2011年08月

菅直人首相の辞任表明を受けて、産経新聞の社説が興味ある論評を展開しています。

 

菅さんがひっこんでも、しょせんは「政権たらい回し」だというのです。

 

「たらい回し」とは、なんとなく懐かしい言葉です。

 

トラブルの真の原因は単に菅直人だけではない、というのがこの主張の趣旨だといえます。

 

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【主張】菅首相退陣表明 これ以上、日本を壊すな 民主党政権の限界は明白だ

 

 思いつきによる場当たり的な政権運営で、日本を壊し続けた菅直人首相が、ようやく辞任を正式表明した。

 東日本大震災という未曽有の国難にあっても国の総力を結集する態勢を構築できず、最高指導者としての責任を放棄し続けた。事実上の退陣表明から3カ月近く、政治空白をさらに拡大したことは極めて遺憾である。

 だが、菅首相が代われば日本が立ち直るわけではない。問題の本質は、民主党自体が政権担当能力を欠いていることにある。子ども手当などのバラマキ政策を、財源のあてもなしに、実現できるが如(ごと)く語ってきたことが象徴する。

 ◆空洞化を加速させた

 国民の信頼を失った民主党政権はもはや限界であり、これ以上、日本を壊すことは許されない。

 29日に新代表が選出されるが、政権をたらい回しすることは到底認めがたい。

 菅首相は退陣挨拶で、「与えられた条件の中でやるべきことはやった」と述べた。脱原発依存などに言及していたが、失政を認める反省の弁が聞きたかった。

 日本破壊の代表例が思いつきによる「脱原発」政策である。エネルギーという国家の屋台骨を支える根幹政策であるにもかかわらず、事前のすり合わせなしに 唐突に方針転換した。原発の再稼働を認めぬことで、来春には全電力の約3割を支えてきた原子力による発電量がゼロになりかねず、このままでは、日本はエネ ルギー最貧国に転落してしまう。

 電力危機が全国に広がり、産業の空洞化も止まらない。超円高や法人税の高さも加わり、大手メーカーの7割近くが海外進出を考えているという。雇用悪化や消費低迷につながり、日本経済に大きなダメージを与えている。

 日本を壊したもう一つの典型例が、今月24日の沖縄・尖閣諸島周辺における中国漁業監視船の領海侵犯での対応だ。首相自ら抗議のメッセージを発することはなかった。国を守るという意識の欠落が、中国の行動をエスカレートさせる要因となっている。

 菅内閣は昨年9月の中国漁船衝突事件でも、日中関係に配慮して、中国人船長を処分保留のまま釈放した。こうした国益を考えない外交姿勢は、日本領土を不 法占拠するロシアや韓国などにも誤ったメッセージとして伝わり、ロシアのメドベージェフ大統領による国後島上陸となった。周辺国は弱体化した日本につけ込 んでくるのである。

 菅内閣の1年3カ月は、国家観や見識がないような政治家が最高指導者の地位に就くことが、国家や国民にとっていかに「不幸」かを示すとともに、その政治家を首相の座から降ろす難しさも明確にした。

 ◆国家理念なしが問題

 民主党政権の限界は、民主党そのものが政権政党としての体をなしていないことにある。民主党政権がこのまま続けば、同じ過ちが繰り返されるだけである。

 政権担当能力の欠如は、バラマキ政策で有権者の歓心を買っている点に表れている。「無駄を排除することで財源を捻出する」と大見えを切ったが、結局、子ども手当をはじめ多くの主要政策の廃止、修正に追い込まれた。

 社会保障と税の一体改革では、巨費を要する最低保障年金を事実上、棚上げする努力の跡も見られたが、最終局面で負担増を嫌う声が続出し、消費税率引き上 げ時期の表現を曖昧にするなど、切り込み不足に終わった。民主党のバラマキ体質は極めて無責任で、政権政党としての信頼を損なった。

 その場しのぎの政権運営が続くのは、民主党に意見を積み上げていくシステムも、最終的に集約する意思決定機関もないためだ。いったんは決まったかにみえる政策が党内の横やりで簡単にひっくり返される。

 そもそも、党の綱領すらなく、日本をどういう国にするのかという理念もない。基本政策についても党の分裂を恐れてまとめきれない。こうした曖昧な姿勢が政策遂行に疑念を抱かせ、国際社会からの信頼を失わせる。

 「政治主導」のはき違えも大きい。意見を具申しようとする官僚を怒鳴り散らすようでは、官僚機構は全く機能しない。

 こうした欠陥を抱えている民主党政権で国難を乗り切れるかどうかを国民に問うべきである。

もうこれならまちがいはないでしょう。

 

菅直人氏が総理大臣のポストを辞任します。

 

長い混迷と麻痺でした。

 

しかし菅氏の北朝鮮疑惑献金はなお厳しく追及されるべきです。

 

でも長いイライラの時代の連続でした。

 

みなさん、それぞれに感慨、感想があることでしょう。

 野田佳彦氏が期せずして提起した日本の公人たちの靖国神社参拝について、アメリカの識者の見解はどうか。紹介を続けます。

 

日本ビジネスプレスの古森義久の連載コラム「国際激流と日本」からの転載です。 

 

なお原文へのリンクは以下です。             http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/19719 

 

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/19719 

        

 

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 台湾の李登輝元総統などは日本の首相は靖国を参拝するのが当然だと主張し、自分自身が日本軍人として戦死した実兄の追悼に靖国神社に詣でている。

 

 では、米国はどうか。靖国神社には米軍との戦闘で亡くなった日本軍将兵の霊が最も多く祀られている。だから、もし日本側が外国の反応を首相の靖国参拝の是非論で最大要因と見なすならば、米国の対応は最重要となる。

 

 米国の政府は、日本の政治指導者の靖国参拝には一切、不干渉を通してきた。特に奨励もしないが、決して反対もしない。そもそも外国の内部での自国 の戦死者の追悼というのは、その国の独自の慣行であり、外国があれこれ指示すべきことではない、という認識が基本だと言えよう。

靖国参拝は日本人自身が決めるべき内面的な課題

 米国の民間の識者の反応となると、さらに奥行きが深く、意外でさえある。日本をよく知り、日米戦争の歴史をも熟知するような学者たちが、日本の首相の靖国参拝を奨励するのである。しかも、中国のような外国が日本の首相の参拝の是非に介入することを非難するのだ。

 

 その顕著な実例はジョージタウン大学の東アジア言語文化学部長だったケビン・ドーク教授の意見である。日本の民主主義やナショナリズムの研究を専門とする同教授は、「日本の首相が靖国神社に参拝するのは当然」と述べるのだ。

 

 小泉政権当時の、日本の首相の靖国参拝を中国が非難することに対して同教授は「日本の首相よ、靖国参拝をもっと頻繁に」と激励したのだった。

 

 ドーク教授の日本の新聞への寄稿には以下のような記述があった。

 

 「靖国参拝は日本国民にとっては祖国を守るために戦没した先人への心情にかかわる微妙な問題であり、あくまで日本国民自身が決める内面的な課題で ある。特に戦死者の霊をどうねぎらうかは日本の国民や指導者があくまで独自に決めることであり、他国が干渉すべき案件ではない。他者の尊厳への敬意の表明 は民主主義社会での個人の権利や市民の自由である。そこには政治的な外交的な意味はない」

(つづく)

 野田佳彦氏の言明で再浮上した靖国神社参拝問題をアメリカ側の識者がどうみるか。

 

その続きです。

 

【靖国参拝の考察】アーサー・ウォルドロン氏(下)
2006年07月15日 産経新聞 東京朝刊 国際面

 ■覇権確立 核心は中国の野望

日中両国間のいわゆる靖国問題について私はまず個人的な家庭環境などからの心情を述べたが、長年、中国について研究し、日本をも考察してきた学者としての分析を説明したい。

中国は日本に対し優位に立ち、日本の行動を管理できるような、一種の支配権を確立することを一貫して求めてきた。日本がとる行動、とろうとする言動のうち 中国側が好ましくないとみなす部分に対し拒否権を行使できる実質上の権利を保持したいということである。日本の政治指導者の靖国神社参拝に対し中国が反対 を表明するのは、実はこの支配権確立への願望の一手段なのだ。

つまり中国が自らの欲するままに日本を動かせるようにするという目的に とって靖国問題というのはきわめて有用で都合のよい手段なのである。だからもし靖国問題が存在しなくても、あるいはたとえ解消されたとしても、中国側は日 本に対する優位性を保つためになにか別の問題を探し出し、非難の材料に使ってくるだろう。日本側の政治指導者が一定の行動をとろうと欲しながらも、中国か らの反応を恐れて、その行動をとらないようになってしまう、という状態が保たれることを中国側は求めるのだ。

日本の国民が以上の点を誤 解してしまうことを私は非常に恐れる。すでに日本側の考察者の多くが混乱した認識を抱いているようだ。靖国神社に対する中国の抗議をそのまま受けいれて、 戦没者追悼のための新しい神社を設けるとか、国立墓地などの新しい施設を建てれば、いわゆる靖国問題は消えてなくなり、中国側の抗議もなくなってしまうと 考えるほど、むなしいことはない。これほど間違った認識はない。日中関係が緊迫し、悪化する真の原因は靖国問題ではないからだ。

日本の 首相が将来の靖国参拝をやめると言明してみても、中国は「それでは閣僚が靖国に参拝してはならない。国会議員も参拝すべきではない」というような要求をぶ つけてくるだろうし、靖国と無関係の尖閣諸島の領有権の放棄とか、東シナ海でのエネルギー資源の権利の放棄とか、新たな要求や抗議を打ち出してくるだろ う。

だから日本としては主権や独立、行動の自由を保ちたいと願うのならば、靖国問題で中国の命ずるとおりにはならず、自国独自の判断と 決定を保たねばならない。繰り返すが、日中間でいま緊迫を引き起こしているようにみえる問題の核心は靖国参拝などではまったくない。事の核心は日本に対し 覇権を確立したいという中国の野望なのだ。

この点の中国の意図を私は先に日本指導層への懲戒あるいは調教だと表現したが、まさに小さな 子供やペットの動物に厳しいしつけをして、なにかを教えこむことに似ている。例えは適切でないが、自分の家のイヌが客間のソファに上がってしかたがないの をやめさせようとする。ソファに上がるたびに、イヌをたたいて、それがよくないことだと教えこむ。ソファに上がらなくなるまで、その仕置きを繰り返す。ま さに調教なのだ。

現実に中国政府は自分たちが好まない行動をとる外国の機関や人間に対しては個人のレベルにまで激しい圧力をかけ、自分 たちに従順にさせるという慣行を一貫して続けてきた。その中国政府の日本の首相の靖国参拝に対する態度の理不尽さは、もし小泉首相が胡錦濤主席に「あなた は天安門に安置された毛沢東氏の遺体に定期的に弔意を表しにいくが、毛氏は旧日本軍が殺したよりもずっと数多くの中国人を殺したから、弔意の表明はその殺 戮(さつりく)を正当化することになる」と告げた場合に予想される中国側の反応を想像すれば、よくわかるだろう。中国側はそんな通告は一蹴(いっしゅう) し、爆発的な怒りさえ示すだろう。

中国政府が過去に日本の首相の靖国参拝をまったく問題にしない時代があった。日本の侵略さえ非難しな い場合もあったのだ。毛沢東氏が田中角栄氏と会ったとき、田中氏が日本軍の中国での侵略や残虐行為への謝罪を表明しようとすると、毛氏が「日本軍が中国で 戦わなかったら、私は政権を握ることはできなかった」と、たしなめたという話は広く知られている。

中国が日本との関係を改善したいと思えば、靖国参拝への非難をやめればよいのだ。改善したくないから非難をやめないのだろう。中国が対日関係を改善したいと思わない限り、日本側が靖国問題でいくら譲歩しても、また新たな難題を突きつけられるだけなのである。(談)



【プロフィル】アーサー・ウォルドロン

1981年ハーバード大学でアジア研究により博士号取得。ブラウン大学や海軍大学での教授を経て米国防総省顧問、米中経済安保調査委員会委員などを歴任。97年からペンシルベニア大学教授。著書に「中国の転換期」「中国の万里の長城」など。

 リビア情勢の急展開が全世界の耳目を集めています。

 

 国際社会の異端者リーダーだったカダフィ大佐もついに命運が尽きたようです。

 

 ではこのカダフィ政権の崩壊が中東全体になにを意味するのか。

 

 とくにアメリカにとってはリビアの新情勢はどんなインパクトを受けるのか、あるいはこれから与えていくことになるのか。

 

 解説記事を書きました。

 

朝刊 国際


米の中東戦略、再編へ 「カダフィ後」巨大な不安定要因


 

 米国にとってリビアのカダフィ政権の崩壊は、中東での積年の反米の旗手の退場を意味する点で中東政策の前向きな再編成に画期的な門戸を開くこととなろ う。だがその一方、カダフィ大佐なき後のリビアの政治混乱は、中東の欧米寄り諸国の政情激変やオバマ政権の指導力発揮のためらいと絡み合って、地域全体の 不安定を増し、米国の立場を苦しくする危険も指摘される。

 

 ◆反米主義者の退場

 1969年以来、42年間もリビアの権力を独占したカダフィ大佐の失脚は、米国にとって中東全域で最も長く最も目立った反米主義者の退場となる。

 

 米国・リビア間では大きな衝突だけでも、81年のシドラ湾事件での両国軍の戦闘機同士の戦いのほか、86年のベルリンのディスコでのリビア工作員による 対米兵テロへの報復としての米軍のカダフィ大佐の宿舎爆撃や、88年のリビア工作員による米国パンナム航空旅客機爆破があげられる。

 

 カダフィ大佐は国家元首に就任以来、一貫して反米の言動をとってきたが、2001年の米中枢同時テロ以降、国際テロへの反対を表明したほか、03年には 当時のブッシュ大統領の勧めに応じて核兵器と化学兵器の開発を停止した。この結果、06年にはリビアは米国とやっと外交関係を樹立した。

 

 だがなおカダフィ大佐は米国への反抗スタンスを消さず、今回のリビアの反政権の決起に対しても米国の再三の反対を無視して冷酷な軍事弾圧に出た。米側で も「カダフィは全世界でも最も嫌悪すべき独裁者だ」(ブッシュ政権で中東政策を担当したポール・ウォルフォウィッツ氏)という酷評は変わっていなかった。

 

 今回の中東情勢の激変ではエジプト、チュニジアなど親米欧路線国家の政権崩壊がほとんどだったが、なお反米姿勢を崩しきっていなかったカダフィ政権の崩 壊は、オバマ政権にとって中東情勢への取り組みを有利にする側面もある。カダフィ体制崩壊は、「アラブの春」が米国に支持される政権だけの破綻を意味しな いことを証したからだ。

 

 ◆パートナー探し困難

 その一方、リビアはその反米の姿勢のために米国との絆は細く、米国にとってはカダフィ後のリビア情勢へのかかわりは難しい。米国の著名な中東専門家フア ド・アジャミ氏は、「カダフィ大佐は長年の独裁統治の間に、潜在的な野党勢力と市民社会とを抹殺してしまったために、米国は民主主義的なパートナーをみつ けにくい」と論評する。

 

 今年冒頭からのリビアの反政権勢力の決起に対し、オバマ政権は物理的な支援をためらった。北大西洋条約機構(NATO)の反カダフィ勢力への軍事支援でも先頭に立つことを拒み、米国内では「背後にいて先導を装う偽善リーダーシップ」と皮肉られた。

 

 反カダフィ勢力の公式な承認もこの7月なかばまで遅れた。こうした諸要因が米国に新生リビアへの着実なテコや影響力を持つことを阻むことも予測される。

  

 リビアの新勢力も反カダフィでは明白でも、その実態はまだ不明な部分が多い。だから民主主義勢力の勝利として直線的な歓迎もためらわれる。カダフィ後のリビアが米国の中東政策への巨大な不安定要因として、のしかかりうるわけだ。

 

 混乱や空白が対外的によりオープンで穏健な新政権の登場をも可能とする一方、エジプトなどで米国傾斜の政権を倒した新潮流がイスラム原理主義の影響を受 けやすいことを証したように、リビアでも過激な新勢力が権力を握ることも考えられるわけである。(ワシントン 古森義久)

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