2013年07月

 日本の新しい政治状況へのアメリカの新聞の論調です。

 

 主権国家としての日本の内部にまで踏み込んで、あれこれ指示するという態度。

 

 たとえ単にニュースメディアの伝えることであっても、ここまで我が物顔のお説教を受ける理由もみあたりません。

 

 

日本ビジネスプレスからです。

 

原文へのリンクは以下です。

 

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38292

国際激流と日本

自民党の大勝利を米国メディアはどう伝えたのか

中韓への配慮? 安倍首相の「ナショナリスト」ぶりを警戒

 

 

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  「しかし日本の野党筋の政策関係者たちが警告するところによると、安倍氏は右翼的な目標を重視することにもなるだろうという。若者たちのための愛国 主義的な教育、日本の自衛隊の活動への制約の緩和、小さな島をめぐる激しい紛争での中国に対するより強固なアプローチなどが安倍氏のその種の目標だとい う」

 

 この記事での上記のような右翼、修正主義、ナショナリストというような安倍氏に対する描写は根拠も意味も曖昧なレッテル言葉である。そもそも民主 的な選挙の結果、国民多数の支持を得て、政治の最高指導者に選ばれた同盟国、しかも民主主義の国家の最高リーダーに対して使うべきレッテルではないだろ う。いかにも、まずレッテル言葉ありき、という記事なのである。

歴史の「塗り替え」を米国民は望まない

 ワシントン・ポストも論説で日本の参院選結果を取り上げていた。「安倍氏への信託」という主見出しの短い論評だった。脇見出しには「日本の首相はより深い改革をもたらせるか」とあった。経済改革のことだろう。

 

 しかしこの論説にも経済以外の領域について以下のような記述があった。

 

 「安倍氏は日本の軍隊が自国の防衛だけでなく、集団的自衛にもかかわれるようにするため、『平和憲法』を再解釈するだろう。集団的自衛というのは、日本が、北朝鮮の攻撃を受けた米軍艦艇をも支援できるような状況を意味する」

 

 「これらはみな日本では意見の分かれる問題であり、特に憲法の再解釈は日本の近隣諸国にとって論議を呼ぶこととなる。だが、これらは自民党の右派 がプッシュする日本の第2次世界大戦中の行動の再評価――ある批判者たちは『塗り替え』と呼ぶ――ほどは問題ではない。“勝者の提示する歴史が日本を不当 に扱っている”という主張には同情の余地もあるが、安倍氏の側近たちは、安倍氏がこの危険な方向へ進むことには政治的資産をあまり使わないだろうと予測し ている。米国民もその通りになることを願っている」

 

 「北朝鮮が核武装を止めようとせず、中国がその核武装の阻止に協力の構えを見せている現状では、健全な日米同盟こそがアジア地域での安定のための 最善の希望である。その日米同盟は経済的に繁栄する日本と衝突のない日韓関係に依存することになる。日本はここ10年ほど不安定要因となってきたが、いま や安倍首相はアジア地域や日米同盟のための安定を提供できる最善の機会を迎えたのだ」

 

 この主張も一読すると、理にかなっているようにも響くが、よく考えるとおかしい。

 日本は韓国との関係や日米同盟のために、自国の正常化である憲法改正や歴史誤認是正に手をつけるな、というのである。

(つづく)

 さあアメリカの新聞の日本政治観をさらに伝えましょう。

 

 

日本ビジネスプレスからです。

 

原文へのリンクは以下です。

 

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38292

国際激流と日本

自民党の大勝利を米国メディアはどう伝えたのか

中韓への配慮? 安倍首相の「ナショナリスト」ぶりを警戒

 

 

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 ウォールストリート・ジャーナルは、日頃、中国に対しては毅然とした論調が多い。しかし社説のこの部分は不自然に弱気に響く。中国の日本に対する軍 事的な威嚇や挑発を非難することなく、日本側だけに自制を求めている。オバマ政権の対中政策の弱気志向に影響されたからだろうか。

 

 また「米国の兵器をもっと買え」というのも、いかにも米国の経済上の利益優先という露わな計算をも感じさせる。日本を世界で最も重要な同盟パート ナーとして認識し、その防衛力の増強も歓迎するというブッシュ前政権までの米国当局の意向が、すっかり後退したことを実感させる論調だった。

まずレッテル言葉ありき、という記事

 続いてワシントン・ポストは 第10面の大きなニュース記事で、「日本の有権者が与党に決定的な勝利を与える」という見出しを掲げていた。脇見出しは「安倍にとって、選挙結果は近年の 指導者たちが得られなかった国民の信託を意味する」ともうたっていた。

 

 要するに日本国民は安倍首相の率いる与党の自民党にほぼ完全な信託を与えたというの である。その最大の要因として同記事は、「世界第3の経済を復活させる野心的な計画への強い支持」を挙げていた。

 

 しかし、この記事は以下のようにも述べていた。

 

 「安倍氏がこの選挙で得た政治的なパワーをどう使うかは、日本の経済の長期的な健全性と日本のアジアの近隣諸国との関係を左右することになる。分 析者たちの述べるところでは、安倍氏は、困難かつ必要不可欠な改革や緊縮の措置を含む経済政策目標を第1に追求するだろう。しかし強固なナショナリストと しての安倍氏は、今回の選挙結果で自信を深め、アジアの歴史の修正主義的な見解を今まで以上に自由に語るようになるかもしれない。それは、日本の帝国主義 的な侵略を否定し、中韓両国を激怒させるような見解なのだ」

 

 ここでも「ナショナリスト」とか「修正主義的」とか、安倍政権にとっては一方的な断罪に近い言葉がなんの根拠も示さずに簡単に使われていた。中国と韓国の主張する「歴史」はすべて正しいという前提も明白だった。

 

 同時に本記事は、安倍氏が今回の選挙で政治的な安定を得たことを強調していた。だからこそ安倍政権はその求める通りの政策を自信を持って進められる、というのである。

 

 他方、この記事は以下のようにも記述していた。

(つづく)

 

安倍晋三氏が率いる自民党が参院選で大勝したことへのアメリカのメディアの論評です。

 

おかしな指摘や主張も多々あります。

 

日本側としてきちんとした反論や説得が必要です。

 

日本ビジネスプレスからです。

 

原文へのリンクは以下です。

 

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38292

国際激流と日本

自民党の大勝利を米国メディアはどう伝えたのか

中韓への配慮? 安倍首相の「ナショナリスト」ぶりを警戒

 

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  しかしこの種の米側の見解にはいくつかの欠陥がある。その諸点についての正しい認識を米側に求めるのは、安倍政権の今後の対米外交の課題でもあろう。

 

 その欠陥とは第1に、憲法改正をはじめ、「普通の国家」への志向はなにも安倍晋三氏個人だけが主導する動きではなく、日本国内の広範な層から湧き上がる国民多数派の意思であることを見ていない点である。

 

 第2には、その「普通の国家」への志向をいかにも特殊なナショナリスティックでタカ派的な動きとして描く点である。戦後の日本は米国から押しつけ られた憲法により、一切の軍事力の行使を禁じられた。自国の防衛のための軍事力行使でさえも、憲法の規定を文字通りに読む限り、事実上の自縄自縛となって いる。安倍氏が求めるのも、その世界でも唯一の自縄自縛、軍事禁止を取り除き、他の諸国と同じ安全保障上の自由や権利を得ようという、ごく消極的な措置な のだ。つまり、ごく平均的の正常な国にしようというだけである。

 

 第3には、安倍政権の中国や韓国に対する姿勢は、そもそも中韓両国の反日言動によってやむにやまれず生まれた自衛の対応措置だ、という現実を無視 する点である。米側のこの種の論評は日本が戦後の長い期間、「村山談話」や「河野談話」に象徴される謝罪外交、自粛、自虐の外交をさんざん続けてきたのに 中韓両国はなお謝罪や卑下を求め続ける、という基本構図を見ようとしない。

日頃、中国に対して毅然とした論調が多いWSJだが・・・

 ウォールストリート・ジャーナルは選挙結果を社説でも取り上げていた。「安倍の改革の始まり」と題する短い論評だった。副見出しには「日本の首相にとって必要なのは、より高度な経済成長であり、中国との戦いではない」とあった。

 

 この社説は安倍氏が経済成長政策に成功し、有権者の圧倒的な支持を得たと強調していた。そのうえで経済面での安倍政権の今後の課題はアベノミクス「3本の矢」のうちの「第3の矢」の成長戦略だとも述べていた。

 

 政治面については、自民党が憲法改正に必要な参議院の議席の3分の2を得られなかったことを指摘して、安倍政権が改憲は当面進めずに「経済政策に 専念することが賢明だろう。アジア地域はこれ以上の不安定を必要としないからだ」とも述べていた。日本の憲法改正は中国や韓国が反対するから当面やめてお け、というわけだ。

 

 同社説は次のようにも述べていた。

 

 「安倍氏は、中国政府も自国のナショナリストカードを切る口実を求めており、(改憲や軍備増強を進めると)中国側を挑発することになるかもしれな い点に留意すべきだ。安倍氏はその代わりに日本にいま必要な安全保障上の目標のほとんどを米国側から適切な兵器を購入し、すでに緊密な米国との防衛の絆を 増強することで達成できるのだ。安倍氏がいま実行できる日本の国家安全保障への最大の寄与は、より敏速な経済成長を実現することだろう」

 

(つづく)

 日本の参議院選挙結果へのアメリカのメディア、三大新聞の報道と評論の紹介です。

 

 いやあ素直じゃないですね。

 アメリカ人の一番好きな民主主義的選挙ではっきりと下された日本国民の審判とはいえ、ああでもない、こうでもないと、文句をつけるという感じなのです。

 

 日本ビジネスプレス「国際激流と日本」からです。

 

 原文へのリンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38292

国際激流と日本

自民党の大勝利を米国メディアはどう伝えたのか

中韓への配慮? 安倍首相の「ナショナリスト」ぶりを警戒

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  今回の参議院選挙への米国メディアの反応は、まずは、安倍晋三首相が率いる自民党が地すべり的な大勝利を飾ったことへの歓迎であり、そして、例によって「普通の国家」を目指そうとする安倍氏の憲法改正などへの主張に対する屈折した態度がまぶされたものであった。

 

 安倍氏が日本国民の揺るぎのない支持を得たことや、日本の政治が近年では珍しい安定を得たことは、米国のオバマ政権が内外ともに衰退や破綻に直面しているのとは対照的であり、米国マスコミのいつもの高みから見下ろすような日本診断も歯切れの悪さが目立っていた。

 

 日本の参議院選挙での自民党の安倍政権の大勝利は「ウォールストリート・ジャーナル」「ワシントン・ポスト」「ニューヨーク・タイムズ」の主要3 紙により7月22日付朝刊でそれぞれ報じられた。もっとも3紙ともトップ級のニュースではなく、1面の片隅にちらりとニュースの冒頭を載せて、残りは中の 面で詳しく伝えるという扱いだった。

米国政府高官たちは日本と中韓との関係悪化を心配

 ウォールストリート・ジャーナルのニュース記事は、「投票は安倍に新しい戦後・日本へのビジョンを求める権限を与えた」という見出しで、今回の地すべり的な勝利が安倍首相に「野心的な成長行動予定と力強い外交政策を追求するためのより多くの自由を与えた」と総括していた。

 

 このニュース記事は、安倍首相の「3本の矢」という表現で象徴される経済政策が成果を生み、国民の圧倒的な支持を得たことを強調したうえで、以下のようにも述べていた。

 

 「安倍氏の勝利の意味は国内経済をはるかに超えるだろう。ナショナリスティックな見解とタカ派的な外交スタンスの安倍氏は、今回の選挙によって拡 大された国民の信託と、より安定した政治環境とを、彼が第1期の首相時代から大切にしてきた政策目標の追求に使うことは明らかである。安倍氏は日本の『戦 後レジーム』を終結させ、日本を『普通の国家』にしたいと言明してきた。その結果、第1期の首相の際には、日本の戦争侵略を受けた近隣諸国の怒りを引き起 こし、米国政府の高官たちには日本と中国、韓国との関係悪化への心配を抱かせることとなった」

 

 「(安倍氏が求める)この種の変化は日本の自衛隊に課せられた制約の一部をなくすための軍事力の増強、戦後の消極平和主義の憲法の改正への試み、などを含んでいる」

 

 上記のような論評は、このところ米国の主要メディアによる日本報道の決まり文句のようになっている。ほとんどは一握りの記者個人の見解だが、その背景には、もちろん米国の日本研究学者や新旧含めての政府高官の一部の意見も作用しているだろう。

(つづく)

 田久保忠衛氏の最新の論文です。

 

日本の憲法を変えないことが日本を危険にするという理由はわかりやすく書かれています。

 

 

【正論】杏林大学名誉教授・田久保忠衛 国民は憲法で「真贋」を見分けた


 

 

 

 ≪新生日本への歴史的うねり≫

 

 「自公70超『ねじれ』解消」の大見出しが各紙の1面トップに躍った。その意味はすこぶる大きい。が、安倍晋三政権誕生、都議会選挙における大勝、次い で今回の参議院選挙における快勝と見てくると、国際政治の流れに沿った新生日本の歴史的うねりが始まったとの感慨を抱く。

 

  もとより楽観は禁物だが、戦後日 本の腑(ふ)抜けた安全保障政策全般が大転換を遂げ、これまでの時代の象徴であった日本国憲法を書き改める展望が開けてきた。当然ながら党内にも役所にも 安全運転を心掛けるべきだとの慎重論は常に存在するだろうが、安倍首相の使命感にはいささかの揺るぎもないと信じている。

 

  7月17日付産経抄が、中国古代の史書『資治通鑑』にある「釜中(ふちゅう)の魚」を引いて、外部で何が起こりつつあるかを知らずに憲法改正論議を怠っ てきた日本を批判しているのを読んで同感した。いい例が参院選投票前にいくつかのテレビで行われた党首討論会だ。何故か知らないが、等分に割り当てられて いる時間の中で改憲は少数意見になってしまう。

 

  「改憲の狙いは憲法9条を変えて海外で戦争する国に日本を作り替えることだ」などと公言する野党党首をはじ め大多数の党首からは、迫り来る国際情勢上の危機感などは全くと言っていいほど表明されなかった。

 

 大きな書店に入って目を見張る思いをするのは護憲を唱える書物の多さである。産経新聞社刊『国民の憲法』はスペースの一角を占めるに過ぎない。憲法9条 は措(お)くとして、外国からの攻撃、大規模な災害やテロ、サイバー攻撃に際して、最高指導者に時には私権を制限するような権限を与える緊急事態条項に も、護憲派は反対しているのだろう。

 

  危険な政治家はどちらか。参院選で国民は真贋(しんがん)を見分けたと私は考えている。

 

 日本をめぐる国際環境がどれだけ悪化しているかは、北方領土問題を抱えるロシア、尖閣諸島をめぐる対立などで不当な態度を示す中国、軍事的威嚇をし核開 発をやめず、拉致問題に誠意を見せようとしない北朝鮮、歴史問題を利用して国内での立場を強化するため形振(なりふ)りかまわぬ韓国などの異常性を見れ ば、明らかだろう。

 

 ≪安保環境は悪化し米国は不調≫

 

 さらに私が強調したいのは米国の「不調」である。2期目に入ったオバマ政権はイラン、シリア、エジプト、北朝鮮、中国、ロシアへの対応で外交的に行き詰 まっている。

 

  内国歳入庁(IRS)による反オバマ団体への介入、リビア・ベンガジでの米大使以下4人の死亡事件(昨年9月)に関する情報の不始末、AP通 信記者の通信記録収集に加え、国家安全保障局(NSA)による内外の個人を含む情報収集・監視活動を暴露した元中央情報局(CIA)職員、エドワード・ス ノーデン容疑者の事件に振り回され動きがとれない。

 

 最近、目を惹かれたのは、米外交評議会のレスリー・H・ゲルブ名誉会長とセンター・フォー・ザ・ナショナル・インタレストのディミトリ・K・サイムズ会 長が、7月6日付米紙ニューヨーク・タイムズに「中露、新反米枢軸か?」と題して連名で書いた一文だ。スノーデン事件を取り上げた両氏は、イランやシリア などでも中露は同一歩調を取って米国に嫌がらせをしている、と説明する。両国が米国を衰退していると見なし、米軍事力を侮っているからだとし、ホワイトハ ウスは自ら世界のリーダーシップを発揮すべきだと主張した。

 

 ゲルブ氏は、ジョンソン、カーター両政権の時代に国防、国務両省の高官の地位にあった言論界の長老だ。ロシア問題専門家のサイムズ氏とともにペンを執っ た気持ちが分かるような気がする。米国の現状は、中国や韓国と組んで安倍政権の歴史認識を批判しているような場合ではないのだ。

 

 ≪9条の改正は必要不可欠だ≫

 

 首相が目指す「強い日本」への力強い歩みは、日本側から積極的に働きかける日米同盟の強化にほかならない。そのためには、現行の憲法の枠内でできる集団 的自衛権に関する政府解釈を見直し、日本版NSC(国家安全保障会議)を設置することだ。安倍政権はそれに直進するだろう。

 

 同時に憲法9条の改正は必要不可欠だと思う。森本敏前防衛相が指摘するように、第1項の「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段とし ては、永久にこれを放棄する」がある限り、国際平和と安全のための集団安全保障に日本は参加できない。集団的自衛権の行使に踏み切るにしても、米軍が集団 安保に加わった場合に日本はどうするのか。

 

  産経新聞の「国民の憲法」要綱では全て整合するように改められた。96条改正に国民の理解を深めるため、7月 20日付同紙「国民憲法講座」に百地章日本大学教授が平易に委曲をつくしている。

 

 大志を遂げるには今後複雑な政治が必要だと察するが、国際環境は悠長な対応を許さない。安倍首相には国家のために名を残す大政治家になってほしい。(たくぼ ただえ)

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