2013年05月

 中国の軍拡と日米同盟の将来についての報告です。

 日米同盟はこのままだと効力を失っていく、という趣旨です。

 

 このエントリーはこれで終わりです。

 

 日本ビジネスプレス「国際激流と日本」からです。

 

 原文へのリンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/category/diplomacy

 

国際激流と日本

日米同盟にとって「現状維持」は危険

中国軍拡への日本の有効な対応とは

 

 

 

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・当事国すべてにとって、安全保障の新しい関係を構築するまでの政治、軍事の交渉の期間に生じる不安定や挫折への懸念が生じる。

 

 しかし報告は以上のような障害にもかかわらず、米国も日本も新たな政策を真剣に検討せねばならない、と強調していた。なぜならば、現状維持は好ましくないからだというのである。

 

 おそらくこの点がこの膨大な報告全体でも、最も重要なポイントだと言えるかもしれない。日本にとっても、米国にとっても、さらには日米同盟にとっても、現在の東アジアでの安全保障の状態は現状維持を許さない、というのだ。

 

 その点を、報告は以下のような表現で総括していた。

 

 「現状維持は保持不可能だということが確実に証明されるだろう。米国も日本も、たとえ政治的な障害が予期されようとも、本報告が提案した政治、軍 事の新政策の採択を真剣に考えてみなければならない。中国、日本、米国の関係についての現在の経済的、軍事的な傾向は、現行の政策や戦略では長期的に見 て、日米両国の利益に合致する安定した安全保障環境を保てないという展望を示しているのだ」

 

 要するに日本も米国も、中国の膨張する軍事パワーに対してかなり画期的な対抗策を取らなければ、日本を取り囲む東アジアの安全保障構図は大きく揺らぎ、中国が有利な方向へと大きく傾いていく、という勧告なのである。

 

 だからこの報告は、日本の安倍政権、そして米国のオバマ政権の両方に大きな政策提言をしたのである。その提言は「現状維持こそ危険だ」とする警告でもあった。

(終わり)

 中国の軍拡に対して、日本はどうするべきか。

 

 その報告の続きです。

 

 日本ビジネスプレス「国際激流と日本」からです。

 

 原文へのリンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/category/diplomacy

 

国際激流と日本

日米同盟にとって「現状維持」は危険

中国軍拡への日本の有効な対応とは

 

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(1)強固な前方配備策

 

 (この対応は抑止強化の考えに基づく。米国防総省が内定した「空・海戦闘」戦略のような対中海上封鎖能力や、制空能力の確保など、軍事前方配備を大がかりに強化して中国に対する地域的な軍事優位を保つ)

 

(2)条件つき攻撃・防御総合策

 

 (この対応も日米同盟側が軍事優位を保つことを目指すが、中国本土の深奥部への爆撃や中国封じこめ式の海上封鎖など予防攻撃的な準備は避ける。抑止力と信頼の両方に均等に重点を置く)

 

(3)防衛的均衡

 

 (この対応は、中国との間で相互の地域接近否定を進め、抑制された防衛態勢、後方配備への依存を重視する。西太平洋全域で中国との間に、より均衡のとれた協力的な力関係を確立する)

画期的な対抗策を取らなければ日米同盟は危機に

 報告は以上のような政策提案を明示しながらも、これらの政策の実現には多様な困難や障害が避けられないことを付記していた。それらの諸要因は以下のようのものだという。

 

・日本やアジア太平洋地域の他の諸国にとっては、自国の安全保障を基本的に強化することも、協力的にすることにも、制限がある。

 

・米国軍部にとっては、西太平洋での作戦に関してこれまでのドクトリンの大前提を変えることに抵抗がある。

 

・中国自身が、自国の軍事能力の拡大を制限しようとする日米同盟の試みに不信を抱く。

(つづく)

 中国の大軍拡がこんご日本にどんな影響を与えることになるのか。

 2030年ごろの日中の構図を予測した報告の紹介です。

 

 中国は強大な軍事力を威嚇の道具に使って、日本を意のままに扱うようになる。ただし軍事力を実際に使わないでよい。

 

 こんな予測なのです。

 

 では日本はどうすればよいのか。

 

 日本ビジネスプレス「国際激流と日本」からです。

 

 原文へのリンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/category/diplomacy

 

国際激流と日本

日米同盟にとって「現状維持」は危険

中国軍拡への日本の有効な対応とは

 

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 前回のコラム(「心しておくべき2030年の日中軍事バランス 中国の軍拡で迫る日米同盟の危機」)では、中国の軍拡が日本の安全保障や日米同盟の機能に与える影響を分析した報告を紹介した。この報告とは、米国の大手シンクタンク「カーネギー国際平和財団」が長期にわたって行った大規模な研究を総括したものである。

 

 その結論として打ち出されたのは、「2030年頃には中国の軍事パワーが、日本の防衛力も、日米共同の抑止力をも圧するようになり、日中間での紛争案件が中国の軍事優位によって、中国の求めるように決着してしまう、という状況が最も確率が高い」との予測だった。

 

 「中国が軍事能力を強大化することによって、日本との紛争は競合の案件を軍事力を実際に使うことなく、中国にとって有利に解決してしまう展開になる」というのである。当然、まず中国が尖閣諸島を有無を言わさず奪取することが考えられる。

日米同盟の長期的な利益を前進させるための3つの対応

 では、日本あるいは日米両国はこんな展望に対し、どうすればよいのか。

 

 この展望は、日本にとってはもちろんのこと米国にとっても好ましいシナリオではない。そんな可能性が予測されるならば、その実現を防ぐための措置が取られねばならない。この報告は、日米両国が打ち出すべき政策についても提言していた。

 

 その提言とは、以下のような骨子である。

 

 「全能の解決策はあり得ない。いかなる同盟でも、当事者すべてを一気に満足させ、軍事、政治の領域での好ましい均衡状態をもたらす単一の対応は不 可能である。地域の安全保障の状況を改善するどの対策も、なんらかの犠牲や苦痛を伴う。選択によっては日米両軍の役割や任務を劇的に変えてしまうような大 規模な修正もあり得る」

 

 報告はその政策提言として、「日米同盟の長期的な利益を前進させるために考えられる政治・軍事面での3つの対応」を具体的に挙げていた。

 

(つづく)

各新聞とも橋下徹氏の記者会見の模様をいろいろな角度から報じています。

 

以下の産経新聞の社説はその包括の一種ともいえるでしょう。

 

 

【主張】慰安婦問題 不当な日本非難に反論を

 

 日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長は日本外国特派員協会で会見し、慰安婦問題に絡んで在日米軍幹部に「風俗業を活用してほしい」などと述べた発言を撤回、謝罪した。当然である。

 

 橋下氏が13日に大阪市役所で述べた発言は明らかに女性の尊厳を損ない、米軍や米国民をも侮辱した不適切な表現だった。これに対し、特派員協会での橋下氏は、出席者に配った「私の認識と見解」と題する見解文書も含め、慎重な言い回しに終始した。

 

 橋下氏は「国家の意思として組織的に女性を拉致したことを裏付ける証拠はない」とも述べ、慰安婦問題に関する平成5年の河野洋平官房長官談話について「否定しないが、肝心な論点が曖昧だ」と指摘した。

 

 河野談話は、根拠なしに慰安婦の強制連行を認めたものだ。橋下氏は以前、「河野談話は証拠に基づかない内容で、日韓関係をこじらせる最大の元凶だ」と主張していた。これこそまさしく正論だ。後退させる必要はない。

 

 橋下氏の発言で、再び国際社会で誤解が広がりつつあるのが心配だ。国連の拷問禁止委員会は「慰安婦の強制連行があったのは歴史的に明白だ」とし、教育の徹底が必要だと指摘した。

 

 だが、第1次安倍晋三内閣は平成19年、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲による強制連行を直接示す記述は見当たらなかった」との政府答弁書を閣議決定している。同委員会の指摘は明らかに間違いである。

 

 また、中国の李克強首相はドイツでの演説で、日本が受諾したポツダム宣言(1945年)を持ち出し、尖閣諸島を念頭に「日本が盗み取った」と主張した。 中国が尖閣の領有権を言い出したのは1968年、国連のアジア極東経済委員会(ECAFE)が「付近の海底は石油資源埋蔵の可能性が高い」と発表してから だ。ポツダム宣言とは何の関係もない。

 

 菅義偉官房長官が「あまりにも歴史を無視した発言だ」と批判したのは当たり前である。

 

 最近、米ニューヨーク州やニュージャージー州議会などで、慰安婦の「強制連行」を既成事実として決めつけた対日非難決議が相次いでいる。韓国系米国人らの反日活動の影響とみられる。

 

 安倍政権はいわれなき日本非難には、きちんと反論すべきだ。

 日本の国のあり方をめぐる最近の内外の論議について、田久保忠衛氏が興味ある一文を書いています。

 

 そのなかで日本の護憲派と結びついてのアメリカ左派の改憲反対論の粗雑さを指摘している部分がとくにおもしろいと思いました。

 

                  _______

 

【正論】杏林大学名誉教授・田久保忠衛 「右傾」化でなく「普通の国」化だ
2013年05月24日 産経新聞 東京朝刊 オピニオン面

 ≪米中韓が手組み対日非難?≫

太平洋地域全体に繰り広げられた巨大な魔術に目を見張っているところだ。21世紀最大の課題は中国の軍 事的膨張であり、価値観をともにする2期目のオバマ米政権と日韓両国の新政権が、その中国と平和裏にいかにいい関係を続けていくかだと思っていた。ところ が、あっという間に、諸悪の根源は、安倍晋三内閣閣僚を含めた日本の政治家の靖国神社参拝や、「侵略の定義」に関する安倍首相のコメントや、他の政治家の 慰安婦発言になってしまった。日本に対し米中韓の3カ国が手を組んで非を鳴らしている構図である。

4月末に、ニューヨーク・タイムズ、 ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナルの米3紙と、英紙フィナンシャル・タイムズなどが一斉に、安倍批判の社説を掲げ、コロンビア大学の ジェラルド・カーティス教授は、朝日新聞紙上で憲法96条改正反対を主張し、自民党の改憲案は時期尚早だと批判した。

5月には、作家の大江健三郎氏らが代表する護憲の「九条の会」が、安倍政権の狙う第9条改正は「絶対に許せない」とのアピールを出した。カーティス教授の発言は慎重だが、日本の護憲派や中韓両国と口裏を合わせたような米英などの粗雑な議論には辟易(へきえき)する。

中でも、悪質なのはフィナンシャル・タイムズ紙であった。「日本の同盟国である米国ですら、容易ならざる事態を引き起こしてしまったのではないかと困惑し ている」と断じ、「問題は靖国が天皇崇拝の狂信的カルトと救い難いほど結びついていることだ」と書いた。型にはまった決まり文句を繰り返すだけだ。

日本人が死者の霊にどう対面しているかの理解は、悲しいほど乏しい。三島由紀夫とも親交のあった英国人でニューヨーク・タイムズ紙東京支局長だったヘンリー・スコット・ストークス氏が、日本人の思考に敬意を込めて書いた記事を、この英紙の社説子は読み返したらいい。

≪米3紙安倍批判は改憲ゆえか≫

占領基本法ともいうべき現行憲法には、大規模自然災害、外国からの攻撃、内乱、大規模サイバー攻撃に対応できる緊急事態条項が欠けていることぐらいは、外 国の記者も当然知っているだろう。新しい憲法の前文には、独立国日本の国柄を明記し、世界で政治的に安定している立憲君主制を謳(うた)い、独立自存の道 義国家を目標に据え、認知されていなかった自衛隊を軍にする-、産経新聞の「国民の憲法」要綱こそは、平和のための憲法だろう。これに対する直接の言及は ないが、前述の米3紙の安倍批判が改憲批判に直結しているのは明らかだ。

本欄で前に紹介したと思うが、私には痛切な経験がある。読売新 聞が「憲法調査会」を発足させた1992年を機に、各政党や組合その他の団体で憲法論議が盛り上がった。民社党の支援団体「民社党と語る会」(関嘉彦会 長)も、民間の有識者を集め、私が座長になって報告書を取りまとめた。

そのころニューヨーク・タイムズは「日本には平和を選ばせろ」と の見出しで社説を書いた。タイトルもさることながら、内容は高飛車で、(1)日本は「平和憲法」に手を付ける必要はない(2)第9条は米国が命じて書き取 らせたものだ(3)日本の右翼政治家たちは尻込みしている大衆を前進させようとしている-といった、読むに堪えない無礼な表現が羅列されていた。

関会長と私は、同紙東京支局責任者に会い、日本の改憲の動きに社説がいかにひどい偏見を抱いているかを冷静に説明した。戦前に戦闘的自由主義者といわれた 河合栄治郎直系の思想家でもあった関会長は、用意してきた英文を相手に手渡し、投書欄でもいいから掲載してほしいと要請した。

≪オバマ政権を信じたいが…≫

忘れたころに、この反論が載ったことを知ったが、これでは誰も読むはずがない。押しなべて、米紙の論調は少しでも日本が「普通の国」に動こうとすると、 「戦前化」「軍国主義化」「右傾化」という、うんざりする用語を羅列して批判を繰り返してきた。今回の安倍批判も例外ではない。

オバマ 政権は、歴史認識を常に外交問題化しようと企(たくら)み、虎視眈々(たんたん)とあらゆる機会を狙ってきた隣国に軽く乗るようなことにはならぬと信じた い。が、米政府関係者からはすでに首を傾(かし)げたくなる発言が伝えられている。これでは日本の親米論者にも動揺が走る。

日米関係に 暗雲が漂い始めた昭和初期、駐中国米公使(現在の大使に相当)だったジョン・ヴァン・アントワープ・マクマリー氏は、米国が反日、親中に流れていく傾向に 反対して覚書を本省に送ったが、日の目を見なかった。戦後、ソ連の軍事的増大に対抗する形で「強い日本」を望んだのはジョージ・ケナン氏だった。

オバマ政権は、明日の日本を担う健全な政権を肯定的に捉えるのか、距離を置こうとするのか。マクマリーやケナン不在のままで、歴史は繰り返されるかもしれないのである。(たくぼ ただえ)

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