2014年04月

 中国というのはやはり一党独裁の国家です。

 

 その統治は国民の意思によっては決められません。

 

 国民が政府に不満を持っても、その表明や許されません。

 

 政府は国民の不満を知っているからこそ、国民を監視します。

 

 それも尋常な監視ぶりではありません。

 

 以下のような報告を書きました。

 

 日本ビジネスプレス「国際激流と日本」からです。

  原文へのリンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40517

国際激流と日本

監視カメラを売ってもいいのか?
中国の住民監視強化に飛びつけない米国企業

 

 

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 中国政府が国内各都市の市街監視を大幅に強め始めた。

 都市内部での政権に反対する動きをつかんで、早めに対処するた めだが、背景としては社会の不安定や政権への不満がかつてなく高まったという現実がある。

 

 米国側ではこの動向を重視し、中国政府が監視用の高性能ビデオカ メラなどを調達する際に米国企業が応じるべきか否かを論じるようになった。

 

 中国の国防予算の大幅増加はすでに国際的な懸念を生んでいるが、近年はその国防費を上回る額が国内の治安維持費に投入されてきた。この治安維持費 は国内の秩序の維持にあたる人民武装警察の経費や、その他の関連政府機関による反政府活動家の動きや、チベット、ウイグルなどの少数民族の抵抗への監視、 取り締まり、弾圧などに使われてきた。

 

 2012年度を見ると、国防費が合計約6700億人民元(8兆7000億円相当)、前年からの伸びが11.2%だったのに対し、治安維持費は 7020億人民元(9兆1000億円)、前年からの伸びは11.5%だった。この治安維持費の大部分は共産党政権に対する一般の抗議や攻撃の情報収集、取 り締まり、防止に向けられる。

 

 国内の治安維持にあたる人民武装警察が人民解放軍の一組織であり、しかも軍全体230万人のうちの160万人を占めるという実態はすでに広く知られている。中国当局が外敵よりも内部の脅威を懸念している事実の反映とも言えよう。

 

 中国当局はこの政策を「社会安定の維持」(維穏)と呼ぶ。安定という意味の中国語は「穏定」という言葉が使われ、その穏定の維持なので「維穏」と 略される。そのための各都市での監視の強化策を「安全都市」とも呼ぶ。ただしこの「安全」というのは、第一義には政権にとっての安全ということだろう。

 

 そのために中国当局は、新たな都市市街地監視システムを築き始めた。街頭を四六時中撮影するビデオカメラ、インターネット上のサイバーパトロー ル、携帯電話を傍聴し、妨害できる管理システム、衛星利用のGPS(全地球測位システム)追跡網、バイオメトリック(生物測定)と呼ばれる指紋や人相、遺 伝子などの特定による対人監視網など、ハイテクを駆使したシステムが構築され、強化されるという。

 

 その目的は、米側専門家が「ジョージ・オーウェルの世 界」にもなぞらえる当局による市民の完全監視システムの達成である.。

 

(つづく)

 

4月21日のNHKニュースを視聴していたら、「日本政府が尖閣諸島を国有化した後に悪化した日中関係」という言葉をアナウンサーが発していました。

 

この言葉をふつうに受け取れば、日中関係は日本が尖閣諸島を国有化したために、悪くなった、という意味に解釈できます。つまりいまの日中関係の悪化は日本側がその原因をつくった、という認識です。そんな認識をNHKはあたかも客観的な事実であるかのように、さらりと述べているのです。

 

しかしこの認識は事実に反します。中国政府の一方的な主張をそのまま認めていることに等しいのです。

 

日中関係の悪化を尖閣諸島に限ってみれば、目だっての悪化の原因は2010年9月7日の中国漁船による尖閣近くの日本領海侵犯、そしてその漁船による二度もの海上保安庁巡視艇への体当たり事件です。

 

日本側は日本領海での不法侵入船による日本側公的艦艇への意図的な衝突、そして破壊という犯罪行為に対し、法的な措置を取ろうとしました。それに対し、中国側は自国内での反日暴動やレアアースの対日禁輸など不当な報復措置を取りました。その結果の日中関係の悪化でした。すべて日本側は受け身なのです。

 

日本政府はその後、中国側がこうした不当な暴力的方法で尖閣への侵犯、侵入を繰り返すならば、尖閣の所有権を民間においたままにすることは危険だとして、国有措置を取ったわけです。

 

その間には石原慎太郎東京都知事による東京都の尖閣諸島購入という動きがありました。当時の日本の民主党政権としては尖閣が東京都の所有下にあることは中国側を刺激するとの判断から国有化の措置をとったという部分も大きいのです。日本側の国有化はむしろ紛争を抑えるための温和策だったのです。

 

しかも日本の固有の領土を日本政府が所有するというのは、ごく自然の措置です。挑発でも、挑戦でもありません。その前に中国は全土各地で反日暴動を煽るという犯罪的行為に走っていたのです。この行為こそが日中関係の悪化の原因なのです。

 

ですから日本の尖閣国有化がいまの日中関係の険悪さのすべての原因であるかのように、気軽に「日本政府の尖閣国有化の後、悪化した日中関係」と述べるNHKは日本の公営放送とは思えない事実関係の曲解、事実の歪曲を感じさせます。そのゆがみはすべて中国側に肩入れをするような偏りなのです。

 

NHKのこうした偏向はまだまだなくなっていません。

新たに任命された会長や経営委員たちは、こういう点にこそ目を向けるべきです。

放言、失言で揚げ足をとられ、その防御に精一杯というのは本末転倒です。

 以下のような記事を書きました。

 

【朝刊 国際】


【緯度経度】古森義久 ホンダ氏以上の「親中反日」候補


 

 米国連邦議会下院のマイク・ホンダ議員といえば、在米の反日中国系組織とスクラムを組んで慰安婦問題での日本非難決議を同下院で採択させた人物として広 く知られる。その中国系組織が今年の議会選挙では同議員を敵に回し、若手の対抗候補を支援するようになった。その戦いが全米レベルの関心をも集め始めた。

 

 ホンダ議員は2007年7月に同下院が可決した慰安婦決議の主唱者だった。カリフォルニア州に本部をおく中国系政治活動組織の「世界抗日戦争史実維護連 合会」(以下、抗日連合会と略)に全面支援されていた。抗日連合会は日本の戦争行動をなお糾弾し、戦後の対日講和に始まる国のあり方をも否定するという意 味で完全に反日であり、中国政府と密な関係がある。

 

 抗日連合会は1996年ごろ同州議員だったホンダ氏との協力を始め、2000年の同氏の連邦議会下院選での当選でも資金や組織の面で強力な支援を続け た。この間、ホンダ議員は慰安婦問題から南京事件、米軍人捕虜問題まで戦争関連案件で抗日連合会と一体となり、日本糾弾を継続した。

 

 ところが今年の中間選挙での下院選ではカリフォルニア第17区から8選目を目指すホンダ議員に対し抗日連合会は同じ民主党の対抗馬のロー・カンナ氏を支 援し始めた。72歳のホンダ氏に対しカンナ氏は37歳、インド系米人の知的所有権専門の弁護士で第1期オバマ政権では商務次官補代理まで務めた。2人は6 月の民主党予備選で対決する。

 

 抗日連合会がホンダ議員を支援しなくなった理由は現地の消息通によると、尖閣問題で同議員が中国支持を鮮明にすることをためらったためらしい。事実、同 議員は12年10月ごろから地元紙などに尖閣問題では米国が中立を保つことを提唱する意見を発表し始めた。日本の領有権を認めず、米国は国際機関に紛争と して持ち出すべきだと述べたが、中国の領有権も明確には支持しなかった。

 

 ホンダ氏としては慰安婦問題など戦争の歴史がらみの案件では中国の主張を全面支持する立場をとれても、尖閣問題でオバマ政権の「中立」を超えてまで中国支持は打ち出せないということだろう。だが抗日連合会は長年のお抱え議員には領土問題での中国支援も期待したわけだ。

 

 一方、カンナ氏はホンダ議員への挑戦を宣言する以前の昨年2月に抗日連合会のピーター・スタネク会長とイグナシアス・ディン副会長との連名で、尖閣問題 での中国全面支援の寄稿論文を地元有力紙の「サンノゼ・マーキュリー」に載せた。抗日連合会は選挙戦ではカンナ候補を多方面で支援し、反日活動では同候補 を完全に取りこんだ形である。

 

 カンナ氏も中国系有権者をとくに意識して、中国語のウェブサイトを設け、自分も中国語で選挙演説をするほどとなった。同じ民主党内で7期14年も在任す るホンダ議員のようなベテランに挑むのは異例であり、その挑戦決定までの過程でも抗日連合会のプッシュが大きかったようだ。

 

 民主党内ではオバマ大統領もナンシー・ペロシ下院院内総務もホンダ議員支持を表明している。だが選挙区でのカンナ候補の人気も高く、今年3月の時点で集めた選挙資金が約200万ドルと、ホンダ議員の3倍以上と発表された。

 

 さて日本たたきのホンダ議員が中国団体から見放されたという一幕だが、その対抗馬はホンダ氏以上の親中反日なのである。(ワシントン駐在客員特派員)

  オバマ大統領の訪日を間近にしてのオバマ政権の対日政策、対アジア政策への

関心が高まっています。

 

 それら政策の中心は「アジアへの旋回」でしょう。

 

 ところがこの政策には多数の疑問が米側で提起されています。

 

 この「旋回」は言葉だけに終わるだろう、という見方も根強く存在します。

 

 そのへんの報告の最終回です。

 

 

日本ビジネスプレス「国際激流と日本」からです。

 

 原文へのリンクは以下です。

  http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40465

国際激流と日本

幻に終わりそうな米国の「アジアへの旋回」戦略 中身は迷走し、予算は不足

 

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 以上だけを読むと、当初の「空・海戦闘」からの大幅な後退に見える。当初は中国の軍事脅威を明白な対象としていたのに、ここでは中国が自陣営に入っているかのような表現もあったからだ。

 

 だからオバマ政権の「アジアへの旋回」は、目的や内容が分かっているようで、よく分からないのである。それでもなおその政策の中核がアジア・太平 洋地域での米国の軍事能力を高めるという具体的な措置であることは変わらない。ただその軍事力増強をどのように進めるかが見えてこないのだ。

マクファーランド次官補がもらした本音

 そうした状況の中、この3月にワシントンで、オバマ政権の国防総省のカトリーナ・マクファーランド次官補(調達担当)が「率直に言って、『アジア への旋回』は実現が難しく、その計画全体がいま見直されている」と発言したのである。安全保障関連の公開の会議での発言だった。現職の国防次官補、しかも 兵器類の調達担当の高官が述べた言葉はなんといっても重い。

 

 マクファーランド次官補は、「国防予算を削減しなければならないため、『アジアへの旋回』の純軍事部分の実行は困難すぎるという意味だ」とも説明 した。この発言は、それでなくとも広がっていたオバマ政権のアジア重視政策の軍事的側面の実効性に対する懐疑を一気に広めたのだった。

 

 同次官補の言葉を文字通りに受け取れば、オバマ政権がこれまでさんざん宣伝してきた「アジアへの旋回」そのものが幻に終わってしまう可能性があるということだ。

 

 国防総省当局はこのマクファーランド発言にあわてて、本人に「補足説明」をさせることになった。マクファーランド次官補は「先の発言は2015年 度の国防予算についてだけの話しであり、『アジアへの旋回』の中長期の展望についてではなかった」と苦しい弁明をする結果となった。だがどう見ても、いま のオバマ政権の国防予算の大幅な削減が、軍事面でのアジア重視策の実行を極めて難しくしているという現実をますます浮かび上がらせることになった。

 

 この発言をめぐる騒ぎで再び浮かんだのは、「アジアへの旋回」という政策が果たして具体的に何を意味するのか、という基本的な疑問だったとも言え る。オバマ大統領は今回のアジア諸国歴訪で、日本のみならず韓国、マレーシア、フィリピンなどの諸国の首脳にも、より具体的な説明を求められることは確実 だろう。

(終わり)

 オバマ政権の「アジア旋回」には疑問が多くあります。

 

 肝心のアメリカ側当局者がその旋回が幻に終わる見通しをポロリと本音としてもらしてしまったのです。

 

 そのへんの報告です。

 

日本ビジネスプレス「国際激流と日本」からです。

 

 原文へのリンクは以下です。

  http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40465

国際激流と日本

幻に終わりそうな米国の「アジアへの旋回」戦略中身は迷走し、予算は不足

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 ・空軍による米海軍基地や艦艇の防御の強化

 

 こうした目標を見ると、いかにも米軍が中国軍を相手に戦争を始めるかのようにも思える。だが実態はこうした目標を可能にする措置を取り始める、ということだった。

 

 さらに奇妙なことに、これだけ明確にこの新戦略の対象が中国であることが示されていたのに、オバマ政権全体としては公式に「決して中国を対象や標的としているわけではない」という言明を繰り返すようになった。中国を刺激したくないという外交配慮だった。

中国が自陣営に入っているかのような表現も

 しかも上記のような軍事戦略は実際には履行されないまま、オバマ政権内部では「アジアへの旋回」自体がその軍事要素を薄め、目的を広げ、薄めていくような動きが目立つようになった。

 

 オバマ大統領が再選を果たした直後の2012年11月中旬、同大統領の国家安全保障担当のトム・ドニロン補佐官がワシントンでの政策発表の場で、「アジアへの旋回」について改めて以下のように説明した。

 

・アジアへの旋回も再均衡も、いかなる国をも封じこめる意図を有していない。

 

・同盟諸国との絆の強化(日本との安全保障上の役割、任務、能力の向上、韓国との安保協力の増強、オーストラリアとの合同演習の拡大、フィリピンとの海洋安全保障の協力の強化など)

 

・インドとの安保協力の促進(米国とインドとの戦略対話の拡大など)

 

・アジア・太平洋の地域機構との関与の深化(G20やASEAN〈東南アジア諸国連合〉との連携、中国やインドネシアを含む東アジア首脳会議への関与など)

 

・中国との安定した建設的な関係の追求(北朝鮮、イラン、シリアなどの課題は中国との関わりなしには解決できない。対中関係は協力と競合だが、中国が国際的、あるいは国家としての責任を果たすかどうかがカギとなる)

 

・アジア・太平洋の地域の経済枠組み(貿易や投資の拡大、特にTPP〈環太平洋経済連携協定〉の推進など)

 

(つづく)

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