は日大の不正経理事件の水面下の取材にあたりながら、この表での派手な衝突を追う報道陣にもよく加えられた。

 

 68年9月4日未明、日大闘争のクライマックスのひとつとなった経済学部の占拠排除でも突然、自宅から呼び出され、現場に急行した。

 

 前夜、酒を飲んで寝ついたばかりの午前3時ごろの電話だった。

 

 西神田の現場では機動隊500人ほどが全共闘の占拠した経済学部一号館などに突入し、一気に排除するのを酒気のぷんぷんする体でみつめたものだった。

 

 日大闘争も単に大学の不正をただすというだけの活動ではなかった。7

 

 0年に延長される日米安保条約への反対運動でもあった。

 

 当時の全共闘リーダーのひとりは次のように回想している。

 

 「70年安保闘争まで戦おうと思っていた。個別に日大闘争があるわけでなく、自民党政府、アメリカの軍事政策(ベトナム戦争、基地問題、沖縄問題)すべてがかかわっていると考えていたからである」

 

 その意味では私の日大闘争体験も日米同盟反対運動へのユニークな角度からの関与だったといえよう。

 (ワシントン駐在編集特別委員 古森義久)

アメリカの議会ではグーグルの中国撤退を超党派の議員たちが礼賛し、支持しました。

 

アメリカの一般世論も中国政府の言論弾圧を非難し、その圧力に屈しなかったグーグルの動きに共鳴している、ということでしょう。

 

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[ワシントン=古森義久]米国の議会と政府が合同で中国の人権問題などを調査する「中国に関する議会・政府委員会」は24日、中国でのグーグルなどインターネット規制についての公聴会を開き、議員側はグーグルの中国本土撤退の措置を超党派で礼賛した。

 

グーグル側代表は中国政府の抑圧の実態を改めて証言した。

 

同公聴会では民主党の大物のバイロン・ドーガン上院議員が議長となり、冒頭に「グーグルの中国撤退は表現と情報の自由を支持する強固な一歩であり、中国政府のインターネット検閲への強力な非難だ」としてグーグルへの支持を表明した。

 

共和党のベテランのクリス・スミス下院議員も「中国政府の抑圧に抗議したグーグルの行動は中国側の民主主義信奉者たちにも強い支援となり、まだ中国の独裁政権に対し自由擁護の明確な態度がとれないでいる他の米国企業にとっての見本となった」と高い評価を送った。

 

グーグル側からはアラン・デービッドソン公共政策部長が証言し、中国政府が同社の検索事業の検閲だけでなく

 

①グーグル社のインフラ組織にサイバー攻撃をかけて侵入し、情報や知的所有権を奪おうとする行動を継続している

 

②グーグルが管理するGメールのうち在外中国人の民主活動家多数のサイトに侵入し、情報を盗んだり、サイトの混乱を図っている

 

――と述べた。

 

同部長はまた中国政府の検索検閲について「中国当局はグーグルに対して、この検閲の是非は交渉の対象にはまったくならないと告げており、中国側の検閲の方針は揺らいでいないようだ」とも証言した。

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アメリカと中国との関係はついに経済の領域でも険悪となっていますが、アメリカ側からこんどは「中国がアメリカのハイテク産業の雇用を奪っている」という非難が出ました。

 

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米のハイテク産業 中国が63万人分の雇用奪う 団体報告 人民元や補助金理由
2010年03月25日 産経新聞 東京朝刊 総合・内政面


 

 【ワシントン=古森義久】米国のハイテク産業で約63万人分の雇用が2001年からの8年間に失われたとする報告が23日、米国の主要製造業団体から発表された。
 
 雇用喪失を「対中貿易赤字の結果」と位置づけた同報告はその理由として中国側の通貨レートの不公正操作や政府補助金を挙げている。

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 米国の多くの製造業企業を代表する民主党系団体「アメリカ製造業同盟(AAM)」は報告で、「中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した01年からの8年間で米国内の雇用240万人分が中国への生産拠点移転や中国からの輸入増大によって失われた」と指摘した。

 特に、コンピューター、電子機器とその部品などを製造するハイテク産業について「他の産業部門よりも対中赤字を急速に増大し、その結果としての雇用の喪失や縮小も激しくなった」と述べ、「合計62万8千人分の米国の雇用が中国を原因として失われた。この数字は全体の雇用喪失の26%に相当する」と強調した。

 米側の雇用縮小の背景として報告は「中国はWTO加盟以来、対米貿易黒字を急速に拡大し、01年には840億ドルだったのが、08年には2700億ドルへ増加した。米側のその対中貿易赤字の40%はハイテク製品だった」と指摘した。

 報告は中国の巨額な対米貿易黒字の原因として
 
 (1)中国当局は人民元の通貨レートを不当な操作で実勢の40%以下に抑え、米国市場での中国製品を不当に安くしている
 
 (2)中国政府の自国企業への巨額の産業補助金の供与が中国製品を廉価にしている
 
 (3)中国側の労働法や環境保護法の履行が緩やか過ぎて、中国企業への負担が少ない
 
 (4)中国市場での知的所有権の盗用が中国企業を有利にしている
 
――などを挙げた。

 特にハイテク産業では中国製品が米国市場に安く輸入され、廉価で大量に売られていることが米業界の規模を縮めているとの見方を示した。この結果、カリフォルニア州、テキサス州などで特に失業が増えたという。

 AAMの報告は同じ民主党系の研究所「経済政策研究所(EPI)」の調査研究の成果に基づいているという。だが、この種の報告が米国産業界から直接に発表され、中国への非難となるのは現在の米中経済関係が対立や衝突の構図を明確にしてきたからだといえる。
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アメリカでは中国政府のインターネット規制に反対の声が高まっていますが、また新たな動きがありました。

 

 

米ドメイン会社 中国の「.cn」提供停止


 

 【ワシントン=古森義久】インターネット上の住所にあたるドメインの登録では世界最大の実績を持つ米国企業のゴーダディ社が、中国当局からの干渉に反発して中国でのドメイン(.cn)の新規登録の事業を停止したことが24日の米国議会での公聴会で公表された。
 この措置はグーグルに次ぐ中国政府への抗議の措置として議員側から歓迎された。

 

 同社のクリスティン・ジョーンズ副社長は「中国に関する議会・政府委員会」が米議会で開いた中国のインターネット規制についての公聴会で、中国での新たなドメイン登録を中止したことを公式に言明した。

 

 同副社長の証言によると、2005年から中国での事業を始め、現在、約2万7千のドメイン名を管理する同社は、登録には中国の申請者側の名前、住所、電話番号、Eメール・アドレスだけを求めていた。

 

 だが、昨年12月から中国政府の「中国インターネット・ネットワーク情報センター(CNNIC)」により、申請側の中国人に新たにカラー顔写真、勤務先住所、本人署名の提出を義務づけることを指示された。

 

 しかも新たな義務づけは既登録者にも適用された。

 

 ゴーダディは、この中国の状況ではドメイン登録が中国政府の民主活動家らの取り締まりの武器に使われると判断して、中国国内での新規登録をすべて停止することを決めたという。

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【用語解説】ドメイン

 インターネット上に存在するコンピューターやネットワークを識別するための記号の組み合わせ。「.jp」「.org」など、利用される国や目的などに合わせ種類が異なる。ドメイン同士の衝突を防ぐため国際機関が一元的に管理しており、その委託を受けた各国の企業などが割り当てを行っている。

 

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