2013年10月

オバマ政権下のアメリカが世界のリーダーとして、もう頼れないという懸念が広がっています。日米同盟などの対外防衛誓約ももしかすると、もう依存はできないという心配も生まれています。

 

そんなアメリカに国の安全保障を全面的に頼るわが日本はどうすればよいのか。

 

田久保忠衛氏が鋭い一文を書いています。

 

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【正論】杏林大学名誉教授・田久保忠衛 「豪の助っ人」と米国の弱点補え
2013年10月29日 産経新聞 東京朝刊 オピニオン面

 産経新聞に時折コラムを書いている米国の評論家、リチャード・ハロラン氏が、43年前の1970年に、日本で出されていた英文季刊誌「パシフィック・コ ミュニティー」に、「米国とアジア-70年代への提案」と題する一文を書いたのを思い出している。時期的に、ニクソン大統領がアジア全域から米地上戦闘部 隊を引き揚げると宣言した翌年に当たる。

≪米国は頼れる世界の警察か≫

ハロラン氏は、米軍は今の第2列島線まで手を 引き、機動戦略戦力としては依然、にらみをきかせながら、その空白は、韓国から豪州までの中国を除く太平洋・アジア諸国が参加する「太平洋アジア条約機構 (PATO)」の結成で埋めよ、と説いた。撤兵の具体的スケジュールも挙げたから、米政府内部には、そのようなシナリオがあるのではないかとの臆測を関係 各国に生み、米国務省はわざわざ「米政府とは無関係」とのコメントを出したほどだ。

日本が一国平和主義の殻に閉じこもっていたことに対 して、ハロラン氏は苛立(いらだ)っていたのだろう。「四半世紀の間、米国が与えてきた安全保障のための盾を当然視することをやめ、アジアの主要国として ふさわしい負担を引き受けなければならない」と述べ、日本は「PATO」で指導的役割を果たすべきだ、と切言した。

論文が今も現実離れ しているのは言うまでもないが、シリア問題の不始末を弁解するために行ったとしか思えない9月10日のテレビ演説で、オバマ大統領が「米国は世界の警察官 になるべきではない」と2度も繰り返したのを見ると、米国は果たして頼りになるかとの懸念が脳裏をかすめ、ハロラン論文を思い出してしまう。

同盟国の米国は一体どうしたのか。シリア化学兵器全廃を主張したロシアが一躍、外交の主導権を握り、内戦で一般市民10万人余が犠牲になったシリアのアサ ド大統領は国連決議に従って誠実に化学兵器の処理に取り組んでいる政治家に一変し、主役だったオバマ大統領は端役に転落してしまった。

≪中国と渡り合った安倍首相≫

政争による政府の機能停止という特殊事情があったにせよ、オバマ氏が10月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議と東南アジア諸国連合 (ASEAN)関連首脳会議に顔を出さなかったのは、外交上の大失敗以外の何ものでもない。代わってこれ見よがしに存在感を誇示したのは中国の習近平国家 主席だった。

主席がインドネシアの国会演説でぶった「21世紀の海上シルクロード構想」は、9月に中央アジア・カザフスタンの首都アス タナで提唱した「シルクロード経済ベルト構想」と相まって、米国や日本に対抗し地域の経済、安保面の指導権を確立しようという野心がむき出しになってい る。

米国がアジアで影を薄める中で特筆すべきは安倍晋三外交だと思う。首相就任後、ASEAN諸国を積極的に訪問し、近くカンボジアと ラオスも訪れるようだが、ブルネイで開かれたASEAN加盟諸国と日米中など18カ国による東アジアサミットでは、中国と渡り合った。南シナ海の領有権問 題で中国が一貫して主張してきたのは2国間交渉であり、その魂胆が古ぼけた「分断統治」にあることは誰の目にも明らかだ。それに最も脅威を感じているのは ベトナムとフィリピンであろう。

安倍首相は「南シナ海をめぐる問題は地域国際社会全体の関心事であり、全ての関係国が国際法を順守し、 一方的な行動は慎むべきだ」との議論を展開した。全ての国々が中国と経済的に結びつつ、安全保障面では米国に依存する複雑な方程式の中で大胆な本音を口に 出せないASEAN諸国が、この日本の正論をどのように受け取ったかは明らかだろう。

≪日米豪印強化して対中改善≫

そうした中、にわかに脚光を浴びているのが、日米同様の太平洋国家、オーストラリアで9月に誕生したアボット政権だ。米国との同盟強化を唱え、日本との経 済、安全保障関係をとりわけ重視する。岸田文雄外相とビショップ外相ら、安倍首相とアボット首相との会談がインドネシアとブルネイで相次いで行われて、日 米豪3カ国の連携強化が話し合われた。ビショップ外相はその後、訪日して首相と会い、日本記者クラブでの会見では、日本の集団的自衛権に関する憲法解釈見 直しの作業に賛意を表した。安倍政権にとって、ありがたい助っ人が駆けつけてくれたことになる。

国際秩序は、冷戦の終焉(しゅうえん) を経て中国の台頭を迎え、米国を中心にこれにどう対応するかという難問を抱えている。2期目に入ったオバマ政権の外交的指導性に陰りが生じ始め、その米国 の弱点をアジア・太平洋地域で日本と豪州がいかに補っていくか、新しい局面がほの見えだしたと考えていいのではないか。中国との対立は決して好ましくはな いが、日本が米豪両国ならびにインドなどとの関係をさらに強化していく中で、中国との関係改善も考える時期が到来しているように思われる。(たくぼ ただ え)

 中国当局の人権弾圧の実態と、その中国が国連の人権理事会の理事国になろうとする動きのレポートです。

 

 その中国の実態を一端でも知ると、いま全世界を衝撃波を広げているウイグル人の抗議行動の理由や背景がよくわかります。

 

日本ビジネスプレス「国際激流と日本」から。

 

原文へのリンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39041

 

国際激流と日本

中国が世界の人権弾圧を監視する不条理「『国連人権理事会』理事国の資格なし」と人権団体が抗議

  なおこの項目は今回エントリーで終わりです。

 

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 また「中国人権」の声明は、自分たちの代表たちが中国当局からごく最近受けた迫害についても公表していた。

 

・私たちの同志の陳建芳と曹順利は国連の人権関連の活動を見学し、訓練を受けるためにジュネーブに招かれたが、9月14日、中国当局により出国を阻 まれた。陳は広州市の空港で警察官に一生、出国はできないのだという通告を受けた。さらに陳は上海市の公安当局から「社会主義の祖国に住みながら外国勢力 と連携することは反逆的、かつ反革命だ。あなたのしていることは自国民の人権を守ることではなく、自国民に自国政府への抵抗を煽ることだ。もしその行動を 続けるならば、あなたの娘は一生、職を得ることがなくなり、母を責めるだろう」と告げられた。曹は北京市の空港からの出国を阻まれた後、消息を絶った。曹 の家族や友人は北京の公安当局に問い合わせているが、なお回答を得ていない。

日本人拉致事件への非難決議にも横槍

 こんなことが起きるのがいまの中国なのである。

 

 そしてそのような人権蹂躙の大国が国連の人権理事会の理事国となり続けている。この事実は国連という組織の虚構部分を改めて印象づける。わが日本にとってこの点でいやでも想起されるのは、北朝鮮による日本人拉致事件への国連の対応だった。

 

 国連人権委員会は2003年4月、ジュネーブでの会議で日本人拉致をも含む北朝鮮の人権弾圧を非難する決議案を審議した。この際に委員会加盟の 53カ国のうち賛成は28だった。中国をはじめとする10カ国が反対、インド、パキスタンなど14カ国が棄権、そして韓国は欠席という結果だった。日本人 拉致という残虐な人権弾圧行為にさえ、非難を抑える国が多数、存在するのが国連の人権機関なのである。しかもその抑える国の筆頭が中国なのだ。

 

 その中国が人権理事会の中枢に据わって、人権弾圧非難を抑える側に回る。この理事会ではそんなひどい状態がもう6年以上も続いてきた。そしてその中国がいまやまたさらに3年の任期延長を求めている。

 

 なんとも、ひどい話ではないか。「中国人権」の行動に大賛同の拍手を送りたいところである。

(終わり)

人権弾圧のチャンピオンの中国が人権尊重の国際リーダー役を演じようとする。

 

これぞごく悪質のコメディです。

 

舞台は国連です。

 

国連の偽善性を証する出来事でもあるようです。

 

日本ビジネスプレス「国際激流と日本」から。

 

原文へのリンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39041

 

国際激流と日本

中国が世界の人権弾圧を監視する不条理「『国連人権理事会』理事国の資格なし」と人権団体が抗議

 

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  国連人権理事会側は、10月22日から中国に対して人権についての「普遍的定期審査」を始めた。この審査は国連の人権擁護のための「市民的および政治的権利に関する国際規約」(略称「自由権規約」)に署名した各国の人権状況を体系的に調べる作業である。

 

 ところが中国は大多数の諸国が署名し、批准したこの「自由権規約」に対し、署名は1998年にしたものの、批准は2013年のいまに至るまでして いない。世界の主要国でも人権擁護宣言ともなる「自由権規約」を批准していない国は珍しい。「中国人権」の声明はこの点にも言及していた。

「中国共産党の嘘に騙されてはいけない」

 「中国人権」が、上海在住の中国知識人218人を中心に中国内外の有志も含めて発表した声明の骨子は以下のようなものだった。

 

・私たち上海市民の有志218人は、中国が国連人権理事会の2014年から16年にかけての理事国になることに反対する。中国はすでに2006年から2013年まで2期、理事国となってきた。この間、中国の人権状況はいささかも改善されていない。

 

・中国の国民は恥ずべき人権環境の下であらゆる種類の苦しみに耐えてきた。1989年6月の天安門での虐殺以来、共産党は人権侵害を止めたことはな く、言論の自由、出版の自由、報道の自由、結社の自由、抗議の自由、信仰の自由などを国民から奪ってきた。共産党当局は、国民の恣意的な拘束、強制的な 「失踪」、強制的な自殺、強制的な居住施設破壊、土地収奪、強制的な産児制限、強制的な妊娠中絶、非合法の軟禁、不当な殴打、拷問、出入国の不当な禁止を 実行している。

 

・中国政府は国連の「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」(社会権規約)と「市民的および政治的権利に関する国際規約」(自由権規 約)の両方に署名したが、自由権規約はまだ批准していない。社会権規約についても、労働組合結成の権利を認めた第8条に対しては留保しており、労働者の自 主的な組合結成という基本的な権利は認めていない。自由権規約未批准だけでも中国は人権理事会入りの資格はない。

 

・私たちは国連加盟のすべての諸国に、中国共産党の嘘に騙されないことを訴える。諸国が目の前の経済的利益を欲して中国共産党を賞賛することのない よう緊急に訴える。諸国が中国当局を世界人権宣言や国際人権規約の基準で判断し、自国民の人権をあらゆる場面で侵害するこの独裁専制の政権に対し、中国国 民とともに勇気を持ってノーと告げることを訴える。

    (つづく)

 中国では天安門広場での「事故」が実はウイグル人によるテロだったという公算が強くなっています。中国政府から抑圧されたウイグル人が抗議のテロに走ったらしいというのです。

 

 中国の人権弾圧はこんなところにもその一端がうかがわれるわけです。

 

 そんな中国が国連人権組織の中核のメンバーにまたなろうというのですから、あきれてしまいます。

 

 そのへんの現状を報告します。

 

 日本ビジネスプレス「国際激流と日本」からです。

 

 原文へのリンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39041

国際激流と日本

中国が世界の人権弾圧を監視する不条理「『国連人権理事会』理事国の資格なし」と人権団体が抗議

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 中国当局の人権弾圧はこのところとどまるところを知らず、である。

 

 共産党独裁政権は穏健な主張の民主活動家を逮捕し、客観報道の範疇を出ない記事を書いた新聞記者を摘発し、チベットやウイグルの少数民族を文字通り弾圧する。その無法ぶりと非道の実態は前回のこのコラムでも報告した。ところがその中国が国連人権理事会の理事国に立候補しているというのだから驚きである。

 

 中国のこの動きに国際人権擁護団体の「中国人権」などが反対キャンペーンを打ち上げた。日本にとっても無関心ではいられない動きだと言えよう。

理事国には「最高水準の人権状況」が求められる

 ニューヨークと香港に拠点を置き、中国の人権弾圧を調査して抗議する国際人権団体「中国人権」は10月25日、「中国政府の国連人権理事会入りに反対する」という声明を発表した。

 

 「国連人権理事会」は国連の主要機関の1つで、名称通り国連加盟国の人権の状況を恒常的に調べて、その改善を進めることを目的とする組織である。 深刻な人権侵害には国連として対処することも目的にうたっている。国連人権高等弁務官事務所がその事務局の機能を果たす。要するに国際社会では人権問題に ついて最高の影響力を持つとされる最大規模の組織なのだ。

 

 この国連人権理事会は以前は「国連人権委員会」と称されていた。その委員会が2006年に発展、解消、拡大という形で現在の理事会となった。人権 委員会は53カ国の委員から成っていたが、人権理事会は47の理事国で構成される。その理事国は地域ごとに数が配分され、アジア13、アフリカ13、東 ヨーロッパ6などとなっている。

 

 人権理事会の理事国は、立候補に基づき、総会の無記名投票で過半数(96票以上)を得た国が選ばれる。以前の人権委員会では自国内で人権問題を抱えた国も資格を問われずに選ばれていたが、新しい人権理事会では、理事となる国には「最高水準の人権状況」が求められる。

 

 だが現実には、その条件も建前だけの虚構となっている。というのは、中国がすでに2006年の当初から理事国となってきたからだ。

 

 中国は2期も理事を務め、さらに今回も立候補している(理事国の任期は原則3年、毎年3分の1が改選される)。理事国の次回選挙は11月12日の国連総会で実施される。

(つづく)

朝日新聞は竹島を日本国の固有の領土とは認めていません。

そう思わされる例証をあげます。

 

10月28日月曜日の夕刊の記事に以下の記述が出ました。

 

「日韓が領有権を主張している竹島(韓国名・独島)をめぐり、韓国外交省が27日までに、同省のサイトから韓国政府の主張を紹介する映像を削除していたことが分かった(以下略)---」

 

この冒頭の表現は明らかに、日本の公式の立場を否定しています。

竹島は日本の領土であり、韓国がいま不当に占拠しているのです。

 

この日本の政府の見解、というよりも日本全体の見解を朝日新聞は認めないわけです。そのかわりに韓国の領有権をも認めているのです。

 

日本に足を置いているのならば、竹島の領有権が日本と韓国と対等、並列だという表記はできないはずです。だからこそ、朝日新聞は日本の新聞とは思えない、という受け止め方が生まれるのです。

 

日本の国民はすべて自国の政府の見解に従わねばならない、などという次元の話ではありません。個々の国民や個々の団体が特定の政策や見解について、自国の政府、あるいは与党のそれと意見を異にするというのは、よくあることです。

 

しかし日本の領土となると話は異なります。日本国民がみな認めているのが日本の領土の範囲、つまり領有権の適用される範囲でしょう。政府の見解というよりも、日本自体、日本全体が現実として受け入れてきたのが固有の領土だといえます。

 

その日本の固有の領土に対して、簡単に「韓国の領有権」を認めて、明記してしまうというのは、日本側の姿勢ではありません。よくて日本と韓国のどちらにも帰属しない中間の立場、地球を離れて見る火星人のような立場、そして悪ければ、韓国の立場ということになります。

 

要するに朝日新聞は自分たちの帰属する対象が日本国だとはみなしていないようなのです。

 

朝日新聞にとって明らかに日本は自国ではないのです。日本が自分たちの国だという意識があれば、日本の固有の領土の竹島を自国領とみなすはずです。ところが日本を自分たちとは異なる他国とみなしているからこそ、竹島も独島だと書くのでしょう。

 

もっとも朝日新聞は竹島については上記の表現、尖閣諸島についても、「日中両国がともに領有権を主張している尖閣諸島(中国名・釣魚島)」と長い期間、一貫して、書いてきました。

 

また以前の反日に戻るといえば、いいすぎでしょうか。

 

ちなみに中国は沖縄に対する日本の領有権も認めていません。

「日中両国がともに領有権を主張する沖縄」という表現はいかがでしょうか。

 

ご参考までの本です。

 

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