G8がすっかり勢いも志もなくしてしまったというレポートの続きです。
日本ビジネスプレスからの転載です。
原文へのリンクは以下です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35262
国際激流と日本
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変更の最大の理由は警備だとされる。最近のG8には反グローバル運動などの抗議デモがしかけられることが多い。オバマ大統領はそんな事態を避けた かったのだろう。これまたその背後には大統領選挙への配慮を感じさせる判断だった。その結果、ふだんなら大都市や名勝で開かれる派手なサミットがいかにも 地味な感じとなってしまった。
世界の経済課題を論じる経済危機の国の首脳たち
第2は、ヨーロッパ全体の衰えである。欧州の経済や財政の破綻に近い不調と、EU(欧州連合)の連帯やユーロの危機がサミット全体に大きな影を投げた。
G8の構成自体がそもそも欧州偏重である。世界の経済課題を論じるのに、欧州からはイギリス、フランス、ドイツ、イタリアと、4カ国も参加してい る。この構成はサミットの当初の東西冷戦時代であれば、それなりに合理性があった。ソ連の脅威にまず直接にさらされたのは西欧の諸国だったからだ。まし て、それら西欧諸国の経済も当時は水準は高く、好調だった。
だが今では欧州の経済全体が世界の中で縮小を続けている。ギリシャとフランスだけでなく、イタリア、スペインなど、財政悪化は目を覆うほどであ る。経済成長も停滞しきっている。そんな欧州の代表たちが、全世界の経済課題を論じるサミット参加国の半分を占めてしまうことは、不均衡でさえある。
ましてそうした西欧諸国を束ねてきたEUという枠組み自体が今大きく揺らぐにいたった。
今回のサミットでも最大の争点は、ギリシャやフランスなどの経済危機の再建には、緊縮財政策でいくか、それとも景気刺激の成長促進策を取るか、 だった。周知のようにドイツが政府支出を抑える財政緊縮策を強く主張した。フランスは経済成長促進策を推した。この現実は、サミットに参加した欧州諸国の 足並みに激しい乱れをもたらした。
オバマ大統領も「緊縮か成長か」の政策選択では、成長に傾きがちである。民主党リベラル派の彼はもともと「大きな政府」主義であり、米国の深刻な 不況に対しても政府支出を増やす経済刺激策で対応してきた。だが、その結果はまったく好ましくない。だからフランスなどが唱える新たな政府支出による成長 促進策に改めて正面から同調することもためらわれるのだろう。
(つづく)