2012年01月

アメリカ大統領選挙の読み方です。

 

日本ビジネスプレスの私の連載コラム「国際激流と日本」からです。

 

原文へのリンクは以下です。 

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34372

 

 

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今回の2012年の選挙でも、この「リベラル」対「保守」、「大きな政府」対「小さな政府」というイデオロギー上の対決が顕著である。

 オバマ大統領の支持率低下についても、日本の大方のメディアは「経済運営の不手際からの失業率の高まり」を最大の原因に挙げている。攻撃する共和党側の姿勢についても、日本の主要メディアはオバマ政権下での高失業率を最大の争点にしているかのように報じている。

 だが、実際に共和党側が最大の攻撃の矛先を向けているのはオバマ大統領の超リベラル「大きな政府」政策なのである。国民の諸問題への対処に、とにかく連邦政府の役割を拡大しようとするリベラリズム政治こそが非難の最大標的なのだ。

 共和党は、オバマ大統領の施策を、国家の権限を肥大させる「社会主義的統治」とまで断じて、思想や理念の対決を挑んでいるのである。

 こうした今回のイデオロギー面での対決は、まさに80年、共和党保守のレーガン氏が民主党リベラルのカーター氏に挑んだ戦いの内容と同じだと指摘する向きが多いのだ。

選挙結果は日本の国のあり方にも影響を及ぼす

 ちなみに、今、米国で展開される「大きな政府」か「小さな政府」か、の争いの帰趨は日本を含む他の主要諸国にも意味するところが大である。

 ヨーロッパではギリシャ、イタリア、スペインなどの政府の財政破綻は「大きな政府」策の政府支出過剰の失敗を証明した。だからこそ米国の保守派は「小さな政府」の効用に熱をこめるのだろう。

 日本でも、今の民主党政権は明らかに「大きな政府」策へと走った。その走り過ぎが今や消費税増加策などを生んでいるのだろう。

 こうして全世界的に意味を持つ「政府のあり方」を問う米国の大統領選挙の行方は、日本の国のあり方を決める論議でも非常に重要な要素となるのである。

 その米国の大統領選挙では果たして温故知新の教えがどこまで生きるのか。これからの約9カ月の間、注視されるところである。

アメリカ大統領選の共和党側の争いについて、書きました。

 

ギングリッチ氏の人気の激しい浮沈についてです。

 

いまの選挙の本当の争点に光を当てました。

 

 

【朝刊 国際】
【緯度経度】ワシントン・古森義久 ギングリッチ現象が示す潮流

 

 米国大統領選の共和党予備選の攻防でいま最も奇妙にみえる現象の一つはニュート・ギングリッチ元下院議長の人気の激しい浮き沈みだろう。

 

 アイオワ州やニューハンプシャー州での争いでミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事らに敗れ、もう撤退かと思わせたのに、サウスカロライナ州の予備選で大勝した。昨年も名乗りをあげてから支持率を落とし、選対幹部が離散して、絶望ともみなされた。

 

 候補者としてのギングリッチ氏は強引な異色の個性や倫理に欠けるような波乱の私生活のために共和党内でも「オバマ大統領には勝ちがたい」と評される。だが人気を何度も落としながら、そのたびに不死鳥のように復活してきた。その理由は今回の大統領選が不況や失業ではなく実は壮大なイデオロギーの衝突を最大争点としていることだといえよう。

 

 オバマ大統領の施策は共和党側の言を借りなくても「大きな政府」のリベラル政策であることは明白である。景気の回復にも破綻企業の蘇生にも政府の巨額の支出をあてる。国民の医療にも政府の大幅介入による公的保険を進める。社会福祉も政府の支援を増す。高所得層への税金を増し、所得の再配分を図る。いずれも古典的とさえいえる「大きな政府」策だろう。

 

 共和党側は「小さな政府」を唱え、政府の役割をそぐことを主張する。経済では民間活力、福祉では自助努力を強調する。高所得も自由な競争での成果とみて、重課税は市場原理への懲罰として排する。こうした保守主義の教理を現代の米国政治で最も明快かつ強固に説いてきたリーダーがまずロナルド・レーガン元大統領、そしてギングリッチ氏と目されるのだ。

 

 私自身が記者としてギングリッチ氏の政治活動に初めて触れたのは1994年だった。同年の中間選挙で野党の共和党は下院議員の同氏が主導する保守主義政策の拡大の波に乗り、大勝した。上下両院で共和党は40年ぶりに多数を制した。

 

 その最高リーダーのギングリッチ氏は時の民主党クリントン政権への挑戦として「アメリカとの契約」という一連の公約を打ち出した。政府の支出や権限の削減、規制の緩和、福祉の抑制など保守主義の誓約だった。米国が1930年代以来、主流のパラダイム(規範)としてきたリベラリズムを大きく後退させた。

 

 いまオバマ大統領に反対する米国民たちがギングリッチ氏への支持を絶やさないのは、同氏の保守主義推進のそんな実績が大きな要因なのだ。同氏はいまも保守主義の雄弁な論客であり、とくに論争では豊富な表現と発想で共和党側最高の強みを発揮するとされる。

 

 現在の米国では保守主義のアピールが共和党の枠を超えてリベラリズムを圧していることは一連の世論調査で常に証される。無党派の有権者でもオバマ大統領への支持を留保し、保守の政策に視線を転じる層が増えてきた。まして共和党内では保守主義への傾きはいまとくに激しいのである。

 

 いまギングリッチ現象を招くのはこうした潮流だといえよう。保守の思想や政策を最もわかりやすく語り、最も強く進める指導者への志向である。だがそんな流れが共和党の最終候補選びをどう動かすのか、まして最終の本番選挙をどう決めるのか。もちろん予断は許されない。

 

 松原仁氏が語っています。

http://img2.blogs.yahoo.co.jp/ybi/1/b2/8b/success0965/folder/524140/img_524140_6542374_0?1281086354

 

 

国家公安委員長兼拉致問題担当相・松原仁氏インタビュー
2012年01月24日 産経新聞 東京朝刊 社会面

 ■「拉致解決へ土俵つくりたい」

北朝鮮の金正日総書記が死去し、指導者が交代したことで、日本人拉致問題の進展を期待する声も上がる。長年拉致問題に携わり、新たに国家公安委員長兼拉致問題担当相に就任した松原仁氏(55)は、産経新聞などのインタビューに「解決に必要な土俵をつくる」と意気込みを語った。

× × ×

--北朝鮮の指導者交代が拉致問題の解決に及ぼす影響をどうみるか

「(金正恩氏を中心とする体制への移行で)大きく状況は変わった。若くて欧州にも留学しているトップが、国際社会における新しい北朝鮮の在り方を考えたと き、拉致被害者の解放という選択肢は出てくる可能性があり、問題解決の大きな契機になると思う。アメとムチが一定の状況になる中で解決の糸口が出てくる。 解決に必要な実効性のある対話ができる土俵をつくっていきたい」

--具体的な土俵づくりは

「元首相の小泉純一郎さん ら拉致問題に携わってきた方々に会ってアドバイスを受け、私が本気でこの問題を解決しようとするメッセージになればいい。一方で、水面上でも水面下でもさ まざまなレベルでの接触が必要。現状の制裁をやめるつもりは全くないが、北朝鮮は最後は首相との対話を望んでいる。その前提になる土俵づくりを全力でやっ ていきたい」

--警察の印象について

「殺人事件の発生比率が他の先進国に比べて極めて低く、治安が良い。海外企業が進出する場合でも治安の悪いところには行かないので、日本の国益に警察が資するところは大きい。治安の良さをこれからも維持する努力をしなければならない」

--取り調べの録音・録画(可視化)の見解を

「捜査の水準を落とさないためには、可視化とおとり捜査や通信傍受をパッケージとして議論がされるべきだ。可視化を導入している国ではこういった高度化が行われており、治安を守るという点からは非常に重要なことだと思う」

--不正アクセス禁止法の改正に向けた所感は

「インターネットバンキングに対して不正アクセス事案が発生し、大手防衛産業関連企業や衆参両院に対するサイバー攻撃も発生している中で、不正アクセス防 止対策は喫緊の課題だ。他人のIDやパスワードなどの不正取得行為の禁止などを内容とする改正不正アクセス禁止法の成立に向けて努力していきたい」(大塚 創造)

 アメリカ大統領選挙についての評論のつづきです。

 

日本ビジネスプレスの「国際激流と日本」からの転載です。

 

リンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34372

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 だが現実にはブッシュ人気は急降下して、7人のうちの1人だったビル・クリントン氏が次の大統領となってしまった。

 

 現在のオバマ大統領に対する共和党側の候補の乱立も92年の「7人の小人」を思わせる。1月はじめの時点での共和党候補はちょうど7人だった。ロ ムニー、ギングリッチ、ベリー、バックマン、サントラム、ハンツマン、

 

 ポール各候補である。その誰からも、共和党の最終候補はこの人物だという決定的な印 象は伝わってこない。

 

 92年のブッシュ大統領は選挙戦が本格的になるにつれ、支持率を30%台にまで落とした。原因は失業、不況、財政赤字、指導力欠如などだとされた。オバマ大統領の人気低落が失業率の高さや経済不況の長さが原因だとされるのと、明らかに類似している。

 

 ただし、オバマ大統領は、就任1年後ぐらいから支持率を低めてきた点が先代ブッシュ大統領とは顕著に異なっている。

 

 いずれにしても、共和党側の候補の乱立や相互の争いの激化が、なにも現職大統領の勝利を確実にするわけではない、というのが92年の教訓だったのである。

80年と類似する「大きな政府」対「小さな政府」の構図

 さて、現在の選挙戦が1980年の選挙戦も想起させるのは、政策面での対決の類似性のためである。

 

 80年当時、現職大統領だったジミー・カーター氏は民主党の超リベラル派だった。国内政治では「大きな政府」策を熱心に推進した。企業への規制を 強化し、公共事業を増大させ、福祉を拡大した。その結果、財政赤字が記録的に増えて、金利やインフレを高め、失業を増した。景気の回復には政府支出の大幅 な増大であたり、かえって景気を悪化させた。

 

 カーター大統領は対外的にもリベラル的な姿勢で、当時の主敵のソ連に対してソフトで宥和的な態度をもって接した。軍縮交渉でも一方的な兵器削減などを打ち出した。その結果、ソ連を増長させ、アフガニスタンへのソ連軍大侵攻を招いた。

 

 80年の共和党の対抗馬、ロナルド・レーガン氏はこのカーター政策にすべて反対する超保守主義を掲げた。

 

 国内政策では「小さな政府」を徹底して進めた。経済政策でも政府の介入や監督を最小限にし、民間の活力に依存することを推奨した。社会福祉でも自 助努力を強調し、政府の支出を最小限にすることを唱えた。対外的には大規模な軍事力増強を提唱し、ソ連との対決を明確にした。これら保守主義への勧めは米 国民の多数派の熱い賛同を得た。保守主義は米国の政治史上でも初めて草の根に浸透したのだった。

(つづく)

 いま白熱してきたアメリカの大統領選挙について書きました。

 

 日本ビジネスプレスの私の連載「国際激流と日本」からです。

 

 リンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34372

http://d.hatena.ne.jp/images/diary/r/religious/2011-10-19.jpg

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米国大統領選挙の予備選が白熱してきた。といっても共和党側の戦いの激化である。民主党はオバマ大統領の再出馬が決まっているからだ。

 

 振り返れば、私は新聞記者として米国の大統領選挙の取材に1976年からあたってきた。この時は共和党の現職、ジェラルド・フォード大統領と民主党の新進、ジミー・カーター前ジョージア州知事との対決だった。

 

 以来、80年のカーター対レーガン、88年の先代ブッシュ対デュカキス、92年の先代ブッシュ対クリントン、96年のクリントン対ドール、2004年のG・W・ブッシュ対ケリー、そして2008年のオバマ対マケインという歴代の選挙戦をたっぷりと体験してきた。

 

 この間、日本に帰任したり、中国に駐在したりするなど米国を離れていた期間もある。だが、直接、取材や報道にあたった米国大統領選挙は通算7回ともなる。日本人ジャーナリストとしては稀な体験だと言えよう。

 

 こうした長い体験から得た教訓の1つは、選挙はまさに水もの、目の前の光景からはるか先の開票結果を予測するのは危険だということだった。

 

 同時に「歴史上の類似」という教訓も間違いなく存在するように感じる。今、目の前で起きている現象に似た状況が以前にもあり、その当時の事態の展開が現在にも意味を持ち得る、ということである。

 

 その意味で、今回の2012年の選挙から想起されるのは、92年の選挙と80年の選挙である。

共和党の候補乱立は「7人の小人」?

 92年、投票の1年ほど前には野党の民主党側で候補が乱立していた。今の共和党と酷似した状況である。

 

 当時、現職だった共和党のブッシュ大統領(先代)は、投票の1年近く前までなんと90%以上という史上最高の支持率を記録していた。ソ連の崩壊に 見事に対処し、湾岸戦争ではイラクのクウェート軍事占領を一気に粉砕した。ブッシュ大統領は無敵の騎士のように国際的にも国内的にも人気を高めたのだっ た。

 

 その結果、再選を目指すブッシュ氏に対し、野党の民主党側では当初、公式に名乗りをあげる候補がなかなか出ず、「白雪姫と7人の小人」という表現 が生まれた。同名のグリム童話のように、魅力あふれる白雪姫のまわりを7人の小型の人物たちが右往左往するだけ、という意味だった。ブッシュ氏の強さはそ れほど圧倒的と見なされたのである。

         (つづく)

 

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