2010年05月

 日本では国際紛争への対応として、ソフトパワーという言葉がよく語られます。

 

 紛争のそもそもの核心である軍事や政治という要素は避けて、側面からのアプローチを唱える傾向です。

 

たとえば一大テロが起きても、そのテロ実行犯を摘発することよりも、「まず貧困を減らすことが肝心だ」として、経済援助を提唱するというような取り組みです。

 

 この点への辛辣な批判を紹介します。

 

 この一文は私がこのほど寄稿を始めたJBPress(日本ビジネスプレス)のサイトですべて読めます。私の寄稿のタイトルは「国際激流と日本」です。

 

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 [国際激流と日本] 

 

 日本が対外政策として唱えるソフトパワーというのは、オキシモーランです」

 

 ワシントンで最近、こんな指摘を聞き、ぎくりとした。 

 

 英語の「オキシモーラン(Oxymoron)」という言葉は矛盾語法という意味である。

 

 例えば「晴天の雨の日」とか「悲嘆の楽天主義者」というような撞着の表現を指す。

 

 つじつまの合わない、相反する言葉づかいだと思えばよい。

 

 5月中旬、大手研究機関の「ヘリテージ財団」での昼食会だった。

 

 発言者はこの保守系シンクタンクのアジア専門の上級研究員、ブルース・クリングナー氏である。

 

 普天間基地問題その他の調査のために日本や韓国を訪れ、両国の多数の関係者たちと面談して帰ってきたばかりだった。

 

その調査の報告の中で発せられた日本のソフトパワー批判だった。

「安全保障の実現にはまずハードパワーが必要」

 日本のソフトパワーとは、国際社会での安全保障や外交戦略、平和の実現のためには、軍事や政治そのものというハードな方法ではなく、経済援助とか対話とか文化というソフトな方法で臨むという概念である。

 

 その極端な表れが、おそらく鳩山由紀夫首相の「友愛」だろう。

 

 特に日本では「世界の平和を日本のソフトパワーで守る」という趣旨のスローガンに人気がある。

 

 ところがクリングナー氏は、「パワーというのはそもそもソフトではなく、堅固で強固な実際の力のことだ」と指摘する。

 

 つまり、パワーはハードなのだという。

 

 そのパワーにソフトという形容をつけて並列におくことは、語法として矛盾、つまり「オキシモーラン」だと言うのである。

 

 クリングナー氏が語る。

 

 「日本の識者たちは、このソフトパワーなるものによる、目に見えない影響力によってアジアでの尊敬を勝ち得ているとよく主張しますが、はたから見れば安全保障や軍事の責任を逃れる口実にしか映りません。平和を守り戦争やテロを防ぐには、安全保障上の実効のある措置が不可欠です」

 

 確かに、今展開されるアフガニスタンでのテロ勢力との戦いでも、まず必要とされるのは軍事面での封じ込め作業であり、抑止である。

 

 日本はこのハードな領域には加わらず、経済援助とか、タリバンから帰順した元戦士たちの社会復帰支援というソフトな活動だけに留まる。

 

 「日本の最近の地位低下は著しく、このままではアジアでの第二線の中級国家へと転落していくことでしょう。アメリカの同盟パートナーとしての責務も果たしそうもない。鳩山政権になってからの、普天間基地移設問題への対応に集約された日米同盟からの離反の兆しは、日本をさらに弱体にします。

(つづく)

 

残りはJBPress(日本ビジネスプレス)の以下のサイトでみられます。

    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/3573

 アメリカの現在の政治情勢です。

 11月の中間選挙への現時点での展望です。

 

【緯度経度】ワシントン・古森義久 米共和党に復調の兆し


 

 米国の最近の一連の選挙で反オバマ大統領の旗を掲げる共和党の攻勢をとくに印象づけたのは、ハワイの下院議員特別選挙だった。
 ハワイの連邦議会下院の2選挙区のうち、ホノルル中心の第1区では5月22日に特別選挙が催された。
 民主党現職のニール・アバークロンビー議員が州知事選に出馬するため辞任したことにともなう選挙だった。

 ハワイ州はもともと民主党支持者が多数を占める。

 

 しかもホノルルといえば、オバマ大統領の出身地だ。

 

 この地区でオバマ大統領の「大きな政府」のリベラル施策を真正面から批判する共和党の保守派候補が当選してしまったのだ。

 

 チャールズ・ジュー氏、39歳の弁護士である。この選挙区での20年ぶりの共和党議員となった。

 

 ジュー氏の勝利の原因には民主党側の分裂もあった。

 

 オバマ大統領と民主党全国委員会の両方が推したエド・ケース候補に対し、地元の大物ダニエル・イノウエ上院議員らが支援するコリーン・ハナブサ候補が立ったのだ。

 

 民主党長老のイノウエ氏が大統領の意に反抗するという点にも、オバマ氏の威光のかげりがうかがわれる。 

 

 投票結果はジュー氏39%、ハナブサ氏30%、ケース氏27%となった。

 

 民主党の両候補の得票を合わせれば、57%となるが、それでも民主党支持が圧倒的に多い民主党大統領の出身地でその大統領の政策を非難し続けた共和党候補が勝利するというのは、草の根での反オバマ層の広がりといえるだろう。

 

 ワシントンの政治評論家の間では最長老とされるデービッド・ブローダー氏がこう論評していた。

 

 「米国の今の政治システムでの基本的な対決が明白となった。リベラルのオバマ政権は、共和党側で活動する積極果敢な保守主義運動への共鳴を増す一般有権者にリベラル本来の政策を受け入れさせることに苦闘しているのだ」

 

 「民主党側はオバマ氏らが追求する費用のかかる政策に対する大衆レベルでの反発に直面している。この闘争は、議会での医療保険改革や金融規制の法案審議をめぐって燃え広がり、民主、共和両党のイデオロギー的ギャップを広げた」

 

 政策闘争では世論調査でみる限り、共和党側がより多くの国民の支持を取りつけている。

 

 たとえば医療改革法を破棄することへの賛成が過半数なのだ。

 

 だから今年11月の中間選挙では連邦議会の上下両院で、絶対多数を占める民主党側の大幅な後退がもっぱら予測されている。

 

 現議席は下院が民主党255、共和党177と78もの差があるが、選挙専門家のなかには共和党が40議席ほど増やして逆転を果たすという極端な予測を述べる向きもある。

 

 逆転はできなくても、30ほどの議席増は確実という予測は珍しくない。

 

 民主党57、共和党41(無所属2)の乗員では共和党は逆転に必要な10議席増は無理でも、民主党を後退させることは間違いないとされる。

 

 もちろん選挙はどこでも水ものであり、11月までになにが起きるかわからない。

 

 ところがおもしろいことに、一般企業がこの共和党有利の潮流を見通したかのような政治献金のシフトをみせ始めた。

 

 ワシントン・ポストの最近の報道では、米国の企業数百社が自社の「政治活動委員会」を通じて連邦議員に寄付した資金の合計は今年1月から3月までに共和党側が2500万ドル、民主党側が2200万ドル、つまり53%と47%となった。

 

 ところが1年前の同期は共和党42%、民主党58%だったという。

 

 企業は議会での多数派の議員に寄付を優先する傾向があるが、今回は共和党の進出を予測したような異例の献金パターンだというのだ。

 

 いずれにしても「チェンジ(変革)」を唱えて政権を得たオバマ氏がいまや逆方向へのチェンジを迫られるというのが米国政治の現状のようだ。

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ハワイ一区で共和党の勝利をもたらしたチャールズ・ジュー下院議員とその家族。

 私の最新の著書『アメリカが日本を捨てるとき』の書評がきわめて個性的な雑誌に掲載されました。

 

 

 書評が出たのはBUAISOという会員制の雑誌です。

 

 名古屋を中心に、企業のメンバーを対象にするフリー雑誌で、活字メディアの新しい形態のようです。

 

 雑誌の内容は現代の企業人が興味を惹かれる多様なテーマを盛り込んでいます。

 

 なお『アメリカが日本を捨てるとき』はおかげさまで増刷となりました。

               

 以下が書評の内容です。

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『アメリカが日本を捨てるとき』

PHP新書)古森義久著

720円(税別)

21Book

 

 4月に米ワシントンで開催された核安全保障サミットでの鳩山首相とオバマ大統領との会話は、食卓でのたった 10分間だった。

 loopy(=バカ)だとワシントンポストで揶揄され、今後の日米関係は一体どうなるのかと不安を感じた日本人は多いはずだ。

 

 最前線で国際政治を追い続けてきたワシントン在住のベテラン記者、古森義久氏が「揺れて,漂って、そのうち溶けて、崩れてしまわないだろうか」と危機感溢れる日米同盟について論じる。

 

 中でも、日本ではあまり触れられることのない「米中関係」についての考察は、今後の日本と米中との関係を判断するうえでも示唆に富む内容だ。古森氏が、自らの新著について語る。

 「ワシントンで長年、アメリカ側の日本に対する政策や姿勢を考察してきましたが、今ほどアメリカ側の日本への態度が冷淡になったことはありません。その最大の原因は日本の民主党・鳩山政権が対米政策の根幹に関して当事者能力を失くしたかのような、意図不明の言動を続けることだと言えます。日本は自国の防衛にアメリカの軍事抑止力を取り込んできました。アメリカも有事には日本を守ることを誓約し、日本に米軍を置くことが自国の利益だと判断してきました。この安全保障の絆、つまり同盟が多様な日米関係の中枢となってきました。しかし、鳩山政権はいまや普天間問題へのわけのわからぬ対応に象徴されるように、日米同盟の基本に背を

向けるかに見えます。このあたりの危機の現状をこの書で伝えたかったのです」。

 我々は外交問題を複眼的に捉えるインテリジェンスに欠けているのではないか。

 

 世界はもっと強かに動いている。日本の有権者として自省を迫られる書でもある。

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日米安保条約は、日本の平和と繁栄を、半世紀にわたって担ってきた。

ところが鳩山新政権が誕生して半年あまり、同盟に大きな疑問符が突きつけられている。

民主党首脳は「日米中関係は正三角形」と述べ、核抑止保持の密約を白日の下にさらし、普天間基地の移転合意を撤回す

る。一方、鳩山首相のはじめての日米首脳会談はわずか二十五分、米国メディアの関心は低く、米議会での扱われ方からも、明らかな日本軽視が見られる。足並みの乱れが限度を超えたとき、「アメリカが日本を捨てる」という選択肢だけが残される ..

BUAISO no.36 June 2010

  


 

 

 

 

NHKが台湾を反日の地として描いた偏向番組についてはこのサイトで何回か取り上げてきました。

 

この問題がいまや記録破りの規模の大訴訟となったことは周知のとおりです。

 

ではこの番組のどこか偏向しているのか。

 

この点をきわめてわかりやすく、くわしく書いたレポートがあるので紹介します。

 

産経新聞の安藤慶太記者がごく最近、書いた記事です。

 

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【安藤慶太が斬る】迷走を続ける鳩山内閣の新たな火種が「口蹄(こうてい)疫」への対応である。地元、宮崎県で奔走を続ける東国原英夫知事の血相を変えた真剣な表情とは対照的に、赤松広隆農水相はじめ関係者の表情からは、こうした農家の痛恨を正面から受け止めた厳粛さが伝わってこないのである。

 

 殺処分を進めて被害の拡大を抑える判断に今は合理性があるといわざるを得ないが、果たして不要不急の外遊に出かけたうえに、選挙応援の街頭で赤松農水相は「口蹄疫ってのはね、人には害がないんです」などと発言したそうである(週刊文春5月27日号)。今に至ってもどこがおかしいのか、といいたげにしか見えない赤松農水相の対応は誰が見ても「?」である。

 

 裁判史上最大規模

 

 さて、今日の本題はこれではない。先週の金曜日の14日、東京地裁で開かれたNHKスペシャル「シリーズ・JAPANデビュー アジアの“一等国”」をめぐる訴訟についてである。

 

 昨年4月5日に放送された同番組をめぐっては、取材を受けた台湾少数民族・パイワン族や視聴者ら計約1万300人が、番組内容に偏向・歪曲(わいきょく)があったとしてNHKに計約1億1千万円の損害賠償を求めている。

 

 その第二回の口頭弁論でパイワン族男性が「パイワン族の名誉を徹底的に傷つける放送で、決して許すことはできない」と意見陳述したのである。

 

 1万300人もの原告数というのはどうやら、日本の裁判史上最大の規模とされている。米軍基地をめぐる騒音や公害など過去様々な事案で原告数がふくらんだ訴訟はあったが、それを上回る規模である。

 

 ■日本は台湾と戦争はしていない

 

 俎上(そじょう)にのぼっている番組の問題点を簡単におさらいしておく。番組全体に日本を貶(おとし)める意図があったのではないか、取材した関係者のコメントのうち、自分たちの番組の企画に沿った部分のみが取り上げられ、恣意(しい)的な番組づくりが行われたのではないか-という包括的な疑義があったうえで、「日台戦争」「人間動物園」といった番組で使用された言葉が問題視されている。

 

 このうち、「日台戦争」という言葉は以下のように使われた。

 《日本軍に対し、台湾人の抵抗は激しさを増していきます。戦いは全土に広がり、のちに「日台戦争」と呼ばれる規模へと拡大していきます》

 

 台湾と日本の間に戦争をした事実はない。出演した台湾人からも「先住民族の抵抗なら治安の悪化だ」「戦争は言い過ぎ。NHKの誤り」などと抗議があがっている。

 

 NHKは「日台戦争」という言葉について、日本の大学教授らが使っていると根拠を挙げた。しかし、「平成に入って用いられた造語。確かに『日台戦争』という言葉を一部の大学教授が使っているが原典は戦争の定義もしておらず、治安回復のための掃討戦に過ぎない」(日本李登輝友の会関係者)という。

 

 ■なぜ問題視されるのか

 

 学者の造語を番組で使っていけないのか、という人もいるかもしれない。これは若干、説明を要する。

 

 近現代史をめぐって戦後主要な論点となった「南京事件」「慰安婦」「戦時徴用」などの歴史用語は、いずれも「南京大虐殺」「従軍慰安婦」「強制連行」など、日本を誇大に貶める用語が作り出され、それが喧伝(けんでん)されてきた歴史がある。これらの言葉の源流は、はじめはメディアの報道だったり、小説に始まったものだったりする。学者の造語などをメディアが無造作に使い、教科書に掲載され、入学試験を通じて浸透していくなかでやがて疑うことの許されない事実と化し、取り返しのつかない外交問題にされた。

 

 学者の造語をすべて否定しているわけではないが、とりわけ近現代史をめぐってわが国を貶める歴史造語が生まれていることも事実である。こうした造語にどれだけわが国が振り回され、すさまじい税金がつぎ込まれ、私たち日本人の名誉が貶められ、国益が棄損されたか。こうした虚構の構図にメディアが加担していることに多くの国民がすでに気づき始めているという自覚もメディアにはあってしかるべきである。

 

 日本人や日本国が貶められれば、そのツケは結局私たちが負うのである。多くの視聴者はすでに、こうしたうさんくささをかぎつけている。戦争ならば賠償が発生しうる問題となることを忘れてはならない。なぜ戦争もしていない台湾で起こった「掃討戦」「武力衝突」をあえて「日台戦争」などと表現する必然性があったのか。まさかNHKは日本に戦争による賠償金を台湾に払うべきだとか考えているのだろうか。

 

 ■冒涜されたパイワン人の怒り

 

 《イギリスフランスは博覧会などで植民地の人々を盛んに見せ物にしていました。人を展示する「人間動物園」と呼ばれました》

 

 そして問題点のもうひとつが、この「人間動物園」という表現である。意見陳述したパイワン族の長老、バジェルク・タリグ(華阿財)さん(71)の怒りもここに向けられる。

 

 NHKは、1910年の日英博覧会のパイワン族の写真に、「人間動物園」の文字をかぶせた。フランスの学者、ブランシャール氏らの共著「人間動物園」などを参考にしたという。

 

 番組では当時イギリスフランスでそうした言葉が使われていたのかどうかも明らかにしていない。また日英博覧会には、パイワン族だけでなく、日本の村やアイヌの村、力士も参加していた。

 

 これを今も栄誉としている村もあり、「日本政府がパイワン族の実演を『人間動物園』と呼んだことはない」(訴状)、「パイワン族に対する人権問題」(出演者)というわけである。

 

 せっかくの機会なので、バジェルク・タリグ(華阿財)さんの意見陳述の抄録を述べておく。

 

 《放送を見ると、パイワン人の父祖が民族衣装に正装した写真に『人間動物園』という字幕がついています。しかしパイワン人が動物扱いされたり、見せ物にされた事実は断じてありません。

 この写真の人たちは、パイワン族の伝統を世界の人々に紹介したいという気持ちでイギリスに行ったのであって、踊りをしたり、生活の状況を演じたのは誇りを持ってやったことです。

 仮に動物扱いされたのであれば、相手が日本人であろうが、イギリス人であろうが命を賭して闘うのが、パイワン人の精神です》

 

 《私たちパイワン族の間では父や祖父の世代がイギリスに行ったことは今でも良い思い出になっています。ロンドンではイギリス人と交流があり、そのときに覚えた英語の歌が今でも歌い継がれているほどです。嫌々ながら連行されて屈辱的な仕打ちを受けたら、このようなことはあり得ません》

 

 ■NHKの傲慢

 

 《NHKは放送後、ホームページで『当時のパイワン族の人たちがどう感じたかは事実を左右しない』などと開き直っています。これは二重三重にパイワン族の名誉を傷つけるものです。

 

 『パイワン族は見せ物として動物扱いされながら、そのことを理解できずかえって喜んだ。NHKが客観的な事実を教えてやった今でも理解できず、今でも屈辱的な事実を良い思い出として喜んでいる』というのがNHKのホームページの見解です。

 

 これほどパイワン族の名誉を貶める意見があるのかと腸が煮えくりかえる思いです。私はNHKがパイワン人に対する人種差別と人権無視の事実を明確に認め、謝罪するまで絶対に許しません》

 

 補足すると、NHKのホームページには今も「パイワン族の人たち自身が当時どう受け止め、感じたかということは、『人間動物園』の事実を左右するものではありません。こうしたことは台湾の方々にとっても心地よいことでないことはもちろんですが、番組は当時の状況の中でおきた事実としてあくまでも客観的に伝えたものです」と書かれていて、ここをバジェルク・タリグさんは問題視している。実はパイワン人を差別し、見下している、民族の矜持(きょうじ)を踏みにじったのは、日本の過去の人々ではなくほかならぬNHKだ、と突きつけているのである。

 

 ■「人間動物園」と当時言ったのか

 

 NHKのいう「客観的事実」というのも、どうにも怪しく、客観的事実だと主観的(独断的)に言っているのではないだろうか。

 

 百歩譲って英国で植民地の人間を見せ物にする心ない仕打ちがあったとして、それは日英博覧会での展示とイコールだったのか?

 

 博覧会で「人間動物園」と表記されていたのだろうか?

 日本がパイワン人を見せ物にしようとしたなら、なぜ日本の力士まで連れていったのだろうか?

 

 日英博覧会でのパイワン人の展示について当時から人道上の問題が指摘されていたとNHKのホームページには書いてある。帝国議会で、博覧会への参加が「人道上の大失態」だと取り上げられていたというのだが、そこでのやりとりにも「人間動物園」という表現は出てこない。

 

 また「人道上の大失態」だったとしても、まず問われるべきは英国側であって話は英国側が日本人とパイワン人の名誉を貶めたということを意味しているのではないのだろうか?

 

 なぜ日本だけを悪者に描くのか?

 

 裁判所に出された日英博覧会の関係書類には、何よりも博覧会参加にあたって日本側が「本邦(つまり日本、パイワン人の住む台湾も含めている)ノ品位」に意を払っていたとある。

 

 つまり、日本物品の製作実演もすれば、演劇や手品などもあり、パイワン族ばかりではなく、アイヌ人もその生活ぶりを見せるために普通に寝泊りしていたのである。戦いの踊りや戦闘の真似事もその中の一つで、日本の品位を損するような「余興」は「一切之ヲ許容」しなかったともある。パイワン族はむしろ「本邦ノ品位」を示すものとして披露されていたと書かれているのだ。

 

 後世の学者の後づけによる歴史解釈を無理筋でつなぎ合わせた番組だったのではないか。歴史への悪意はNHKにあったのではないか。こういう疑念は強まる一方である。

 

 ■後講釈による歴史断罪の怖さ

 

 最後にもう一言。こうした歴史を遡っての断罪が許されるなら、TV自体が将来「人権侵害装置」のごとく不当な断罪を受ける恐れは十二分にあるということだ。人を盛んに見せ物にする、それが「人間動物園」という後講釈が成り立つのであれば、NHKこそ「人間動物園」ではないのか。例えば毎週日曜日に全国各地で行われているのど自慢。司会者が「さあ、次は元気な若手消防団の皆さんです!」。

 

 「○番、仮面舞踏会!」と始まり、派手なコスチュームとアクションを伴い、途中まで張り切り過ぎた歌を聞かされ、あえなく鐘が「か~ん」。再び3人が大袈裟にずっこけ、会場がドーっと沸きかえる。「元気な仲良し3人組でしたあ」と淡々とコメントして次へ、といった具合である。

 

 いい笑いものである。「アジアの一等国」としてこんな痛い映像を見せられる(それでいて結構見ていたりする)のだが、これは「人間動物園」ではないのか?

 

 もしかして「消防団の皆さんがどう受け止め、感じたかということは、『人間動物園』の事実を左右するものではない」のか。

 ドゥーモ君のかぶり物を着せられた方も実に気の毒なもんである。ノッポさんに至っては長寿番組の最後にわずかに発言が許されるという酷い仕打ちだし、大河ドラマにいたっては殺戮(さつりく)映像のオンパレードになりかねない。

 

 改めて問うがJAPANデビューの今回の番組は、自分たちで描いたストーリーで歴史を両断するために、言葉を弄びつつ歴史を通り過ぎていった多くの人々の営みや尊厳というものを軽んじ、踏みにじっていないだろうか。こうした冒涜(ぼうとく)が許されるなら、今のNHKだって後世、“不当”な断罪を受けてもおかしくはないということである。それがNHKの矜持に照らして受け容れられる類のものかどうか。よくお考えいただきたいものだし、とりわけパイワン族の方々に自分たちがやっている仕打ちがいかなるものか、ぜひもう一度問い直していただきたいと願っている。(社会部専門職)

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  中国の軍拡、とくに海軍力の増強についてはこれまでもたびたび報告してきました。

 

 その状況を改めてまとめた最新の記事です。

 

 

【中国 海洋覇権への道】(下)米海軍脅かす「接近阻止」


 

 「中国の海軍力増強は過去の長い年月、一貫して進み、日本周辺を含む西太平洋での米国海軍への重大な挑戦だといえる。中国はやがてはこの地域で制空権の確立から制海権の獲得を目指すのだろう」

 元米国防総省中国部長で現在はワシントンの大手研究機関「AEI」上級研究員のダン・ブルーメンソール氏が語る。

 

 確かに米国は中国海軍の増強に対して長年、警戒の目を向けてきた。

 

 国防総省は毎年、「中国の軍事力」という報告書を公表して、議会に送るが、ブッシュ前政権時代の2004年の報告ですでに、中国海軍が「沿岸海軍」から「遠洋海軍」へと飛躍を図る動きを指摘し、とくに潜水艦増強への懸念を表明していた。

 

 上下両院の議員たちが真剣な関心を向ける課題を研究する米国議会調査局も05年には、「中国の海軍近代化=米国の海軍力への意味」と題する長文の報告を作成した。

 

 同報告は中国海軍が対艦各種ミサイルを大幅に強化し、潜水艦戦力では「世界でも最も野心的な拡張」を進めていると指摘した。

 

 それから5年、議会も政府も中国海軍の増強を警戒の対象として頻繁に提起してきた。

 

 09年6月には米国議会の政策諮問機関、「米中経済安保調査委員会」が中国海軍の増強が米国に何を意味するかを主題に公聴会を開いた。

 

 この場でオバマ政権に近い民主党のジム・ウェブ上院議員(外交委員会東アジア太平洋問題小委員長)が発言した。

 

 「中国の軍事力増強にはここ20年も注意を向けてきたが、近年はとくに海軍力の強化がめざましい。最近、起きた中国海軍による米海軍調査船インペッカブルへの妨害事件はその積極果敢な動きを象徴している。こうした動きは中国が東アジア、太平洋地域で自国の戦略スペースを拡大しようとする意図を示し、この地域に戦略的プレゼンスを保つ米国への挑戦となる。米国は能力と自信を強める中国海軍に軍事的、外交的な対処を必要とする」

 

 インペッカブル事件とは09年3月に南シナ海で測量作業中の同船を中国の艦艇5隻が包囲して、異様に接近し、威嚇するという出来事だった。

 

 だがオバマ政権は国防総省の「中国の軍事力」報告で懸念を表明しながらも、中国側の海軍力増強を理由としての正面からの対中非難は避ける傾向にある。

 

 米海軍のギャリー・ラフヘッド作戦部長は5月13日のワシントンでの演説で、中国海軍の動向について「一国の経済が拡張するときには資源や商品の輸送のためにその国の海軍が拡大することは自然だ」と述べ、中国海軍とは対決よりも協力が重要だと語った。

 

 前述の米中経済安保調査委員会の委員で中国の軍事動向を専門に研究するラリー・ウォーツェル氏も同趣旨の見解を述べる。

 

 「中国海軍の増強は中国が全世界的に軍事や経済の利害を意識する大国の政策への進化だといえる。資源の輸入も製品の輸出も海上輸送であり、その防衛の能力を高めること自体はとくに他国に脅威を与えはしない」

 

 しかし米側が現実の懸念を抱くのは中国海軍の「反アクセス能力」の強化である。

 

 反アクセスとは米海軍の艦艇が台湾や日本の有事の際に西太平洋の特定海域に接近することを阻む「接近阻止」を意味する。

 

 ウォーツェル氏も中国海軍がこの接近阻止の強化手段として近年、艦上発射の巡航ミサイル、弾道ミサイル、空中発射の巡航ミサイル、潜水艦などを大幅に増強していることを指摘した。

 

 中国の兵器の実態に詳しい「国際評価戦略センター」のリチャード・フィッシャー主任研究員は中国側の「接近阻止」の新鋭兵器の実例としてソブレメンヌイ級駆逐艦搭載の超音速SS-N22サンバーン対艦ミサイルやキロ級潜水艦搭載のSS-N27シズラー対艦ミサイルをあげた。

 

 いずれも米海軍の空母などへの攻撃能力が高く、その移動を妨げうるというのだ。

 

 中国側の接近阻止の戦略意図についてはブルーメンソール氏は次のように語った。

 

 「米国がその防衛を責務とする台湾や韓国、さらには日本という相手の有事に米海軍の接近を難しくし、阻むという意図は結局は米国の東アジアでの安全保障上の役割を大幅に削ぐという戦略目標を意味する。米海軍はまだ中国海軍を圧する力を持っているが、その差は縮まっている。この傾向は日米同盟にも重大な脅威であり、日米両国は深刻な懸念を共有して、共同での対処を図るべきだ」

 

(ワシントン 古森義久)

 

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ソブレメンヌイ級駆逐艦 

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