2013年04月

靖国神社への政治家の参拝について、「アメリカも反対している」といった論調が日本側の一部で流れています。確かにアメリカのメディアの一部、学者の一部はそうでしょう。

 

しかしその一方、中国の高圧的な対日抗議こそ不当だという意見はアメリカ側に多々あります。

 

日本でもよく知られたリチャード・アーミテージ氏がかつて述べた見解です。

 

【靖国参拝の考察】リチャード・アーミテージ氏
2006年07月20日 産経新聞 東京朝刊 総合・内政面

 ■対中外交 日米で防御戦略を

リチャード・アーミテージ前米国務副長官が産経新聞に語った日中関係や靖国問題に関する見解の詳細は次のとおり。

一、靖国問題は日中間の他の諸問題の症候だと思う。小泉首相の靖国参拝は日中関係を難しくした理由や原因ではない。ブッシュ大統領の「日中関係は単なる神 社への参拝よりずっと複雑だ」という言明のとおりだ。中国は靖国を日本への圧力に使っているため、日本がもしこれまでに靖国で譲歩をしたとしても、必ずま た別の難題を持ち出し、非難の口実にしただろう。現に小泉首相は前回の参拝は平服にして、公人ではなく私人であることを強調したが、中国側はその譲歩を全 く認めなかった。

一、歴史上、初めて北東アジアでは日本と中国の両国がほぼ同じパワーを有し、同じスペースを同時に占めるようになっ た。このため安保や領土など多くの問題が起きてきた。そのことが日中関係を難しい状態にするようになったのだ。それ以前の歴史では両国のいずれかが総合国 力で他方よりずっと優位にあったのだが、最近は対等な位置で競合するようになり、それが摩擦を引き起こしている。靖国問題はその症候なのだ。

一、米国社会では殺人者のような犯罪人までキリスト教などの教えに従い埋葬される。同様に日本でも祖先、とくに戦没者をどう追悼するかは日本自身が決める ことだ。その対象にはA級戦犯も含まれる。死者の価値判断は現世の人間には簡単には下せない。中国は日本の首相に靖国参拝中止の指示や要求をすべきではな い。米国政府も日本の首相に戦没者追悼の方法についてあれこれ求めるべきではない。見解や助言を伝え、協議することはできるだろう。だがとくに日中関係で いえば、民主的に選出された一国の政府の長である日本の首相が中国のような非民主的な国からの圧力に屈し、頭を下げるようなことは決してあってはならな い。

一、小泉首相には中国から靖国参拝を反対されている限り、その要求に従って参拝をやめるという選択はないだろう。中国は日本の現首 相、次期首相の参拝中止が表明されない限り、日本との首脳会談には応じないとして、自らを袋小路に追い込んでしまった。だが次期首相にその条件がそのまま 適用されるかどうか。安倍晋三氏はもし首相になっても靖国に参拝するかどうかはわからないままにしている。米国は日中関係に対しては決して中立者ではな い。日本は同盟国であり、中国はそうではないからだ。だから米国は靖国の論議の段階では中立を保つかもしれないが、日本が本当に小突き回されれば、日本を 支援する。

一、日本の首相の靖国参拝には問題がなくても、靖国境内にある遊就館の一部展示の説明文は米国人や中国人の感情を傷つける。 太平洋戦争の起源などについて日本の一般の歴史認識にも反する記述がある。日本が自国の戦争を記録するための軍事博物館を持つことは大切だが、そこにある 記述があまりに不適切なことは日本側でも再考されるべきだ。

一、日中関係の改善について日本側ではよくそのために日本が何をすべきかと いう問いかけが出るが、まず中国が何をすべきかということをもっと考えるべきだ。ダンスを踊るには2人の人間が必要なのだ。中国自身が長期の利害関係を考 えて、日本を含む隣人諸国ともっと仲よくしようと決めれば、靖国を含め、いろいろな手段がとれる。中国は日本への姿勢を今年3月ごろからいくらか柔軟に し、対決を避けるという方向へ動き始めたかにもみえる。日中外相会談の開催もその一つの兆しだ。

一、中国は民主化の方向へ動く気配もあ るが、なお基本的に一党独裁は変わらず、国内の矛盾や格差も激しくなる一方だ。秘密に包まれたままの軍事体制での軍拡もなお続いている。このまま軍事力を 中心とする国力を強めた末、覇権を求める野心的なパワーとなるのか、それとも既存の国際秩序の保持に加わるステークホルダー(利害保有者)となるのか、自 分たちもまだわからないのではないか。日米両国は同盟パートナーとして、そのどちらのケースにも備えるヘッジ(防御)戦略を協力して構築する必要がある。 (ワシントン 古森義久



【プロフィル】リチャード・アーミテージ

1967年、米海軍兵学校卒、海軍軍人としてベトナム勤務。73年に退役し、国防総省勤務、上院議員補佐官を経て83年にレーガン政権の国防次官補。2001年から04年末まで国務副長官。現在はコンサルタント企業「アーミテージ・アソシエイツ」代表。

 アメリカ上院のボブ・コーカー議員の中国批判論文の紹介を続けます。

 今回分でこの主題は終わりです。

 

 コーカー議員は中国こそ北朝鮮の軍事冒険主義を抑えられるのに、その努力をしていないと批判するわけです。

 

 その批判の過程で同議員は日本の核武装の可能性についても語りました。

 

 日本ビジネスプレス「国際激流と日本」からです。

 

 原文へのリンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37657

国際激流と日本

北朝鮮の軍事挑発を許す中国の責任

米国議員が警告、このままでは日本も含めた核武装競争に

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 コーカー議員は、日本の憲法改正への動きも、そうした北朝鮮の脅威の増大と米国の核抑止への信頼の縮小を動機とする部分が多いのだと指摘する。韓 国内部では自前の核武装を求める意見が強くなっており、韓国が核保有へと走ると、日本もその方向への歩みを速めるかもしれない、というのだ。

 

 同議員はさらに論文で、オバマ政権の高官たちは「中国は最近、北朝鮮への態度を硬化させ、核武装阻止のための経済制裁強化などに賛成するように なった」という見解を語るが、実際にその証拠はなく、中国から北朝鮮への燃料や食料は相変わらず分量を変えることなく流入を続けている、と強調する。

 

 中国 の李克強首相は米国に対し、北朝鮮を挑発するような行動を一切取らないよう求めたという。挑発は北朝鮮ではなく米国による、という前提のようなのだ。

日本の核武装が中国への圧力の武器となる

 そしてコーカー議員は次のような諸点を強調するのだった。

 

 「中国のいまの態度は許容できない。北朝鮮が脅威である限り、米国は中国のすぐ周辺の軍事プレゼンスを今後増強する。米国はまた日本と韓国の防 御、攻撃の両面での軍事能力の強化を激励する。東アジアでの韓国や日本をも含めての核武装競争はもはや単なる仮定ではなく、現実性を帯びてきた」

 

 「米国政府は北朝鮮の非核化という従来の目標を追求する限り、中国への態度を厳しくし、まず北朝鮮と取引のある金融機関への米国独自の制裁を大幅 に強めるべきである。朝鮮半島の将来について中国は米国と真剣な対策を取らねばならない時期がきた。現状維持という選択肢はもうあり得ない」

 

 コーカー議員はこうした強い対応を提唱するのだった。

 

 このままだと日本が核武装へ進むかもしれないという予測は、年来の日本の核アレルギーを考えれば、非現実的に響く。しかし米国の有力議員が日本の核武装を予測し、さらにその核武装を中国への圧力の武器とする戦略を提示するのだ。

 

 コーカー議員はその前提として、日本を覆う米国の「核のカサ」が効用をなくしていくという可能性をも指摘する。こうした言辞は、日米同盟の現実や、米側の対日政策のどこか根底で新たな変化の潮流が流れ始めたことの予兆とも受け取れるのである。

(終わり)

日本の首相が靖国神社に参拝することは自然であり、外国政府がそこに干渉することは不適切である。

 

こんな意見がアメリカの識者から述べられました。

 

2006年の小泉政権のころでした。

 

しかしその識者の意見はいまも変わりないようです。

 

死者の慰霊は人間の最も内面的な領域だというのです。

 

外部の人間や組織がそこに踏み入ることは、まったく不届き、というわけです。

 

その意見をいまもう一度、紹介します。

 

 

【靖国参拝の考察】(上)ケビン・ドーク 米ジョージタウン大教授
2006年05月25日 産経新聞 東京朝刊 1面

 ■毎月訪れて、敬虔さ示せ

中国政府などが非難する小泉純一郎首相の靖国神社参拝への国際的考察として、日本の近代史を専門に研究する 米国ジョージタウン大学東アジア言語文化学部長のケビン・ドーク教授は、首相の参拝は政治ではなく精神や心情に基づく戦没者への弔意の表明として奨励され るべきだとする詳細な見解を産経新聞に寄稿した。同教授は靖国参拝に対し中国や米国が干渉することは不適切だとも論じた。

私は日本の近 代史、とくにナショナリズム、民主主義、文化などを専門に研究する米国人学者として、靖国神社をめぐる論議には長年、真剣な関心を向けてきたが、自分の意 見を対外的に表明することは控えてきた。靖国問題というのは日本国民にとって祖国への誇りや祖国を守るために戦没した先人への心情にかかわる微妙な課題で あり、あくまで日本国民自身が決めるべき内面的な案件だと考えてきたからだ。

ところが最近、中国だけでなく米国の論者たちが外部から不 適切な断定を下すようになった。だから私も日本の自主性への敬意を保ちつつ、遠慮しながらも意見を述べたいと考えるようになった。私の意見は日本の国民や 指導者が自らの判断で決めたことであれば、靖国参拝をむしろ奨励したいという趣旨である。その理由を、これまでの論議でほとんど語られていない観点からの 考察も含めて説明したい。

民主主義社会の基礎となる個人の権利や市民の自由は他者の尊厳への精神的な敬意が前提となる。とくに敬意を表明する相手の他者が死者となると、それを表明する側は目前の自分の生命や現世を超えた精神的、精霊的な意味合いをもこめることとなる。

死者に対しては謙虚に、その生前の行動への主観的な即断は控えめに、ということが米国でも日本でも良識とされてきた。死者を非難しても意味がないというこ とだ。ましてその死者が祖国のための戦争で死んだ先人となると、弔意には死の苦痛を認知できる人間の心がさらに強い基盤となる。その心の入れ方には宗派に とらわれない信仰という要素も入ってくる。

以上が現在の米国でも日本でも戦没者を悼むという行為の実情だろう。小泉純一郎首相の靖国参 拝もこの範疇(はんちゅう)であろう。首相自身、自分の心情を強調し、政治的、外交的な意味を否定しているからだ。それに対し外部から無理やりに政治や外 交の意味を押しつけ、参拝の中止を要求することは人間の心を排除し、民主主義の基本を脅かすことになりかねない。個人の精神の保ち方や信仰のあり方が脅か されるからだ。

だから私は挑発的と思われるかもしれないが、小泉首相に年に一度よりも頻繁に、たとえば毎月でも靖国を参拝することをま じめに提案したい。そうすれば首相は反対者の多くが主張するように戦争や軍国主義を礼賛するために参拝するのではなく、生や死に対する精神、信仰の適切な 応じ方を真に敬虔(けいけん)に模索するために参拝していることを明示できる。その明示の最善の方法は信仰にもっと積極的になることであり、そのために儀 式上どのような祈念の形態をとるかは首相自身の権利として選べばよい。

首相は戦没者の慰霊には靖国ではなく千鳥ケ淵の無名戦士の墓のよ うな所に参ればよいという意見もある。しかし普通、生きている人間が死者に弔意を表することには現世を超越した祈りがこめられる。信仰とはまったく無縁の 世俗的な場での戦没者への追悼では遺族にとっても重要な要素が欠けてしまう。国家としての追悼として不十分となる。

米国でもアーリント ン墓地での葬儀や追悼にはなんらかの信仰を表す要素がともなうことが多い。往々にしてキリスト教の牧師らが祈りの儀式を催す。葬儀が教会で行われるのも同 様だ。日本でも葬儀が寺や神社で催されるのは、別に参加者が一定の宗派の信者でなくても、死者に対し精神あるいは心情からのなにかをささげるからだろう。 靖国参拝も現世を超えるそうしたなにかをともなう慣行だといえる。靖国に参拝するためには神道の主義者でも信者でもある必要はないのだ。この事実は靖国参 拝が特定の宗教への関与ではないことを裏づけている。宗派を超えた深遠な弔意表明とでもいえようか。



【プロフィル】ケビン・ドーク

1982年米国クインシー大学卒業、シカゴ大学で日本研究により修士号、博士号を取得。ウェークフォレスト大学、イリノイ大学の各助教授を経て、2002 年にジョージタウン大学に移り、同大学東アジア言語文化学部の教授、学部長となる。日本での留学や研究も高校時代を含め4回にわたり、京大、東大、立教 大、甲南大などで学ぶ。

日本の近代史を基礎に日本の民主主義、ナショナリズム、市民社会、知的文化などを専門とする。著書は「日本ロマン派と近代性の危機」(日本語版題「日本浪曼派とナショナリズム」)など。

日本が自国の戦没者に弔意を表することと、他国の領土をいま現在、武力で占領すること(韓国の実例)や、新たな空母を配備すること(中国の実例)とを同列におくというのだから、常識の世界を超えています。

 

そのうえに日本の一部の政党やマスコミが自国の政治家の先人への弔意表明をあたかも他国への軍事攻撃であるかのように、ネガティブに語る。しかも中国や韓国の法外の誹謗を大々的に報じる。

 

狂っているという言葉をあえて使うしかありません。

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そもそも靖国問題というのは中国や韓国が日本を骨抜きにするため、あるいは日本を単に叩くための政治的な加工品として登場してきたのです。

 

アメリカ側にもその中国などの不当な態度の陰にある真の意図を指摘する識者たちがいます。

 

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中国の「靖国」攻撃 東シナ海交渉避ける口実
2006年05月19日 産経新聞 東京朝刊 総合・内政面

 【ワシントン=古森義久】米国務省の元中国分析部長で現ヘリテージ財団中国専門研究員のジョン・タシック氏 は十七日、産経新聞との会見で日中間の靖国問題や米国の対応について語り、中国側がいま靖国問題を日米同盟へのクサビとして利用しつつあるという見解を明 らかにした。同氏はさらに、中国は靖国問題での日本攻撃でアジアでの優位の誇示を狙い、日本側とは東シナ海の資源開発などでの交渉を避けるためにもこの問 題を利用している、と述べた。

小泉純一郎首相やその後継者に靖国神社参拝の中止を強硬に要求する中国の動機についてタシック氏は「米国 と、アジアでの日本のような同盟国とを離反させることは中国の年来の政策だが、日本に対してはいまや靖国問題を操作し、利用して日米同盟にクサビを打ち込 もうと画策している」と指摘した。

同氏は、中国がいま米国各界に靖国問題で日本を批判することを促す動きをとっていると指摘するとともに、クリントン政権時代には尖閣諸島問題を使って日米離反を図ったものの成功しなかった、と説明した。

タシック氏は中国指導部が靖国問題で小泉政権に対決的な圧力をかけることのほかの目標として(1)中国やアジア諸国の国民にアジアでは中国こそが最優位に 立つパワーであり、日本にいくらでも屈辱を与えられることを誇示する(2)中国が道義的にも民主主義の日本より上位に立つことを示し、自国の道義性を誇る (3)靖国を理由とする首脳会談の拒否で東シナ海の資源開発や領有権などでの本格交渉を避ける-ことなどをあげた。(3)に関しては「中国は東シナ海での 排他的経済水域(EEZ)や軍事問題をめぐる主張で日本に対して分が悪いため、交渉はできるだけ避けたいのが本音で、靖国問題を口実にした会談拒否をその 目的に利用している」と説明した。

日本の対応については「中国の靖国非難は日本弱化戦略の一端であり、小泉首相がたとえ中国に折れて、 参拝中止を言明しても、また中国側は歴史認識、教科書、政府開発援助(ODA)問題、日米同盟強化策、台湾問題など次々に新たな非難材料を持ち出してくる というのが米国の中国専門家の大多数の見方だ」と述べ、「小泉首相は中国の圧力には断固として反撃し、一定以上の日本糾弾には代償がともなうことを知らし める一方、日本国内の異論には別個に対応すべきだと思う」との見解を明らかにした。

米国の対応に関してタシック氏は「米国にとって日本は同盟国であり、中国は潜在敵性国だから、靖国問題でも日本の立場を支持すべきだ。ブッシュ政権も基本的にはそういう姿勢だといえる。米国が日中間で中立の第三者として調停するなどというのは間違いだ」と語った。

米国議会下院国際関係委員長のヘンリー・ハイド議員が小泉首相の靖国参拝に批判を表明したとされることについては「確かに米側で日本軍と実際に戦った世代 には靖国参拝への反発があるかもしれないが、小泉首相らは日本には戦犯とされた人でも死後はムチを打たず、国を守ろうとしたほかの戦死者とともにその霊に 弔意を表することに社会的、精神的、道義的な深い理由や文化があることを説明して、理解を得ることができるだろう」と述べた。



【プロフィル】米ヘリテージ財団 ジョン・タシック研究員(中国専門)

ジョージタウン大学卒業後、1971年から米国務省の外交官となり、中国を専門とし、中国、香港、台湾に通算15年余り駐在した。92年には国務省情報調 査局中国分析部長。2001年からワシントンの大手シンクタンクのヘリテージ財団に入り、中国分析の専門研究員として現在にいたる。

 アメリカのコーカー上院議員の論文の紹介です。

 

同議員は日本や韓国が年来の「アメリカの核抑止にもう依存できない」と感じるようになったと書いています。オバマ政権の「核廃絶」ならそうなるのかもしれません。

 

しかしこの論文の主題はあくまで中国批判です。

     

原文へのリンクは以下です。 

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37657

国際激流と日本

北朝鮮の軍事挑発を許す中国の責任

米国議員が警告、このままでは日本も含めた核武装競争に

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  コーカー議員は米国議会でも影響力の大きい上院外交委員会の共和党側筆頭議員である。その発言のインパクトは強力な重みを発揮する。日本側としても知っておくべきだろう。

 

 特にこのコーカー議員はつい最近、アジアの日本、中国、韓国を歴訪し、3月26日には安倍晋三首相と会見したばかりだった(ちなみにコーカー議員 は東アジアを「日本→中国→韓国」という順番に歴訪した。オバマ政権のジョン・ケリー国務長官の「中国→韓国→日本」という順番とは対照的だった)。

中国もオバマ政権も北朝鮮に対して手ぬるい

 コーカー議員は4月16日付の大手紙「ウォールストリート・ジャーナル」に「中国は核武装した日本と韓国を本当に望むのか?」という見出しの寄稿論文を掲載した。

 

 趣旨をまず簡単に総括すると、「北朝鮮の核武装もミサイル発射も、もし中国が止めようと思えば、止められたはずだ。それなのに、中国はその任務を 果たしていない」という指摘と、中国への改めての圧力行使だった。そして「中国が何もしなければ、日本と韓国が共に核兵器を保有するという新たな状況を覚 悟せねばならない」という警告が含まれていた。

 

 コーカー論文の内容を少し詳しく紹介しよう。

 

 まずコーカー議員は今回の東アジア3カ国歴訪で安倍晋三首相や朴槿恵大統領、中国政府高官に面会した結果を踏まえ、「日本や韓国では事態の悪化へ の深刻な懸念が表明されていたが、中国では事態を軽視し、政府高官は『米国は北朝鮮の脅威を誇張しすぎる』とか『米国はもっとリラックスすべきだ』と述べ ていた」と報告する。そしてコーカー議員は、中国当局は北朝鮮の核武装は本当は容認しており、真剣にそれを阻止するための努力はしていないのだと指摘す る。

 

 同議員はさらに、オバマ政権も言葉では同盟国の日本と韓国への拡大核抑止の保証を強調しているが、米国の核抑止力を強化しない現状では、その抑止 の信頼性はすっかり減ってしまうと、警告する。日本や韓国は、北朝鮮が核兵器を実際に配備して威嚇してきた場合、米国が守ってくれるという従来の約束には もう依存できないと判断するようになる、というのだ。

(つづく)

 

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