2010年09月

  日本という国がこれほど揺れ動いてくるにつれ、つい自分が以前に出した本を思い出しました。

 

 『国の壊れる音を聴け』(恒文社21 2003年刊)という本です。もう7年も前の出版ですが、そのときつけたタイトルがなんともいえない不安感とともに、よみがえってきたのです。

 

 いまの日本という国家が日米関係の動揺をみても、また対中関係での主権を放棄するような土下座ぶりをみても、壊れるのではないか、という懸念がわいてくるのです。

 

 「国の壊れる音を聴け」というタイトルはこの書の編集と出版にあたってくれた恒文社21の加藤康男専務(当時)が私の思いを聞きながら、考えてくれました。いいタイトルだと思いましたが、そのときは、まさにこの言葉が実感と迫力をもって、いまのように自分の感覚を襲ってくるときがくるとは思いませんでした。

 

 

      

 

 この書で私が訴えたかったことを「あとがき」の一部から以下に引用します。

 

 「私が新聞記者として国際報道にかかわる長い道程で胸を刺されるように感じてきたのは、日本と外部世界とのギャップだった。日本では正当化されることが国際社会ではまったくの論外とされる。日本で美徳とされることが他の諸国では破綻とされる。そんな断層のような違いを数え切れないほど体験してきた」

 

 「もちろん日本には日本独自のやり方がある。独自の価値観がある。だが他の諸国や外部世界とのかかわりで、ここまでは共通の認識や政策がなければ、共通の歩調がとれなくなるという範囲内では、国際的な規範に背を向けたままでは破綻となる」

 

 「国際的な規範から外れた日本のあり方にはふつうの独立した主権国家のあり方からも逸脱する部分が多いと感じることもしばしばだった。日本はあくまで日本、という前提でみてさえも、独立国家としておかしな構造や体質が多々あることをも痛感した。あえて外部世界とくらべなくても、ふつうの国家としてはゆがみすぎている側面があまりに多いのだった」

 

 「そのゆがみはこのままだと日本という国家を壊していく、と恐れるほどである」

 

 「そうした懸念をも交えて、外からみた日本の異端部分について書いたのがこの書だといえる」」

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菅政権が日本の法律の秩序を無視して、公務執行妨害や領海侵犯の中国漁船の船長を釈放してしまったことは、上記の「ゆがみ」の典型のように思えるのです。

 

  

 菅政権による中国漁船船長の釈放は日本国内の広い層から激しい反発を受けているようです。

 与党の民主党の内部からさえも広範な反対が起きました。

 この一事をもってしても、菅内閣は総辞職すべきだという主張にかなりの論拠を与えるでしょう。

 その民主党内部からの反対を以下に紹介します。

[草莽崛起ーPRIDE OF JAPAN]から転載させていただきました。

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那覇地検による中国人船長釈放問題についての緊急声明

那覇地検による中国人船長釈放問題についての緊急声明

平成22年9月27日
民主党国会議員有志

 24日夕刻にわれわれは「釈放の決定を撤回し、あくまでも法と証拠にもとづき継続的な捜査の実施を求めるものである。」と声明を発した。それにも関わらず、那覇地方検察庁は独自の判断によるものとして中国人船長を釈放した。

尖閣諸島がわが国固有の領土であることは疑いがなく、かつわが国は永年にわたって実効支配を行っており、そもそも領土問題は存在しない。こうしたことを踏まえると、今回の事件の処分にあたり、他国からの発言や行動を考慮に入れる必要は法理上一切ない。

 今回、中国人船長が「処分保留」で釈放されたことによってこの件の捜査は実質的に中断され、近い将来「不起訴」となることが予想される。

しかし、容疑者の身柄を拘束し、その上で勾留を延長したということは、容疑者にそれ相応の違法行為があったと検察が判断し、刑事訴訟法第208条の「やむを得ない事由があると認め」たことによるはずである。


にも関わらず、「国民への影響や今後の日中関係も考慮すると、これ以上容疑者の身柄拘束を継続して操作を続けることは相当ではないと判断し(鈴木那覇地検次席検事)」、急遽釈放するという那覇地検の判断は、刑事訴訟法第248条の「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」とある要件に該当せず、法理的には適当ではない。

 すなわち、外交問題を一つの理由とする今回の判断は、刑事訴訟法の範疇を超える政治的判断であり、検察の権限を大きく逸脱した極めて遺憾な判断といわざるを得ない。このような決断が検察庁の独断によって行なわれることは、国民が選んだ政治家が国益を踏まえた政治的・外交的決断を行なうという、わが国の議会制民主主義の原則を大きく揺るがすものである。

 われわれ民主党国会議員有志は「処分を保留し釈放」の判断を下したことに強く抗議すると同時に、今後、尖閣諸島近辺でのわが国の漁船などの船舶の安全、諸資源の確保に万全を期すための諸制度・法律の構築をめざす。もとより中華人民共和国からの謝罪と賠償の要求は言語道断であり、「一切応じない」という政府の判断を強く支持する。その上で、立法府に与えられたあらゆる権限を駆使して、真相の究明ならびにわが国の国益にそったあらゆる対応を今後行う決意である。
                   (以上)

賛同民主党国会議員有志一覧
平成22年9月27日現在

石山 敬貴  小宮山泰子  石井登志郎  畑 浩治  玉木雄一郎  米長晴信
斎藤やすのり  若泉 征三  石井 章  石森久嗣  川口 浩  谷田川 元
高邑 勉  中野渡詔子  豊田潤多郎  今井雅人  石原洋三郎  外山 斎
空本誠喜  牧 義夫  大久保潔重  木内孝胤  若井康彦  舟山やすえ
木村たけつか  皆吉稲生  友近聡朗  村上史好  勝又恒一郎  行田邦子
渡辺義彦  網屋信介  安井美紗子  柳田和己  高橋英行  大石尚子
向山好一  本村賢太郎  河合孝典  福島伸享 松岡広隆  水戸将史
柴橋正直  福嶋健一郎  打越あかし 花咲宏基  大谷 啓  梶原康弘
長尾 敬  宮崎岳志  川内博史  中津川博郷  仁木博文  平山泰朗
石関貴史  神山洋介  岡本英子  松原 仁  山本剛正  高松和夫
金子洋一  柿沼正明  小林正枝  福田昭夫  萩原 仁  近藤和也
神風英男  太田和美  吉田公一  中野 譲  和嶋未希  加藤 学
山岡達丸
            計 73名 順不同

 こういう見方もあります。

 

【私はこうみる】尖閣敗北 “ダミー漁船”で衝突という疑念も
2010年09月26日 産経新聞 東京朝刊 総合・内政面


 

 □米ヘリテージ財団研究員 ディーン・チェン

 中国漁船衝突事件は、中国海軍の艦船が今年4月に沖縄本島と宮古島の間を通過した活動を含め、昨年来の中国海軍の活発な動きとの関係でみる必要がある。従って、日本は中国人船長を釈放したが、これですべてが終わったわけではない。

 では、中国政府がかつてない強硬姿勢を見せた背景には何があるのか。

 一つは、中国が経済成長と軍拡で自信を深め、大国になったと自覚し、それにふさわしい行動をとろうと考えていることだ。これらの行動は区別はつきにくいが、覇権主義と受け止めることもできる。

 中国は同時に、インドとは、(同国東部にあり中国と国境を接する)アルナチャルプラデシュ地方、東南アジア諸国とは南シナ海(の島々の領有権)、米国とは宇宙の衛星破壊実験をめぐり、覇権主義の姿勢を押し出してきている。

 中国は国内で社会不安が増大しているがゆえに、対外的に強硬な姿勢をとらざるを得ないとの見方がある。従って、対外的に融和姿勢をとるわけにはいかず、国内の愛国主義をかき立てているのだろう。

 ただ、日中関係には先の大戦が暗い影を落としており、その意味で現在の事態を過小評価すべきではない。中国の指導者が単に自国民の感情をあおっているだけでなく、中国国内からわき起こる純粋な愛国主義の発露とみるべきだ。

 次に、今回の事件が偶発的なものか、組織的なものかは分からない。

 中国が昨年3月、南シナ海で米調査船「インペッカブル」の活動を妨害したように、われわれは、中国漁船が主権にかかわる活動に使われたとみている。この一件は、今回の衝突事件で、中国政府が漁船を仕立て故意に起こしたのではないか、という根本的な疑問を惹起(じゃっき)する。

 中国は今年7月、軍事作戦を支援する際、民生物資の動員を可能とする「中国国防動員法」を施行した。こうした軍と民生部門のあいまいな状態はとても危険だ。何かあった場合、民間の漁民が危険にさらされる可能性がある。

 米政府は一貫して、領有権についての立場は示さない。しかし、日本の施政下にある領域への武力攻撃に対し、共通の危険に対処することを明記した日米安全保障条約が、尖閣諸島に適用されるのは明白だ。もし、尖閣諸島周辺で日本への武力攻撃があり、日本が日米安保条約の発動を求めた場合、米国はこれに応えるだろう。

 中国政府は、米国が日本の強力な同盟国であり、何かあれば日本のために動くということをはっきり認識すべきだ。中国がこの問題で強い態度に出れば出るほど、破滅的な事態が起きる可能性はそれだけ大きくなる。(談)

                   ◇

【プロフィル】ディーン・チェン

 1966年生まれ。86年、米プリンストン大卒、米マサチューセッツ工科大(MIT)院博士課程。米議会技術評価局で中国の軍需産業に関する調査員を経て、米海軍分析センター中国研究所研究員。専門は中国政治、軍事。44歳。

 尖閣問題で中国はどう出るのか。

 

 中国が領有権紛争で動く際には一定のパターンがあります。領有権の獲得には軍事力をよく使います。

 

 中国のその軍事力と国家主権の相関関係について、アメリカの見方の紹介を続けます。

 

 私の著書『アメリカでさえ恐れる中国の脅威!』からの引用の続きです。

      

 

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 アメリカの中国軍事問題専門家ロイ・カンファウセン氏はさらに興味ある考察を述べていた。
 

   「中国軍の軍事力の枢要な点は、少なくとも地域的に軍事衝突に勝利し、中国にとって好ましくない行動を抑止し、その結果、地域パワーとしての中国の地位を 強化することができる能力を保とうとする方針である。中国政府は人民解放軍が自国の国家主権の目標を促進できるだけの強さを持つ軍事能力を保つことを期待 しており、そのためにはアジアのどの地域でも実際の軍事任務を果たせることが必要となる」

 

こうした記述から浮かびあがる中国の「主権と軍事力」の相関関係はもはや明らかだろう。

 

要するに中国は自国の主権のためには軍事力をためらうことなく使うという基本を明示しているのだ。

 

 

▽アジアでの中国の軍事行動

人民解放軍の「アジアでの実際の軍事任務」が強調されたが、現実にその動きは顕著となってきた。報告が述べる。

 

「とくに最近は人民解放軍はアジアでの軍事プレゼンスを誇示するための積極的な計画を実行するようになった。そのための動きの多くは中国から遠くない台湾海 峡、東シナ海、南シナ海、というような地域で起きている。その行動のいくつかは単に中国の存在を誇示する意図のようにみえる。しかし他の行動――台湾海峡 での偵察、日本の領海での潜水艦侵入、紛争・競合海域での海軍艦艇巡航など――は明らかに人民解放軍によるより積極果敢な活動政策を外部世界にみせびらか す結果となっている。その誇示は中国が主権に基づく権利の主張を外部から反対されても決して緩めないという決意の表明だといえる」

 

中国軍のアジアでの活動はそうした主権に基づく政治や外交の決意の表われだというのである。

 

日本の領海への中国潜水艦の再度の侵入も、それなりにその種の政治的計算に基づくとみるのが適切だろう。

 

(つづく)

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撃論ムック『アメリカとは何か』の古森論文の紹介の続きです。

これが第3回です。

 

完結の紹介を先にしてしまい、順序が狂いました。

しかしこの部分も重要だと思い、遅ればせながら掲載しました。

 

 

アメリカがもし超大国であることをやめたらどうなるか。

国際的な主導権を放棄したらどうなるか。

 

そしてアメリカがもし軍事的役割を放棄し、日米同盟の責務を破棄したらどうなるのか。 シミュレーションの対象にしてもよいですね。

 

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ではもしアメリカが国際的に主導的な役割をまったく果たさなかったら、どうだろうか。単に日本の立場だけから考えても、破滅的な事態が想像される。

 

いま日本は尖閣諸島近くの領海に中国漁船に侵入され、海上保安庁の艦艇を破壊され、その船長を逮捕したことで、中国と対立した。

 

中国側はそもそも尖閣諸島を自国領だと一方的に宣言しているから、「中国領海に中国漁船が入ることがなぜ悪い」と反発する。

 

その中国が軍事力を使って尖閣占拠を試みたらどうだろう。同盟パートナーとしてのアメリカの存在がない日本はどうすればよいのか。

 

中国が軍事攻撃をほのめかす脅しをかけてきた場合、日本単独ではすごすごと引き下がるシナリオが最も現実性を持とう。

 

だが実際には中国は軍事手段での解決には出てこないだろう。なぜなら日米安保条約が存在するからである。

 

この条約では日本が第三国から軍事的な攻撃を受け、あるいは攻撃の威嚇を受けた場合、アメリカが日本と共同で日本の防衛にあたることを誓約している。

 

だから中国にとっては日本に手を出すことはイコール、アメリカとの戦争を意味するのである。アメリカを敵とはしたくないということで、中国が日本への攻撃や威嚇を思い留まれば、日米同盟の抑止力が機能したことになるわけだ。

 

アメリカの巨大なパワーの度合いを推し量るのに、最もわかりやすい指針はやはり軍事力だろう。

 

いまの世界で遠隔の地に短時間で軍事力を投入する「パワー・プロジェクション(軍事力の遠隔地投入)」の能力を十分に備えているのはアメリカだけである。

 

二〇〇三年春からのイラク戦争ではアメリカはフセイン政権の大部隊をわずか二週間ほどで木っ端みじんに粉砕した。

 

ただし、その後のイラク国内平定での苦労やアフガニスタンでのテロ勢力との戦闘での支障をみると、米軍はゲリラ戦や治安維持の作戦では必ずしもオールマイティーではないようだ。

 

だが国家同士、正規の軍隊同士の戦争では他のどの国をも寄せつけないほどの圧倒的なパワーを発揮する。

 

イラクでのフセイン政権打倒の作戦ではアメリカ内陸部のウィスコンシン州の基地から飛び立ったB1爆撃機がバグダッドを爆撃し、またその足ですぐアメリカ本土へもどるという驚異の遠隔攻撃をやってのけた。

 

中国の軍拡の脅威が語られるが、中国側の将軍がアメリカ本土への核攻撃戦略の可能性を示唆して、波紋を投げたとき、米側の共和党政権の国防関連の高官がオフレコで「われわれは渤海にひそむ戦略核ミサイル潜水艦からのミサイル攻撃で北京を五分で壊滅する能力を持つ」とさらりと述べたのを私はよく覚えている。

(つづく)

 

 

 

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