ワシントンでの米中関係にかかわる最新の動きです。
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〔ワシントン=古森義久〕
米国上院軍事委員会の共和党有力メンバーのジョン・マケイン議員ら5人は国防総省が毎年春に議会に送って公表する「中国の軍事力」報告が今年はまだ未発表なことに抗議する書簡をこのほどロバート・ゲーツ国防長官に送った。
オバマ政権では国家安全保障会議(NSC)の政治任命幹部らが同報告の公表は中国を刺激するとして遅らせているとみられる。
上院軍事委員会の共和党筆頭メンバーのマケイン議員や同党のジョン・コーニン、ジェームズ・インホフら合計5議員は7月23日付でゲーツ国防長官に書簡を送ったことが30日までに明らかにされた。
同書簡は2000年度以来、法律で国防総省に義務づけられている「中国の軍事力」報告の毎年の作成と議会への送付、公表が2010年はまだ未公表となっていることを批判的に指摘して、同報告の速やかな作成と公表を求めている。
同書簡は「急速に拡張する中国の軍事力の真の特徴とその増強の度合いや、軍事の能力や戦略の実態を知ることは米国の軍事費審議でも必要だ」として、中国の軍拡については改めて前年度までの報告などを引用し、「中国は軍拡を近代化の名の下にもう20年も実行しており、全世界でも最も積極的な弾道弾ミサイル、巡航ミサイルの開発を進め、西太平洋でも航空母艦の配備を目指し、潜水艦では原子力推進の原潜の配備を進めている」と警告した。
中国の軍事力報告の公表遅れには上院軍事委の民主党側議員も批判を表明しており、同委員会のメンバーで中立派のジョセフ・リーバーマン議員がすでに2011年度の防衛支出権限法案に「法律で決められた『中国の軍事力』が未提出であることへの不快感を上院軍事委員会として一律に表明したい」というⅠ項目を加えることを提唱し、同委員会多数派の同意を得た。
同書簡は国防総省の同報告提出の遅れの理由については「ホワイトハウスの国家安全保障会議の政治任命者たちが中国を怒らせることを避けるために、同報告の公表を遅らせているという実態がないことを願う」と述べて、オバマ政権の対中政策の甘さを批判した。
しかし国防総省の報道官も同報告の発表の遅れについては論評を拒んでいる。
「中国の軍事力」報告は同書簡の指摘のように昨年までは毎年3月ごろに議会への送付と公表がなされてきた。だが今年は8月近くの現時点でもまだ公表されていないが、国防総省では3月ごろにすでに草案の作成を終えて、ホワイトハウスの了承を得ようとしたものもの、大統領段階でストップされたままになっているという。