中国当局による人権弾圧の報告の続きです。
アメリカの「中国に関する議会・政府委員会」の報告に基づき、私が書いたレポートです。
日本ビジネスプレスの私の連載コラム「国際激流と日本」からの転載です。
その全文は以下のサイトで読めます
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/4735
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ウイグル人とチベット人は「民族浄化」されてしまうのか
同報告は中国当局の広範な人権弾圧の実態を詳述しているが、中でも特に弾圧されている対象として、ウイグル人とチベット人という少数民族の実例を挙げていた。
結論を先に述べるならば、ウイグル人もチベット人もこのままでは独自の文化や宗教、言語を抹殺され、中国の多数民族である漢民族に吸い込まれてしまう。かつて旧ユーゴスラビアで起きた「民族浄化」にも匹敵する、民族の独自性の抹殺が進んでいるという。
ここで「中国に関する議会・政府委員会」の報告から、ウイグル人とチベット人への弾圧の状況の骨子を紹介しよう。
【新疆ウイグル自治区での弾圧の状況】
◆2009年7月のウイグル人の騒乱事件以来、中国当局は住民に対する前例のない厳しい報道管制をさらに強化し、「民族団結」の標語の下に、特にウイグル人の統制や監視を強めた。
◆同騒乱で逮捕された千単位のウイグル人たちの消息は不明のままで、その司法手続きは不透明を極めている。
◆共産党が経済開発でもウイグル人の独自性やこの地域の自主性を無視して、中央政府主体の漢民族主導の形式を広げている。ウイグル人の地元での就職を難しくしている。
◆中国当局は、ウイグル人の子供たちが通う学校で中国語の教育を強制的に強化し、ウイグル語の使用を禁止する措置を次々に取っている。
◆中国当局は、ウイグル人が居住する古い都市カシュガルの文化遺産とも言える中心街を改造し、民族の独自の伝統を奪っている。
◆イスラム教への弾圧がますます強まった。当局は官製の「中国イスラム教教会」を通じてイスラム教の内容を共産主義の方向へ変え、ウイグル人本来の宗教を過激派扱いしている。
◆ウイグル人の若い男女多数が父祖の地から沿岸部の都市に半強制的に移住させられ、ウイグル地区の漢民族の比率が増大している。
◆中国政府はウイグル人の海外亡命をますます厳しく取り締まり、すでに海外に出たウイグル人については、外国政府に圧力をかけて中国へ送還させている(2009年12月には、カンボジア政府が自国領内にいた中国籍ウイグル人20人を中国政府の要請で強制送還した)。
(つづく)
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