2011年05月

雑誌SAPIOの最新6月15日号に私の連載が載っています。

 

アメリカの中国研究の最新レポートです。

 

掲載の冒頭部分は以下のとおりです。

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大反響巨弾連載 古森義久ワシントン報告

「アメリカの中国研究」

第3回 海軍力 台湾有事を超えた海洋覇権

 

アメリカが空母艦隊出現よりも恐れるもう一つの海の近代兵器

 

航空母艦群の配備、戦略弾道ミサイル搭載の潜水艦、近代化する攻撃型潜水艦と、1990年代後半から始まった中国海軍の増強。アジアの海域を制覇するかのようなこれらの動きは、日米同盟に影響を及ぼし、米海軍の明らかな脅威となっている。大反響「アメリカの中国研究」第3回は、米国防総省のみならず議会までもが注視している「海軍力」の研究をレポートする。

 

 

 

 

 

 

 

産経新聞の5月30日朝刊一面に私の新著刊行の社告が出ました。

 

「アメリカはなぜ日本を助けるのか 体験的日米同盟考」きょう発売

 

 

 産経新聞ワシントン駐在編集特別委員、古森義久氏の本紙連載をまとめた『アメリカはなぜ日本を助けるのか 体験的日米同盟考』(定価1680円)がきょう発売されます。

 東日本大震災で、改めて注目されたアメリカと日本の「絆」。本書は、1960年代から冷戦終結までの激動期を最前線で取材してきた著者が、自らの体験をもとに、絆の根底となる「日米同盟」の真の姿を浮かび上がらせています。

 これからの日米同盟のあり方を考えていくための必読の書です。

 発行・産経新聞出版

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社告は以上ですが、内容は新聞連載を大幅に書き換え、さらに新聞連載以上の分量を加筆しました。新聞の連載とはまた趣を変えた単行本となっています。

 

 

 菅首相は日米同盟の重視をスローガンとしては口にしながら、実際の行動ではその同盟に背を向けています。同盟を強化する措置、そのために実行すると約した措置をいずれも先延ばしにしているからです。

 

産経新聞の社説がそのへんを解説しています。

 

【主張】日米首脳会談 同盟の懸案解決に全力を

 

 菅直人首相は仏ドービルで行われたオバマ米大統領との首脳会談で、日米同盟の深化をめざして「今年前半」に予定していた首相の公式訪米を9月前半に先送りすることなどで合意した。

 訪米延期は東日本大震災や原発事故で忙殺される日本の事情に配慮した形だが、実態は同盟深化の柱となる米軍普天間飛行場移設のメドが立たず、菅政権の先行きも不透明なためだろう。

 

 21世紀の同盟像を描く共通戦略目標の策定や、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加問題も決着していない。首相は9月訪米を最後の機会とする覚悟で同盟充実強化のための懸案解決に全力を投入してもらいたい。

 

 震災発生後初の首脳会談でオバマ氏が「時間がいくらかかっても復旧を支援する」と語り、首相が「米軍トモダチ作戦で惜しみない支援を受け、同盟の絆の深さを感じた」と国を代表して感謝したことを評価したい。

 

 米軍と自衛隊の共同救援活動の多大な成果は、同盟の意義と大切さを両国民と世界に示した。にもかかわらず、こうした関係をさらに強めるための両国の約束が民主党政権下で果たされないことに重大な問題がある。

 

 両首脳が普天間を沖縄県名護市に移設する日米合意の堅持を確認したのは当然だ。米議会では合意と異なる嘉手納基地併合案や県外分散案も浮上した。日本の遅延に対するいらだちと受け止め、現行合意を着実に進めることで議会を説得すべきだ。そのためにも首相の決断と行動が欠かせない。

 日米共通戦略目標と同盟ビジョンを描くための外務・防衛閣僚級の日米安全保障協議委員会(2プラス2)を6月下旬に開く方向となったことは是としたいが、作業は必ずしも順調といえない。「同盟深化」をうたう首相訪米に必須の準備作業だ。両国間の調整を一層加速させる必要がある。

 

 日本が同盟の約束を果たせない間に、米中間ではアジア太平洋の安全保障などを協議する新たな枠組みが動きつつある。日本の安全にも関わる問題だ。

 

 中国が軍事、政治、経済で海洋権益などの拡大路線にひた走り、北朝鮮の動向も不透明な中で、米国は「頼れる同盟国」としての日本をとりわけ必要としている。首相は国家の安全と同盟の問題にしっかりと目を向けてほしい。

 

さあ、菅政権の命運は?

 

風雲急を告げるという感じですね。

 

不信任案はどうなるのか。

 

解散のうわさも駆けめぐるようです。

 

こうした状態自体がもう一定の基準を越えた観もありますね。

 

 

 

【朝刊 1面】


「解散風」嵐の予兆 不信任、牽制のつもりが


 

 

 

 内閣不信任決議案の可決が現実味を帯びる中、与野党で衆院解散・総選挙の可能性がささやかれ始めている。閣僚や民主党執行部はしきりと「解散風」を吹か せ、菅直人首相も28日、ベルギー・ブリュッセルでの同行記者団との懇談で可能性を否定しなかった。今のところ、不信任案採決での民主党議員の造反を封じ るためのブラフとの見方が大勢だが、「瓢箪(ひょうたん)から駒」という事態も否定できない。

 「被災地での衆院選実施は可能か」

 最近、総務省には首相サイドからこんな問い合わせがあったという。

 

 不信任案が可決した場合、憲法69条の規定で内閣総辞職か衆院解散となる。過去4回の可決例では当時の首相はいずれも解散を選択している。

 

 ◆震災無視 常識外れ

 ただ、東日本大震災から間もない今回は、「首相は総辞職を選択する」との常識論が広まっていた。その常識を否定したのが枝野幸男官房長官だ。27日の記者会見で枝野氏は、震災時における首相の解散権の制約について「まったく影響しない」と断言した。

 

 “常識外れ”の解散風。そのココロは不信任案賛成や採決欠席を検討する議員に「選挙」という恐怖心を植え付けるためとみられる。党執行部も、不信任案に賛成なら除籍(除名)、欠席でも党員資格停止という処分をちらつかせ造反予備軍に圧力をかける。

 

 不信任案の可決には、民主党から81人の造反が必要だ。小沢氏の側近議員による同調者の署名はすでに50人を超えたが、なお約30人足りない。鍵を握る のは支持基盤、政治資金ともに脆弱(ぜいじゃく)な1、2回生議員の動向。彼らにとって党から処分を受けて選挙に突入するのは相当の覚悟が求められるから こその恫喝(どうかつ)だ。

 

 岡田克也幹事長は28日、青森県弘前市で記者団に「党が一つにまとまって不信任案を全員で否決することは当然のことだ」と強調。首相に近い閣僚経験者も 「不信任可決で解散なら小沢系の多くが永田町から消えるぞ」と牽制(けんせい)する。しかし民主党ベテラン議員はこう漏らす。「平成17年の郵政解散の時 も、まさか本当にそうなるとは思っていなかったが…」

 

 ◆「何でもやってくれ」

 一方、自民、公明両党にとり選挙は望むところだ。

 「今やれば100~150議席増で民主党から第1党の座を奪うことは間違いない。破れかぶれ解散でも何でもやってくれていい」

 

 自民党幹部の一人はこううそぶく。定期的に行っている独自調査でも同様の傾向が出たとされ、同党は一時停止していた衆院選候補予定者の公認作業を再開した。

 

 公明党の山口那津男代表は28日、「来週はヤマ場だ」と、不信任案早期提出の構えを鮮明にした。同党は前回衆院選で小選挙区の元職全員が落選しただけに、別の幹部は「今、解散なら全員が帰って来られる。願ったりかなったりだ」と歓迎した。

 不信任案をめぐる解散風は造反に対する牽制球に終わるか、嵐への序曲となるのか。(加納宏幸、佐々木美恵)

 


東日本大震災の救援に自衛隊が大活躍したのは周知のとおりです。
 
しかし自衛隊の本来の任務は災害救済ではありません。
あくまで国家と国民の外敵からの防衛です。
 
今回は自衛隊への依存が過剰だったのではないのか。
自衛隊をいつまでも災害救済にあてたままでよいのか。
 
こんな疑問も起きるでしょう。
 
同時に一般の日本国民が国難である大震災での惨禍に対しなんか行動をとるべきではないか、単に義援金を出し、救援物資を送るだけでなく、救済の作業にあたるべきなのではないのか。こんな疑問や提案を起きています。
 
そうした趣旨の提起を佐瀬昌盛氏が発表しています。
かなり大胆な問題提起であり、提案です。
 
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【正論】防衛大学校名誉教授・佐瀬昌盛 日本新生のため「民役」の導入を
2011年05月26日 産経新聞 東京朝刊 オピニオン面


 

 『朝雲』という週刊紙がある。報道は防衛省、自衛隊に特化しているから、機関紙とみられがちだが、そうではない。言うならば準機関紙だ。大震災発生後、紙面の大半が東北3県での自衛隊の活動に割かれたのは当然だろう。が、一般紙の筆致とは大きく異なる。一般紙には被災地での自衛隊の活動、米軍の「トモダチ」作戦での日米提携への感動的驚嘆調が濃厚だったが、『朝雲』にはそれがない。事実の記述に徹している。

≪正気とは思えぬ自衛隊投入率≫

官邸の意向で陸海空の自衛隊は総定員約23万のうち10万6千を約2カ月間、救援活動に投入した。正気の沙汰とは思えぬ高い投入率だ。任務は減らないのに近年の自衛官定員の削減で仕事過剰気味の自衛隊にとり、やり繰りは困難を極めた。が、自衛隊のぼやきは『朝雲』紙面には全く登場しなかった。ただ、官邸と自衛隊の間に立つ北沢俊美防衛相が4月下旬以降、記者会見で他の「本来任務」との兼ね合いで災害派遣人員の「減勢」の必要を仄(ほの)めかした。

警察、消防、海上保安庁の動員ぶりにも見るべきものがあったが、程度と仕事内容において自衛隊は一頭地を抜いた。それにしても被災の性質と規模に照らせば、国と地方機関が持つこれら人的対応手段で十分でないことは明白だった。足りないマンパワーは、幾多のNPO(非営利組織)の呼び掛けに応じたボランティアにより、かなりの程度満たされた。実際、16年前の阪神・淡路大震災以後の国民各層に見られるボランティア関心の覚醒は注目に値する。それは高く評価されるべきだ。

≪ボランティア活用には限界≫

だが、問題もある。第1、ボランティアには集散むらが小さくない。第2、長期性の保証がない。第3、ボランティア投入の計画化も困難だ。現に大型連休後、ボランティアの不足を嘆く声があちこちで上がった。今回のような超大型で複合的な災害を経験すると、必要、適切かつ迅速な対策実行のマンパワーとして、国と地方が保有する公的手段とボランティアの合算だけでは不足することを社会は実感したと言うべきだろう。

日本は民間役務制の導入を真剣に考える必要がある。略して「民役」と呼ぼう。「民」とは「シビル」の意味だから、「兵役」(ミリタリー・サービス)ではない。国を存続させるため国民男子に「兵役」を課する国家は今でも少なくない。韓国、北朝鮮、中国、ロシアなど西方の諸隣国はいずれもそれだ。だが、近代国家として兵役制を当然視してきた欧州の先進民主主義諸国は今日、競うように志願兵制重視に傾斜、「兵役」「民役」併用制が多い。成年男子にいずれかを選択させるのだ。これは何を教えているか。

国は国民の安全に責任を持つが、打ち出の小槌(こづち)を持つわけではないから、国民の貢献なしではこの責任を果たせない。国民の貢献の象徴が「兵役」だったのだが、戦争形態の変化と兵器体系の高度化が徴兵制軍隊を時代遅れにした。必要なのはプロフェッショナル兵力なのだ。他面、国が国民の福祉に責任を問われる度合いが高まった。この責任を果たすにも国は国民の貢献を必要とする。税負担が国民の貢献の象徴だったが、社会の進展に連れ他種の貢献が必要となった。マンパワーとしての国民の貢献、つまり「民役」がそれだ。必要度の点で「兵役」は後退、「民役」は不可欠となった。

≪兵役沈んで民役浮かぶ欧州≫

多くの先進民主主義諸国で「民役」なしでは国は、社会は、もたないと考えられている。日本で最も知られているのは、邦訳もある冷戦期スイスの「民間防衛」(今日ではそれはかなり変貌)だが、教育立国のフィンランドの例はもっと徹底している。同国は現在、「兵役」「民役」選択制を採っているが、両役を拒否する成年を待ち受けているのは監獄である。

自衛隊は、兵器体系の高度化に対応できるプロフェッショナル兵力だ。時代適合的なこの兵制は堅持すべきである。だが、兵役制に絶縁した戦後日本で国は安全と福祉を求める国民に対し、その責任を果たすから国民もマンパワーとして、つまり「民役」をもって国に貢献してくれとの説得を断念してきた。欧州の先進民主主義国は「それで国がもつの?」と訝(いぶか)るだろう。今回、ボランティアは活躍したけれども、被災地救援の遅れともたつきが戦後日本の積年の手抜かりを、白日の下に曝した。

11年前、森喜朗政権期の教育改革国民会議で青少年の奉仕活動の義務化に関する曽野綾子提案が議論された。結局、それは実らなかった。私の考える民役制導入構想はこの提案に似ている。が、提案理由には差がある。曽野案はもっぱら初中等教育改革の見地に立っていた。この見地は重要だし、私はいまも賛同している。だが今日、教育改革の見地だけでは不十分である。当時は表面化していなかったこの国の社会工学上の欠陥が今回、露呈したからだ。

東日本大震災後の日本に必要なのは、復旧、復興よりも新生である。そのために民役制導入という新しい社会工学が必要なのだ。(させ まさもり)

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