2010年04月

東南アジアの象徴のように語られる、あのメコン川。

 

そのメコン川が中国の上流での巨大なダム建設のために、下流の流域に重大な被害をもたらしそうな展望を生んでいます。

 

そのことを記事に書きました。

 

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メコン川 中国巨大ダム 下流経済圧迫 紛争原因に


 

 ■米研究機関報告 オバマ政権に“仲裁”を提唱

 【ワシントン=古森義久】ワシントンの有力研究機関「スティムソン・センター」は21日までに、中国からタイやベトナムを通って南シナ海へと流れるメコン川の開発についての報告「メコンの分岐点」を発表し、、現状のままだと中国が上流に建設を進める一連の巨大なダムのために下流の諸国の経済や環境が根幹から崩され、国家間の紛争の原因にもなると警告した。

 

 報告は危機の回避のためにオバマ政権による介入要請をも提唱した。

 

 報告はメコン川(中国領内の名称は瀾滄江)の下流流域では「異常な降雨パターンや干魃(かんばつ)の長期化が食料安全保障や政治の安定、地域諸国間関係に重大な悪影響を及ぼしている」と分析した。

 

 その主要な原因として「中国のチベットと雲南省内のメコン川に中国側が建設したか、あるいは建設中の合計15の大規模からメガ超大規模のダム」の影響を指摘した。

 

 中国領内のダムが生む影響については

 

 (1)雲南省内ではメコン川主流沿いに8カ所のダム建設が決まり、そのうち貯水量150億立方メートルという世界最大規模の小湾ダムなど4カ所がすでに完成した

 

 (2)小湾ダムなど中国側のダムはメコン川の水量の季節的変化や川底の泥を大量に減らし、川の漁業や農業を深刻に圧迫する

 

 (3)メコン下流の流域では約6千万人がメコン川に漁業や農業の80%を依存してきたが、中国の一連のダムにより下流全域で魚類の産卵のための移動が70%、漁獲全体が22%、カンボジアでの漁獲が43%、それぞれ減少する

 

 (4)ベトナムのコメ全体の52%がメコン川流域で生産されるが、ダムによる泥の流れの変化で大幅な減産が予測される

 

 -という見通しを打ち出した。

 

 さらに同報告はメコン川の開発や管理について、流域各国で構成される「メコン川委員会」(MRC)や、アジア開発銀行主体の「大メコン圏地域」(GMS)が存在するが、中国は加盟しておらず、自国内のダムの実態について秘密にしているため、領内にメコン川を抱える各国が協調するという対策はとれないことの危険を指摘した。

 

 また中国がメコン川上流でダムの使用により流れる水量の調整ができるうえ、ラオスとカンボジア領内のダム数カ所の建設には中国国有企業が関与していることをもあげて、「中国が他の諸国の経済や政治を支配できるような状況にある」と警告を発した。

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 集団的自衛権というのは全世界、日本以外のすべての主権国家が自明として保持し、行使の権利を有する自国防衛の権利の一貫です。

 

 自国の安全保障や防衛にとって重要とみなす状況下で、利害をともにする他国と手をたずさえ、共通の敵に向かう権利です。

 

 国連の平和維持活動も基本は各国のこの集団的自衛権に依拠しています。

 

 ところがわが日本だけは「保有はするが行使はできない」という奇妙な自縛を課しているのです。

 

 ルーピーMr.ハトヤマの民主党は日本の集団的自衛権は行使できないとする姿勢をとっています。

 

 そんな状況に対して自民党が公式に党として「集団的自衛権は行使可能を明確にする」という政策を打ち出す動きをとり始めました。民主党との安全保障のスタンスの差異を明確にする、まともな動きだといえます。

 

 その動きについての産経新聞記事を以下に紹介します。

 

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「集団的自衛権の行使可能」 自民公約案 緊密な日米関係構築
2010年04月16日 産経新聞 東京朝刊 総合・内政面


 

 自民党が夏の参院選で示す選挙公約(マニフェスト)の原案が15日、判明した。政府の憲法解釈を変更し集団的自衛権の行使を可能とする「安全保障基本法」の制定が盛り込まれることになった。「真に対等で緊密な日米関係」の構築も記し、「対等な日米同盟」を掲げながら米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設問題で、米国との調整が難航している鳩山政権との違いを強調した。

 経済政策では、鳩山政権が進めている子ども手当などの現金給付について「バラマキ政策」と批判したこともあり、経済成長と雇用の創出に力点を置いた。名目の国内総生産(GDP)の成長率を年4%に設定。10年間で国民の1人当たり所得を50%増やすなど4%の経済成長実現により、毎年国民の所得を3%、年金受給額を2%上げるとしている。新卒者の完全就職を目指し、2年間の「トライアル雇用制度」も設ける。

 消費税率については「引き上げて福祉目的税化し、年金、医療、介護制度を安定化させる」と引き上げ方針を示した。ただ、引き上げ幅は「検討課題」とするにとどめ、実質的に見送る方針だ。
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 ところがその同じ自民党のカナメに位置する大島理森幹事長が国会の答弁で「集団的自衛権は行使できないままがよい」という民主党の政策に賛同を表明したのです。このことはすでに本ブログで報じてきました。
 
 これは一体なんなのか。
 
 党の幹事長が党の公約と正反対の見解をとる。
 
 それでなくても自民党からの最近の離脱の動きをみるとき、
党務をつかさどるはずの大島幹事長の責任が追及されてしかるべきです。
 
 民主党への国民の支持がいくら減っても、それが自民党への支持の増加にまったくつながらない。
 
 大島幹事長に帰される原因は大きいといえましょう。
               
 
 なお、その後の報道では、自民党は参院選の政権公約に集団的自衛権行使を明記することを今回は見送ったとのことです。
 以下はその新聞報道です。
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  自民党は22日、夏の参院選で示すマニフェスト政権公約)の骨子を発表した。消費税について「引き上げを含む税制抜本改革を行う」との方針を提唱したが、税率は今後の検討課題とした。集団的自衛権行使の表記は見送った。このほか、自主憲法制定や雇用政策など計10項目。数値目標などは順次、公示前に発表する。
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この「見送り」はきっと大島幹事長のインプットと無関係ではないでしょう。自民党内に集団的自衛権の行使をうたうことを求める人たちが多数、存在することは否定しようがありません。

月刊雑誌のVOICE5月号に米中関係についての論文を書きました。

 

「米中G2論はもはや幻」というタイトルです。

                 

米中G2論はもはや幻/古森義久(ジャーナリスト)

Voice4月16日(金) 19時21分配信 / 国内 - 政治


◇「中国政府はギャングのような政権」◇

「中国政府は自国民の自由や人権を抑圧する独裁政権です。その無法性はギャングのようなものです。インターネットの問題も相手が民主主義ではなくギャングのような政権であることをまず念頭に置いて中国に対処すべきです」

 こんな激しい言葉が発せられた。ギャングという誹謗のような表現が二度も三度も繰り返された。この3月10日、アメリカ議会下院の外交委員会の公聴会だった。こんな過激な発言をしたのは、外交委員会の共和党側ベテラン、デーナ・ローラバッカー議員だった。

 課題は「グーグルの苦境」だった。アメリカの大手インターネット企業のグーグルが中国での検索サービスで中国政府に勝手な検閲を受け、「天安門事件」とか「台湾独立」という言葉が削られていたことへの抗議だった。

 グーグルはこの検閲を拒み、中国当局から国外追放の脅しを受けたのだ。

 この公聴会では、同じ共和党のクリス・スミス議員も「私自身が中国当局からハッカー攻撃をかけられ、パソコンに保存した情報を盗まれました」と中国を糾弾した。外交委員会の委員長を務める民主党のハワード・バーマン議員も、「中国共産党政権の言論弾圧はひどい」と、あっさり中国を非難した。

 こういうアメリカ議会での中国への態度をみると、オバマ政権が最近まで中国へのソフトな対応に終始し、議会でも民主党指導部のナンシー・ペロシ下院議長らが中国の人権弾圧などへの批判をまったく口にしなくなっていたことが、どこか違う国での出来事のようにさえ思われてくる。

 アメリカ議会では、そのうえ3月15日には超党派の議員130人以上が連名で「中国政府は人民元の交換レートを不当に操作している」という抗議声明を出した。きわめて強硬な中国非難だった。中国をたとえ経済面だけだとしても、敵視さえする動きだともいえる。

 これまた米中協調がしきりにうたわれた半年ほど前とは大きな違いである。米中両国が二国だけで協力を深め、これからの世界を仕切っていくという趣旨の米中G2論が大手を振ったころとは、事態は逆転してしまったほどの現状なのだ。

 では米中関係でいったい何が変わったのか。あるいは変わったように見えるが、じつは変わってはいないのか。

 まずG2の軌跡を簡単に振り返ってみよう。

 ワシントンの外交政策コミュニティーでG2という言葉が頻繁に聞かれるようになったのは、オバマ大統領の登場から3、4カ月後の2009年春のことだった。G2とは簡単に述べれば、米中二極という意味である。

 G2はG7、G8という用語の延長でもある。これらのGとは英語のGroup、つまり国家の集まりのグループの頭文字である。だからG8は8カ国によるグループ、G2はアメリカと中国の二国だけがグループとなることを指す。その米中が全世界を誘導する形で、経済問題、環境問題から政治、安全保障の諸問題まで枢要な国際的課題に取り組むというわけだ。この表現の背後には、アメリカ側からみての中国最重視という姿勢がある。

 中国最重視は、オバマ大統領の思考でもあるように思われていた。なぜならオバマ氏は、2008年の大統領選挙キャンペーン中に発表した外交政策論文で「アメリカは中国が21世紀の共通の課題に対応することに協力し、中国が拡大するパワーとして責任ある役割を演じることを奨励する」と述べていたからだ。

 大統領に就任したオバマ氏は、経済でも、対テロ闘争でも、核兵器の拡散防止でも、中国の協力が重要だという姿勢を明確にしていった。オバマ大統領は2009年4月1日に、ロンドンで中国の胡錦濤国家主席と会談し、「米中二国間関係をすべての領域で引き上げ、強化する」ことを合意した。具体的には米中両国間での経済・金融分野に加え、政治や安全保障を含む「戦略経済対話」の開催を決めたのだった。ブッシュ政権時代にも米中間で経済や金融を論じる閣僚級の協議はあったが、それを格上げ、拡大したわけだ。このころからアメリカ側ではG2論がしきりに語られるようになったといえる。

◇具体的な成果がほとんどなかった対話◇

 だが、それ以前からG2論は存在した。

 オバマ政権に対し、G2体制の構築をめざすべきだと最初に正面から提言したのは、民主党カーター政権で国家安全保障担当の大統領補佐官を務めたズビグニュー・ブレジンスキー氏だった。オバマ氏が大統領に就任した2009年1月中旬にイギリスの大手紙『フィナンシャル・タイムズ』に発表した論文でG2の勧めを論じていた。ブレジンスキー氏は、大統領選挙ではオバマ候補の外交顧問でもあった。

 同氏はその論文で、米中両国が相互依存の重要性を考え、包括的なパートナーシップに基づくG2の特別の関係を築くべきだと主張していた。米中両国が経済問題を超えて、中東紛争から核兵器削減、テロ対策、気候変動などの国際課題の解決に共に取り組むべきだとも述べていた。要するに米中2カ国だけで世界を取り仕切り、国際秩序を先導すべきだというのである。その論文の見出しは「世界を変えうるG2(米中2カ国)」となっていた。対外関係での中国最重視の勧めだともいえた。

 ブッシュ前政権の高官で、オバマ政権下では世界銀行総裁を務めるロバート・ゼーリック氏も「世界の不況回復はG2(米中)に支えられている」という論文を発表した。国際経済問題の解決には米中両国の先導的な協力こそが必要だと力説し、「強力なG2なしにはG20は失望に終わる」とまで主張した。

 アメリカがこれほど中国を重視するのも、経済での現実をみれば、理解できる。中国の経済が高度成長を続けていることは誰にも明白である。アメリカの中国に対する貿易赤字は2008年の時点で年間3000億ドル近くにも達した。中国はアメリカの政府債券保有では世界最大の1兆ドルをも記録した。その後、日本の保有額に追い越されはしたが、アメリカの財政赤字を中国マネーが支えていると評されて久しい。

 オバマ政権の中国重視志向は、7月下旬の米中戦略経済対話の第1回会合開催でさらに印象づけられた。中国は合計約200人もの大型代表団をワシントンに送り込んだ。中国の共産党、政府、軍部の各要人たちがオバマ政権の閣僚級との二日にわたる会談に臨んだ。オバマ大統領は「米中関係が21世紀を形成する」とも述べた。まさにG2時代の始まりを思わせるような展開だった。

 こうした展開は、日本にとっては深刻な意味をももちかねなかった。世界の経済ということならば、日本はまだ世界第二の経済規模の国である。かつてアメリカと日本が経済や金融問題への国際的対処でG2と呼ばれた時代もあったのだ。ましてアメリカが中国を最重視するとなると、アジアで中国との利害の対立を抱える日本の比重は減ることになる。オバマ政権はなお「日米同盟の最重視」とか「日本はアジアの安全保障の礎石」という言明を続けているが、米中二極G2の概念はその否定にもつながりかねない。だから日本側でG2論への懸念や警戒が広まったことも自然だといえよう。

 しかし、いざ7月末の米中間の初の戦略経済対話が終わってみると、まず政治や安全保障では具体的な成果はほとんどなかったことが明白となった。肝心の経済や金融でも、実質的な成果は少なく、「協力と対話の強化」が強調された点だけが顕著だった。G2論の実効性の不在が期せずして証された形となった。

 G2論はそもそもアメリカと中国との基本的な価値観の相違を無視、あるいは軽視していた。民主主義という価値観である。G2論には中国が国際ルールを守らず、自国への脅威がないのに、大軍拡を続けることへの批判もない。同盟国との年来の緊密な関係の軽視とも受け取れる。こうした点に立脚するG2批判論もワシントンでは活発に表明されるようになった。

 ブッシュ政権の国家安全保障会議のアジア上級部長だったデニス・ワイルダー氏は「中国との関係はたしかに重要だとはいえ、米中関係をG2と呼び、特別な二国関係と定義づければ、日本やインドなどアジアの他の同盟国、友好国との関係を深刻に傷つける」という主張の論文を発表した。民主、共和両党政権でアジア関連の枢要ポストにあったモートン・アブラモウィッツ氏も「G2の結成は不幸であり、アメリカの主要同盟国の日本にとくに重大な打撃を与える」と論じた。

 G2反対論の圧巻は、外交評議会アジア研究部長のエリザベス・エコノミー氏が発表した「G2幻想」という長い論文だった。「米中両国では政治体制、価値観、統治の方法に基本の相違があり、その相違を放置して関与や協議を進めても不毛だ」という主張だった。「米中両国は国家の主権、個人の人権、軍事力の行使をめぐっても思考に基本的な違いがあり、世界がどうあるべきかの考えも異なる」と強調していた。

 ワシントンの外交政策コミュニティーでは、こうしたG2反対論が圧倒的に優位となった。肝心の中国が貿易問題では自国の利益を頑固に押し、国際安全保障問題でも北朝鮮やイランに米側の要請を無視しての支援を続け、アメリカとの断層を示したのだ。その背後には、米中両国が重要な戦略課題となると、なお利害を衝突させる場合が多いという現実が浮かび上がっていた。

◇オバマ政権も反対論に圧せられた◇

 この現実は新しい年を迎えると、待っていたかのように、鮮明な形をみせるようになった。オバマ政権は1月末に台湾への64億ドルにのぼる武器の売却を発表した。冒頭に紹介したように、グーグルのネット機能への中国政府の規制強化にグーグル側が反発し、中国政府がさらに激しい非難をぶつけるようになった。オバマ大統領は中国が嫌うチベットの宗教指導者のダライ・ラマとも会談した。

 この表面の動きだけをみると、米中関係には新しい事態が生まれ、その結果としての大きな変化が起きたように映る。だがそうではないことをアメリカの対中政策を長年、考察してきたロバート・サター氏が解説した。

「米中間でいま表面に出た対立や摩擦は、両国間に従来から存在した差異の結果です。オバマ政権はこの1年ほど、その差異を隠す形で対中協調路線を打ち出してきたのです。だがアメリカ内外の要請により、その厳存する差異をもう隠しきれず、対立が表面に出てきたのです。米中関係の基本が変わったのではありません」

 サター氏は1970年代からアメリカの国務省や議会、中央情報局(CIA)で一貫して中国問題を担当し、クリントン、ブッシュ両政権では東アジア担当の国家情報官を務めた。サター氏の説明によると、米中両国の台湾への政策は以前から大きく異なり、アメリカは台湾への防衛的武器の売却を「台湾関係法」で義務づけられている。一方、中国は台湾を完全な自国領と見なし、いざという際には武力で併合できるよう台湾に近い福建省周辺には中距離、短距離の弾道ミサイルを1500基以上も配備している。その脅威を受ける台湾の防衛をアメリカが支援することは国際公約である。中国に非難されたという理由でその公約を破れば、アメリカの国際的な信用は失墜する。

 グーグルの検閲もダライ・ラマとの大統領会談も、アメリカとしては言論の自由、宗教の自由の擁護なのである。グーグルも、じつは2006年にはアメリカ議会から中国での検閲を許容したことを非難され、当時のエリオット・シュラージ副社長が公聴会で議員たちの激しい糾弾を浴びて、陳謝したのだった。だから今回の中国への強い姿勢はアメリカ国内の超党派の人権と自由を擁護する幅広い勢力に推されているのである。

 こうした米中間の差異の現実を、『ワシントン・ポスト』の著名コラムニストのロバート・サムエルソン氏が辛辣に論評していた。

「中国は、アメリカ主導の戦後の国際秩序の正統性や優越性を受け入れてはいない。中国の世界観はまず自国の権利の優先であり、アメリカの地政的かつ経済的な利益には脅威を与えることになる。中国が真に求めるのは共産党の正統性の保持であり、自国の西洋化ではない」

「アメリカ側には、中国が経済的に豊かになれば、その利害や価値観はアメリカに近づき、世界経済の繁栄への依存を増し、自国の市場をより自由にし、共産党独裁を緩めていくだろうという期待があったが、実際にはそうはならなかった。アメリカ側でG2論を唱えた人たちは基本的に中国を誤解していたのだ」

 サター氏もG2に対しては手厳しい見解を語った。

「私はそもそもG2論を信じていませんでした。米中両国間には国の在り方に関してあまりに大きな相違があるため、真のパートナーにはなれないからです。中国側には、G2論は中国に過剰な国際的責任を負わせるためのトリックだという反発があるほどです」

 アメリカがアメリカであるという民主国家の基本、そして現状での中国の独裁体制の基本、そのギャップは両国の協力や協調をあくまで一定範囲内に抑えてしまうというのである。だから米中両国が国の在り方の基本を変えないかぎり、中核部分でのギャップは消えないことになる。しかしその一方、経済面を主体に、協調を両国ともに必要とする領域も存在を続ける。その結果、起きるのは対立と協調を交錯させながらの是々非々のうねりであろう。ただし、今年はさらに対立の部分がより鮮明に出る見通しが強いだろう。

 サター氏が説明した。

「中国側には自国が総合的国力を強め、とくに経済や金融でアメリカを弱い立場に追いやっているという意識があるからアメリカへの非難は今後、さらに強くなるでしょう。一方、アメリカ側も11月の中間選挙のため、さらには一般国民の対中感情の悪化のため、議会などで表明される対中言辞はより強硬となるでしょう」

 こうみてくると、米中両国がG2を形成して世界を仕切るという構図は現実からは離れているということである。逆に米中両国は、普段は協力を唱えながら、水面下では対立やせめぎ合いを保ち、時にはその対立が表面での衝突につながるという展望が予測される。

 だから今後も、アメリカの中国重視や中国接近はあっても、中国と二国だけで寄り添って、世界の重要課題に共に取り組むという姿勢を打ち出す見通しはまずないだろう。その意味での「G2の時代」は現実には来そうもないようである。

 オバマ政権も公式にはG2という言葉をいっさい使ってはおらず、いまのところG2反対論に圧せられた感じである。米中G2から外される欧州の同盟国や日本、インドなどの反応を考えれば、そんな政治標語には危険なマイナス要因が多々あることも十分に認識しているのだろう。
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いま話題の書「ガラスの巨塔」を読みました。

 

NHKのプロデューサーだった今井彰氏が書いた小説です。

小説ではありますが、この書の新聞広告は今井氏ご本人の写真を大きく載せています。内容は事実に基づくというメッセージでしょう。

 

確かにおもしろい小説でした。NHKらしき半国営テレビ局の内部の状況がなまなましく描かれています。もちろん批判的な視点から、限りなく醜く、といってもよいでしょう。

 

NHKの実態を知るには貴重な資料かもしれません。

 

実は私はこの書に関して映画監督の森達也さんが産経新聞に書評を書いてくださったのを読んでいました。本を読むより先に書評を読んだのです。というよりも森さんのこの鋭いえぐるような書評を拝読したために、その本を読んでみたくなったともいえます。

 

そしていま自分の読後感がなにかと自問すると、森さんの書評にもどっていくから不思議です。僭越ながら私の総括の読後感も森さんの「評」とほとんど同じだと感じたのです。

 

以下がその森さんの書評です。

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【書評】『ガラスの巨塔』今井彰著

 

「ガラスの巨塔」「ガラスの巨塔」
grok target body start

 ■醜悪な大放送局の裏事情

 アフリカのサバンナで暮らす母ライオンと仔(こ)ライオンのドキュメンタリーを、あなたは観(み)ているとする。情愛溢(あふ)れる母親と可愛(かわい)い子供たちだ。

 次に視点を換える。ライオンに狩られるトムソンガゼルの親子のドキュメンタリーだ。草を食(は)む彼らのそばに凶暴そうな雌(めす)ライオンが忍び寄ってくるシーンを観ながら、あなたは何を思うだろうか。

 認知する事実は視点によって変わる。時には反転する。特に現実に規定されるドキュメンタリーは、視点がすべてと言い換えることもできる。

 だから優れたドキュメンタリストの多くは、公正中立や客観性などのドグマを信じない。善悪二元的な観点にも同意しない。人が100人いれば100通りの事実がある。

 だからこそ不思議だ。この小説の著者である今井彰は、長くドキュメンタリーを撮り続けながら、なぜこれほどあからさまな二元論的世界観を提示できるのだろう。

 この物語の主人公である西悟は、かつて「プロジェクトX」というお化け番組のプロデューサーとして一世を風靡(ふうび)した今井自身の明らかな投影だ。その栄光と没落の描写は、まさしく自己を正当化しようとの今井からの視点に他ならない。無邪気なほどに単面的だ。西に嫉妬(しっと)し今の地位から引きずりおろそうと画策する上司や同僚たち、番組のやらせ問題を追及する他のメディアの男たちは、すべて例外なく醜悪な男たちとして描かれ(笑い方が必ずのようにヒヒヒなのだ)、西と彼を庇護(ひご)する男たちは高潔な人柄として描かれる。この臆面(おくめん)のなさはある意味ですごい。

 NHKの派閥人事については、確かによく耳にする。志ある作り手から、「敵は外ではなく中にいます」との言葉を聞いたことがある。それらの裏事情を知る意味ではこの実録小説は、多少の役に立つという見方もできる。

 さらに、人はこれほどに自己正当化と美化に埋没してしまうということ、そして視点が変わればこれほどに光景が変わるということ、そんなことを知りたい人にとってこの本は、多少の意味を持つかもしれない。(幻冬舎・1680円)

 評・森達也(作家・映画監督)

 

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 中国の人民解放軍海軍の艦艇合計10隻が沖縄近海を南下しました。4月10日のことです。

 この中国艦隊は駆逐艦、潜水艦、フリゲート艦など中国海軍の新鋭艦を総動員していました。これまでこれほど大規模な中国艦隊が日本近海に姿みせたことは例がありません。

 この中国の動きはなにを意味するのか。アメリカの専門家に聞きました。

沖縄近海航行 中国海軍 新戦略の始まり


 

 □米「国際評価戦略センター」フィッシャー氏

 【ワシントン=古森義久】駆逐艦2隻、潜水艦2隻、フリゲート艦3隻など計10隻の中国艦隊が10日、沖縄近海を南下したことについて、米国のシンクタンク「国際評価戦略センター」のリチャード・フィッシャー主任研究員は、産経新聞とのインタビューで「中国海軍の新戦略の始まりであり、米軍への挑戦と日本の反応の探察を目的としている」との見解を明らかにした。

 

 同研究員は、今回の動きが中国人民解放軍海軍としてはこれまで沿岸から最も遠い距離に出ての最大規模の演習行動だと特徴づけ、「日本は中国海軍のこの種の拡大行動にこれから定期的に直面する」と述べた。

 

 中国側の戦略的狙いについて同研究員は、中国海軍が

 

 (1)遠洋活動能力を高め、多元的な艦隊、機能の確立を目指す新戦略のスタートとしている

 

 (2)訓練は東アジア、西太平洋での米海軍の覇権への挑戦を目指している

 

 (3)今回の艦隊の動きに日本がどう反応するかを考察することを意図している

 

 -という諸点をあげた。

 

 とくに日本への意味については「中国海軍は今回の訓練航行が象徴する拡大活動を今後定着させ、日本との領有権紛争を抱える東シナ海での海軍力の増強によって、主権の主張に、より強い実効を発揮させることを意図している」と述べ、中国が沖縄諸島に関しても日本の領有権を明確には認めていない点を指摘した。

 

 また、今回の中国艦隊の保有兵器に関連して

 

 (1)キロ級潜水艦が搭載する超音速のSS-N22サンバーン艦対艦ミサイルが有事の際、日本の自衛隊艦艇への大きな脅威となる

 

 (2)ソブレメンヌイ級駆逐艦が搭載する超音速SS-N27シズラー艦対艦ミサイルも自衛隊への脅威となるほか、米軍艦艇への接近拒否の威力を発揮できる

 

 -ことを指摘した。

 

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この中国艦隊のその後の動向については以下の記事が同じ日の産経新聞の載っています。

 

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沖縄通過の中国艦艇、その後に沖ノ鳥島近海へ

 今月10日に沖縄近海を通過した中国海軍の艦艇がその後、日本最南端の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)近海に入り、同島を基点とする日本の排他的経済水域EEZ)内で島を1周するように航行していたことが19日、わかった。複数の日米軍事関係筋が明らかにした。沖ノ鳥島は島ではなく、EEZの基点とならない「岩」だと主張している中国側による日本への示威行動とみられ、日本政府は中国艦艇の航行記録を慎重に調べている。

関連記事

記事本文の続き 中国艦艇は、東海艦隊(司令部・浙江省寧波)のソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦2隻、フリゲート艦3隻、キロ級潜水艦2隻、補給艦1隻など計10隻で編成。10日に沖縄本島の南西約140キロの公海を東シナ海から太平洋に向けて通過した後、11日に沖縄南方海域で洋上補給を行うと、13日ごろに沖ノ鳥島周辺海域に到達した。

 防衛省関係者によると、現在も太平洋上で演習を継続しているという。

 8日には東シナ海で艦載ヘリが監視中の海上自衛隊の護衛艦の約90メートルまで接近している。

 中国軍の機関紙「解放軍報」によると、中国海軍は今回の行動を「近来まれにみる期間と規模の遠洋訓練」と位置づけている。航海中には、艦載ヘリの誘導で空母機動艦隊を攻撃する訓練や対艦ミサイルによる攻撃を電波妨害で防ぐ訓練などのほか、「世論戦、心理戦、法律戦の訓練」も行うという。

 中国は過去、国連海洋法条約で必要な日本への通告を行わずに沖ノ鳥島周辺のEEZ内の海洋調査を進めてきた。今回の行動も独自調査による海流データなどを通じて、同周辺海域で潜水艦を含む軍事行動が可能になったことを誇示するねらいがあるとみられる。

 また、艦艇が同周辺海域に進出したとされる13日には、米ワシントンで日中首脳会談が行われていた。鳩山政権の反応を探る意図もありそうだ。

 日本政府は、中国艦艇の航行について、11日までの情報は日中首脳会談後の13日午前に公表したが、その後のことは、中国政府への対応を含めて明らかにしていない。

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