2012年05月

 G8がすっかり勢いも志もなくしてしまったというレポートの続きです。

 

 日本ビジネスプレスからの転載です。              

  原文へのリンクは以下です。
  http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35262

 

 

国際激流と日本

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 変更の最大の理由は警備だとされる。最近のG8には反グローバル運動などの抗議デモがしかけられることが多い。オバマ大統領はそんな事態を避けた かったのだろう。これまたその背後には大統領選挙への配慮を感じさせる判断だった。その結果、ふだんなら大都市や名勝で開かれる派手なサミットがいかにも 地味な感じとなってしまった。

世界の経済課題を論じる経済危機の国の首脳たち

 第2は、ヨーロッパ全体の衰えである。欧州の経済や財政の破綻に近い不調と、EU(欧州連合)の連帯やユーロの危機がサミット全体に大きな影を投げた。

 

 G8の構成自体がそもそも欧州偏重である。世界の経済課題を論じるのに、欧州からはイギリス、フランス、ドイツ、イタリアと、4カ国も参加してい る。この構成はサミットの当初の東西冷戦時代であれば、それなりに合理性があった。ソ連の脅威にまず直接にさらされたのは西欧の諸国だったからだ。まし て、それら西欧諸国の経済も当時は水準は高く、好調だった。

 

 だが今では欧州の経済全体が世界の中で縮小を続けている。ギリシャとフランスだけでなく、イタリア、スペインなど、財政悪化は目を覆うほどであ る。経済成長も停滞しきっている。そんな欧州の代表たちが、全世界の経済課題を論じるサミット参加国の半分を占めてしまうことは、不均衡でさえある。

 

 ましてそうした西欧諸国を束ねてきたEUという枠組み自体が今大きく揺らぐにいたった。

 

 今回のサミットでも最大の争点は、ギリシャやフランスなどの経済危機の再建には、緊縮財政策でいくか、それとも景気刺激の成長促進策を取るか、 だった。周知のようにドイツが政府支出を抑える財政緊縮策を強く主張した。フランスは経済成長促進策を推した。この現実は、サミットに参加した欧州諸国の 足並みに激しい乱れをもたらした。

 

 オバマ大統領も「緊縮か成長か」の政策選択では、成長に傾きがちである。民主党リベラル派の彼はもともと「大きな政府」主義であり、米国の深刻な 不況に対しても政府支出を増やす経済刺激策で対応してきた。だが、その結果はまったく好ましくない。だからフランスなどが唱える新たな政府支出による成長 促進策に改めて正面から同調することもためらわれるのだろう。

(つづく)

 

  G8、つまり主要8カ国首脳会議がワシントン近郊で開かれました。

 

 わが野田首相も出かけていきました。

 

 この会議は、いったいなにを生んだのか。

 

 どうやらG8サミットというのは、すっかり空疎になってしまったようです。

 

 そのレポートです。

 

 日本ビジネスプレスの「国際激流と日本」からです。

 

  原文へのリンクは以下です。
  http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35262

 

 

国際激流と日本

もはや開催の意味なし?
ここまで凋落したG8サミット

 

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  G8サミットが5月18、19の両日、ワシントン近くの米国大統領山荘キャンプデービッドで開かれた。かつては世界の針路の舵取りとして、きらきらと輝いたこの主要国首脳会議も、今ではすっかり勢いも志も失い、空洞に近い行事になったというのが総括の印象だった。

 

  私は新聞記者として、1975年の第1回、パリ郊外のランブイエでの首脳会議からサミットを考察してきた。当初の時期こそ現地取材はしなかった が、第5回の東京サミットはワシントンからカーター大統領(当時)に同行して、報道にあたった。それ以後、サミットの現地での取材は10回ほどになるか ら、日本のメディアでも最長の報告者の一人だと言えよう。そんな過去の経験を踏まえて眺めると、今回のサミットはことさらに斜陽、落日の観が強いのであ る。

米国のかつてのリーダーシップはどこへ

 さて、では具体的にこの第38回サミットのどんな点に空洞や衰退が目だったのか。

 

 第1は、主催国の米国の指導力の衰えだった。オバマ大統領のリーダーシップ欠如と評してもよい。

 この先進国首脳会議のそもそもの発端は、東西冷戦中、共産主義のソ連と対抗した米国主体の西側自由民主主義陣営の主要国の結束だった。最大の主要 課題は経済であっても、ソ連圏の計画経済に対抗する自由な市場経済のシステム向上という命題の背景には米国とソ連の軍事対決、政治対決があった。

 

 そうした環境での西側のリーダーは間違いなく米国であり、当時のG6から始まり、G7となったサミットでも米国の指導性はストレートに明示され た。ソ連の共産党体制が崩れ、冷戦が終わった後の混乱期のサミットがやがて民主化されたロシアを加えてG8となっても、唯一のスーパーパワーの米国の主導 は言わずもがなの実態だった。

 

 だがオバマ大統領は、指導力の発揮など米国の特別な役割を忌避しがちな傾きがある。その傾向が今回、米国経済の不調と大統領選挙の激化によってさ らに強められた。オバマ氏に、国際的な場での力強いリーダーシップからさらに腰を引かせる効果を生んだのだ。ギリシャやフランスなどと同様に自国も経済、 財政上の悩みを抱えたオバマ大統領が強い指導性を発揮できないのは自然だとも言える。欧州の経済危機に米国経済が引きずりこまれるような言動は、特に選挙 の年にはタブーだろう。

 

 オバマ大統領は当初、このG8を地元のシカゴで開く予定だった。だがそ

の後、唐突な形で場所をワシントン北100キロほどのキャンプデービッドに 変えた。メリーランド州の丘陵地帯にあるこの広大な山荘は自然の環境こそよいが、なんの変哲も情緒もない地域である。無人の一帯とさえ言える。こんな場所 に各国首脳を隔離してのサミットとなった。

(つづく)

【緯度経度】ワシントン・古森義久 米国人留学生 深まる「拉致」の影
 
2012年05月19日 産経新聞 東京朝刊 国際面

 中国領内から北朝鮮へ拉致されたと疑われる米国人留学生デービッド・スネドン氏の行方がいよいよ国際的な脚光を集め始めた。

北朝鮮当局はその拉致を否定したが、スネドン氏の家族たちは逆に確信を深め、日本の拉致被害者の「家族会」などとの連携を保ちながら、米国の政府や議会に改めて解明を訴える構えを強めている。

スネドン一家のこの確信は家族が結束してこれまで徹底した調査を続けてきた実績からのようだ。デービッド氏の父親ロイ氏とともに現地調査の中心となった長兄マイケル氏が語る。

「現地では当初から北朝鮮の影を多様な形で感じていたが、中国当局への配慮などから具体的に表明することは避けていました。その影が今回、日本側からの新情報で明確な形をとってきた気がします」

スネドン家の調査報告書は迫力がある。マイケル氏ら家族3人は末弟のデービッド氏が行方不明となった2004年8月中旬から1カ月もたたないうちに現地の雲南省に入った。米国務省の支援に加え、独自に通訳とガイドを雇い、克明な調査を始めた。

スネドン一家はみな末日聖徒イエス・キリスト教会、つまりモルモン教の信徒である。だから家族の結束が強いのだろう。デービッド氏は北京に語学留学する前はモルモン教の宣教師として韓国で2年を過ごし、流暢(りゅうちょう)な韓国語を話すようになった。

彼は中国留学の終わりに雲南省を観光とチベット民族の考察のために訪れた。まずその地の名勝の虎跳渓のトレッキングに出かけた。十数キロにわたるこの峡谷 を南側の麗江市から入った。消息を絶った直後、中国当局も米国務省も彼が虎跳渓の中で転落などの事故にあったという結論を出した。だがスネドン一家は最初 の現地調査で9人もの目撃者を見つけ、彼が実は虎跳渓を完全に通過し、向こう側のシャングリラ県の町に着いて、食事や散髪までしていたことを確認した。

報告書はデービッド氏が雲南省に向かう直前、北京で友人の米国人留学生ジャスティン・リッチモンド氏と数日を過ごしたことを特筆していた。同氏は北朝鮮に 近い中国の延辺大学に留学し、脱北者の研究をし、中国当局から出国を求められていたという。2人は韓国でともに布教をした。この北京での再会が中国や北朝 鮮の当局にデービッド氏の脱北者へのかかわりを疑わせたかもしれない、というのだ。なにしろ雲南省のこうした地域は脱北の地下逃走路の最終部分としての実 歴が長いのである。

報告書はデービッド氏が失踪直後の時期に長兄のマイケル氏とソウルで会う約束をし、航空券を所持していたことや、米 国の母校に復学して法科大学院に進む準備を済ませていたことを強調している。その上で雲南省での事故や地元警察の拘留はなかったことを示す証言や証拠を提 示していた。

スネドン一家は地元ユタ州選出のマイク・リー上院議員やジェイソン・シェイフィッツ下院議員にデービッド氏の行方解明への 協力を直接、求める手続きを始めた。また一家の周辺では同じモルモン教で共和党の大統領選候補ミット・ロムニー氏にも直訴すべきだという声もあるという。 そうなるとこの米国人留学生、北朝鮮拉致の「疑惑」は一気に拡大するだろう。

 こんご重要性を増す日本の尖閣諸島への中国の不当な領有権主張に対して、産経新聞が適切な社説を掲げていました。

 

ややタイミングが遅れましたが、紹介します。

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【主張】「核心的利益」発言 中国の意図は尖閣奪取だ

 

 ■日本は万全の備えと覚悟を

 

 北京での日中韓首脳会議(サミット)に合わせて設定された野田佳彦首相と中国の温家宝首相との個別会談で沖縄・尖閣諸島をめぐって応酬があり、温首相が「(中国の)核心的利益と重大な関心事を尊重することが大事だ」と発言した。

 

 「核心的利益」とは、中国にとって安全保障上譲ることができない国家利益をさす。尖閣問題と関連付けながら、中国首脳が、これを口にしたことは初めてであり、きわめて重大である。

 

 ≪野田首相の反論は当然≫

 

 温首相は「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国領土だ」と改めて強調している。中国公船による尖閣周辺の領海侵犯が常態化している状況下、温首相の発言は 海洋権益の拡大を狙う中国が尖閣奪取の意図を明確にしたと受け止められる。尖閣問題が新たな局面に入ったとの危機認識が必要だ。

 

 温首相の発言に対し、野田首相が「尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らか」と反論し、さらに、「中国の海洋活動の活発化が日 本国民の感情を刺激している」と指摘したのは当然だ。首脳レベルでは尖閣問題にふれないようにしてきたこれまでの民主党政権の方針を転換したことは意味が ある。

 

 ただ、両首相は「日中関係の大局に影響を与えることは好ましくないとの認識で一致した」という。問題を棚上げにしても解決にはつながらない。

 

 今回の「核心的利益」発言の背景には、中国側の思惑が見え隠れしている。

 

 温首相は尖閣問題に加え、東京での「世界ウイグル会議」に出席したラビア・カーディル議長に対する日本側のビザ発給を批判したという。中国側はウイグル問題を「核心的利益」としている。

 

 一方で、中国国営新華社通信や中国中央テレビは、ウイグルと尖閣の問題を並べ、温首相が「中国の核心的利益と重大な懸案事項を尊重するよう日本に求めた」と報じた。尖閣問題での対日強硬姿勢を強調する中国側の宣伝工作に振り回されてはならない。

 

 台湾やチベット、ウイグル問題など中国の「核心的利益」を尖閣問題にまで拡大したともとれる発言の口実として、中国側は石原慎太郎東京都知事が先月発表した都による尖閣諸島の購入計画を意識しているようにみえる。

 

 都が開設した購入資金の寄付金口座には半月で5億円以上が集まった。日本の国内世論の高まりに中国が危機感を強めている。

 

 次期最高指導者に内定している習近平国家副主席は今月訪中した日中友好議員連盟に対し、「核心的利益」との文言を使って石原知事を暗に批判した。日本に してみれば、知事の計画は尖閣諸島を守り、実効統治を強化していくための有効な提案だ。習副主席の発言もまた、中国側の勝手な言い分と言わざるを得ない。

 

 ≪海保法改正案の成立を≫

 

 政権指導部の交代が行われる今秋の共産党大会を前に、中国では重慶市党委員会書記だった薄煕来氏の中央政治局員解任をめぐるスキャンダルや、盲目の人権 活動家、陳光誠氏の米国出国問題など社会安定を揺るがす出来事が続いている。国内の統制をはかる意味でも、中国は尖閣で強

 

く出ざるを得ないのではないか。

 

 そうした状況を念頭に日本は戦略を練る必要がある。

 野田首相が温首相との会談の翌日に求めていた胡錦濤国家主席との首脳会談は中国側が応じなかった。きわめて残念だ。

 

 中断されたままになっている東シナ海のガス田共同開発をめぐる交渉再開については温首相から具体的な時期を引き出すことはできなかったが、粘り強く再開 を迫るべきだ。さらに、15日から中国浙江省で開催される東シナ海での危機管理を話し合う事務レベルの海洋協議も継続が必要だ。

 

 また、野田首相は、中国漁船衝突事件で強制起訴された中国人船長の身柄引き渡しを温首相に直接求めるべきだった。

 

 最も重要なのは、領土を守るための具体的行動である。

 すでに国会に提出された海上警察権強化に向けた海上保安庁法などの改正案は早急に成立させなければならない。野田政権には、尖閣諸島での自衛隊常駐や警戒監視レーダーの設置など、実効統治を強めるための具体的行動と覚悟が求められている。

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 中国領内から北朝鮮に拉致されたことが強く疑われているアメリカ人留学生の長兄にインタビューしました。

 

 その記事です。写真はマイケル・スネドン氏です。

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〔ワシントン=古森義久〕

 中国で消息を絶ち、北朝鮮へと拉致されたと疑われる米国人留学生デービッド・スネドン氏の兄マイケル氏(53)は14日、産経新聞のインタビューに応じて、「日本側からの新情報で弟が北朝鮮に拉致されたと確信するにいたった」と述べ、こんご米国の政府と議会に強く働きかけていく意向を明らかにした。

 

 デービッド氏は24歳だった2004年8月10日、中国雲南省シャングリラ県の観光名所の虎跳渓近くのユースホステルを出たまま行方不明となった。ユタ州在住のスネドン一家ではすぐに長兄のマイケル氏らが現地調査したが、米中両国当局とも現在にいたるまで消息不明としている。

 

 マイケル氏は国際翻訳会社社長で現地には合計3回、出かけての調査結果を80ページの報告にまとめ、「デービッドは本人の意思に反して他者あるいは特定組織に拉致あるいは拘束された」との結論を出していた。

 

 マイケル氏はこのインタビューでまず日本の「救う会」からの「米国人青年が同時期の同地で脱北者を支援していたと疑われ、中国の国家安全局に逮捕され、その後、北朝鮮側に引き渡された」という新情報について「私たちが現地で調べたときもこの地域が脱北者の東南アジア方面への秘密逃走路となり、北朝鮮関連の人間や事象の存在を強く感じており、今回の新情報で弟の北への拉致を確信するにいたった」と語った。

 

 マイケル氏はその理由として――

 

 ①韓国留学経験のある弟は朝鮮語が流暢であり、北朝鮮に関心ある米国人と親しく交際し、脱北者支援をしていると誤解される要素があった

 ②シャングリラ県ではその数ヶ月前に北朝鮮の化学兵器開発に関与した科学者が脱北してきて中国当局に拘束され、本国送還された

 

 ③弟が最後に立ち寄った軽食堂は朝鮮人母娘が経営しており、北との関連もありうる

 

 ④北朝鮮では米国人のジェンキンス氏が解放された直後で新たな英語の教員役を必要としていた

 

 ⑤この軽食堂では中国語を話さないアジア系の若い女性が弟に同行しており、脱北支援への関与を連想させる

 

 ⑥事故で死亡とか中国当局に拘束のままという可能性も考え、徹底調査した結果、その可能性はほぼ完全に否定できる

 

 ――ことなどを列挙した。

 

 マイケル氏はさらに「北朝鮮の外国人拉致はすでに実証された非人道的な行動であり、米国と日本が緊密に連帯し、国際犯罪として追及し、デービッドや他の被害者を救出したい」と強調した。

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