2012年07月

 ロンドン五輪での女子柔道の熱戦が世界を沸かせています。

 

 日本でもとくに松本薫選手の優勝には全国民が喜んだと言ってよいでしょう。

 

 さてこの女子柔道のオリンピックでの大展開、いまではごく自然なこととされていますが、実は長く険しい歴史がありました。

 

 その歴史を私自身が体験しているアメリカの女子柔道の一端と合わせて、書きました。

 

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【あめりかノート】ワシントン駐在編集特別委員・古森義久


 

 ■女子柔道の恩人に思いはせ

 私の通う「ジョージタウン大学・ワシントン柔道クラブ」での練習相手の一人は米国人女性のアンジー・モーガンさんである。20代後半、小柄ながらよく発達した筋肉の彼女はいつも必死で挑んでくる。なんとかこちらを投げようと全力をあげてくるのがよくわかる。

 

 モーガンさんは数年の柔道歴を積み、背負投げ、小内刈りと鋭い技をかけてくるが、全盲である。難聴でもあり、小さなゴムの補聴器をつけている。だがいつも底抜けに明るい。

 

 「目標はパラリンピックです!」

 

 自分の柔道について明確に語る彼女はミシガン大学の大学院を終え、目の不自由な男女の教育施設でパソコン技術などを教えているという。

 

 このクラブではこうした熱心な女子会員の参加が絶えない。高校生、大学生に始まり、教員、医師、弁護士、航空管制官、最高裁書記官と、職業面でも多彩な 米国女性が集まる。専業主婦も子供もいる。米国の女子柔道全体の活気と多様性の反映だろう。事実、女子の試合は首都ワシントンの地区大会から東部の地域大 会、全米選手権まで実に頻繁である。

 

 米国柔道連盟のタッド・ノルズ弁護士によれば、米国柔道人口十数万のうち4分の1ほどが女性だという。国際的に傑出した選手は少ないが、北京五輪ではロ ンダ・ラウジー選手が70キロ級で3位となり、米国女子柔道で初のオリンピック・メダルを得た。ロンドンでも2010年世界選手権78キロ級優勝のケイ ラ・ハリソン選手の活躍が期待される。

 

 しかしいま日本国民の多くを熱狂させるオリンピックの女子柔道が実は米国女子柔道界の努力で実現するようになったことはあまり広くは知られていない。

 

 オリンピックでは柔道は男子が1964年に正式競技種目となったが、女子は92年まで認められなかった。本家の日本が女子同士の試合や男女間の練習を長年、禁じていたことが大きかった。競技としての女子柔道は欧米で先行し、日本は渋々と従ったという経緯があるのだ。

 

 女子柔道の試合は50年代にオーストラリアで、60年代から欧州各国で本格的に開始された。米国では70年代冒頭である。日本は78年の全日本女子選手 権が最初だった。この流れから女子柔道を五輪種目に入れる運動は米国でまず起きた。欧州は独自の国際大会を開き、それに満足する状況だったという。

 

 米国柔道界でそのために決定的な役割を果たしたのはニューヨークの女子柔道家ラスティ・カノコギさんである。日大柔道部OBの鹿子木量平氏を夫とした彼 女は、女子柔道を五輪の正式種目にするため文字どおり奔走した。80年11月にはニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで女子柔道初の世界選手権 開催を実現させた。私財をなげうっての献身の成果だった。五輪の正式種目化にはこの種の世界選手権開催が前提条件だったのだ。

 

 ラスティさんの活動は「柔の恩人 『女子柔道の母』ラスティ・カノコギが夢見た世界」(小倉孝保著・小学館刊)という近刊書に詳しい。このすぐれたノン フィクションは2009年に74歳で逝った彼女の生涯を柔道にしぼりながら活写している。私も米国での柔道行事で彼女にはたびたび会っていた。だからロン ドン五輪での熱戦の光景に重ねて、女子柔道の歩んだ道をラスティさんの軌跡としても感じさせられるのだった。

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 中国の尖閣奪取の戦略に対して、日本はどう対処すべきか。

 

 提案の紹介の最後です。

 

 日本の官民で中国の戦略やその脅威を研究し、議論しようという提言です。

 

日本ビジネスプレス「国際激流と日本」からです。

 原文へのリンクは以下です。

 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35731

国際激流と日本

尖閣諸島を守るために
日本がすぐに実行すべき5つの対策

 

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 中国は国連海洋法条約が決めた排他的経済水域(EEZ)や大陸棚に関する規約や合意をも公然と無視している。日本が中国のそうした側面を国際的な場 で指摘することは、尖閣諸島防衛への外交的な得点ともなるだろう。中国の尖閣奪取への動きが国際的な課題である現実をアピールすることともなる。

【その5】 日本国内で中国の脅威と対策を議論せよ

 さて、第5は中国の実態についての日本国内での国政議論の開始である。

 

 日本にとって中国の動向はいまや国家の基本を揺さぶるほど巨大なファクターとなった。日本の固有の領土である尖閣諸島を奪取しようという動きはそ の象徴だと言える。中国は日本の安全保障にとっていま最大の潜在脅威であり、懸念の対象である。いや、安保だけに留まらず、経済や金融の面でも、中国は日 本の国家としての進路を大きく動かしうる存在なのだ。

 

 しかしそれほど重要な中国の実態を国政の場で体系的、政策的に論じようという努力が日本には存在しない。国政の場での中国に関する研究や議論がないのである。

 

 この点、米国は対照的である。政府は経済面で毎年、中国が世界貿易機関(WTO)の規則をどこまで順守したかを詳述する調査報告を発表する。中国 の軍事力の実態に光をあてる調査報告を公表する。中国の人権弾圧の実態や宗教の自由抑圧の状況を年次報告の形で批判する。政府と議会の合同の「中国に関す る議会・政府委員会」という組織があって、公聴会や調査報告によって、中国の人権状況に恒常的に光を当てている。

 

 また、議会の諮問機関「米中経済安保調査委員会」は、米中経済関係が米国の国家安全保障に与える影響に焦点をしぼり、立体的な調査と発表を続けて いる。民間でも多数の大手シンクタンクが中国の軍事や経済を研究して、その結果を公表する。その結果、最近のワシントンでは文字どおり連日、中国について の研究や討論のイベントが催されているのだ。

 

 一方、日本では中国研究自体はもちろんなされてはいるが、国会のような国政の公式の場で中国のあり方が論じられることはまず稀である。中国を単に 批判的に取り上げる中国叩きではなく、中国の軍事態勢や海洋戦略を冷静に調査し、その結果を国民一般にも伝わる形で公表し、議論するという作業が国会を主 体に実施されてしかるべきだろう。日本にとっての中国の比重はそれほど巨大なのである。

 

 中国が尖閣諸島に対し、どのような戦略や思考を抱いているのかなど、日本国民全体が理解できる形で、国政の舞台で論じられるべきだ。そうすれば国民の間で尖閣を守ろうという意識が自然と高まるだろう。 

 

 以上が尖閣諸島を守るための日本側の取るべき政策についての5つの具体的な提案である。

(終わり)

ロンドン五輪もいよいよフル回転です。

 

スポーツ自体は政治とは無関係、そして個人と個人の競い合いとはいえ、参加者はすべてどこかの国の一員です。自国を背負って晴れの舞台に登場するわけです。勝者のために演奏されるその国の国歌、そして掲揚される国旗をみても、オリンピックはこの世界での国家という存在を改めて鮮明にします。

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ところがこの現実を必死に否定しようと試みる勢力の一角が朝日新聞です。

 

「個人が背負う『看板』はもはや国家ではなく、国境のないグローバル社会なのだ」

 

こんな記述はそれを書いた朝日新聞記者の願望あるいは妄想にすぎません。

オリンピックで個人が背負っているのは国家です。観衆もおそらくそんな妄想の持ち主を除いては、みな自国の選手を応援しています。国家という区分は厳存するわけです。

 

日本に足を置く個人なり、団体が国家を否定すれば、まずその否定の対象となるのは日本国です。日本という国家の否定の意図が浮かび上がります。朝日新聞のオリンピック利用の反国家キャンペーンはそんなことを感じさせます。そして不思議なことに、中国の実情を報じたり、論じる際はそんな国家否定の傾向は決してみせません。

 

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さあ、このへんをどう読むか。

 

ともあれ、ロンドン五輪に戻って、国家否定のそんな試みをみごとに論破した一文が今朝の産経新聞に出ているので、紹介します。

 

【朝刊 1面】


【くにのあとさき】東京特派員・湯浅博 それでも五輪が大好きだ


 

 五輪の開会式を見るたびに、4年ごとに国力が変わる「大国の興亡」や、政権崩壊による「小国の盛衰」を感じることがある。

 

 2008年北京五輪は、これでもかという絢爛(けんらん)豪華な歴史絵巻だったが、ロンドンは「自然回帰」を織り込んで爽快だ。五輪を演出する大国の技は、出ずるを制する知恵なのか。次はメダル獲得数で、運動量と知恵で国力を競うことになる。

 

 途上国や分断国家の盛衰もさまざまだ。リビアは独裁者カダフィを追い出して11カ月が過ぎた。柔道男子66キロ級のクイサ(23)は「心からスポーツを 楽しめる国になった」とメディアに答えた。リビアだけでなく「アラブの春」を迎えたチュニジア、エジプト、そしてシリアの選手たちの戦いぶりが気にかか る。彼らは国家の盛衰をまともに受けて、資金不足と練習不足をどう補うのか。

 

 「五輪が国境をなくす」と考える人々を、今回もロンドンは裏切ることになるだろう。南北融和の象徴である韓国と北朝鮮の合同行進は、途切れたままで五輪 の効用も利かなかった。「平和の祭典」とはいえ、テロ対策として地対空ミサイルの配備や戦闘機の待機など、武力の支援なしには開催もできない。

 

 外国人コーチを招いたり、外国企業をスポンサーとする傾向をもって、「五輪参加の選手が背負う“看板”は国家でなく、国境のないグローバル社会だ」などというきれい事は成り立たない。

 

 2000年のシドニー五輪の開会式でも、インドネシアから分離直後の東ティモールから参加した選手が印象に残っている。ボクシングのラモス選手で、インドネシア国旗の呪縛から解放されても、この時はまだ、国旗の使用は許されない。開会式には五輪旗を掲げて行進した。

 

 すでに30歳のボクサーは、反撃もできずに1回戦で敗北した。それでもラモス選手は「独立した国と人々に感謝したい」と満足そうだった。五輪に参加できたことで、彼は改めて祖国愛を確認していた。

 

 このときも、「国家から解き放たれて」と妙な論評があった。ラモス選手が五輪旗を掲げていたことや、オーストラリアのフリーマン選手が部族の「アボリジニ旗」でウイニングランしたことを指している。

 

 だが事実は、ラモス選手の五輪旗は、まだ国連暫定統治下で国旗を許されなかったからだ。フリーマン選手は部族の旗を掲げたが、同時にオーストラリア国旗も持っていた。彼らはむしろ、国家にも部族にもこだわっていたのだ。

 

 それを無理に、「スポーツが国家から解放されていく」と書くとは腹黒い了見である。なんとしても、脱国家と結びつけたいらしい。

 

 今回の「なでしこジャパン」の対カナダ戦でも、テレビ解説者が「90分のナショナリズム」と表現した。試合時間が計90分かかるところから、その間の熱狂を捉えた。

 

 五輪で日の丸が振られると、「健全なナショナリズム」と表現する心理と共通しているように思える。政治家の靖国神社参拝や国旗国歌の尊重を「偏狭なナショナリズム」と批判するための差別化である。

 

 そんな偏狭なメガネで見ずに、国別の大運動会として楽しめばよいではないか。五輪は矛盾と悩みを抱えつつも、新たなパワーとドラマを生みだしてきた。そんな五輪の祭典が日本人は大好きなのだ。

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 尖閣諸島の防衛については野田首相も自衛隊による防衛強化の必要を認める発言をしました。

 

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 日本は尖閣防衛のために具体的になにをすべきか。

 

 その提案の紹介を続けます。

 

 日本ビジネスプレス「国際激流と日本」からです。

 原文へのリンクは以下です。

 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35731

国際激流と日本

尖閣諸島を守るために
日本がすぐに実行すべき5つの対策

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 尖閣諸島の防衛でも、現在の集団的自衛権の行使を自ら禁じた日本は尖閣の至近の海域で日本防衛任務に就く米軍が中国軍の攻撃を受けても、実際の支援 はできないことになっている。その海域が日本の領海でなければ、目前で攻撃を受ける米軍さえ、応援できないのだ。

 

 この変則に終止符を打つことは尖閣防衛の 強化に直結する。

【その4】 東南アジア諸国との連携を強化せよ

 第4は国際的な連携や発言の強化である。

 

 中国は、自国がからんだ領有権紛争を国際的な舞台に出すことを一切、拒む。多国間の協議に委ねることにも絶対反対する。この7月の東南アジア諸国連合(ASEAN)の一連の会議での展開が、その現実を明示した。

 

 だから日本にとってはこの中国の忌避を逆手に取って、南シナ海で中国の膨張の被害を受けるフィリピンやベトナムと連携を強めることが有効である。

 

 南シナ海での領有権紛争に関する「行動宣言」を東シナ海にまで拡大することを提案するのも一考だろう。海洋領有権紛争での軍事力行使の禁止などをうたうこの「行動宣言」に、中国は署名をしながらも、拘束力を持たせる提案には頑強に反対を続けている。

 

 日本としてはこの「行動宣言」に拘束力を持たせることを求める東南アジア諸国との国際連帯を保つことが有益なのは明白である。中国の理不尽で危険な領土拡張に悩まされる諸国と、できるだけ幅の広い国際連携を組むことが日本にとって役立つわけだ。

 

 同時にその国際連携の出発点として、日本はまず国際的な場で自国の尖閣諸島領有の権利がいかに正当であるかを積極果敢に主張しなければならない。この主張自体が従来の日本政府の「中国を刺激するな」論の否定となる。

 

 尖閣諸島の日本帰属は歴史的にも法的にも十二分の根拠が存在する。中国の主張は極めて弱い。その事実を国際的に広める時期がすでに来たと言える。だが日本政府はこれまで尖閣諸島の領有権の正当性を国際的に語ることはなかったのである。

 

 中国の主張を完全に否定し、「領土問題は存在しない」とする日本政府の公式な立場からすれば、その経緯にも理はあるが、中国のいまの公然たる挑戦を見ると、領土紛争は認めないままにせよ、中国の主張の不当を対外的に宣伝することも必要になってきたと言えよう。

(つづく)

 

 北朝鮮の政権に忠誠を誓って、日本国内で日本の国民や政府を傷つける言動を長年、とってきた朝鮮総連の最近の状況に注視すべきです。

 

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 産経新聞の社説がその一端を紹介し、意見を述べています。

 

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【主張】朝鮮総連 法治国家のルールに従え

 

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)に約627億円の債権を持つ整理回収機構(RCC)が朝鮮総連中央本部(東京都千代田区)の土地・建物の強制執行(競売)を東京地裁に申し立てた。

 

 先月、同中央本部の土地・建物の実質的な所有者が総連であることを認めた最高裁決定を受けた措置である。

 

 破綻した在日朝鮮人系信用組合からRCCが引き継いだ不良債権のうち、627億円の支払いを総連に命じた平成19年の東京地裁判決も確定している。東京地裁が競売開始を決定すれば、総連中央本部は差し押さえられる。

 

 総連は正当な司法手続きを経て示された判断を受け入れ、法治国家のルールに従うべきだ。

 

 在日朝鮮人系信用組合の破綻原因は不正融資だった。この事件では、当時の総連の財政局長が警視庁に逮捕され、総連中枢が不正融資に深くかかわっていたこ とが判明した。全国の信組から集められた金は、いったん総連中央本部の金庫に納められ、万景峰号などで北朝鮮に送金されたとされる。

 

 だがそれでも、預金者保護のためとして、同信組に1兆円を超える公的資金が投入された。すべて国民の税金だ。こうした経緯からも、総連が627億円をRCCに支払うのは当然である。

 

 都心の一等地にある総連中央本部は北朝鮮の大使館としての機能を持ち、在日朝鮮人のシンボル的な存在とされるが、差し押さえを拒む理由にはなるまい。

 

 北朝鮮のミサイル発射などに伴う制裁で万景峰号の入港が禁止された後も、総連は献金を募り、金正日総書記が死亡した昨年12月から2月までに申告があった分だけでも、1億3千万円が日本から北朝鮮に持ち出された。

 

 繰り返すまでもないが、総連は北朝鮮の工作機関に直結する組織として、さまざまな対日工作にかかわってきた。総連傘下の在日本朝鮮大阪府商工会幹部や元朝鮮学校長が日本人拉致事件に関与したことも明らかになっている。

 

 今年に入ってからも、北へのパソコン不正輸出に総連傘下の在日本朝鮮人科学技術協会(科協、東京都文京区)が関係したと疑われる内容のメールの存在が発覚し、科協などが外為法違反容疑で警視庁の捜索を受けた。

 

 総連の工作活動には、引き続き厳しい監視が必要である。

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