2014年05月

 中国のサイバー攻撃についての報告を続けます。

 アメリカ政府の反撃です。

 

 日本にとっても他人事ではありません。

 

 日本ビジネスプレスの「国際激流と日本」からです。

 

 原文へのリンクは以下です。

 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40744

国際激流と日本

人民解放軍将校5人を起訴、
ついに「ルビコン」を渡った米国政府

 

 

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 「中国軍当局はこのサイバー攻撃作戦で約20の産業分野の各企業から高度技術製品の設計図、製造プロセス情報、製品試験データ、ビジネス計画、価 格情報、他企業取得計画などを入手した。同時にアメリカの電力、通信、エネルギーなどの公共サービスや米軍の『指揮・統制・通信』などのシステムの妨害を も試みてきた」

 

 今回の司法省の起訴は、まさに中国人民解放軍の「61398部隊」を標的としたものだった。そしてウルフ議員らが被害を訴えた2006年という時期が中国の作戦が本格化するスタート期らしいことも、マンディアンの報告書は示していた。

日本も標的となっていることは明白

 今回の起訴は、米国政府が「ルビコン」を渡ったことを意味するとも言える。中国のサイバー攻撃に対し、一般的な警告や外交的な抗議という範囲を超えて、米国の国内刑法の適用によって厳しい刑事訴追という手段を取ることを宣言したからだ。

 

 しかしこの中国の対米サイバー攻撃をめぐる米中両国の国政レベルでの衝突の出発点は、上記のように2006年だった。当時の米側の最初の警告発信者となった前述の2議員のうち、ウルフ議員は5月20日、今回の司法省の起訴について次のような声明を出した。

 

 「中国のサイバー攻撃の最初の被害者の1人として、今回の司法省の措置は大いに歓迎したい。私自身が攻撃を受けたときは、全米レベルでのこの問題 への意識は低かった。だが現在では中国の人民解放軍、政府機関、国有企業などが米国の官民組織にサイバー攻撃をかけ、国家安全保障の機密や産業秘密を盗ん でいることは、一般米国民の間でももはや疑う余地がない状態となった。だが今回起訴された要員たちの活動は氷山の一角にすぎない」

 

 ウルフ、スミス両氏はともに1981年から連邦議会会員議員を務めるベテランである。両議員の中国批判はときに非常に厳しく、「強硬な反中派」と いうレッテルを張られることもあった。だがその中国への厳しい態度こそが中国側の対米サイバー攻撃という大作戦の実態を暴いていくことに寄与したのであ る。

 

 日本も中国側のこうしたサイバー攻撃の標的となっていることは明白である。だが、そのことに正面から警告を発する日本の政治家はまだ現れていないようだ。

(終わり)

 アメリカ当局による中国軍将校5人の起訴についてです。

 

 主題は中国人民解放軍による対米サイバー攻撃です。

 

 日本ビジネスプレスの「国際激流と日本」からです。

 

 原文へのリンクは以下です。

 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40744

国際激流と日本

人民解放軍将校5人を起訴、
ついに「ルビコン」を渡った米国政府

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  そのウルフ、スミス両議員が2006年に「中国からのサイバー攻撃の被害を受けた」と発表した。

 

  両議員自身のコンピューターやスタッフのうち中国問 題を担当する補佐官たちのコンピューターが侵入され、両議員が近く議会に提出する予定だった中国当局のインターネット抑圧を非難し対抗策を打ち出す法案 や、中国側の人権擁護活動家、民主活動家たちとの交信内容、それら活動家の動向についての最新資料などを盗まれた、という。そして両議員とも、サイバー攻 撃の発信地は確実に中国だとも明言していた。

 

 思えば、米国の国政の場で中国によるサイバー攻撃問題が公式に提起されたのは、この両議員の発表が最初だった。議会全体に両議員の発表が流れ、政 府も公式に懸念を表明した。だが当時、このウルフ、スミス両議員の言明はそれほど反響を呼ばず、中国のサイバー攻撃という事象自体もさほど波紋を広げない ままに終わってしまった。

 

 ところがその後、米国側の政府や軍機関、そして民間の大手企業までが中国によるサイバー攻撃の被害を訴えるようになった。

 

  議会の諮問機関の「米中 経済安保調査委員会」が2011年11月に公表した年次報告で、中国軍組織が米側の地球観測衛星や国防総省人員管理システムにサイバー攻撃をかけ、情報の 奪取だけでなく、米側の軍事関連システムの妨害を試みた実例を多数紹介した。

 

  この報告が米側の政府機関からの中国のサイバー攻撃非難の最初のリポートと なった。そしてその後は官民の組織が相次いで、中国の米側コンピューターネットワークへの侵入に抗議するようになったのだ。

犯人は中国人民解放軍の「61398部隊」

 そうした指摘の中でも特に大きな反響を招いたのは、2013年2月に公表された調査報告書だった。

 

  大手インターネットセキュリティー企業「マン ディアン」が長年の調査に基づく結果として中国当局の対米サイバー攻撃の実態を詳しく発表したのである。その内容は米国大手メディアにより大々的に報道さ れた。今回の司法省の刑事訴追行為も、その捜査はこのマンディアンの調査に依存した部分が大きかった。

 

 マンディアンの報告書は最も重要な発見として以下の諸点を明記していた。

 

 「中国を拠点とする世界でも最大のサイバー攻撃の実行組織は、2006年以来、米国を主とする主要諸国の合計141企業のコンピューターネット ワークに侵入し、高度技術に関する企業の機密情報や知的所有権にかかわる情報などを大量に盗むことに成功した。中国のこの組織は人民解放軍総参謀部第3部 第2局の『61398部隊』で、上海浦東地区の12階建てビルを主要拠点としていることが判明した」

(つづく)

 アメリカ政府が中国軍の将校5人の起訴を発表しました。

 

 アメリカに対するサイバー攻撃を実行したという罪状です。

 

 この強硬なアメリカ側の措置が米中関係をどう変えるのか。

 

 日本ビジネスプレスの「国際激流と日本」からです。

 

 原文へのリンクは以下です。

 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40744

国際激流と日本

人民解放軍将校5人を起訴、
ついに「ルビコン」を渡った米国政府

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  ついに米国の司法当局が、大規模な対米サイバー攻撃の容疑で中国の人民解放軍将校5人を起訴した。

 

 5月19日、エリック・ホルダー司法長官自身が記者会見をして、その起訴罪状を公表した。罪状は簡単に言えば、人民解放軍のサイバー攻撃部隊が米 国の原子力発電、鉄鋼、アルミニウム関連などの大手企業のコンピューターシステムに侵入し、技術や設計の機密情報を盗んだ、という骨子だった。

 

 中国政府はただちに米国のこの動きを「すべて捏造だ」と否定した。中国側はさらに、これまで継続してきたサイバー問題に関する米国政府との合同作業グループから脱退することを発表した。米中関係は、このサイバー攻撃問題を原因としてさらに悪化する局面を迎えたわけだ。

 

 中国当局による米側官民へのサイバー攻撃は最近、大きな問題となっていた。だがオバマ政権は事を荒立てないという姿勢を取り、正面からの中国糾弾 を避けてきた。米中関係全体をなんとか良好に保とうとするオバマ政権独特の政治配慮だったと言える。2013年6月のカリフォルニアでの米中首脳会談でも オバマ大統領はサイバー攻撃問題を主要課題に据えたが、習近平主席が「両国相互の問題だ」としてかわすと、それ以上は責めなかった。

 

 だが、さすがのオバマ政権もここにきて中国軍将校5人の刑事責任を追及するところまで大胆に踏み切ることになった。米国にとってそれほど大きな難題となったということだろう。その結果、中国の対米サイバー攻撃が米中関係全体を揺り動かすようにまで発展したと言える。

中国のサイバー攻撃を最初に受けた2人の議員

 そこで私が思い出したのは、この問題を国政レベルで最初に提起し、警鐘を鳴らした2人の下院議員だった。バージニア州選出のフランク・ウルフ議員とニュージャージー州選出のクリス・スミス議員である。

 

 いずれも共和党の両議員は、長年、米中関係の諸課題を取り上げることが多かった。特に中国政府の人権弾圧を頻繁に批判していた。2人は中国で実際 に弾圧を受けている民主活動家の人権問題などを取り上げ、下院の各種関連委員会で公聴会を開き、決議案を出してきた。2人ともに、地元の選挙区で中国政府 の人権弾圧を非難することを求める勢力は特にない。議員個人の信条に駆られて、という印象だった。

(つづく)

 

 集団的自衛権論議について以下のような記事を書きました。

 

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 【緯度経度】古森義久 奇妙な日本の自己不信
2014年05月17日 産経新聞 東京朝刊 国際面

 安倍晋三政権の集団的自衛権行使容認への動きは日米同盟の堅持や日本の防衛の強化の健全な前進として歓迎されるべきである。とくに米国側での対日同盟へ の年来の障害の除去は意味が大きい。日本の集団的自衛権行使の禁止は同盟の絆の深奥に刺さった大きなトゲとみられてきたからだ。

だが日本側では国内だけをみての反対論もなお絶えない。防衛は本来、外部に対する国の姿勢だという基本を無視するかの態度である。この点で日本が自国の防衛を委ねてきた米国側のこの課題への軌跡を再点検することも意義があろう。

とくに米側に立たなくても日本の集団的自衛権行使の禁止が同盟の概念からすれば一国平和主義に通じる自己中心過多であることは明白だろう。オバマ大統領の日米安保条約の尖閣諸島(沖縄県石垣市)への適用言明は、行使反対派までが歓迎した。

だが米国にとって尖閣の防衛はまさに集団的自衛権の行使となる。米国にはその行使を求め、その恩恵を喜びながら自国の同じ権利の行使は罪悪のように拒むのは欲張りな子供のようだ。

米側ではここ20年もこの点への批判が絶えない。ソ連の軍事脅威が強大だった冷戦中は日本不信もまだあって現状維持だったが、冷戦後の1990年代なかばから厳しい意見が浮上した。

ワシントンの大手シンクタンクのケイトー研究所は「日本の集団的自衛権の行使拒否は米国のアジア有事への協力の拒否であり、安全保障の“ただ乗り”だ」として同盟解消をも提案した。

カリフォルニア大学教授だったチャルマーズ・ジョンソン氏は「目前の同盟国の危機をも放置する日本の態度は日米安保体制の有効性を奪っている」という論文を発表し、やはり日米同盟の解消を求めた。

先代ブッシュ政権で国家安全保障会議アジア担当を務めたトーケル・パターソン氏は「平和維持の危険な作業を自国領土外では全て他国に押しつけるというのでは日米同盟はやがて壊滅の危機に瀕(ひん)する」と警告していた。

近年は党派を超えた不満がさらに強くなっていた。民主、共和両党の安全保障専門家、主要シンクタンク研究員らの間では「日本の集団的自衛権行使拒否により日米同盟は有事に一気に崩壊する恐れがある」(ハロルド・ブラウン元国防長官)という意見がコンセンサスとなった。

超党派に徹する議会調査局も「日本の集団的自衛権行使の禁止が日米防衛協力の障害になる」という見解をここ数年、続けて公表してきた。

日本側での反対論は米側では奇妙な自己不信とも受け取られる。集団的自衛権を解禁すると、日本は戦争や侵略を始める-と日本人自身が主張するからだ。

この種の主張での「歯止め」という言葉も外部の敵や脅威ではなく日本自身に向けられる。日本こそ最も危険だというわけだ。日本の民主主義や文民統制、法の支配を日本人自身が信じない状態として外部には映る。

この点では米側では「全世界の主権国家がみな行使できる権利を日本だけには許さないということは日本を国際社会のモンスターとみなすことだ」(元スタンフォード大学研究員のベン・セルフ氏)という指摘も出てきた。

この指摘に沿えば、日本での反対論や歯止め論は日本人が日本自身のモンスター性を認めているという結果となるのである。(ワシントン駐在客員特派員)

 集団的自衛権の論議では日本不信が顕著です。

 

 全世界のどの国も行使の権利を有する集団的自衛権も日本だけには許してはならない、というのです。

 

 中国や韓国という反日国家が主張するならわかります。

 

 ところが日本国内の一部勢力がそう主張するのです。

 

 日本が集団的自衛権の行使を解禁すると、他国に軍事攻撃をかける危険がある、というのです。

 

 日本人による日本不信です。

 

 この点をアメリカ側の反応を指針として紹介しました。

 

日本ビジネスプレスでの私の連載コラムからの転載です。

 

原文へのリンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40679

国際激流と日本

「日本はモンスターなのか?」
集団的自衛権議論で表面化する“日本性悪説”日本を恐れているのは実は日本自身

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 ところがこのセミナーでは、そのような日本への指摘をはねつける反対の発言が出た。

 

 「他国なら当然の防衛や軍事の権利を日本だけには認めるなという主張に従えば、日本は国際社会のモンスターなのか。いつまでも鎖につないでおかねばならない危険な犬なのか」

 

 発言したのはスタンフォード大学の研究員やヘンリー・スティムソン・センターの上級研究員を務めたアジア研究学者のベン・セルフ氏だった。同氏は日本の政治や外交をも専門領域とし、慶應義塾大学への留学体験もある。

 

 セルフ氏は次のようにも述べた。

 

「全世界の主権国家がみな保有する権利を日本だけには許してはならないというのは、日本国民を先天的に危険な民族と暗に断じて、永遠に信頼しないとする偏見だ。差別でもある」

 

 セルフ氏のこの発言は、長年、米国側で主流だった「日本抑えつけ論」への批判だとも言えよう。米国においても、日本を普通の国、信頼できる国と見なして自衛の権利を正規に認めるべきだという意見が出てきたということでもある。

 

 ところが肝心の日本側に、日本危険論、日本性悪論がなお消えていない。

 

 日本という国家や日本人という民族は遺伝子的にも侵略性が強いのだという前 提に立つ歯止め論であり、暴走阻止論なのだ。

 

 日本の一部で声高に語られる集団的自衛権の行使容認への反対論は、そうした日本不信が土台になっていることを 再度、認識しておこう。

(終わり)

 

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