2011年12月

 金正恩とはどんな人物なのか。

 

その政権はどんな体質となり、どんな対外姿勢をとるのか。

 

アメリカ側の見方の紹介です。

 

日本ビジネスプレスからの転載、この分はこれで終わりです。

 

原文へのリンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/33538

                 

http://img2.blogs.yahoo.co.jp/ybi/1/50/9e/socalc21/folder/40743/img_40743_8559991_0?1286727665

 

 

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異様な独裁に突き進む可能性も

 米国が注目する第3の点は、金正恩氏が新最高リーダーとしてどのような対外政策をとるか、である。

 

 北朝鮮は最近、韓国の哨戒艇を撃沈し、韓国領の島に砲撃を加えるなど、危険な軍事挑発を繰り返してきた。その一方で米国に対しては食糧援助と引き換えに核問題での6カ国協議に応じるような軟化の兆しをも見せてきたという。

 

 こうした北朝鮮の錯綜した対外政策は、今後、金正恩政権下ではどうなるのだろうか。米国側の関心は当然ながらきわめて強い。

 

 その点についてヘリテージ財団の朝鮮問題の専門家ブルース・クリングナー氏は以下のような見解を発表した。同氏はCIA(中央情報局)で長年、朝鮮問題を担当したベテラン研究者である。

 

 「金正恩氏は、当面は父や祖父が採った政策の基本を忠実に継承しようと努めざるを得ないだろう。その政策とは、異様なほどの独裁の下でのナショナリズムの高揚と軍事重視が主体となる。軍事面では核兵器保有が主要目的となる。

 

 一方、正恩氏はスイスで教育を受けたことや若いことから、なにか新しい改革や刷新の発想を持っているだろうという観測もある。

 

 しかし、最高指導者としての地歩を固めるには、軍部と労働党の首脳にまず依存しなければならない。軍や党の首脳は当然、現状維持の守旧派だ。正恩氏は守旧派の意向に沿うだけでなく、そこからの強い支持を得るために、米国や韓国のような『外部の脅威』に対して、これまでよりも強硬に立ち向かう行動を 誇示するかもしれない。

 

 だが、いずれにしても当面は父親の喪に服し、政権移譲を円滑に終えるために、外交活動を事実上、凍結する公算が大きい」

 

 以上のように見てくると、米国側の今の北朝鮮への視点は大枠が明らかになると言えよう。米国はこれらの諸点の他にも、例えば、中国が北朝鮮の新体制に対してどのような態度を取るかについても、真剣なまなざしを向けている。

 

 こうした激動と混迷の中で、わが日本は北朝鮮の新たな動向をどのように見て、どのように対応すべきだろうか。(完)

 金正日総書記の死亡をアメリカはどうみるか。

 

次期の金正恩政権にはどんな特徴や問題があるのか。

http://pokke-ah.blog.ocn.ne.jp/blog/images/2010/11/15/photo_2.jpg

 

 

新政権では核兵器の開発にこれまでよりもさらに必死となり、そのペースを早めるという見方が表明されました。

 

日本ビジネスプレスの私の連載「国際激流と日本」からです。

 

原文へのリンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/33538

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 この点、国家安全保障会議のアジア部長などを務め、今はジョージタウン大学教授ともなった戦略国際研究センター(CSIS)研究員のビクター・チャ氏は次のような懐疑を表明した。

 

 「金正日氏は父親の金日成氏が1994年に死去するまでの年月、すでに後継となることが確実とされ、その間、14年も準備をすることができた。

 

 だが、正恩氏は後継と決まってからわずか3年ほどしか経っておらず、しかも国政の経験も実績もほとんどない。独自に抱える部下も少ないし、独自のイデオロギーも皆無だと言える。だから正恩氏にとっての権力の完全な掌握と保持は非常に難しい。

 

 それでも正日総書記の遺産で正恩氏を盛り立てていこうとする政権機能は作用するだろうが、個人の権力の基盤は脆弱だから、なにかちょっとした異変や過誤があると、重大な混乱も起きかねない」

核兵器開発のスピードはますます速まる?

 第2は北朝鮮の核兵器の動向である。

 

 米国歴代の政権、そして今のオバマ政権にとっても、北朝鮮の動向で何が最大の懸念かと言えば、明らかに核兵器の開発、つまり北朝鮮の核武装である。指導者交代により、核兵器開発はどうなるのだろうか。

 

 この点について、米国議会調査局で30年も朝鮮半島情勢を専門に研究したラリー・ニクシュ氏は次のように語った。

 

 「北朝鮮の核兵器開発は金正日書記の死で、これまでよりもむしろ速度を早める恐れがある。

 

 その理由として第1に、正恩氏が新リーダーとしての自分の強固さや自国の威信を誇示する必要を感じ、核兵器という父祖年来の積極戦略をぜひとも遂行したいと願うと見られることだ。

 

 第2には、新体制下では正恩氏の力不足からどうしても集団指導制の要

素が強くなり、そこでは軍部の影響力が高まると見られることだ。軍部は当然、核武装推進の急先鋒だから、その力が強まれば、核開発にもより多くの国家資源が注がれることになる。

 

 米国や韓国、日本にとっての悪夢は、北朝鮮が中距離、長距離の弾道ミサイルに核弾頭を装備する日が到来することだ。その現実性がまた一段と高まってきたと言える」

(つづく)

 http://img4.blogs.yahoo.co.jp/ybi/1/a5/91/rainbow_hhym/folder/941628/img_941628_32645442_0?1290949204

 同じアジアでも台湾の話題です。

 

最近、健康が気づかれていた台湾の李登輝元総統について国際教養大学学長の中嶋嶺雄氏が一文を発表しました。

 

日本にとって貴重であり、意味の深い李登輝氏がなお元気であること、心強い限りです。

http://mypaper.pchome.com.tw/show/article/pokii/A31881

 

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【正論】国際教養大学理事長・学長、中嶋嶺雄 台湾総統選の核心にあるものは
2011年12月15日 産経新聞 東京朝刊 オピニオン面

 台湾の総統選挙まで1カ月を切った。来年1月14日の投票に向けて、現地の世論もメディアもいよいよ白熱している中で、先週、訪台する機会を得た。大腸がんの手術で入院された李登輝・元台湾総統をお見舞いするためである。

≪李登輝氏天下国家大いに論ず≫

わが国の国民、特に産経新聞読者には、李登輝さんの病状をお気遣いの方も多いと思われるので、ここで報告させていただくと、11月1日に行われた手術は6 時間半にも及んだものの大成功で、李登輝さんは半月後には退院され、化学療法や放射線治療もせずに現在、静養に専念しておられる。

間も なく満89歳と、ご高齢なので大事にしていただかなければならないが、李登輝さんは、いかにもクリスチャンらしく、「神が私にもう少し働くように救ってく れた」とおっしゃっていた。私を相手に、台湾の馬英九政権の中国傾斜への危惧や、日本の野田佳彦政権の経済政策への懸念など、話が天下国家のことに及ぶ と、相変わらずの意気軒高であられた。

そんな李登輝さんにとっての痛恨事は、11月17日の黄昭堂・元台湾独立建国連盟主席の不慮の死であった。李登輝氏が黄氏を悼んで贈られた献花には「痛失良友」とあったが、政治的立場のいかんにかかわらず、黄氏の人柄と包容力は誰もが認めるところである。

ちなみに、中国当局から台湾独立派としてしばしば批判される李登輝さんの一貫した立場は、台湾はすでに主権独立国家だというものであり、黄昭堂氏らの考え 方とは違う。だが、氏の運動には理解を示され、台湾がまだ「動員戡乱(かんらん)時期」つまり戒厳令下にあって、台湾独立運動に加わった学徒が帰台できな かったころ、李登輝さんは私に会うたびに、黄氏や許世楷氏(前台北駐日経済文化代表処代表)の消息を尋ねられた。私は黄氏とは東大大学院時代からの学友 で、私たちの「アジア・オープン・フォーラム」が2007年に李登輝ご夫妻を「奥の細道」探訪にお招きした際には、旅のお相手として黄氏に同行してもらっ た。

≪残る1カ月で中国はどう出る≫

黄氏の死は、最大野党の民主進歩党支持の「みどり陣営」にとって痛手ではあろう が、民進党総統候補の蔡英文氏は、与党の中国国民党の馬英九総統の「大英」に対して「小英」といわれながらも、かなり善戦しており、世論調査でも馬総統を 急追している。しかし、もともと国民党が強い台北市でのごく短期の滞在中に知り得た限りでは、国民党秘書長の経歴を持つ親民党の候補、宋楚瑜主席が出馬し ているにもかかわらず、やはり現職優勢のようであった。

となると、残り1カ月間に中国がどう出るのか、中台関係の将来がどうなるかが焦点であろう。

1996年の総統選挙に際しては、中国が李登輝総統の実現を阻止すべくミサイルの発射演習を行って台湾を威嚇し、これに対し、米国が2組の空母戦闘群を現 地に急派して一気に緊張が高まった。中国はよもや今回は、この台湾海峡危機の時のような出方はしないであろう。しかし、台湾との関係いかんを最大の対外戦 略に据えて軍事力、特に海軍力を増強している中国だけに予断は許さない。

その中国が、対台湾政策の根拠にしているのが、いわゆる「九二年合意」である。馬総統はこの10月、新たに中国との「平和協定」締結の構想を提起するなど中台関係の安定を図ろうとしている。

≪「九二年合意」めぐる相違≫

「九二年合意」とは、李登輝総統時代に設立された台湾側・海峡交流基金会の辜振甫代表と、中国側・海峡両岸関係協会の汪道涵代表が、92年10月に香港で 会談したときに生まれたといわれるものである。「一つの中国」では双方が一致しつつ、その解釈については、中国側があくまでも「一つの中国」だとし、台湾 側は双方で異なるとする、いわば同床異夢を容認した内容だとされている。

「九二年合意」は、民進党の陳水扁政権登場直前の2000年4月、当時の台湾・行政院大陸委員会の蘇起・主任委員(現海峡交流基金会理事)がその存在を公表している。しかし、当事者である故辜振甫氏も李登輝氏もそんな合意があったとは認めてはいない。

辜振甫氏は、台湾の経団連にも相当する工商協進会の理事長という財界の指導者として、「アジア・オープン・フォーラム」にも一貫してかかわられ、中国との 関係についても、私はその都度、氏から詳しくお話をうかがってきた。92年当時の李登輝総統は、中国との関係では前年に制定した「国家統一綱領」の実現を 課題に据えていて、中国から台湾に来た人々の親族との関係や財産、墓地などの問題を処理する92年7月の「人民関係条例」の制定に力を注ぎ、あの頃、「九 二年合意」なるものに言及されたことはなかった。

台湾の将来がわが国にとっても、アジアにとっても極めて重要であることは言うまでもない。台湾住民が、当面の経済的な利益のみならず、中台関係など外交・安全保障問題にも着目して、賢明な選択をすることを期待したい。(なかじま みねお)

 

金正日総書記が逝った後の北朝鮮はどうなるのか。

 

アメリカは当然ながら視線をこらして、みつめています。

 

北朝鮮の危険で特異な言動に最も頻繁に正面から対処してきたのは、おそらくアメリカでしょう。韓国の役割ももちろん大きいですが、北の核武装への動きなどに最も精力を注いで、反対してきたのはなんといってもアメリカです。

 

アメリカには朝鮮戦争で北朝鮮と中国を相手に死闘繰り広げた実績もあります。だからこの超大国の北朝鮮の変動への対応は、大きな意味がわるわけです。

 

そのアメリカの反応について報告を書きました。

 

日本ビジネスプレスの私の連載「国際激流と日本」からの転載です。

 

なお原文へのリンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/33538

 

 

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 北朝鮮の独裁者、金正日労働党総書記の死去が発表された。2008年夏に軽い脳卒中に襲われたとされたものの、金書記はその後、公的な場に頻繁に登場し、熱っぽい言動をみせて回復を印象づけていた。だから今回の死去の報は唐突とも受け取られた。

 http://www.falklands25.com/wp-content/uploads/2011/12/kimu3.jpg

 米国はこの北朝鮮のカルト的な最高指導者の死にどう対応するのだろう。

 

 首都ワシントンでは12月18日夜に「金正日死亡」のニュースが流れたが、翌日の主要新聞各紙はそれほどの重大ニュース扱いをするところは少な かった。テレビはかなり大きな扱いで詳しく報じたが、それでもなお天地が揺らぐような衝撃のニュースという位置づけからはほど遠かった。

 

 だが米国の政府や議会、そして研究機関の関係者たちの間では、今回の出来事は朝鮮半島の情勢はもちろん東アジア全体の地政構図を根幹から変えかねない重大異変として受け止められたと言える。

  

 その結果、今後の朝鮮情勢の読みや米国の対応のあり方が各所で熱心に論じられた。朝鮮半島の現実を知る人であればあるほど、深刻に受け取る出来事が金正日書記の死だと言えるようだ。

  

 ヒラリー・クリントン国務長官はたまたま12月19日にワシントンを訪問中の日本の玄葉光一郎外務大臣との共同記者会見で金書記死亡に触れ、「朝鮮半島の安定を望む」ことと、日本や韓国という米国のアジアの同盟諸国と連帯して「情勢の監視を強める」ことを強調した。

 

 同じ日、バラク・オバマ大統領は野田佳彦首相との電話会談で同様に「朝鮮半島の安定維持」を政策目標として掲げた。

 

 米国政府首脳がこれだけ「安定」を力説するのも、北朝鮮政権がそもそも不安定な行動を続けており、危険な挑発に再び出る可能性が高いからである。その素地からすれば、今回の唐突な政権移譲では、まずは暴発的な危機が起きないことに腐心するということだろう。

国政の経験も実績もほとんどない正恩氏

 さて、米国側ではこの北朝鮮にとっては歴史的な変革をどのように見て、特にどんな点に懸念を向けているのだろうか。

 

 まず第1点は後継の28歳の金正恩氏の下で、これまでの「金王朝」とも言える政権が従来の権力を保っていけるのかどうか、である。

 

 この疑問には当然、金正恩氏を倒して、他の指導者が頂点に躍り出てくる可能性の有無論も含まれている。

 (つづく)

 駐米大使として長年、活躍した加藤良三氏が興味ある論文を発表しました。

 

 日本の集団的自衛権禁止は他国をいっさい助けない、他国と共同で安全保障を守ることを拒む自己中心な特異の措置だというのです。

 

 日本を囲むアジアの安全保障環境が厳しく、険しくなる一方の現在、傾聴すべき指摘です。

 

 

【正論】前駐米大使 日本プロ野球コミッショナー・加藤良三


 

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d2/George_W_Bush_and_Ryozo_Kato_cropped.jpg
 

 

 ■集団的自衛権はだれのため?

 

 「天は自ら助くる者を助く」。安全保障と健康、医療の世界はどこか似ている。

 

 ≪倒錯した「巻き込まれ論」≫

 安全保障・防衛問題に関わっていた頃、「紛争巻き込まれ」論への対処という仕事が常にあった。この巻き込まれ論が日本の安保論議を歪曲(わいきょく)、 矮小(わいしょう)化して今日に至るも影を落としている。一旦(いったん)紛争が始まった後の惨禍をおどろおどろしく言い立て、そうなる元凶(げんきょ う)が日米安保だという短絡的感情論であり、受け身一方の議論である。

 

 肝腎(かんじん)なのはそうした惨禍を避けるための政策論の筈(はず)であるが、狙いは反米・反安保ということにしかないから、現実的な選択肢が示されたことはついぞない。

 

 その主張は「肉食は有害」「薬は危険」「手術は怖い」と言うに等しく、それを信ずる人はそれでいいかもしれないが、万人に押しつけるのは無理である。実 際は日米同盟故に日本の紛争巻き込まれは回避され、その結果、若者が大量に戦死するような事態がなく、長寿社会も実現したのだと思う。

 

 集団的自衛権の問題がある。日本国民の多くがこれは専ら日米安保の問題だと思い込んでいる。しかし、集団的自衛権はもともと国連憲章制定の過程で弱者が1人ではなく仲間と一緒に応戦していいことを定めた、国際社会全般に及ぶ「弱者のための権利」である。

 

 30年余の付き合いがあるリチャード・アーミテージ元国務副長官は、一貫してこう述べている。

 

 「集団的自衛権は日本が自分で判断すべき自分の問題だ。米国から何かを要求することはない。それを日本が行使することを要求しない。ただ、国際社会でこれを必要とする度合いは、米国より日本の方がはるかに高いだろう」

 

 ≪武器輸出三原則は同盟国に背≫

 憲法第9条の解釈上、行使が禁じられるとする日本の立場に感銘を受け、追随する国はまず皆無だろう。多くの国にとって危険で無謀以外の何物でもないからだ。

 

 武器輸出三原則の問題もある。 その核心は第3項、すなわち、「紛争当事国又はそのおそれのある国」への武器(技術を含む)の輸出を原則禁止とした点に ある。そこには、なぜ武器輸出を禁止するかについての価値観が、たとえば同盟国とその他の国を区別する仕組みが組み込まれていない。その結果、実態上、武 器の絶対禁輸政策と化し、日本のために戦う米国への輸出もできない。

 

 これは「同盟」と矛盾する政策であり、1983年、中曽根康弘政権は初めて日米同盟を優先するとの整理を試みた。以後も一貫して事態改善の努力が続けられ、成果も出ているが、正念場はこれからだ。

 

 この禁輸政策は、米国以外の友好国との関係にも影を落とす。

 

 危急時を含め日本に助けを求めたい国は多い。それに全てすげない回答をするというのが、日本国民の信条意思なのだろうか?

 

 日本の対応は、同盟国はもとより友好国に対する「非協力」「不作為による制裁」となりかねず、わが身にはね返る危険がある。情けは人のためならず、である。

 

 アジアの友好国はイージス艦、潜水艦その他の日本の軍事装備品を旧(ふる)くなっていてもいいから、譲り受けたいと思っている。

 

 友好国が、旧くても他所(よそ)からのものより高性能の「すぐれもの」を取得し活用することは、海賊対策も含めて日本のシーレーン防衛に資すること多大なものがあろう。それを日本自らが封じ、旧くなったものは廃棄している。

 

 巻きこまれ論に戻れば、自然災害も人の顔をした脅威も向こうからやって来る。事態を制御できる保証はなく、巻き込まれたら最善の対応を尽すしかない。「備えあれば憂い無し」こそが重要だ。

 

 ≪米国も自ら助くる者を助く≫

 今、私から見れば軽率な「米国衰退論」が盛んである。

 1979年、冷戦最中、ソ連がアフガニスタンに突然侵攻したとき、米政府は狼狽(ろうばい)した。当時も米国の軍事力がソ連に凌駕(りょうが)されると の議論しきりだったのだ。だが、その直後から米国がソ連相手の真剣勝負に出たときの迫力は忘れられない。ケニア、ソマリア、エジプト、オマーン、そして ディエゴ・ガルシア-。米国から中東、インド洋に繋(つな)がる基地網構築と兵力の「前方展開」と、その速さ。その米国の底力の一端は、今般のトモダチ作 戦でも垣間見えた。

 

 米国が財政難の中、安全保障面でアジア向けにシフトするというのは本当だろう。本質的に朗報であるが、これによって、日本を含むアジアが自らは何もせずに「いいとこどり」をする結果になることは決してない。

 

 79年以降、米国が底力を発揮したとき、北大西洋条約機構(NATO)の欧州加盟国は、同盟網に脆弱(ぜいじゃく)な箇所(かしょ)が出ないよう懸命の 防衛努力を続けていた。アジアでも基本は同じだ。トモダチ作戦には長年にわたる日米の経験の共有と積み重ねがあった。日本も米国とともに汗をかいてきたか らこそ、この成功があったのである。

 

 「天は自ら助くる者を助く」は単なる諺(ことわざ)ではない。(かとう りょうぞう)

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