2011年05月

菅首相はオバマ大統領との会談でアメリカが主体となるTPPへの参加交渉への前向きな態度を改めて表明しました。
 
しかしその直前には中国と韓国とのFTA交渉への意欲を示しています。
この自由貿易協定構想は明らかにアメリカを排しています。
 
あっちにも、こっちにもよい顔をみせたいだけなのか。
 
菅首相の「言明」はもうまともに受け止めて、その意味を考える対象という領域を越えてしまったのでしょうか。
 
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中国、日本に揺さぶり FTA交渉、共同研究1年前倒し
2011年05月25日 産経新聞 東京朝刊 経済面


 

 米国が主導する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の拡大交渉が進展する中、中国が日本に揺さぶりをかけ始めた。日中韓3カ国による自由貿易協定(FTA)に積極的な姿勢を示し、TPP参加を決められない日本に誘い水をちらつかせる。日本はTPPに軸足を置きつつ日中韓FTAも視野に入れる両にらみの構えだが、農業問題を抱える中、どちらの交渉からも取り残される懸念もある。

「中国が本気で日韓に市場を開くかは疑問だ」

経済産業省幹部は、22日の日中韓首脳会合でみせた中国の“心変わり”に不信感を抱いている。首脳会合では、日中韓FTA交渉の準備段階となる共同研究について1年前倒しして今年中に終えることで合意。中国が前向きな姿勢を示したことが合意につながった。

これまでも中国は、東南アジア諸国連合(ASEAN)に日中韓を加えた枠組みなどを重視。だが、自国産業保護のため外資系企業の国内投資などを規制している中国が、本気で市場を開放するとみる向きはほとんどなかった。事実、中国は主要な工業国とは一切FTAを結んでいない。

それが一転、日中韓の連携に動いた背景にあるのがTPPだ。米国やオーストラリアなどTPP拡大交渉に参加する9カ国は19日の閣僚級会合で、11月までに大枠合意することで一致。世界2位の経済大国である中国を外したTPP交渉は大きく進もうとしている。

経産省幹部は「中国はTPP交渉に参加していない日韓を取り込めば、日韓が中国を重視していると国際社会にアピールできる。TPP陣営にくさびを打ち込む政治的な意味合いが大きい」と分析。同時に「各国からTPP参加の決断を求められているのに決められない日本」(政府関係者)を見透かした揺さぶりとも受け止められている。

日本では東日本大震災後、TPPで打撃を受ける農業支援の論議が事実上停止。交渉参加の判断時期を6月から11月に先送りすることを決めたばかりだ。

今のところ、日本政府はTPPを最優先としつつ日中韓FTAの研究も進める方針。両方を追求して交渉条件を優位にする思惑があるが、政府内では「農業で迷走する現状ではどちらも進められない心配もある」との冷ややかな声が漏れる。

浦田秀次郎・早稲田大学大学院教授は「TPPを意識する中国に対して、日本が積極的に経済連携を働きかけるぐらいの戦略を持つべきだ」と話している。

オバマ大統領は中東問題では手を焼いてきました。というよりも、歴代の大統領よりも後退して、様子をみるというふうでした。リビアに対しては消極的な姿勢ながらも武力の支援を反政府勢力に送りました。しかしオバマ大統領が非難したリビアのカダフィ政権はなお健在です。

 

オバマ大統領はまたその一方でイスラエルには従来の政権にない厳しい態度をとっています。 パレスチナ側への傾斜が顕著です。

 

そのうえでアラブ各国で起きている現政権への反抗をどうみるか。

その反政府活動の実情はもちろん国によって異なります。

オバマ政権もとまどっているようです。、

 

このへんのアラブの動きとアメリカの対応について気鋭の日本人学者が論評をしています。

 

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【正論】東京大学准教授・池内恵 中東の尊厳と自由語った大統領 


 

 

 

 ≪ビンラーディン殺害で区切り≫

 オバマ米大統領がこの19日に国務省で行った演説は、急激に進行する中東の政治と社会変動に対する、米国の姿勢を再定義するものだった。

チュニジアとエ ジプトの政権崩壊に始まり、リビア、イエメン、シリア、バーレーンなどで政権の崩壊や動揺が急速に進む。これに米国がどう対処していくのか。演説は、オバ マ政権としての現状認識と、新たな認識に基づいた中東政策の理念原則や基準を示したものである。

 

 国務省を演説の場所に選んだのは意味深い。2001年の9・11(米中枢同時テロ)以来、テロ組織の壊滅を最重要の課題の一つとして掲げ、軍や特殊部隊 による作戦を軸にして行ってきた対中東・南アジア政策に一区切りをつけ、経済支援や市民社会支援を含む外交に軸足を戻すことを宣言したものだからだ。

 

 その意味で、米国海軍特殊部隊が5月1日(米時間)に国際テロ組織アルカーイダの指導者、ウサマ・ビンラーディンを殺害したことは、米国の中東政策に大 きな影響を及ぼしていくだろう。ビンラーディンの殺害によって、各国のアルカーイダ系の諸組織の活動を終結させられるとは限らないが、米国の政策として は、「対テロ戦争」に区切りをつけて、アフガニスタンからの撤退を進められる。それによって余力のできる軍事力を背景にすることで、米国の中東諸国への外 交的働きかけは、より実効性の高いものになるであろう。

 

 興味深いことに、米国の圧力が弱まっていた中東で勃興したのは、反米主義ではなく、反米感情を巧みに操作してきた各国の政権に対する、国民からの抗議行動だった。

 

 各国で「大規模デモ」の勃発により、これまで抑圧されて口を閉ざしてきた国民が意思を表明するようになったことで、各国が近代国家形成の過程で掲げてきた反米イデオロギーを軸にした正統化理念の根拠は失われた。

 

 ≪アラブの春は米理念の好機≫

 オバマ大統領は演説で「尊厳」というキーワードを取り入れて、大規模デモで掲げられたアラブ諸国民の希求に歩み寄った。各国の政権が揺らぎ、長期的な存 続が不確かで、大幅な改革なしには生き残れないとみられる現在、米国は各国の政権との関係を迂回(うかい)して、直接、国民との関係をつなぎ直そうとして いる。

 

 米国の従来の中東政策では、米国の中東における国益の柱は、(1)国際テロリズムの掃討(2)石油の国際市場への安定供給(3)イスラエルの安全保障- というものだった。オバマ大統領は今後も、これらの国益を追求し続けると述べたが、同時に、狭い国益だけを追求することが、米国への疑念をもたらしてきた と認めた。そして、中東諸国の内側から体制変革の声が上がるようになった現在の状況を、国益への脅威としてではなく、米国の理念を広げる好機としてとらえ ている。

 

 オバマ大統領は演説で、アラブ諸国の政権に「言論の自由、平和的な集会の自由、宗教の自由、法の下での男女の平等、指導者を選ぶ権利」を認めるよう促し た。剥(む)き出しの暴力で政治活動を封じ、翼賛メディアの言論で政権の正統性を確保してきた、抑圧的なアラブ諸国の政権にとって、これらの普遍的な権利 を実現せよと言われたことは、ほとんど退場を宣告されたに等しい。これらは「お題目」ではなく、現実政治の枢要な課題なのである。

 

 ≪米政策変化に取り残されるな≫

 そして、「中東全域の改革を支援し、民主主義への移行を支援することが、米国の政策となる」とオバマ大統領は宣言した。この民主主義への移行プロセスに いち早く進んだチュニジアとエジプトに、経済支援によって「ご褒美」を与える、というのが新たな中東政策の骨格でもある。

 もちろん、道筋は平坦(へいたん)ではない。「短期的な利益」と「長期的なビジョン」が、「完全には合致しない時もあるだろう」と大統領は認める。例え ば、米国が海軍第5艦隊の本拠地にしているバーレーンについては、デモへの政権の対応を批判しつつ、改革を求めるにとどめた。長期的な不安定化が危惧され る、石油大国のサウジアラビアについては、支持も批判もせず、一言も触れなかった。あまりに重大であるがゆえに、現段階でのいかなる言及も避けたといえよ う。

 オバマ政権は当面は、米国の死活的な利益とはいえず、その存在を消極的に黙認してきたシリアのアサド政権の人権侵害にどう対処するか迫られることにな る。反米であれ親米であれ、「政権」との関係を定めることで成り立ってきた米国の中東政策が、中東域内社会の各層が新しいメディアを手にして発言力を増す 新たな状況を見極めて変わっていく。中東の激変を基軸に、国際政治の理念と構造の変化も進む。

 震災後、いっそう内向きになった日本が、取り残されないことを祈るばかりだ。(いけうち さとし)

「菅首相は早く辞任すればするほど、よい」

「危機の際にはもっと強いリーダーが必要だ」

「菅首相は政策を実行できない」

 

小沢一郎氏が菅政権打倒をここまで明確に表明しました。

 

アメリカの大手紙ウォールストリート・ジャーナルのインタビューに応じて語ったのです。小沢氏の言葉は当然、日本語で語った内容を英語にして報じられました。その英訳をここではまた日本語に戻すのですから、最初に小沢氏が実際に述べた言葉とはややニュアンスなどが異なる可能性もあります。

 

さてこの新聞報道に従って、小沢一郎氏が菅直人首相について述べた部分を以下に紹介します。

 

「菅首相は辞任して、日本の新しい政治の時代への道を開くべきだ」

「大震災と津波から2ヵ月以上が過ぎても、菅政権は効果のある救済策を講じる能力がないため、日本国民の間には心配と不満とが高まっている。首相が政策を実行できないのだから、権力の座に留まっていることは無意味だ」

「菅首相は一刻も早く辞任すればするほど、よい」

「日本の困難のときには、苦難に耐えられる首相、苦難に耐えられる政権を選ぶ必要がある」

 

 

まあ菅首相について直接に小沢氏が述べた言葉は以上のようです。

 

さてこの報道で小沢氏は菅政権打倒の宣言を対外的にも発信したことになります。その宣言にどれほどの議員たちがついていくのか。

 

小沢氏が日本国内の一部にある「国難の際は現政権の下での団結を保つべきだ」という議論を真っ向から否定したことは明白です。この結果、民主党という政権党がますます政党ではないことを露呈したともいえましょう。

 

 原子力発電をめぐる論議が盛んです。

 

 当然でしょう。

 

 そうした論議のなかでも、葛西敬之氏の原発必要論はきわめて明快です。原発をすべてやめれば、日本経済が決定的にダメになる、というのです。

http://www.takiginoh.jp/archives/2007/01/images/s1176183130.jpg

 

 葛西氏はJR東海の経営の驚異的な手腕でならした人ですが、政治や経済の全般に関しての鋭い論客としても知られています。新幹線の中国への輸出の問題では早くから反対論を表明して、先見の明を証明しました。

 

その葛西氏の原発不可欠論を紹介します。

【朝刊 1面】


【「改革」あれこれ】JR東海会長・葛西敬之 原発継続しか活路はない


 

 津波による福島第1原発の被災により日本のエネルギー政策は最後通告を突きつけられた形だ。

 

 一方では、現場の映像や風説に恐慌を来した人々が原発反対を唱え、定期点検を終了した原子炉の運転が再開できない状況である。全国54基の原発プラント はこれまで総発電量の約30%を発電してきたが、既に7基がこのような形で運転停止となり、このままでは1年余りのうちにすべて停止してしまうだろう。

 

 もう一方には地震・津波・原発事故で損害を受けた人々を支援し、被災地域を復興するという大事業があるが、そのためには日本経済が力強く活力に満ちていなければならない。経済の血液循環とも言うべき電力の安定供給を瞬時も途切れさせてはならない。

 

 相剋(そうこく)する2つの現実のはざまで日本はまさに進退窮まってみえる。

 

 原発停止を求める人々は火力発電や再生可能エネルギーの活用に活路を求めよと主張する。しかし質・量・コストいずれの点から見ても一部補完以上の期待はできない。

 

 今日の原発は50年に亘(わた)る関係者の営々たる努力と数十兆円に上る設備投資の結晶であり、それを簡単に代替できる筈(はず)がない。原発を止めれ ば電力供給の不安定化と電力単価の高騰を招き、それに続く企業の業績悪化、設備投資・雇用の縮小、経済の停滞・空洞化、税収の減少、財政の悪化、国債の信 用崩壊などの連鎖は日本経済の致命傷となりかねない。

 

 これまで原子力発電はクリーンで低コストの自前電力を確保する国策の切り札として推進されてきた。原子力を利用する以上、リスクを承知のうえで、それを 克服・制御する国民的な覚悟が必要である。国はそれを正面から問うべきだった。しかしながら見たくない現実には目をつむり、考えたくない困難には心を閉ざ す敗戦後の日本の弊風(へいふう)の中でリスクはできるだけ当事者の腹中に収め、必要性と利用価値のみをアピールする形でしか進め得なかった。今回の災害 がもたらした原発危機の淵源(えんげん)はここに発する。

 

 しかしすぐにでも現場の安全対策に生かせる貴重な教訓も得られた。それは初動における迅速な決断と果断な処置が被害を最小限に食い止める鍵を握るという ことだ。緊急時の責任体制と対処方法を明確に定め必要な資機材を適切に配置し、迅速な動員体制を整え、日常の訓練により十分に習熟しておけば同じ災害に直 面しても今回の事態は避けられる。

 

 日本は今、原子力利用の前提として固めておくべきだった覚悟を逃げようのない形で問い直されているのだが、冷静に現実を見れば結論は自明である。今回得られた教訓を生かして即応体制を強化しつつ、腹を据えてこれまで通り原子力を利用し続ける以外に日本の活路はない。

 

 政府は稼働できる原発をすべて稼働させて電力の安定供給を堅持する方針を宣言し、政府の責任で速やかに稼働させるべきだ。今やこの一点に国の存亡がか かっていると言っても過言ではない。本件については与党も野党もない。日本の政治家として、声を一つにして国民に語りかけ、日本経済の血液循環である電力 の安定供給を守り抜いてほしい。この一案件だけに限った挙国一致内閣があっても良いのではないかと思う。(かさい よしゆき)

中学生向けの平成24年度使用開始教科書「新しい日本の歴史」に目を通す機会を得ました。執筆と監修は「歴史教科書編集会議」です。座長は東京大学名誉教授の伊藤隆氏、その他、八木秀次、渡辺利夫、岡崎久彦各氏らが名を連ねています。育鵬社版です。

 

表紙には主題とともに、「こんな教科書で学びたい」と明記されています。

 

これまでいわゆる歴史教科書問題でよく論議の的となってきた日本と中国の戦争の部分についての記述をまず読んでみました。

 

 

まず「日中戦争」という部分にはタイトルの下に(支那事変)と記されています。これも日本の公式の呼称で長年、そう呼ばれてきたのですから、そのまま歴史上の名称を紹介することも自然に思えます。

 

そしてその章に「満州国の発展」「二・二六事件」「日中戦争」などという項目があります。

 

その「日中戦争」という項には以下の記述がありました。

 

「日本は義和団事件のあと、条約により北京周辺に5000人の軍を駐屯させていました。1937(昭和12)年7月、北京郊外の盧溝橋付近で日本軍は何者からに銃撃を加えられ、中国側との撃ち合いとなりました(盧溝橋事件)。これに対して日本政府は不拡大方針をとる一方で、兵力の増強を決定しました。その後も日本軍と国民政府軍との戦闘は終わらず、8月には日本軍将校殺害をきっかけに上海にも戦闘が拡大しました。ここにいたって日本政府は不拡大方針を撤回し、日本と中国は全面戦争に突入していきました(日中戦争)。日本軍は12月に首都・南京を占領しましたが、蒋介石は奥地の重慶に首都を移し、徹底抗戦を続けたため、長期戦に突入しました。

 

 その間、何度か和平交渉が行われましたが、日本軍も、米ソなどの援助を得ていた蒋介石も、強硬な姿勢を崩さず、和平にはいたりませんでした。中国戦線の長期化により、わが国の国力は次第に低下していきました」

 

以上ですが、上記の「南京を占領」という部分に注釈のマークがあり、その注釈として以下の記述が本文の脇にあります。

 

「このとき、日本軍によって、中国の軍民に多数の死傷者が出た(南京事件)。この事件の犠牲者数なその実態については、さまざまな見解があり、今日でも論争が続いている」

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さて私は全体として適切な歴史の記述だと思います。

歴史の教えではどんな記述でも異論が出ることは当然ですが、これまでの教科書の主流の「南京大虐殺」「30万人を殺す」式のいきなりの断定がないだけでも、歓迎すべき前進でしょう。

 

 

 

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