2010年05月

 ベトナム戦争に学ぶ日米同盟の教訓です。

 

ベトナム戦争では南ベトナム(ベトナム共和国)はアメリカから防衛の誓約を受けながら、いざというときに見捨てられ、滅亡しました。

 

 現在の日米同盟の危うい状態をみると、そのベトナムの状況がまったくの他人事とも思えなくなります。

 

 

【安保改定から半世紀 体験的日米同盟考】(12)米国の南ベトナム離脱


 ■一変した防衛誓約

 

 南ベトナムの大統領官邸にはさわやかな朝の風が吹いていた。

 

 

  グエン・バン・チュー大統領は熱をこめ、米国への批判を語った。

 

 「アメリカの歴代5人の大統領が南ベトナムが共産主義の侵略と戦い続ける限り、援助は必要なだけ与えることを誓ってきたのです。だがわが政府が今年度、16億ドルの軍事援助を求めたのに対しアメリカ議会は7億に削り、さらに3億にする構えなのです。まるで市場で野菜を値切るように減らしていく。援助にはかりにもベトナム共和国の存亡がかかっているのです」

 

 私の目の前に座った52歳の大統領は熱弁をふるった。

 

 1975年3月5日、大統領は日本人記者たちとの会見に応じたのだった。

 

 サイゴン(現ホーチミン市)駐在では最古参となっていた私が質問の口火を切った。

 

  農家の出身で軍人となり、いくつもの激戦や政変を生き抜いてきたチュー氏はその8年前に大統領の座についていた。

 

 小柄ながら屈強な体の彼はしっかりとした英語で話し続けた。

 

 独立宮殿と呼ばれた官邸の3階、白いグランドピアノがおかれ、剥製(はくせい)のヒョウがキバをむく接見室だった。

 

 大統領は北ベトナム軍との戦闘の状況や内政、経済などについて冷静に語ったが、こと論題が米国との関係となると、一段と身を乗り出し感情をみせて苦境を訴えるのだった。会見は2時間を超えた。

 

 私がベトナムに赴任してからすでに3年ほどの歳月が流れていた。

 

 この間、南ベトナムという国家は数奇な運命にもてあそばれた。

 

 赴任直後に体験した北ベトナムによる72年春季大攻勢は夏には戦闘が下火となってきた。

 

  同時にパリで米国と北ベトナムとの和平会談が始まった。

 

  ヘンリー・キッシンジャー大統領補佐官とレ・ドク・ト・ベトナム労働党政治局員との停戦の交渉だった。

 

 米国のニクソン大統領はベトナム離脱の基本はすでに決めていた。

 

  ただし同盟相手だった南ベトナムをいかに支えながら手を引くかがカギだった。

 

 米軍は究極的には完全撤退するが、南ベトナム領内に布陣する北ベトナム軍大部隊はどうするのか。

 

  米国の南ベトナムへの支援はどうするのか。

 

 73年1月27日にパリで調印された停戦と和平の協定はこうした諸点、北に有利、南に不利だった。

 

 米軍だけが去っていくことが決められた。

 

 そのかわり米軍捕虜は全員、解放される。

 

 北ベトナムは元来、南領内への出兵は認めていない。

 

 闘争はあくまで南の人民が決起しただけなのだという壮大なフィクションだった。

 

 この協定の調印前にはパリでの交渉のたびにキッシンジャー氏やその副官のアレクサンダー・ヘイグ氏がサイゴンに立ち寄った。

 

  協定への同意を渋る南ベトナム政府に圧力をかけるためだった。

 

  私たちはサイゴンの空港に出かけ、キッシンジャー氏らにしつこく協定の状況を質問した。

 

 後で判明したのだが、米側はこのプロセスで南ベトナム政権に協定に同意しなければ、援助をすべて打ち切るとまで脅していた。

 

  ニクソン政権としては国内世論をみても、議会の動向をみても、ベトナム離脱以外の道はもうなかったのだ。

 

 協定に基づき最後の米軍部隊が撤退したのは73年3月29日だった。

 

 私はサイゴンの空港で撤退の光景をみまもった。

 

 強い風が吹く滑走路ではすぐ隣に作家の開高健氏が立っていたのを覚えている。

 

 米軍司令部勤務の高級将校や古参下士官たちの最後の集団が粛々と輸送機に乗り込んでいった。

 

 立ち会いの北ベトナム軍の責任者ブイ・ティン中佐が満面に笑みを浮かべ、米軍の離脱を確認していた。

 

 その中佐が後年、フランスに亡命してしまうのだが、それはまた別の物語である。

 

 それからの2年、ベトナム戦争は南ベトナムと北ベトナムとが南の領土を舞台として、平和とも戦争とも断じられない闘争を続けたのだった。

 

  だが南ベトナムは米国からの軍事援助をどんどん削減されていった。

 

 北が停戦の協定を破って軍事攻撃を拡大する場合の米国による大幅支援を約束したニクソン大統領は74年8月にウオーターゲート事件へのかかわりで辞任に追い込まれていた。

 

 米国がいかに同盟の相手に防衛の支援を誓っていても、自国内の世論や自国の戦略利害の変化によっては、がらりと変わってしまう。

 

 南ベトナムの興亡はそんな真実を映し出していたといえる。

 

 (ワシントン駐在編集特別委員 古森義久)

 

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最新の記事です。

 

[ワシントン=古森義久]韓国政府が自国海軍哨戒艦の沈没を北朝鮮の犯行だと断定したことに対し、米国政府の対応策としては北朝鮮の船舶の検査強化や秘密銀行口座の凍結、さらにはグアム島への米軍爆撃機の再配備や黄海の北朝鮮境界海域への米軍艦艇の出動など一連の措置が緊急に検討されるという見通しが21日、米国政府に近い専門家によって明らかにされた。

 

米国議会調査局の朝鮮問題専門官を長年、務め、オバマ政権の対朝鮮半島政策に詳しい戦略国際研究センター(CSIS)上級研究員のラリー・ニクシュ氏は同日、産経新聞の取材に答えて、米国政府が北朝鮮の韓国海軍艦艇撃沈という非常時に対応して、同盟国の韓国支援や北朝鮮への抑止のためにこんごとりうる一連の具体策を明らかにした。

 

ニクシュ氏によると、オバマ政権は北朝鮮の今回の行動が実際には戦争行為に等しいという見解をとりながらも、朝鮮半島での実際の軍事報復は避けたいという意向であり、その範囲で北朝鮮を抑止し、制裁するための措置をとることになるだろうという。

 

米国政府がとりうる措置としては

 

①北朝鮮の核実験への制裁として採択された国連安保理決議1874号を強化する形で北朝鮮に出入りする船舶の検査を徹底させる

 

②同決議の強化、あるいは別個の国連決議で北朝鮮への経済制裁を強め、とくに北の国外の秘密銀行口座の調査や凍結を徹底させる

 

③ブッシュ政権時代からの「大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)」を使って韓国や日本と連携し、北朝鮮にかかわる船舶や航空機の積荷の検査を厳しく実施する

 

④グアム島の米空軍基地にB52,B1,B2などの戦略爆撃機を4飛行大隊をメドとして再配備し、北朝鮮への抑止とする

 

⑤哨戒艦が沈没した黄海の南北境界水域付近に米軍の艦艇や航空機を出動させ、北朝鮮に同境界を認知させることを目指す―などがあるという。

 

ニクシュ氏はさらに米国による北朝鮮への側面からの圧力として北朝鮮の「テロ支援国家」再指定の可能性を指摘した。

 

米国がテロ組織と認定するレバノンの「ヒズボラ」とパレスチナの「ハマス」に対し北朝鮮が送ろうとした兵器類が昨年12月にバンコクで押収されており、ニクシュ氏は「北朝鮮がイランとも協力してヒズボラに援助を与えてきたことは確実であり、その一点だけでも『テロ支援国家』の再指定は当然となるが、オバマ政権の国務省は北とヒズボラとのつながりに関しての事実をまだ明らかにしていない」と語った。

 

 

  • File:Valiant Shield - B2 Stealth bomber from Missouri leads ariel formation.jpg
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 中国の軍拡は全世界的な警戒や懸念を生んでいますが、また新たに、長距離爆撃機によるグアム島の米軍基地攻撃の意図や福建省地域に配備した1000基以上のミサイルによる日本をも含む西太平洋全域への脅威が米空軍代表により提起されました。

 

鳩山首相に感想を聞きたいところです。 

 

中国軍事能力、米軍指摘 グアム直撃可能な長距離爆撃機


 

 ■弾道ミサイル西太平洋全域射程

 【ワシントン=古森義久】米国議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」が20日に開いた中国の航空宇宙軍事能力に関する公聴会で、米空軍高官は中国軍がグアム島の米軍基地を直撃できる長距離爆撃機を開発中であることや、福建省周辺に配備した1千基以上の弾道ミサイルで台湾や日本を含む西太平洋の全域を攻撃可能にしていることを明らかにした。

 

 公聴会で米空軍のブルース・レムキン次官代理とウェイン・ウルマン中国問題部長は、 中国空軍が

 

(1)西太平洋で制空権を持つ米軍の拠点としてのグアム島を航空機で攻撃する能力は現在は限られているが、現有のB6爆撃機の長距離改良型を開発しており、この改良型は搭載の空対地巡航ミサイルでグアム島の米軍基地を攻撃できる

 

(2)国産戦闘機の開発を本格的に進めており、次世代(第五世代)の戦闘機は2018年には実戦配備できる見通しだ

 

 -などと証言した。

 

 さらに中国軍は遠距離攻撃の手段としてミサイルにも依存しているとして、「中国南東部(福建省周辺)に短距離と中距離の弾道ミサイル1000基以上をすでに配備したが、その弾頭は空港滑走路破壊用、敵レーダー攻撃用、対艦攻撃用など多様であり、巡航ミサイルと合わせれば、西太平洋地域のほぼいかなる目標をも攻撃できる態勢にある」と証言した。

 

 この「西太平洋地域」には台湾、日本、グアム島などが含まれており、レムキン氏らは中国側の有事の攻撃目標としてその地域内の「空港、港湾、船舶、軍事基地、軍司令部、産業・経済の中枢」などをあげた。

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 民主党の子ども手当への反対論は勢いを増しています。

 なかでも新刊の文藝春秋6月号に神奈川県の松沢成文知事が寄せた「『子ども手当』は地方自治の仇」という論文は一読二読に値します。

 

 

 その主要部分を紹介しましょう。

 とくに迫力のあるのは憲法違反の訴訟を考えようという提案です。

 

 「(阻止の方法の一つは)子ども手当の正当性を法律面で問うことだ。今年2月に神奈川県は『国の政策と自治行財政権に係る検討会議』を設置し、子ども手当への一方的な地方負担の導入は重大な憲法上の疑義があるのではないかという点について議論している。政府が各自治体の了解なく、事実上、児童手当の財源を子ども手当に振り替えたり、地方の自主財源である住民税の一部を国の施策のために勝手に召し上げることは、憲法92条の『地方自治体の本旨』に反するのではないか。さらに憲法94条も含めて解釈すれば、憲法により授権されている自治財政権を侵害するのではないかと考えている」

 

 そのほかにも松沢知事は子ども手当への反対の理由をあげています。その一つはばらまきによる国家財政破綻の危険です。

 

 「今年度、子ども手当に必要な財源は約2・3兆円、来年度以降は5・3兆円となる。ちなみに、国の防衛費は約4・7兆円である。国家を護る予算よりも大きな税金をバラまき、それは巡り巡って、将来世代が負担する国の借金となる。『子どものため』といいながら、当の子どもに莫大な借金を残す矛盾した政策といってよい」

 

 さらに松沢論文で注目されるのは、子ども手当の背後にある思考は独立自尊の考えに反するという点です。国民の依存心を強めるというのです。

 

 「二番目の(反対の)理由はばらまき政策は国民の依存心を強めるからだ。

 民主党は当初、社会全体で子育てをしていくために子ども手当を創設するのだと主張していたが、途中から景気対策の面もあると言い始めた。

 『不況だから』といって、現金をばらまく政策は、自立して生活ししよう、自前努力で経済を成長させていこうという国民の意識を着実に蝕んでいく。

 政府の役割とは、端的に言えば、税金を国民から集め、それを効果的、効率的な公共サービスとして国民に提供することである。例えば、学校を建てる、先生を雇う、福祉施設を作る、道路を作る、お金を欲しがっているところや、選挙で票になりそうなところへ、現金を右から左へばらまくのは政府の仕事ではない。税金を集めて、それを現金のままで配り直すのであれば、そもそもの税金を安くすればいいだけである」

 

 以上の点以外にも松沢知事はいろいろ子ども手当と、それに象徴される民主党政権のばらまき政策をきわめて説得力のある記述で徹底的に批判しています。

 

 現職の県知事、しかも国政でも活躍してきた松沢氏の言、重みがあると感じるのは私だけではないでしょう。

上海万博の日本館は日本の国旗を掲げていないそうです。他の諸国の展示館はみな自国の国旗を掲揚するなかで、唯一、異色の存在です。

 

 

いったいなぜなのでしょうか。

 

この「日本館、日の丸を掲げず」の事実は日本の大手マスコミもほとんど伝えていません。そのため、ここでは週刊新潮5月10日号の記事に頼ることにします。「上海万博『日の丸』を掲揚しない卑屈すぎる『日本館』」という見出しの記事です。

 

まず週刊新潮の記事の冒頭は以下のとおりです。

 

 

「自国の国旗を掲揚していない、という意味では上海万博の中で、日本館は際立っている。

 『どの国も自分の国の国旗を掲揚しています。ポールを2,3本立て、両側に自国の国旗と中国国旗、その間に上海万博旗を掲げている国もあります。国旗がない場合でも、建物全体で、国旗を形作ったりしています。貧弱な北朝鮮でも国旗を掲揚し、壁に国旗を描いて存在をアピールしていますし、ブラジルなどは、サッカーのユニフォームでお馴染みの黄色と緑で建物を彩っています』と語るのは中国在住のジャーナリスト」

 

さて同じ記事の引用ですが、中国出身の評論家の石平氏のコメントです。

 

「他の国が国旗を掲揚するなかで、日本が国旗を掲げないのは異様です。これは中国政府が圧力を掛けて掲揚させなかったのではなく、日本側が自分たちの判断で遠慮をしてしまったのでしょう。日本人はいつもそうなんです。国旗は名前はその国、人にとっての象徴です。象徴を堂々と出せないのは、変な話だと思いますよ」

 

これに対して、日本館の担当者は掲揚しない理由を次のように述べているそうです。日本館広報管理センターの担当者の談話です。

 

「国旗を掲揚するという計画自体がない。そもそも万国博では、各国が国旗を掲揚するというルールはありません。恐らく、ポールがあるのに国旗が掲揚されていないため、なぜ掲揚しないのか、という見方をされるのかもしれません。あのポールはVIPが来た時など、中国側から急遽、国旗を掲揚するように要請される事態も想定されるので、そのために作ったものです。決して中国側に配慮したのではなく、そも計画もなかったし、必要ないと判断しました」

 

なぜ日の丸は掲げられないのか。

 

私なりのその答えは簡単です。

 

中国人一般の反日感情を恐れるからです。

 

そのへんの実態にちらりと触れる以下の評論をごらんください。

末尾のほうに日の丸と上海万博が出てきます。

 

 

【正論】中国海洋パワー 杏林大学名誉教授・田久保忠衛
2010年05月19日 産経新聞 東京朝刊 オピニオン面


 

 ■有事の備え強める同盟構築せよ

 英作家スウィフトの「ガリバー旅行記」に登場する小人の国、リリパット島の物語だと思えばいい。目の前の海を外国の大艦隊が悠々と行き来したのは念頭になく、海上を見張る監視塔が目障りだからほかへ持っていくかどうかで大騒ぎを演じている。世界の大勢などリリパットの最高指導者はどこ吹く風だ。

 中国艦艇が沖縄本島と宮古島の間を往復し、10日余にわたり太平洋側に進出した。日本の鼻先で軍事力を誇示し、海上自衛隊護衛艦に艦載ヘリを90メートルまで接近させる挑発行為に及んだ。さらに日本の排他的経済水域(EEZ)では、海上保安庁の測量船を2時間以上にわたって追い回した。追跡したのは海洋調査船のようだが、威嚇行為ではないか。

 ≪中国を戦略的視点から分析≫

 ハルフォード・マッキンダー、ニコラス・スパイクマン、アルフレッド・マハンらに代表される地政学、と聞いた途端にカタツムリのように身を縮める日本の風潮と反対に、中国を戦略的観点から見つめようとの試みは米国を中心に多角的に進められてきた。最新の論文の一つは、ニュー・アメリカン・セキュリティー研究所上級研究員のロバート・カプラン氏がフォーリン・アフェアーズ誌5-6月号の巻頭に書いた「中国の巨大地図-北京は陸と海でどれだけ勢力を拡張するか」だ。

 ユーラシア大陸2大国の一つであるロシアは大陸国家であるのに対し、中国は大陸国家であると同時に気候に恵まれた長大な海岸線を持つ東シナ海および南シナ海に面した海洋国家である。その中国の対外行動の原動力は13億人の生活水準を高めるため、エネルギー、金属、戦略的鉱物などを確保しようとする強烈な願望だ。影響力は中央アジア、ロシア極東部、南シナ海、インド洋へと及ぶ。国内では石油、天然ガス、銅、鉄鉱を産する新疆ウイグルやチベットにおける少数民族への弾圧は緩めない。

 中央アジアで、カスピ海から新疆に引いてくる石油のパイプライン、トルクメニスタンからウズベキスタンとカザフスタン経由の天然ガス・パイプラインが完成しつつある。ロシア極東部に目をつけているのは天然ガス、石油、ダイヤモンド、金などがあるからで中国移民が急増し、対照的にロシア側の人口が急減している。インド洋ではミャンマー、バングラデシュ、スリランカ、パキスタンなどで公然と港湾建設などを進め、いわゆる「真珠の首飾り」完成を進めている。中印の覇権争いだ。

 以上の分析をしたうえでカプラン氏は南シナ海に触れる。朝鮮半島、千島列島、琉球諸島を含む日本、台湾、フィリピン、インドネシア、オーストラリアを結ぶ第一列島線は、米国にとって「万里の長城」になっている。オーストラリアを除いた他の国々はいずれも中国との危険な2国間問題を抱えているうえ米軍のアジアにおける存在とともに中国海軍の太平洋への進出をチェックする役割を担っている。

 ≪事実上の「フィンランド化」≫

 カプラン論文は米国の長期戦略に近いところをついている、と私は判断する。ニクソン訪中から続いている米国の対中政策の基本は、中国と軍事対決を回避しつつこの大国を国際社会の常識になじませる関与政策である。同時に、自国の軍事力を整備し、同盟国や友好国との結びつきを強めるヘッジング(有事の際の準備)を怠らぬ-に尽きる。

 日本が中国との友好を重んじるのは当然だが、日米同盟を弱め、自国のヘッジングでもあるべき米軍沖縄基地を不安定にし、仲井真弘多沖縄県知事を惑わせ、いまごろになって抑止力の意味がわかったなど臆面(おくめん)もなく述べている最高指導者とはそも何者なのだろうか。

 深刻なのは、国民の間に静かに広まっている独立国としての精神の崩壊だ。民主党は中国の軍事力を「脅威」と認めない方針を5年前に確立している。今回、中国海軍の挑発を受けた5日後に鳩山首相は胡錦濤国家主席と会談したが、この問題を持ち出さなかった。なぜか、北沢俊美防衛相は日中首脳会談後に事実を国民に明らかにしている。自民党にも、「中国を刺激してはまずい」などといかにも訳知り顔で説く向きがいる。要するに中国の軍事力を恐れているのだ。上海万博で日本館だけは国旗を掲げない現象とも無関係ではなかろう。

 北欧のフィンランドは、ソ連に果敢な抵抗をしたが、1948年に友好協力相互援助条約を結んだ。独立と体制を認めてもらう代わりにモスクワに楯突かないことを約束した。日本にも対中関係で事実上の「フィンランド化」が進んでいないか。世界の大勢をつかみ、日本の運命を託す救国の政治家は末期的乱世の中から登場すると信じている。(たくぼ ただえ)

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